ざっくり要約!
- 住宅ローンの本審査では、仮審査よりも詳細に返済能力が調べられるだけでなく、物件の担保評価や借り入れる人の健康状態も確認される
- 仮審査に通過したにもかかわらず本審査で落ちる確率はさほど高くはないが、物件の担保価値や健康状態などが理由で通過できないことはある
住宅ローンを組んでマイホームを購入する際は「仮審査」と「本審査」の2つに通過する必要があります。
仮審査を通過しているのであれば、本審査で落ちる確率はさほど高くありません。しかし「仮審査で虚偽の申告をした」「物件の担保価値が低い」などのケースに該当すると本審査に落ちることがあります。
今回は、住宅ローンの審査で確認される項目や、本審査で落ちるケースなどを解説します。
記事サマリー
住宅ローン審査は「仮審査」「本審査」の2つ
まずは、仮審査と本審査の違いやそれぞれの特徴を見ていきましょう。
仮審査とは
仮審査は、本審査の前に住宅ローンを借り入れる人の返済能力を確認するために行われる簡易的な審査です。
住宅ローンの本審査は、住宅の売買契約を結んだあとに行われます。本審査に落ちてしまうと、物件の購入代金を用意できず、売買契約が解除になるかもしれません。
そこで、住宅ローンを利用して住宅を購入するときは、売買契約を結ぶ前に仮審査を受け、借り入れが可能か確認するのが一般的です。
仮審査では、住宅ローンの借り入れを希望する人の年収や勤続年数、雇用形態、他の借り入れ状況などをもとに返済能力が審査されます。
結果が分かるまでの日数は、金融機関によって異なりますが、1〜3日程度が目安です。
本審査とは
本審査は、住宅ローンの借り入れが可能かどうかを正式に決めるための審査です。住宅ローンの借入金額や借入金利、返済期間なども、本審査の結果によって決まります。
本審査では、仮審査よりも返済能力がより詳細に審査されるだけでなく、購入する予定の物件の資産的な価値や、借り入れる人の健康状態なども確認されます。
本審査の結果が分かるまでの期間は、通常1〜3週間ほどです。仮審査よりも厳密に審査が行われるため、審査期間は長くなります。
本審査で確認されるのはどんなこと? 仮審査との違いは?
続いて、本審査で確認される項目や仮審査との違いをみていきましょう。
不動産の担保評価
住宅ローンを組む場合、取得予定の土地や建物を担保として提供しなければなりません。
借り入れた人が住宅ローンを返済できなくなったとき、金融機関は担保となっている物件を差し押さえて競売によって強制的に売却し、融資金を回収しようとします。
そのため、金融機関は住宅ローンを組んで購入する予定の物件に担保として十分な価値があるかどうかを厳密に評価し、融資の可否や借入金額を決めています。
土地や建物の担保価値は、主に本審査で確認される項目です。そのため、本審査では売買契約書や工事請負契約書、重要事項説明書など物件に関する書類の提出を求められます。
仮審査の段階では担保価値を確認しない金融機関もあり、物件に関する書類の提出が不要な場合もあります。
債務者の属性
債務者(ローンを借りる人)の属性とは、年収や勤続年数、雇用形態などのことです。
住宅ローンは、借り入れた人の収入をもとに返済されるため、金融機関は申し込んだ人の年収や勤続年数などを参考に返済能力を審査します。
「安定した高い収入がある」「正社員として長く同じ会社に勤めている」などに該当する人は、金融機関から属性が高いと判断され、審査に通過しやすい傾向にあります。
住宅ローンの本審査では、申し込んだ人の返済能力が厳密に審査されるため、収入を証明する書類の提出が必須です。
会社員であれば源泉徴収票や住民税決定通知書、自営業の場合は確定申告や納税証明書の提出を求められます。
一方で仮審査の場合、金融機関によっては借り入れを希望する人の自己申告のみで返済能力が審査されることがあります。
債務者の健康状態
住宅ローンを組む人の多くは「団体信用生命保険(団信)」に加入します。団体信用生命保険は、借り手が亡くなったときや所定の高度障害状態になった場合にローン残高を保険金でカバーしてくれる保険です。
ほとんどの金融機関は、借り手に万が一のことがあったときに融資金を回収できるようにするために、団信への加入を融資の条件としています。
団体信用生命保険に加入する際は、現在の健康状態や過去の一定期間における病歴などを保険会社に告知しなければなりません。
住宅ローンの本審査を申し込むときは、団体信用生命保険の申込書と健康状態を告知するための告知書を記入します。
・「団信」に関する記事はこちら
団信とは?住宅ローンとの関係や仕組みをわかりやすく解説
債務者の信用情報
信用情報とは、ローンの借り入れや返済の履歴、クレジットカードの利用状況などに関する情報のことです。個人の信用情報は「指定信用情報機関」に保存されています。
金融機関は、住宅ローンを申し込んだ人の返済能力を判断するために、指定信用情報機関に照会をして信用情報を確認します。
長期にわたって返済や支払いを滞納した情報や自己破産をした履歴が指定信用情報機関に残っていると、住宅ローンの審査に通過するのは困難です。
金融機関の多くは、仮審査の段階で指定信用情報機関に問い合わせて信用情報を確認します。また、本審査の際にも再び信用情報が確認され、仮審査のあとに新たな借り入れや返済の延滞などがないかが調べられます。
本審査に落ちる確率は数%。落ちたらどうなる?

仮審査に通過できた人が本審査で落ちる確率は数%程度です。ただし、仮審査に通ったから安心というわけでもなく、本審査で落ちてしまうケースもあります。
事前に仮審査を経ているため確率的には高くない
仮審査では、申し込みをした人の年収・勤務先・過去の延滞履歴などで基本的な返済能力が審査されています。
住宅ローンを返済できる能力があると判断されなければ仮審査には通過できないため、本審査で落ちてしまう確率はさほど高くありません。
とくに、仮審査の段階で物件の担保価値まで審査する金融機関であれば、本審査には高い確率で通過できます。
住宅ローンの本審査に落ちる人の特徴
仮審査に通過できたにもかかわらず、本審査で落ちてしまう人には以下のような特徴があります。
- 仮審査のときに虚偽の内容を申告した
- 健康上の問題により団信に加入できなかった
- 物件の担保評価が低い
- 転職をしたことで勤続年数が短くなり収入も減少した
- 本審査までのあいだに新たなローンを組んでしまった
たとえば、仮審査の段階で年収を多く申告すると本審査で落ちてしまうかもしれません。
本審査では、源泉徴収票などの公的な書類をもとに事実確認が行われるため、仮審査で虚偽の内容を申告していても必ず発覚します。
また、健康状態や物件の担保価値など仮審査の段階では調べられない項目が原因となり、本審査に通過できないケースもあります。
仮審査の通過後に、転職をしたり新たにローンを組んだりすると、年収や勤務先、他の借入状況が変わってしまうため、本審査に落ちるリスクを高めてしまうでしょう。
・「住宅ローンの審査が通らない人の特徴」に関する記事はこちら
住宅ローンの審査が通らない人の特徴は?通らない場合の対策も紹介
減額承認となる可能性もある
本審査には通過できたものの、希望する借入金額よりも低くなる減額承認となる場合があります。減額承認となるケースは、下記の通りです。
- 年収が希望する借入額に対して低い
- 他の借入額が多い
- 築年数が古い物件や再建築不可物件(建物の建て替えができない物件)など担保評価が低い住宅を購入する場合 など
金融機関から提示された借入額が希望よりも低いときは「予算や物件の見直しをする」「他の金融機関で申し込む」などでの対処が必要になることがあります。
「住宅ローン特約」があれば売買契約の無条件解除が可能
住宅ローンの本審査に通過できなかったとき、不動産の売買契約書で「住宅ローン特約」が定められていると、契約を無条件で解除することができます。
通常、不動産の売買契約を結んだあとに契約をキャンセルすると、違約金の支払いを請求されることがあります。
買主の都合で解除する場合、売買契約を結ぶときに売主に支払った手付金は基本的に戻ってきません。
住宅ローン特約が設定されていれば、本審査に通らずに契約が解除となった場合は、違約金は請求されず手付金も返還してもらえます。
マイホームを購入するときは、住宅ローン特約の有無や契約が解除できる要件などをよく確認することが大切です。
・「手付金」に関する記事はこちら
不動産契約で手付金が返ってくるのはいつ?知っておきたい条件や相場
住宅ローンの仮審査に通過したあとのNG行動
本審査に落ちる事態を避けるためには、仮審査に通過したあとに「他の借り入れをする」「借り入れの返済や納税を怠る」「退職・転職をする」といったことは控えることをおすすめします。
他の借り入れをする
仮審査に通ったあとに、新たなローンを組んだりクレジットカードの分割払いを利用したりすると「返済負担率」が上昇してしまいます。返済負担率とは、年収に占める年間返済額の割合のことです。
金融機関は、住宅ローンを申し込んだ人の返済負担率が一定の範囲に収まっているかを審査で確認します。返済負担率を計算する際の年間返済額には、住宅ローンだけでなく自動車ローンや教育ローンなども含まれます。
仮審査に通ったからといって新たに他の借り入れをしてしまうと、返済負担率が金融機関の定める規定を超えてしまい、本審査に落ちてしまうかもしれません。
審査結果が出るまでは、新たな借り入れは控えたほうが良いでしょう。
借り入れの返済や納税を怠る
ローンの返済や税金の納税、クレジットカードの支払いなどを滞納した履歴は、指定信用情報機関に一定期間残ります。
滞納の履歴が指定信用情報機関に残っていると、金融機関から「貸し付けてもきちんと返済をしてもらえないのではないか」と疑われてしまいかねません。
仮審査に通過したあとに、借り入れの返済や納税などを怠った履歴が指定信用情報機関に記録されると、本審査で落ちるリスクを高めてしまいます。
本審査に通過できるまでは、返済や納税などを確実に行い、信用情報に傷を付けないようにすることが大切です。
退職・転職する
金融機関は住宅ローンをきちんと返済してもらうために、申し込みをする人に安定した収入があるかどうかを慎重に審査します。
仮審査に通ったあとに退職や転職をしたことで、勤務年数や年収などが金融機関の定める基準を満たさなくなると、安定した収入が見込めないと判断されるかもしれません。
その結果、審査に落ちることもあるため、住宅ローンの審査に通過し、融資が実行されるまでは、退職や転職はできるだけ控えたほうが賢明でしょう。
まとめ
住宅ローンの本審査に落ちる確率は数%程度であるため、ほとんどの方が通過できるでしょう。しかし「物件の担保価値が低い」「健康上の理由で団信に加入できない」などの理由で、本審査に落ちることはあります。
また、仮審査の通過後に新たな借り入れや支払・納税の延滞、退職・転職などをすると、本審査に落ちやすくなるため、このような行動は避けることをおすすめします。
この記事のポイント
- 住宅ローンの審査にはどのような審査がありますか?
住宅ローンの審査には「仮審査」と「本審査」があります。
「住宅ローン審査は『仮審査』『本審査』の2つ」では、まず仮審査と本審査の違いやそれぞれの特徴を解説しています。
- 本審査に落ちることはあるのでしょうか?
仮審査に通過できた人が本審査で落ちる確率は数%程度です。ただし、仮審査に通ったから安心というわけでもなく、本審査で落ちてしまうケースもあります。
詳しくは「本審査に落ちる確率は数%。落ちたらどうなる?」をご覧ください。
- 住宅ローンの仮審査を通過しました!通過した後にしてはいけない行動はあるのでしょうか?
本審査に落ちる事態を避けるためには、仮審査に通過したあとに「他の借り入れをする」「借り入れの返済や納税を怠る」「退職・転職をする」といったことは控えることをおすすめします。
詳しくは「住宅ローンの仮審査に通過したあとのNG行動」をご覧ください。
ライターからのワンポイントアドバイス
住宅ローンの本審査に落ちるケースとして実際によくあるのが「仮審査に通過したあとにローンを組んでクルマを買った」というものです。仮審査のあとに自動車ローンを組むと、返済負担率が高くなってしまうため、本審査に通過できなくなるか、通ったとしても減額承認となる場合があります。自動車ローンを組んでマイカーを購入するのは、住宅ローンの審査に通過するまで待ったほうが良いでしょう。

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