ざっくり要約!
- 住宅ローンの月々の返済額を決める際には「月々の収支から考える」「現在の家賃を目安にする」「返済負担率をもとにする」などの方法がある
- 住宅ローンの月々の借入額を決めるときには「家庭の収支が変わる可能性を考慮する」「融資率と金利について把握しておく」などの注意点がある
結婚・出産や転職など、人生のターニングポイントを迎える際、マイホームの購入を検討する方は多いと思います。その際には、住宅ローンを組む方が大半かと思いますが、月々の返済額がどうなるのか不安に感じることもあるのではないでしょうか。今回は、住宅ローンを組んでマイホームを購入することを検討しているものの、返済額や借入額の決め方がわからない方に向けて、住宅ローンを組む際の考え方や注意点についてご説明します。
記事サマリー
住宅ローンの月々の返済額の考え方
まずは住宅ローンの月々の返済額の考え方についてそれぞれ説明していきます。
月々の返済額をどのくらいにしたいか、人によって許容できる額はそれぞれですが、主に以下の3つの考え方があります。
月々の収支から考える
無理なく住宅ローンを返済していくには、収入と支出のバランスを考え、月々の返済額を決めていくことが大切です。
1つ目の考え方として「月々の収支から考える」という方法があります。毎月の収入と支出をもとに、どれくらいの金額までローン返済額に回せるのか、住宅にかける金額とその他の生活費にかける金額がどれくらいであれば負担感なく生活できるのかを考えます。日頃から家計簿などをつけていて、月々の収支のバランスがわかっている方におすすめです。
収支がはっきりわからない場合でも、月収と毎月の出費がある程度わかっていれば、大体の返済額を決める判断材料にすることができます。
現在の家賃を目安にする
2つ目の考え方として「現在の家賃を目安にする」という方法があります。一般的に、この考え方でローン返済額を決める方が多いのではないでしょうか。現在、家賃が月10万円の家に住んでいる場合、返済額が同じくらいであれば住宅ローンを組んだ後の生活が想像しやすいでしょう。
ただし、マイホームを購入した場合、固定資産税や都市計画税を毎年支払う必要があります。物件価格や所在地によっては大きな額の税金を毎年納める必要があることを念頭においてください。また、マンションの場合は毎月、管理費・修繕積立金が発生し、その金額が増える可能性があるため、その点も踏まえた上で検討したほうが良いでしょう。
返済負担率をもとにする
3つ目の考え方は「返済負担率をもとにする」という方法です。返済負担率とは、年収に占める年間返済額の割合を指し、具体的な計算式は以下の通りです。
返済負担率=年間返済額/年収
年収に比較して年間返済額を高く設定してしまうと、返済負担率が上がってしまいます。
なお、返済負担率は金融機関が審査する際、債務者が無理なく返済し続けられるのかどうかをチェックするため、ある程度の基準値が設けられています。
金融機関によって具体的な数値は異なりますが、一般的な目安は「年収400万未満であれば返済負担率30%以下、年収400万円以上であれば35%以下」が基準とされています。
年収が低いほど金融機関が求める返済負担率は低めとなっています。返済負担率を少しでも超すと審査が通らないということはありませんが、年収に対して明らかに返済負担率が大きいと、返済能力がないと判断される可能性があります。
返済期間別・住宅ローンの月々の返済額シミュレーション
住宅ローンの返済額の決め方についてお話したところで、月々の返済額について具体的な数字を用いて計算してみましょう。
今回は、以下の条件で住宅ローンを組んだ場合の月々の返済額シミュレーションについて考えていきます(シミュレーターによって多少の誤差が生じます)。
- 不動産価格5,000万円
- 固定金利1.2%
- 元利均等返済方式
- ボーナスにおける返済割合0%
15年
返済期間を15年と設定した場合、返済回数は180回となります。月々の返済額は30万3,665円(最後の月で金額を合わせるため微調整される場合があります)、返済総額は5465万9,855円となり、利息分は465万9,855円です。
ローンの返済額に管理費や修繕積立金は含まれていないため、区分マンション等を購入した場合、30万3,665円に加えて管理費・修繕積立金を支払う必要があります。
25年
返済期間を25年と設定した場合、返済回数は300回となります。月々の返済額は19万2,997円で、返済総額は5789万9,248円、利息分は789万9,248円です。
返済期間を15年と設定した場合と比べて月々の返済が約11万円少なくなるため、家計への負担は少なくなります。対して返済総額を見ると、15年の場合よりも長く利息が発生し、300万円以上多く支払うこととなります。
35年
返済期間を35年と設定した場合、返済回数は420回となります。月々の返済額は14万5,851円で、返済総額は6125万7,479円、利息分は1125万7,479円です。
上記した2つの返済期間と比べると、月々の返済額が15万円弱と、かなり抑えられていることがわかります。
もちろん収入によって返済可能額は大きく変わるため一概には言えませんが、35年ローンを組んだ場合の月々の返済額がもっとも一般的だと言えます。
返済期間が長い分、利息が大きくなっているため、支払う利息を抑えたい場合は計画的に繰り上げ返済をおこなうことが効果的です。ちなみに、ほとんどの金融機関は繰上返済の手数料が無料です。
住宅ローンの月々の借入額を決めるときの注意点
マイホームを購入する際、家の住み心地や広さなどにこだわるのはもちろんですが、住宅ローンの借入額に関してもよく検討すべきでしょう。その際、注意点がいくつかあります。
家庭の収支が変わる可能性を考慮する
借入額を決める際には、転職等による収入の増減やライフスタイルの変化などによって、家庭の収支が大きく変わる可能性も視野に入れておく必要があります。
現在の収入から計算した最大限の借入額で家を購入した場合、収入が減ると一気に家計のバランスが崩れてしまうため、ある程度余裕を持った金額設定でローンを組むのが良いでしょう。
融資率と金利について把握しておく
融資率とは物件価格に占めるローン借入額の比率です。融資率が高いと返済リスクが高いと金融機関に認識されるため、返済に適用される利率が異なってきます。例えば、「フラット35」などでは、融資率が9割以上か、以下かで適用利率が異なってきます。
また、住宅ローンを借りる際に知っておきたいのが金利の種類についてです。
金利は「変動型」「固定期間選択型」「全期間固定型」の3つに分けられ、それぞれメリットとデメリットがあります。
変動型金利
変動型の金利とは、その名の通り市場金利の変化に伴って変動する金利を指します。
変動型金利のメリットは、他のタイプの金利よりも利率が低く設定されているため、返済額を抑えられる点です。半年ごとに利率が見直されるため、市場金利によっては返済額が増えたり減ったりします。そのため、長期的な返済計画を立てにくいというデメリットがあります。
なお、変動金利には激変緩和措置が設けられており、当初5年間は金利が変わらず、その後も前回の返済額の25%増が上限となっています。
固定期間選択型金利
続いて固定期間選択型の金利とは、3年・5年などの期間を決め、一定期間の金利を固定するという方法です。基本的に固定期間が長いほど金利が高くなる傾向にあります。
固定期間選択型金利のメリットは、決められた期間中は金利が変わらないため安心感がある点と、期間が終了したら金利タイプを見直すことができる点です。返済中に市場金利が下がった場合、期間終了後によりお得なプランを選択することが可能です。
デメリットとしては、大幅な金利変動に弱い点があげられます。期間中に市場金利が上がると、期間終了後に再度返済プランを見直す必要があるため、全期間固定型よりも安定性に欠けると言えるでしょう。固定金利は長期金利と連動しているため、長期金利の利上げのタイミングで金利が上がります。
全期間固定型金利
まず全期間固定型の金利の場合、住宅ローンを組んでいる間、金利が常に一定で、毎月の返済額が変化しないという特徴があります。代表的なものとして「フラット35」があげられます。
全期間固定型のメリットは、返済額が変わらないため長期的なライフプランを立てやすい点です。景気の波の影響を受けないため家計管理がしやすく、借り入れ時に返済の見通しがつくというのも利点と言えます。
一方でデメリットとして、他の金利よりも利率が高い点が挙げられます。また、市場金利が上がっても影響を受けませんが、逆に下がった場合でも金利が変わらないため、変動金利などと比べると多く金利を支払わなくてはならない可能性があります。
頭金と貯蓄のバランスを考える
契約時に支払う頭金と、ご自身の貯蓄とのバランスをしっかり考えることも大切です。一般的には、物件価格の10~20%の頭金を入れることが、リスクヘッジになるとされます。頭金を多く入れるとその分借入額が減るため、月々の返済額を抑えることができます。
とはいえ、貯蓄のほとんどを頭金に入れてしまうのは危険です。貯蓄がほとんどないまま物件を購入し、急な出費やトラブルなどに対応できなくなるケースも多いので、目安として半年の支出分以上は貯蓄として残しておくことをおすすめします。
逆に、最近は頭金なしで家を購入する方も増えている傾向にあります。頭金を貯めるために賃貸の家に住み続けるのはもったいないと考え、頭金なし、または少額の頭金で購入する方法です。
ただし、返済額には物件価格だけでなく諸費用も含まれています。そのため、借入額が物件の資産価値を超えてしまう「オーバーローン」状態になり、万が一すぐ売却しなければいけなくなった場合、残債が売却価格を超えてしまう恐れがあります。頭金なしのマイホーム購入を検討されている方は、こうした可能性を考慮に入れた上で計画を立てるのが良いでしょう。
ボーナス払いの併用も検討する
住宅ローンにボーナス払いを併用することで、月々の返済額が抑えられるので、毎月の出費が多い方は検討すると良いでしょう。
ただし、ボーナスは会社の業績で変動しますので、ボーナス払いの比率を大きくしてしまうと家計を圧迫してしまいます。また、年に2回分返済回数が増えることで、利息及び総返済額が増えてしまいますのでご注意ください。
この記事のポイント
- 「不動産価格5,000万円、固定金利1.2%、元利均等返済方式、ボーナスにおける返済割合0%」で住宅ローンを組んだ場合、月々の返済額シミュレーションは?
返済期間を35年と設定した場合、返済回数は420回となります。月々の返済額は14万5,851円で、返済総額は6125万7,479円、利息分は1125万7,479円です。
詳しくは「返済期間別・住宅ローンの月々の返済額シミュレーション」をご覧ください。
- 住宅ローンの月々の借入額を決めるときの注意点は?
借入額を決める際には、転職等による収入の増減やライフスタイルの変化などによって、家庭の収支が大きく変わる可能性も視野に入れておく必要があります。
現在の収入から計算した最大限の借入額で家を購入した場合、収入が減ると一気に家計のバランスが崩れてしまうため、ある程度余裕を持った金額設定でローンを組むのが良いでしょう。
その他にもいくつか注意点があります。
詳しくは「住宅ローンの月々の借入額を決めるときの注意点」をご覧ください。
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