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住宅ローンは年収の何倍が理想なのか?借入可能額と返済可能額の違いとは

執筆者プロフィール

品木 彰
品木彰
2級ファイナンシャル・プランニング技能士

大手生命保険会社に7年半勤め、個人営業と法人営業の両方を経験。人材サービス会社の転職エージェントとしての勤務経験もあり。 2019年1月からはフリーランスのWebライターとして独立。「お金に関する正しい知識を、より多くの人々に届けたい」という思いを原動力に、保険や不動産、資産運用、相続など幅広いジャンルの記事を執筆している。2級ファイナンシャル・プランニング技能士の資格を保有。

ざっくり要約!

  • 住宅ローンの借入額は、一般的に年収の5〜7倍が目安とされているが適切とは限らない
  • 借入額は年収倍率5倍前後にとどめ、年収に対する年間返済額(返済負担率)を15〜20%に抑えるとよい

住宅ローンの借入額を決めるときは、年収に対する倍率が1つの判断基準となります。

しかし、年収倍率のみを基準に決めた借入額が必ずしも適切とは限らないため、複数の要素をもとに、自身の状況でいくらの借り入れができるかを慎重に検討することが大切です。

今回は、住宅ローンの借入額に対する年収の倍率の目安や近年の傾向、そして理想的な返済プランを立てるためのポイントを解説します。

住宅ローンの借入額は年収の何倍が一般的?

最初に、住宅金融支援機構の調査結果をもとに、年収倍率の目安や近年の傾向について解説します。

年収の5〜7倍が目安

住宅ローンの借入額は、年収の5〜7倍程度が1つの目安とされています。

たとえば、年収500万円あれば住宅ローンの借入額はその5〜7倍である2,500万〜3,500万円程度が目安です。

では、実際にマイホームを購入した人は、年収の何倍の借り入れをしたのでしょうか。

住宅金融支援機構の調査によると、住宅ローンの1種である「フラット35」を利用した人の世帯年収に対する所要資金(自己資金+借入金額)の倍率は下記の通りです。

  • 土地付き注文住宅:7.6倍
  • マンション:7.2倍
  • 建売住宅:6.6倍
  • 中古マンション:5.6倍
  • 中古戸建:5.3倍
     ※出典:住宅金融支援機構「2023年度フラット35利用者調査

土地付き注文住宅やマンションについては、年収倍率が7倍を超えています。一方、中古住宅の年収倍率は5.3〜5.6倍であり、新築住宅よりも低い結果となりました。
年収倍率を計算する際の所要資金には、住宅ローンの借入額だけでなく自己資金も含まれています。
しかし近年は、頭金をまったく入れない、あるいは入れても物件価格の1割程度である世帯も少なくありません。
住宅金融支援機構の調査結果からも、住宅ローンの借入額は年収の5〜7倍が1つの目安といえるでしょう。

年収倍率は上昇傾向にある

住宅金融支援機構の調査によると、年収に対する借入額の倍率は下記のとおり上昇傾向にあります。

下記資料のP12
※出典:住宅金融支援機構「2023年度フラット35利用者調査

2023年の調査結果は前年に比べて横ばいまたは低下していますが、全体的には上昇傾向にあることが見て取れます。
2013年の年収倍率は5倍弱〜6.5倍強でしたが、先述の通り2023年の調査結果は5.3〜7.6倍に増加しました。
近年は、建築資材価格や人件費の高騰、円安による海外投資家からの需要増加などが要因となり住宅価格が年々高くなっていますが、平均年収はさほど増加していません。
加えて、政府による低金利政策の影響により住宅ローンの借入額が増えたことで、年収倍率が上昇傾向にあると考えられます。

理想的な年収倍率はどれくらい?

住宅ローンの借入額を決める際は年収の倍率だけでなく「返済負担率」も考慮することが大切です。ここでは、返済負担率の計算方法や目安を解説します。

借入限度額の目安は返済負担率35%

返済負担率は、年収に対する年間のローン返済額の割合です。計算式は以下の通りです。

  • 返済負担率=年間返済額 ÷ 年収

金融機関は、住宅ローンの審査をする際に返済負担率が一定値を上回っていないかを確認します。返済負担率の上限は、金融機関により多少の差はありますが、一般的には下記の通りです。

税込年収返済負担率の上限
〜250万円未満25%
250万〜400万円未満30%
400万円以上35%

たとえば、年収500万円の場合、返済負担率の上限は一般的に35%であるため、年間返済額が「500万円×35%=175万円」を超えるような借入は困難です。

住宅ローンの借入限度額は、返済負担率を用いて計算した年間返済額を、最長の返済年数で返済すると仮定し「審査金利」を用いて計算します。

住宅ローンは0.5〜2.0%の金利で借り入れができますが、審査金利はそれよりも高い3〜4%程度に設定されるのが一般的です。

民間金融機関の住宅ローンは変動金利の取り扱いが多く、返済の途中で金利が上昇して返済負担が増えたとしても、完済できる見込みがあるかを審査するためです。

たとえば、年収500万円、返済期間35年、審査金利4%、返済方法が元利均等方式(毎月の返済額を一定にする方式)の場合、借入上限額を計算すると3,290万円となります。

住宅ローンの借入限度額は、各金融機関やフラット35の公式ホームページで試算できます。

理想的な返済負担率の目安は15〜20%

返済負担率の上限を用いて算出した借入額は、あくまで「金融機関が融資してくれる最大の金額」です。

借入限度額いっぱいまで住宅ローンを組むと「子どもが成長して教育費が増えた」「転職して収入が減った」などが起こったときに、返済が苦しくなる恐れがあります。

そこで、返済途中で家計の収入や支出が変化しても返済が続けられるよう、返済負担率が15〜20%程度となるように、住宅ローンの借入額を決めると良いでしょう。

たとえば、年収が500万円の場合、返済負担率が15〜20%であると、年間返済額は75万〜100万円となります。

住宅金融支援機構の調査によると、2023年10月から2024年3月までに住宅ローンを利用した人の返済負担率は平均19.2%でした。

また、返済負担率が15%超〜20%以内である割合は26.6%ともっとも多いことに加え、全体の半数以上が20%以内となっています。

※出典:住宅金融支援機構「住宅ローン利用者調査(2024年4月調査)

年収倍率でいえば5倍前後が理想

年収倍率をもとに、住宅ローンの理想的な借入額を検討すると5倍前後が目安です。たとえば、年収500万円の場合は借入額の目安は最大2,500万円となります。

この金額を、返済期間35年、借入金利は年0.5%(変動)、返済方法は元利均等方式で借り入れると、毎月の返済額は約6.5万円、年間返済額は約77.9万円です。

返済負担率を計算すると「約77.9万円÷500万円≒約15.6%」となり、理想的な範囲内に収まります。

借入金利を年2.0%(固定)にした場合、毎月の返済額は約8.3万円、年間返済額は約99.4万円であり、返済負担率は約19.9%となります。

マイホームを購入する際は、必要に応じて頭金を入れて住宅ローンの借入額を年収の5倍程度にすることで、途中で返済が苦しくなるリスクを抑えやすくなるでしょう。

【シミュレーション】年収の5倍と7倍で返済額はどれだけ変わる?

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では、住宅ローンの借入額や返済額は年収の5倍と7倍でどれほど変わるのでしょうか。年収500万円と1,000万円のケースでシミュレーションしてみましょう。

共通の試算条件は以下の通りとします。

  • 返済期間:35年
  • 借入金利:年0.5%(変動金利)
  • 返済方法:元利均等方式(毎月の返済額が一定である方式)
  • ボーナス払い:なし

試算結果は以下の通りです。

・年収500万円の場合


年収の5倍年収の7倍
借入金額2,500万円3,500万円
毎月の返済額約6.5万円約9.1万円
年間返済額約77.9万円約109.0万円
返済負担率約15.6%約21.8%
総返済額約2,725.6万円約3,815.9万円

・年収1,000万円の場合


年収の5倍年収の7倍
借入金額5,000万円7,000万円
毎月の返済額約13.0万円約18.2万円
年間返済額約155.8万円約218.1万円
返済負担率約15.8%約21.8%
総返済額約5,451.3万円約7,631.8万円

借入額が年収の5倍であると返済負担率は約15.6〜15.8%となりました。一方、年収の7倍の借り入れをすると、返済負担率は20%を超えるため、家計を圧迫しやすくなります。

また、今回は変動金利で借り入れを想定してシミュレーションしているため、返済途中で金利が上昇すると、返済負担率はさらに増えるでしょう。

返済負担が家計を圧迫するリスクを抑えたいのであれば、住宅ローンは年収の7倍まで借り入れるのではなく、5倍程度にとどめておいたほうが良いといえます。

住宅ローンの借入額を決めるうえでの注意点

住宅ローンの借入額を決めるときは、年収に対する倍率や返済負担率に加えて以下の点も考慮すると良いでしょう。

ライフスタイルやライフプランも考慮する

同じ年収であっても、家族構成や年齢、住んでいるエリアなどで毎月の支出は異なります。

また、子どもの進学や転職、老後生活などのライフイベントが生じると、まとまった資金が必要になるとともに、家計の収支が変化するかもしれません。

住宅ローンの返済期間は一般的に20年や30年など長期にわたります。住宅ローンを組むときは、毎月の収入と支出、将来的に起こりうるライフイベントとそのときの必要資金も考え、無理のない返済計画を立てることが大切です。

借入額だけが返済額に関わるわけではない

住宅ローンの借入額が同じであっても、金利や返済期間などで返済額は大きく変わります。

たとえば、変動金利は固定金利よりも借入当初の金利が低いため、毎月の返済額を抑えることが可能です。しかし、将来的に金利が上昇すると、返済額が増加するリスクがあります。

返済期間を長くすると、毎月の返済額を減らせる一方で利息総額や総返済額は増えます。また、主な収入源が国からの年金となって世帯収入が下がったあとも返済が続き、生活が苦しくなるリスクも生じやすくなるでしょう。

借り入れた人が亡くなったときにローン残債が保障される「団体信用生命保険(団信)」によっても、毎月の返済額が変わることがあります。団信に特約を付け、がんや三大疾病(がん・心筋梗塞・脳卒中)などにも備えられるようにすると、金利が年0.1〜0.2%程度上乗せになることがあるためです。

借入額に加え、金利や返済期間、団体信用生命保険の保障内容なども踏まえて、返済シミュレーションを活用し、住宅ローンの借入条件を慎重に検討しましょう。

まとめ

住宅ローンを無理なく返済するためには、年収倍率だけでなく返済負担率も考慮することが重要です。返済負担率は15〜20%程度、年収倍率は5倍前後を目安に借入額を検討すると良いでしょう。

また、借入額を決める際は、現在のライフスタイルや将来のライフプランも踏まえて慎重に検討することが大切です。

この記事のポイント

住宅ローンの借入額は、収入の何倍が一般的でしょうか?

住宅ローンの借入額は、年収の5〜7倍程度が1つの目安とされています。たとえば、年収500万円あれば住宅ローンの借入額はその5〜7倍である2,500万〜3,500万円程度が目安です。

詳しくは「住宅ローンの借入額は年収の何倍が一般的?」をご覧ください。

住宅ローンを組む時の理想的な年収倍率はどのくらいでしょうか?

住宅ローンの借入額を決める際は年収の倍率だけでなく「返済負担率」も考慮することが大切です。

詳しくは「理想的な年収倍率はどれくらい?」をご覧ください。

住宅ローンを借り入れる際の注意点はありますか?

住宅ローンの借入額を決めるときは、年収に対する倍率や返済負担率に加えてライフスタイルやライフプランも考慮すると良いでしょう。

詳しくは「住宅ローンの借入額を決めるうえでの注意点」をご覧ください。

ライターからのワンポイントアドバイス

品木 彰

現在の家計や将来のライフイベントも想定して返済計画を立てたうえで住宅ローンの借入額を決めるためには、ライフプランニングや金融などさまざまな専門知識が必要です。
そのため、マイホームを購入する際は、金融機関や不動産会社の担当者、またはファイナンシャルプランナーの資格を持った人に相談をすることをおすすめします。

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