ざっくり要約!
- 頭金なしで住宅ローンを組むことには「早めに住まいを購入できる」「住宅ローン減税の節税効果が高まる」などのメリットがある
- 一方で「返済額が増える」「審査に通過しにくくなる」などのデメリットもあるため、頭金を入れずに家を購入しても問題ないか慎重に検討することが大切
住宅ローンを組むときに頭金は必須ではないため、マイホームの物件価格と同じ金額を借り入れるフルローンを利用する人は少なくありません。
しかし、頭金を入れないことにはいくつかのデメリットがあるため、慎重に計画を立てていないと、マイホームの購入後に後悔してしまう可能性があります。
この記事では、頭金なしの住宅ローンのメリット・デメリットと、後悔しない借り方のポイントを解説します。
記事サマリー
頭金なしで住宅ローンを組むことはできるのか
ひと昔前は「マイホームを購入するときは2割程度の頭金が必要」といわれていました。しかし実際には、頭金を入れなくても住宅ローンを組んでマイホームを購入できる可能性はあります。
そもそも「頭金」とは?
頭金とは、物件価格のうち現金で支払う部分のことです。戸建て住宅やマンションなどの価格から住宅ローンの借入額を差し引いた部分が頭金となります。
たとえば、5,000万円の住宅を4,500万円の住宅ローンを組んで購入する場合は、500万円の頭金が必要です。
頭金は手元にある現金か両親や祖父母などから援助してもらった資金などで支払います。
・「頭金」に関する記事はこちら
不動産購入の頭金とは?頭金なしで購入する方法とメリット・デメリットを解説
3割近くが頭金ゼロで住まいを購入
三井住友トラスト・資産のミライ研究所の調査によると、マイホームを購入する際に頭金がゼロであったと回答した人の割合は27.4%でした。
年代別にみると、20代は35.2%、30代は40.2%が頭金なしでマイホームを購入しています。とくに30代は、頭金ゼロまたは1割と回答した方が68.6%を占める結果となりました。
※出典:三井住友トラスト・資産のミライ研究所「令和の“住まい”と住宅ローン事情」
調査結果をもとに考えると、マイホームを購入する際に頭金を入れないまたは少額である方はさほど珍しくないといえます。
頭金なしで住宅ローンを組むメリット

頭金なしで住宅ローンを組むことには、下記3点のメリットがあります。
- すぐに住まいを購入できる
- 住宅ローン減税の減税額が上がることがある
- 手元に資金を残せる
メリットを1つずつみていきましょう。
すぐに住まいを購入できる
頭金を入れる場合、目標とする金額が貯まるまでに時間がかかり、マイホームの購入が先延ばしになる可能性があります。
たとえば、500万円の頭金を準備するために毎月10万円ずつ貯蓄すると4年以上かかる計算です。
フルローンを組む場合、頭金を貯める必要がないため、立地や間取りなどが希望に合うマイホームを見つけたあとすぐに購入することができます。
「子どもが小学校に進学する前に引っ越しを済ませたい」「気に入った物件が見つかったので先を越される前に購入したい」などの理由で、タイミングを重視する方は頭金を入れずに購入するのも1つの方法です。
住宅ローン減税の控除額が上がることも
住宅ローン減税は、住宅ローンを組む人の税金を優遇する制度です。所定の要件を満たすと「年末時点のローン残高×0.7%」で計算される金額を所得税と控除対象の住民税から差し引くことができます。
たとえば、年末時点のローン残高が2,000万円の場合、減税される金額は最大で「2,000万円×0.7%=14万円」です。
フルローンを組む場合、頭金を入れるときよりも借入総額が増えます。その結果、年末時点のローン残高が高くなり、減税額が増えて節税効果を高められる可能性があります。
・「住宅ローン減税」に関する記事はこちら
【2024年度版】住宅ローンの控除の条件は?申請方法や注意点まとめ
手元に資金を残せる
頭金を入れずに住宅ローンを組むと、まとまった資金が手元に残り、マイホーム購入時の引っ越し費用や家具・家電の購入費用などを準備しやすくなります。
また「重い病気で医療費の支払いが必要になった」「家電の故障で買い替えが必要になった」「失業で収入が一時的に途絶えた」などの事態にも対処しやすくなるでしょう。
子どもの進学や自動車の購入・買い換え、老後生活など、まとまった資金が必要になることの多いライフイベントにも備えやすくなります。
後悔する? 頭金なしで住宅ローンを組むデメリット
フルローンを組むことには、下記3点のデメリットがあります。
- 審査に通りにくくなる
- 返済額が多くなる
- オーバーローンで売れなくなるリスクがある
具体的なデメリットをみていきましょう。
審査に通りにくくなる
住宅ローンを借りるときは、金融機関の審査に通過する必要があります。審査では、申し込んだ人の年収や勤続年数、他の借入状況、物件の担保価値などが確認されます。
また、申し込んだ人の年収に占める年間返済額の割合(返済負担率)も重要な審査項目の1つです。
頭金がゼロであると、住宅ローンの借入額が増えることで、返済負担率が金融機関の定める基準を超えやすくなります。
その結果、審査に通過できなくなる場合や金融機関から提示される借入金額が希望に満たなくなる場合があります。
・「住宅ローンの審査」に関する記事はこちら
住宅ローンの審査が通らない人の特徴は?通らない場合の対策も紹介
返済額が多くなる
頭金を入れないと借入総額が増えるため、毎月の返済額が高くなって家計が圧迫されやすくなります。
住宅ローンの返済期間は、20年や30年など長期にわたるのが一般的であるため、返済の途中でライフイベントが起こり家計の収支が変化することがあります。
借入当初は返済負担に問題がなかったとしても「子どもが成長して毎月の支出が増えた」「転職して収入が減った」などが起こることで、返済が苦しくなるかもしれません。
金融機関によっては、フルローンを組む場合、頭金を2割ほど入れたときに比べて借入金利が高くなり返済額が増えることがあります。
全期間固定金利型の住宅ローンである「フラット35」では、融資金額が物件価格の9割を超えると借入金利が高くなります。
「オーバーローン」で売れなくなるリスクも
オーバーローンとは、売却価格よりもローン残高のほうが高い状態のことです。
住宅を売却するときは、原則として住宅ローンを一括返済しなければなりません。
頭金を入れずに住宅ローンを組むと、売却代金でローンを完済できずに売れなくなるリスクが高まります。
「急に転勤が決まった」「親の介護を手伝うことになった」などの事情で家を売るとき、オーバーローンの状態だと手持ち資金で差額の補填が必要です。
差額が補填できない場合は、家を売ろうにも売れず身動きが取れなくなるかもしれません。
・「オーバーローン」に関する記事はこちら
オーバーローンとは?住宅ローンと財産分与のトラブル解決方法を解説
後悔せずに住宅ローンを組むにはどうすればいい?
最後に、マイホームの購入後に後悔しないようにするために押さえておきたいポイントを解説します。
ライフプランを想定して借入額・期間・金利を決める
住宅ローンの借入額や返済期間、金利を決めるときは、家の購入後に起こりうるライフイベントも考慮することが大切です。
たとえば、マイホームの購入後に子どもを産んで育てたいと考えている場合は、教育費や生活費が増えることを見越して借入額を決めるのが良いといえます。
子育てが終わるまで返済負担が上昇するリスクを負いたくない場合は、借り入れから5年や10年などの一定期間は金利が固定される固定期間選択型を選ぶのも1つの方法です。
返済期間を決めるときは、老後生活が1つの基準となります。セカンドライフが住宅ローンの返済で苦しくなる事態を避けたい場合は「老後生活が始まる年齢-現在の年齢」を基準に返済期間を決めると良いでしょう。
住宅ローンの返済は長期にわたりやすいため、マイホームを購入したあとのライフプランを考えて無理のない返済計画を立てることが重要です。
購入時の諸費用やランニングコストも考慮する
住宅を購入する際は、仲介手数料や登記費用、住宅ローンの融資事務手数料などの諸費用がかかります。また、引っ越し費用や家具・家電の購入費用などもかかるでしょう。
マイホームに住み始めたあとは、固定資産税の他、エリアによっては都市計画税も納める必要があります。
マンションの場合は、管理費や修繕積立金、駐車場代、戸建てであれば建物や設備などの修繕・メンテナンス費用がかかります。
頭金なしで住宅ローンを組む場合でも、諸費用やランニングコストも考慮して現実的な資金計画を立てることが大切です。
・「住宅購入の諸費用」に関する記事はこちら
住宅購入にかかる諸費用ってどのぐらい?
必要に応じて繰り上げ返済も検討する
住宅ローンの返済中に余裕資金で繰り上げ返済をすると、残りの元金が減るため、支払う利息の総額を減らすことができます。
また、毎月の返済額を軽減したり返済期間を短くしたりすることも可能です。
購入時に頭金を入れないのであれば、まとまった余裕資金ができたときに繰り上げ返済をして、元金を減らすのも1つの方法です。
まとめ
頭金なしで住宅ローンを組むことは「早くマイホームを購入できる」「いざというときの現金を残せる」などのメリットがあります。一方で「毎月の返済額が増える」「審査が厳しくなる」などのデメリットがあることも見逃せません。
後悔しないようにするためには、今後のライフプランや諸費用、ランニングコストを踏まえて慎重に返済計画を立てたうえで借り入れをすることが大切です。また、定期的に繰り上げ返済をして元金を減らすのも良いでしょう。
この記事のポイント
- 頭金がないのですが、住宅ローンを組むことは可能でしょうか?
ひと昔前は「マイホームを購入するときは2割程度の頭金が必要」といわれていましたが、頭金を入れなくても住宅ローンを組んでマイホームを購入できる可能性はあります。
詳しくは「頭金なしで住宅ローンを組むことはできるのか」をご覧ください。
- 頭金なしで住宅ローンを組むメリットはありますか?
「すぐに住まいを購入できる」「住宅ローン減税の減税額が上がることがある」「手元に資金を残せる」などのメリットがあります。
詳しくは「頭金なしで住宅ローンを組むメリット」をご覧ください。
- 頭金なしで住宅ローンを組むデメリットはありますか?
「審査に通りにくくなる」「返済額が多くなる」「オーバーローンで売れなくなるリスクがある」などのデメリットがあります。
詳しくは「後悔する? 頭金なしで住宅ローンを組むデメリット」をご覧ください。
ライターからのワンポイントアドバイス
フルローンを組むと、途中で返済が苦しくなったりオーバーローンで家が売れなくなったりするリスクが高まります。一方、頭金を準備しないのであれば、返済期間を長く設定しやすく、老後生活が始まるまでに住宅ローンを完済しやすくもなります。頭金なしで住宅ローンを組むことが決して悪いわけではありません。不動産会社や金融機関の担当者とも相談し、マイホーム購入後の人生計画もよく考えて無理のない返済計画を立てることで、リスクを抑えながら理想の住まいを手に入れられるでしょう。

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