ざっくり要約!
- 住宅ローンの繰り上げ返済方法は「期間短縮型」「返済額軽減型」の2つ
- 繰り上げ返済は、団体信用生命保険や住宅ローン減税、その他の借り入れや資産形成の状況も考慮して判断する
住宅ローンを繰り上げ返済することで、月々の返済額や利息負担を減らすことができます。しかし、住宅ローン減税や団体信用生命保険、資産形成などを考慮すると、必ずしもベストな選択とは限りません。
この記事では、繰り上げ返済の方法や「してはいけない」とされる大きな理由などについて解説します。
記事サマリー
住宅ローンの繰り上げ返済とは
住宅ローンの繰り上げ返済とは、毎月の決められた返済額以外に、まとまった資金を返済に充てることで、借入残高を減らす方法です。繰り上げ返済の方法は「期間短縮型」と「返済額軽減型」の2種類があります。
期間短縮型
期間短縮型とは、毎月の返済額を変えずに、返済期間を短縮する方法です。総返済額における利息の割合が減るため、返済総額を効果的に削減できます。
返済額軽減型
返済額軽減型は、返済期間はそのままに、毎月の返済額を減らす方法です。家計の負担を軽減したい方や、将来の収入減少に備えたい方に向いています。ただし、期間短縮型と比べると利息削減効果は小さくなります。
住宅ローンを繰り上げ返済してはいけないとされる大きな理由
毎月の返済額や利息負担を軽減できる住宅ローンの繰り上げ返済は「積極的にすべき」といわれる一方で、「繰り上げ返済してはいけない」といわれることもあります。繰り上げ変災してはいけないとされる大きな理由は、次の3つです。
住宅ローン以上に好条件な融資はないから
住宅ローンは、個人向けの融資の中で最も金利が低い商品です。現在の住宅ローン金利は、固定金利が1%台後半から2%台前半、変動金利は1%弱が主流で、他の借入と比較すると極めて有利な条件となっています。
さらに、住宅ローンには「団体信用生命保険(団信)」が付帯しています。団信とは、万一のときに残債の返済が免除される保険です。期間短縮型の繰り上げ返済をした場合は、団信の加入期間も短くなることを認識しておきましょう。
住宅ローン以上に好条件な融資はありません。カーローンやキャッシングなどの借り入れが残っている場合は、住宅ローンより優先して返済するべきでしょう。
・「団信」に関する記事はこちら
団信とは?住宅ローンとの関係や仕組みをわかりやすく解説
住宅ローン減税があるから
住宅ローンには「住宅ローン減税」という減税制度もあります。住宅ローン減税が適用されると、新築住宅や買取再販住宅は13年間、中古住宅は10年間にわたって、年末のローン残債の0.7%が所得税や住民税から控除されます。
住宅ローン減税を受けている間に繰り上げ返済をしてローン残債が減ると、控除額が減ってしまう可能性があることも「住宅ローンを繰り上げ返済してはいけない」とされる大きな理由の一つです。
・「住宅ローン減税」に関する記事はこちら
【2024年度版】住宅ローンの控除の条件は?申請方法や注意点まとめ
資産形成が重視される時代だから
平均寿命の伸長や年金制度への不安から、近年、個人の資産形成の重要性が高まっています。住宅ローンの繰り上げ返済に充てる資金を住宅ローン金利より高い利回りの投資信託やNISAなどで運用することで、より大きなリターンを得られる可能性があります。
長期的な資産形成の視点では、すべての余剰資金を繰り上げ返済に回すのではなく、分散投資を検討することも重要です。
・「老後資金」に関する記事はこちら
持ち家ありの夫婦に必要な老後資金はいくら?貯め方や家の活用方法も解説
効果的な住宅ローンの繰り上げ返済方法

繰り上げ返済を行う場合、効果を最大限に高めるためには適切な時期と方法の選択が重要です。ここでは、返済時期による効果の違いや目的に応じた返済方法の選び方について解説します。
基本的には時期が早いほど効果は大きい
繰り上げ返済は、実施時期が早ければ早いほど利息削減効果が大きくなります。これは、住宅ローンの返済の初期段階では、毎月の返済額のうち利息の占める割合が大きいためです。
ただし、前述のとおり、住宅ローン減税との兼ね合いを考慮する必要があります。
繰り上げ返済の目的を考える
繰り上げ返済を行う際は、その目的を明確にすることが重要です。
たとえば、次のようなケースでは期間短縮型が向いているでしょう。
- 現在の収入が安定しており、毎月の返済額に余裕がある
- 退職金や相続などでまとまった資金を受け取った
- 定年前に住宅ローンを完済させたい
一方、次のような状況・意向がある場合は、返済額軽減型が向いていると考えられます。
- 転職や独立を考えていて将来的に収入の減少が予想される
- 今後の教育費や老後の生活費など大きな支出に備えたい
- 毎月の返済負担を少しでも軽くして、生活にゆとりを持たせたい
住宅ローンを繰り上げ返済するうえでの注意点
住宅ローンの繰り上げ返済をする際は、次の点に注意が必要です。
手数料がかかる可能性がある
繰り上げ返済時には、手数料が発生する場合があります。手数料は金融機関や繰り上げ返済方法によって異なりますが、数万円かかることもあります。インターネット上の手続きなら手数料無料、または割引になるケースも多いため、事前に金融機関に確認しましょう。
繰り上げ返済すれば団信の保険金も減額する
団体信用生命保険(団信)の保障額は、住宅ローン残債です。繰り上げ返済によってローン残高が減少すると、保障額も減少することになります。繰り上げ返済時には、保険も見直すようにしましょう。
一定の手元資金を残す
繰り上げ返済を行う場合でも、急な出費や災害などに備え、最低でも半年分程度の生活費は手元に残しておくことをおすすめします。すべての預貯金を繰り上げ返済に充てることは避けましょう。
まとめ
住宅ローン金利以上に好条件な融資はなく、今は住宅ローン減税という大きな控除制度があり、資産形成時代に突入していることを考えると、繰り上げ返済は必ずしもベストな選択ではありません。とはいえ、住宅ローンの返済は毎月のもので、家計に占める割合も高いことから、返済額軽減型の繰り上げ返済をすることで精神的な負担を軽減する効果にも期待できます。家計が楽になって初めて資産形成を考えられることもあるでしょう。
「繰り上げ返済をするべき」「してはいけない」という両極端な意見がありますが、大切なのは自身の状況であり、意向です。判断に悩む場合は、ファイナルプランナーや銀行の窓口で相談することをおすすめします。
この記事のポイント
- 繰り上げ返済の方法は?
繰り上げ返済の方法は「期間短縮型」と「返済額軽減型」の2種類があります。
詳しくは「住宅ローンの繰り上げ返済とは」をご覧ください。
- 住宅ローンを繰り上げ返済してはいけないとされる理由は?
大きな理由は、住宅ローン以上に好条件な融資は存在しないことから、現代では繰り上げ返済より資産形成に資金を充てるメリットが大きいと考えられるからです。
詳しくは「住宅ローンを繰り上げ返済してはいけないとされる大きな理由」をご覧ください。
- 住宅ローンの効果的な繰り上げ返済方法は?
繰り上げ返済の時期が早いほど、利息の軽減率が高くなります。ただし、住宅ローン減税を受けている間は控除額が少なくなってしまう可能性があるため注意が必要です。
詳しくは「効果的な住宅ローンの繰り上げ返済方法」をご覧ください。
ライターからのワンポイントアドバイス
住宅ローンの繰り上げ返済は、決して「してはいけない」わけではありません。しかし、住宅ローンの繰り上げ返済以上に、高金利な借り入れの返済や高利回りな投資をしたほうが、効果的に資産形成できます。とはいえ、近年は金利上昇も懸念される時期です。変動金利で借り入れている場合は繰り上げ返済も視野に入れ、家計への負担を最小限に留めることを検討しましょう。

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