老朽化,マンション,建て替え,立ち退き
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老朽化したマンションはどうなる?建て替え・立ち退きなど行く末を解説

執筆者プロフィール

悠木まちゃ
宅地建物取引士

ライター・編集者。ハウスメーカー勤務時に、新築戸建て住宅のほか、事務所建築や賃貸アパートの営業・設計を経験。
その後、2019年よりフリーライター・編集者として活動を開始。実務経験を活かし、不動産・金融系を中心に執筆から編集まで行う。ブックライターとしても活動するほか、ライター向けオンラインサロンの講師も担当している。

ざっくり要約!

  • 老朽化したマンションにおける主な選択肢は、更新・解体・建て替えの3つです。
  • マンションの法定耐用年数は47年ですが、適切な修繕により、築50年以上でも住み続けることが可能です。
  • 高経年マンションを購入する場合のチェックポイントは、耐震性や管理体制、資産価値です。

近年、日本では老朽化が進むマンションが増え、建て替えや大規模修繕の必要性が高まっています。築年数の古いマンションを検討する際に、そうした老朽化によるリスクを懸念する方も少なくないでしょう。

本記事では、老朽化したマンションが抱える問題点や建物の寿命、購入時に確認すべきポイントについて解説します。中古マンションの購入を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

老朽化したマンションが増加している!

老朽化したマンション
出典:国土交通省|マンション政策の現状と課題

近年、築年数の経過したマンションが増加傾向にあります。国土交通省の報告によれば、2018年時点で築40年を超えるマンションは約81.4万戸存在し、2028年には約197.8万戸、2038年には約366.8万戸に達すると予測されています。

老朽化マンションの増加は、社会的な課題となっています。

老朽化したマンションの問題は?

老朽化したマンションは、建物の劣化や居住者の高齢化など、さまざまな問題を抱えることが多くなります。まずは、これらの問題を見ていきましょう。

2つの老い

老朽化したマンションでは、建物自体の劣化とともに居住者の高齢化という「2つの老い」が生じます。建物の劣化としては、外壁の剥落や鉄筋の露出、給排水管の腐食などが挙げられ、居住者の安全や生活品質に影響を及ぼします。

一方、居住者の高齢化では管理組合の運営が困難になるケースも見られます。

修繕積立金の不足

多くのマンションで、修繕積立金の不足が深刻な問題となっています。国土交通省の調査によると、長期修繕計画に対して実際の積立額が20%以上不足しているマンションは全体の11.7%に上ります。

積立金不足の原因として考えられるのは、当初の積立金設定が低すぎたことや、経年劣化による予想外の修繕費用の増加などです。結果として、必要な修繕が行えず、建物の老朽化がさらに進行する可能性があります。
参考:国土交通省|令和5年度マンション総合調査結果からみたマンションの居住と管理の現状

やがて「限界マンション」に

適切な修繕や管理が行われないまま老朽化が進行すると、マンションは「限界マンション」と呼ばれる状態に陥ることがあります。限界マンションとは、建物の劣化が著しく、維持管理が難しい状態のマンションのことです。

外壁の落下や設備の故障、耐震性の低下などが挙げられ、建物の使用継続が困難となることもあります。

マンションの寿命はどれくらい?

マンションの老朽化について考える際、理解しておきたいのは法定耐用年数と寿命の関係です。

法定耐用年数は47年

マンションの法定耐用年数は、鉄筋コンクリート造(RC造)や鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)の場合、47年と定められています。

法定耐用年数とは、建物の資産価値が会計上でゼロになるまでの期間を示す数値です。国税庁が定めた基準であり、主に減価償却費の計算に用いられます。木造の法定耐用年数は22年、鉄骨造は34年となっています。

「法定耐用年数=寿命」ではない

法定耐用年数は税務上の指標であり、マンションの実際の寿命を示すものではありません。

国土交通省の資料によると、鉄筋コンクリート造の建物の物理的寿命は100年超とされています。適切なメンテナンスが行われれば、法定耐用年数をはるかに超えて使用できる可能性があるということです。

築50年以上のマンションでも、大規模修繕や設備の更新を適切に行うことで、快適に住み続けられている例も見られます。マンションの実際の寿命は、建物の構造や施工品質、日々の管理状態、大規模修繕の実施状況など、様々な要因によって左右されます。

法定耐用年数を過ぎたからといって、すぐに住めなくなるわけではありません。

建て替えられたマンションの平均は築約40年

マンションの寿命は管理状況に左右されるため一概にいえませんが、実際に建て替えられる物件の平均築年数はおよそ40年程度であることがわかっています。

例えば、東京カンテイの調査によると、建て替えが最も多かったのは「築40年以上50年未満」のマンションで、全体の34.4%を占めました。

8年前の同様の調査では「築30年以上40年未満」の割合が最も高かったことから、近年は建て替えまでの期間が延びる傾向にあることがわかります。さらに、築50年以上が経過した物件の建て替え事例も増えており、マンションの長寿命化が進んでいるといえるでしょう。

老朽化したマンションの行く末は更新・解体・建て替えの3つ

老朽化,マンション

老朽化が進行したマンションにおいて、住民が検討すべき主な選択肢として「更新」「解体」「建て替え」の3つがあります。

更新

マンションの更新とは、老朽化した部分を修繕・改修することで、建物の機能や性能を向上させることを指します。外壁の塗り替え、設備の交換、耐震補強などが含まれます。

更新のメリットは、比較的低コストで建物の寿命を延ばせることや、住民が住み続けられることです。一方、デメリットとしては、根本的な問題解決には限界があることや、将来的に大規模な修繕が必要になる可能性がある点が挙げられます。

更新を選択する場合は、修繕計画や修繕積立金の状況が適切であるかを確認することが重要です。

解体

解体は、老朽化したマンションを取り壊し、更地にする選択肢です。解体を選択するケースとしては、建物の安全性が著しく低下している場合や、修繕・改修のコストが高すぎる場合などが挙げられます。

解体のメリットは、老朽化による安全性の懸念を完全に排除できる点です。

一方、デメリットとしては、住民が転居を余儀なくされることや、解体費用の負担が生じることが挙げられます。また、解体には住民の合意形成が必要であり、手続きが複雑になる場合もあります。

建て替え

老朽化した建物を取り壊し、同じ場所にマンションを建て替えるのも選択肢のひとつです。建て替えのメリットは、最新の建築基準に適合した安全な住環境を得られることや、資産価値の向上が期待できることです。

一方、デメリットとしては高額な費用負担や、工事期間中の仮住まいの確保が必要なことが挙げられます。さらに住民間の合意形成の難しさもあります。建て替えを実施するためには、区分所有者の5分の4以上の賛成が必要です。

老朽化したマンションを購入するときに見るべきポイント

高経年の中古マンションを購入する際に注意すべき点は、耐震性、資産性、管理状況の3点です。この3つをチェックすることで、将来的なトラブルを回避しやすくなります。

耐震性

築年数が経った中古マンションを購入する際、重要なポイントのひとつが耐震性です。1981年5月31日以前に建築申請された建物は旧耐震基準に基づいており、現代の基準を満たしていない場合があります。

一方、耐震性が確保されている物件であれば、安心して暮らすことができ、将来的な資産価値の維持にもつながります。

耐震性をチェックするには、専門家に耐震診断を依頼する方法があります。管理組合や不動産会社に過去の耐震診断結果や補強工事の記録を請求することも有効です。

資産性

築年数が経った中古マンションであっても、資産性の高い物件であれば、長期的な資産価値の維持や、場合によっては値上がりも期待できます。一方、資産性の低い物件を購入してしまうと、将来売却した際に損失を被るかもしれません。

資産性をチェックする際は、立地条件、周辺の開発状況、物件の希少性などを総合的に評価します。また、近隣の類似物件の価格動向を把握することも大切です。国土交通省や不動産会社が提供する不動産価格情報サービスで確認しましょう。

管理

適切に管理されているマンションは、築年数が経っても快適に暮らすことができ、資産価値も維持されやすいです。一方、管理状況が悪い物件は、将来的に高額な修繕費用が必要になる可能性が考えられます。

管理状況をチェックするには、管理組合の議事録や修繕計画書の確認、管理会社への問い合わせなどの方法があります。

大規模修繕が適切に実施されているか、修繕積立金が十分に積み立てられているか、管理組合の総会や理事会が開催されているかなどをチェックしましょう。共用部分の清掃状態や設備の稼働状況を実際に見て回るのもおすすめです。

まとめ

老朽化したマンションには、設備の劣化や修繕積立金の不足、耐震性の不安といった問題が生じる可能性があります。

しかし、鉄筋コンクリート造の建物の物理的寿命は100年超ともいわれ、実際に築50年以上の物件でも、大規模修繕や設備の更新を適切に行うことで、快適に住み続けられている例も見られます。

高経年マンションを購入する際は、耐震性、資産性、管理状況を重点的にチェックすることが重要です。物件の現状と将来性を十分に見極め、長期的に満足できる住まいを手に入れましょう。

この記事のポイント

老朽化したマンションにはどのような問題がありますか?

老朽化したマンションは、建物の劣化や居住者の高齢化など、さまざまな問題を抱えることが多くなります。

詳しくは「老朽化したマンションの問題は?」をご覧ください。

マンションの寿命はどのくらいですか?

マンションの老朽化について考える際、理解しておきたいのは法定耐用年数と寿命の関係です。

詳しくは「マンションの寿命はどれくらい?」をご覧ください。

老朽化したマンションはどうなりますか?

老朽化が進行したマンションにおいて、住民が検討すべき主な選択肢として「更新」「解体」「建て替え」の3つがあります。

詳しくは「老朽化したマンションの行く末は更新・解体・建て替えの3つ」をご覧ください。

ライターからのワンポイントアドバイス

高経年のマンションを検討する際は、建物の外観や内装だけでなく、立地や周辺環境による将来性も考慮することが大切です。たとえば再開発計画がある地域では、将来的に資産価値が上昇する可能性が見込めます。一方で、過疎化が進む地域では、価値の低下や維持管理が困難になるリスクも考えられます。さまざまな要素を総合的に判断することで、築年数が古くても価値のある物件を見つけることができるでしょう。

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