ざっくり要約!
- 入居者募集は、地域の特性を知る仲介会社に依頼しよう
- 競争力を高めるためには、地域のリサーチを踏まえた条件設定や設備の充実が有効
賃貸物件の入居者募集は、不動産経営における最も重要な要素の一つです。空室期間を長引かせないために家主は積極的に入居者募集を行います。多くの家主は入居者募集を不動産仲介会社に委託していますが、近年ではインターネットの普及により、独力で入居者募集を行う家主も増えています。
本記事では、入居者募集の基本的な流れやコツ、さらに自主募集のメリット・デメリットについて詳しく解説します。
記事サマリー
入居者募集は不動産会社に依頼するのが一般的
賃貸住宅の入居者募集の手段は、自ら行う方法と宅建業者に委託する方法に大別されます。国土交通省が2019年に行った調査によれば、サブリース以外の賃貸住宅の80.0%が入居者募集を宅建業者へ委託しています。
多くの家主が入居者募集を委託する理由は、入居者募集には不動産取引に関する知識や経験、契約に関する法的な手続きや入居者の審査など、専門的なスキルや労力が求められるからです。
媒介契約と代理契約の違い
入居者募集を委託する形式には「媒介契約」と「代理契約」があります。
媒介契約は、仲介会社が家主と入居希望者の間に立って契約を仲介する形態です。契約の最終的な判断は家主に委ねられます。家主が入居者の選定に細かい条件を設けたい場合や、契約条件について直接交渉の余地を残しておきたい場合などに用いられます。
一方の代理契約は、家主の代わりに仲介会社が契約締結までの権限を持つ形態です。仲介会社に全面的に任せることができるため、遠方に住んでいる家主や、多忙で細かい対応が困難な家主に適しています。ただし、重要事項の決定権も委譲しなければならない点には注意が必要です。
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売買仲介と賃貸仲介の違い
不動産会社が請け負う仲介業務は「売買仲介」と「賃貸仲介」に分けられます。
売買仲介は、不動産物件の所有権移転をともなう売買の仲立ちをする業務です。取引金額が高額なうえ、税金や登記などの複雑な法的手続きも多く、専門的な知識が必要とされます。また、契約までの期間も長く、細かい調整や交渉が必要になることが一般的です。
賃貸仲介は、家主が所有する不動産物件へ入居するための賃貸契約をまとめる業務です。扱う権利は所有権ではなく賃借権となります。仲介会社には、賃貸借契約特有の法規制や家賃の設定、入居者の審査などの専門知識が求められます。
仲介会社と管理会社の違い
不動産賃貸に関わる不動産会社には「仲介会社」と「管理会社」があります。
仲介会社は、入居者の募集から契約までを主な業務とする不動産会社です。物件の広告掲載や内見対応、入居審査、契約手続きなどを担当します。多くの仲介会社は地域の賃貸市場に精通する地域密着型の会社ですが、規模の大きな都市には大手不動産会社系列の仲介会社も進出しています。
管理会社は、入居後の管理業務を担当する不動産会社です。家賃の集金、滞納対応、建物の定期点検、クレーム対応、退去時の原状回復など、継続的な管理業務を請け負います。前述の仲介会社と業務範囲は分けられていますが、近年では仲介業務と管理業務の両方を手がける総合賃貸管理会社も見られます。
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賃貸管理会社とは? 頼れる委託先の選び方を紹介
仲介会社に依頼した場合のコスト
仲介業務を仲介会社に依頼する場合には、一定のコストが発生します。一般的な費用項目は「仲介手数料」「広告料」の2種類です。
仲介手数料は、賃貸住宅の場合には宅地建物取引業法により「借主・貸主双方から合計で新賃料の1.1カ月分(税込)まで」と定められています。原則として借主・貸主双方に0.55カ月分(税込)が上限とされていますが、一方の承諾があれば上記の限りではなくなるため、最大で1.1カ月分(税込)まで請求することが可能です。
広告料は仲介会社に物件を宣伝してもらうための費用です。一般的には成約時の仲介手数料に含まれますが、長期間空室が続いていて即座に入居者を決めたい場合などには、追加で広告料を出すことも可能です。
入居者募集から入居までの流れ
入居者募集から実際に入居してもらうまでには、いくつかの工程があります。それぞれのステップの注意点を確認していきましょう。
仲介会社と契約する
入居者募集を仲介会社に依頼する場合、最初に仲介会社と契約を締結します。募集賃料、敷金・礼金などの初期費用、入居者の条件(年収、職業、入居人数など)、ペットの可否、楽器演奏の可否、事務所利用の可否など、詳細な条件を決めたうえで契約しましょう。また、早期成約のための条件(フリーレント、仲介手数料の割引など)の要不要についても、この段階で協議しておくのが望ましいです。
案内
内見希望者からの申し込みを受けた仲介会社が物件を案内します。家主による鍵の管理や内見時の立ち会いも可能ですが、仲介会社に鍵を預け、家主の立ち会いなしとしたほうが負担が軽くなります。
仕事をしている入居希望者は夜間や休日の内見を希望するケースが多いため、毎回家主が鍵を渡し、内見に立ち会うのは現実的ではないでしょう。鍵の管理に関するセキュリティ面への配慮を依頼しつつ、家主は内見には直接関わらない体制を整えておくのが理想的です。
入居申し込み・審査
入居希望者から申し込みがあった場合、収入や勤務先などの確認を行い、入居審査を実施します。一般的な審査項目には、本人確認、収入証明、在職証明、連帯保証人の確認などがあります。近年は家賃保証会社の利用を必須とするケースが増えているため、家賃保証会社による審査も増えています。
審査の基準は物件によって異なりますが、一般的には家賃に対して十分な金額かつ安定した収入があること、同居人の人数や続柄などが含まれます。外国籍の方の場合は、在留資格や在留期間なども重要な確認事項となります。
賃貸借契約
審査通過後、重要事項説明を行い、賃貸借契約を締結します。この際、契約条件や特約事項を明確にします。重要事項説明では、物件の基本情報、賃貸条件、契約期間、更新の条件、解約の条件、禁止事項などが詳しく説明されます。
契約書の作成には、賃貸借契約に関する法律の知識が必要です。特に、借地借家法による入居者の権利保護や、原状回復に関する基準、反社会的勢力の排除条項など、重要な法的要素が多く含まれています。また、家賃の支払方法、設備の使用方法、緊急時の連絡先なども、この段階で確認します。
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入居
契約完了後には入居者に鍵を引き渡し、入居が開始されます。入居後のトラブルを防ぐため、仲介会社は共用部分の使用ルールやゴミ出しのルール、騒音への配慮など、生活ルールについても説明を行います。
また、設備の使用方法や緊急時の連絡先などについても、この段階で丁寧に説明することが望ましいでしょう。
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家主が自分で入居者募集するメリット・デメリット
入居者募集は必ずしも仲介会社に依頼する必要は無く、家主が自分で行うこともできます。家主が自ら入居者を集める際には、仲介会社を利用しないことによるメリットとデメリットの両方をあらかじめ理解しておく必要があるでしょう。
メリット
家主が自ら入居者募集するメリットのひとつに「入居者との濃密なコミュニケーション」があります。入居前から交流を持てるため、入居者の人柄を理解したうえで契約に進めるのは、家主にとって大きなメリットです。また、契約条件の調整や要望への迅速な対応が可能になるため、交渉力がアップするという側面も期待できるでしょう。
また、長期的に入居者募集を繰り返すことで、家主自身にノウハウを蓄積できるのもメリットです。地域の特性や入居者のニーズを肌で感じられるようになり、より適切かつ効率的な賃貸経営を実現しやすくなります。
仲介手数料を節約できるという金銭的なメリットを得つつ、自物件にあった入居者と良好な関係を築きやすくなるという点は、家主自身が入居者を募集することで得られる大きなメリットといえるでしょう。
デメリット
一方で、家主自身が入居者募集に必要なノウハウを得ることは容易ではありません。集客のための広告運用や内見対応に時間と労力を取られることに加え、入居者審査に必要な専門知識不足などを理由に、トラブルに見舞われる可能性もあります。
さらには、契約時にも法的な専門知識が求められます。知識を身につけるために時間がかかるだけでなく、イレギュラーな事態への対応も考えなければなりません。
万一トラブルが発生した場合、家主自身が全ての責任のもと対応する必要があります。入居者募集に十分な時間を割け、なおかつ知識も経験もある専業大家なら対応できるかもしれませんが、副業の場合や初めて賃貸に出すような場合は本業やその後の賃貸経営に悪影響を及ぼすリスクがある点も注意しておくべきでしょう。
賃貸住宅の入居者募集のコツ
入居率を上げるためには、物件の魅力を最大限に引き出し、適切な募集活動を行うことが重要です。以下のポイントに注意を払いながら、効率の良い募集を行いましょう。
物件の立地・種別に強い仲介会社に依頼する
家主自身が十分な賃貸経営の経験と専門知識を持っていない場合は、仲介会社への依頼を検討しましょう。仲介会社選びの際には、対象エリアでの取引実績が豊富で、対象物件と同じ種類の物件の取り扱いに長けた仲介会社を選択することが重要です。
地域での経験が豊富な仲介会社は、地域の賃貸市場の動向や入居者のニーズを熟知しているため、適切な賃料設定や効果的な募集戦略を提案できます。また、日頃から多くの入居希望者と接しているため、物件に合った入居者を紹介できる可能性も高くなるでしょう。
競合物件をリサーチする
効率良く十分な利益を上げるためには、適切な家賃設定が必要です。そのためにも、競合する物件をリサーチし、自身の物件の条件を設定するための情報を収集しましょう。
競合物件のリサーチで見るべきは、立地、築年数、広さ、賃料、スペックといった条件です。競合物件と自物件の条件を照らし合わせたうえで賃料を設定することで、物件の競争力を高めることができるでしょう。
特に、徒歩圏内の類似物件は詳細な分析が必要です。近い築年数や間取りの物件があれば、より良い設備やサービスがあることをアピールしやすくなります。また、リサーチは一度だけでなく、定期的に行うことで、賃料相場の変動や入居者ニーズの変化を知り、賃料設定に柔軟に対応できるようになります。
必要に応じて初期費用を下げる
競争力を高める方法のひとつが、初期費用の見直しです。入居時に必要な費用を抑えられる施策を講じることで、入居者を集めやすくなります。具体的には敷金や礼金を無料にする、家賃不要のフリーレント期間を設ける、敷金や保証料などを月額料金化するといった施策が考えられます。
特に、若年層や学生向けの物件では、初期費用の高さがネックとなることが多いため、これらの施策は有効です。さらに、家賃保証会社の利用を推奨し、連帯保証人を不要とすることで、入居のハードルを下げられるでしょう。ただし、この場合は保証会社の審査や手数料などが発生するため、メリット・デメリット双方からの十分な検討が必要です。
見栄えを良くする
入居者募集において、物件の第一印象は極めて重要です。同じ物件でも、汚れや傷みの度合いによって受ける印象は全く異なります。清掃や簡単な修繕を行い、内見時の印象を良くすることで、成約率を高めることが期待できるでしょう。
具体的には、壁紙の張り替え、床材の補修、水回りの清掃、照明器具の交換などが効果的です。また広告に写真を掲載する際には、撮影時の角度やインテリアの配置なども考慮するだけで、入居希望者に与える印象を変えられます。
共用部分の状態も重要です。エントランスや階段、廊下などの清掃・メンテナンスを徹底し、建物全体の印象を向上させることで、利用中の入居者によろこんでもらえるだけでなく、内見時の評価を高めることもできるでしょう。
設備を見直す
近年の入居希望者は、設備に対する意識が高まっているといわれています。エアコンや温水洗浄便座はもはや基本的な設備であり、最近ではオートロックや宅配ボックス、高速インターネットなどが人気設備に挙げられています。
特にセキュリティに対するニーズは高く、地域や家賃帯を問わず検討要素のひとつになっています。物件価値向上を目指すなら、防犯カメラの設置、電子キーの導入、スマートロックの設置といった対応を検討してもよいでしょう。
まとめ
入居者募集は仲介会社への依頼が一般的ですが、自主募集という選択肢もあります。どちらを選ぶにせよ、物件の競争力を高め、適切な募集活動を行うことが重要です。市場動向や入居者ニーズを的確に把握し、それに応じた対策を講じることで、より効果的な募集活動が可能となります。
賃貸経営は長期的な視点が必要です。短期的な収益にとらわれすぎず、物件の価値を維持・向上させながら、安定した経営を目指すことが重要です。入居者募集においても、この長期的な視点を忘れずに、自身の物件の経営に有効な取り組みを行うことが成功への近道となるでしょう。
この記事のポイント
- 賃貸物件の入居者募集の方法は?
家主による自主募集と仲介会社への依頼があります。
詳しくは「入居者募集は不動産仲介会社に依頼するのが一般的」をご覧ください。
- 家主が自分で募集するメリット・デメリットは?
入居者とコミュニケーションを取りやすくノウハウを蓄積できるメリットと、トラブル対応に責任を持たなければならないデメリットがあります。
詳しくは「家主が自分で入居者募集するメリット・デメリット」をご覧ください。
- 入居者を集めるためのコツは?
地域を知る仲介会社への依頼、競合物件に合わせた条件設定や初期費用の割引、設備の充実といった対策が有効です。
詳しくは「賃貸住宅の入居者募集のコツ」をご覧ください。
ライターからのワンポイントアドバイス
賃貸経営の経験が少ない家主や不動産投資目的の副業オーナーの入居者募集は、仲介会社に依頼するのがおすすめです。長期的に賃貸経営を安定させるための最初の秘訣は、家賃を滞納しない良質な入居者を集めることにあります。仲介会社は、効率的に入居者を募集するノウハウに加え、入居者の支払能力を判断するための審査基準や滞納時の対応するためのノウハウも有しています。手堅く安定した利益を上げられるよう、入居者集めの段階からプロの手を借りるとよいでしょう。
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