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山の売却相場は?査定や税金の注意点も紹介

執筆者プロフィール

竹内 英二
不動産鑑定士

不動産鑑定事務所および宅地建物取引業者である(株)グロープロフィットの代表取締役。不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、住宅ローンアドバイザー、中小企業診断士の資格を保有。

ざっくり要約!

  • 山の相場は種類や場所により異なるものの、宅地の平均価格の約94分の1程度またはそれ以下になることがある
  • 山を売却するには、所有者を明確にした上で現在の売主に登記簿の名義変更を行うことが必要

山林は取引事例も少なく、事例があったとしても個別性がかなり強いことから、相場が把握しにくいことが特徴です。

山を売却したいと考えている人は、相場はどれくらいか気になっている方も多いのではないでしょうか。

また、山林の売却では林業を行っている場合と行っていない場合では、生じる税金も異なります。山林の売却においては、税金に関してもある程度知っておくことが必要です。
この記事では、「山の売却」について解説します。

山の売却相場【種類別】

山の売却相場を解説します。山林の相場は地域によっても異なりますが、ここではすべての山の種類がそろっている石川県の相場を紹介します。

参考までに、2022年の都道府県地価調査における石川県の宅地の全用途の平均価格は「66,200円/平米」です。

出典:石川県企画振興部|令和4年度石川県地価調査のあらまし

都市近隣林地

都市近隣林地とは、市街地的形態をしている地域の近郊にある地域内の林地のことです。
2022年における石川県の都市近郊林地は「石川(林)-4」が920円/平米、「石川(林)-2」が495円/平米となっています。

920円/平米と495円/平米を平均すると、707.5円/平米です。
都市近隣林地の平均価格である707.5円/平米は、宅地の平均価格の66,200円/平米に対し約94分の1程度の価格になります。

農村林地

農村林地とは、農村集落の周辺に位置する里林地に属する林地のことです。
2022年における石川県の農村林地は「石川(林)-1」が270円/平米、「石川(林)-5」が109円/平米となっています。

270円/平米と109円/平米を平均すると、189.5円/平米です。
農村林地の平均価格である189.5円/平米は、宅地の平均価格の66,200円/平米に対し約349分の1程度の価格になります。

林業本場林地

林業本場林地とは、林業の中心にある地域又は地方の有名林業地のことです。
2022年における石川県の林業本場林地は「石川(林)-3」が47.5円/平米となっています。

林業本場林地の47.5円/平米は、宅地の平均価格の66,200円/平米に対し約1,394分の1程度の価格です。

山村奥地林地

山村奥地林地とは、交通機関から判断して最も不便な山村奥地に属する地域内の林地のことです。
2022年における石川県の山村奥地林地は「石川(林)-6」が14.3円/平米となっています。

山村奥地林地の14.3円/平米は、宅地の平均価格の66,200円/平米に対し約4,629分の1程度の価格です。

山の売却前に必要な準備

山の売却前に必要な準備について解説します。

所有者や土地について確認する

相続で未登記のままになっている山林等では、所有者が明確になっていないことがあります。
山林を売却するには、所有者を明確にした上で現在の売主に登記簿の名義変更を行うことが必要です。

また、山林は固定資産税がかかっていないことも多いため、所有しているにも関わらず、本人に所有の意識がないこともあります。
親族等に所有の範囲を確認し、対象地を明確にすることも必要です。

境界をある程度示せるようにしておく

山林は境界が不明瞭となっていることも多いです。
山林は公簿取引が多いため、売却前に実測して境界確定までする必要はありません。
公簿取引とは登記簿謄本の面積に基づき取引することで、実測精算をしない取引のことを指します。

ただし、地図や現地で「ここの尾根からここの谷まで」という感じで、境界はある程度示せるようにしておくことが望ましいです。

可能な範囲で手入れしておく

売買では、買主が現地を確認できるように可能な範囲で手入れをしておくことが適切といえます。
山林の入口部分を除草したり、不法投棄のゴミを処分したりしておくのが良いでしょう。

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山の売却・査定方法2つ

山を売る際の査定方法について解説します。

不動産会社に依頼

不動産会社に査定を依頼する場合、「森林計画図(林班図)」または「公図」を用意しておくのが適切といえます。
森林計画図とは森林のおよその場所を特定できる資料であり、都道府県の森林担当部署や都道府県のインターネットサービスで取得できます。
公図とは土地の地番ごとの形状を表した図面のことであり、法務局で取得可能です。

森林組合に相談

森林組合とは、林業を行っている森林所有者が出資して設立した協同組合のことです。
森林組合は林産物の加工や販売等を行っていますので、立木の価格の相談をすることができます。
林業を行っている山林において立木のままで山林を売った場合、立木の値段はいくらになるかといった相談ができます。

森林組合に相談する場合は、「森林簿」を用意しておくことが望ましいです。
森林簿は、森林の所在地や所有者、面積や森林の種類、材積や成長量が記載されている資料であり、所有者であれば都道府県の森林担当部署で取得できます。

山の売却時に必要な費用と税金

山の売却時に必要な費用と税金について解説します。

書類の交付手数料・仲介手数料

【書類の交付手数料】
売却には必須ではありませんが、売主自身で対象となる山を確認するには、以下のような資料が必要となります。

書類名取得先取得費用(書面請求)
登記簿謄本法務局600円
公図法務局450円
固定資産評価証明書市役所300円であることが多い

【仲介手数料】

不動産会社を通じて山林を売却すると、一般的には仲介手数料が生じます。
仲介手数料は宅地建物の取引に関しては不動産会社が受領できる上限額が決められていますが、山林は宅地ではないことから上限額の規定がありません。

しかしながら、山林の取引においても宅地と同じ仲介手数料が準用されるケースが多いです。
宅地の仲介手数料の上限額は、取引額に応じて決まっています。
参考までに宅地の仲介手数料の上限額を示すと、下表の通りです。

取引額仲介手数料(別途消費税)
800万円以下一律30万円
800万円超取引額の3%+6万円

ただし、宅地の仲介手数料は目安に過ぎないことから、不動産会社に依頼する際は事前に仲介手数料を確認することをおすすめします。

印紙税・譲渡所得税・山林所得税

【印紙税】

山林を含む不動産を売却したときは、書面で売買契約書を締結することが一般的です。
売買契約書は、印紙を貼らなければいけない課税文書となります。

印紙税の額は売買契約書に記載する山林の売買代金によって決まります。
売買代金と印紙税の関係は、下表の通りです。

売買契約書に記載する売買代金本則軽減税率※
1万円未満非課税
1万円以上10万円以下200円対象外
10万円超50万円以下400円200円
50万円超100万円以下1,000円500円
100万円超500万円以下2,000円1,000円
500万円超1,000万円以下10,000円5,000円
1,000万円超5,000万円以下20,000円10,000円
5,000万円超1億円以下60,000円30,000円
1億円超5億円以下100,000円60,000円
5億円超10億円以下200,000円160,000円
10億円超50億円以下400,000円320,000円
50億円超600,000円480,000円
契約金額の記載のないもの200円対象外
※2014年4月1日~2024年3月31日まで

【譲渡所得税】

個人の所得は、所得の種類に応じて給与所得や譲渡所得、山林所得、不動産所得、事業所得、雑所得、退職所得、利子所得、配当所得、一時所得の10種類に分類されます。

山林を土地として売却する際は、一般的な不動産を売却するときと同じ譲渡所得です。
いわゆる林業をやっていない人が単に山を売る場合は、譲渡所得に該当します。

譲渡所得税という税金はありませんが、譲渡所得が生じたときに発生する所得税や住民税、復興特別所得税を総称して譲渡所得税と呼ぶ人もいます。

譲渡所得とは売却益のことであり、以下の計算式で求められるものです。

譲渡所得 = 譲渡価額 - 取得費 - 譲渡費用

譲渡価額は売却価額、取得費は山林の購入額、譲渡費用は譲渡に直接要した費用(仲介手数料や印紙税)になります。

山林では、取得費がわからないことも多いです。
取得費が不明な場合には、概算取得費と呼ばれるものを用いて計算します。
概算取得は、「譲渡価額×5%」です。

概算取得費を用いた場合の譲渡所得は、以下のように計算されます。

譲渡所得 = 譲渡価額 - 譲渡価額×5% - 譲渡費用
     = 譲渡価額×95% - 譲渡費用

譲渡所得がプラスの場合、税金は以下の様に計算します。

税金 = 譲渡所得 × 税率

税率は山林の所有期間で異なり、長期譲渡所得と短期譲渡所得の2種類があります。
長期譲渡所得とは売却する年の1月1日時点において所有期間が5年超のときの税率、短期譲渡所得とは1月1日時点において所有期間が5年以下のときの税率です。
それぞれの税率は、下表のようになります。

所得の種類所有期間所得税率住民税率
短期譲渡所得5年以下30%9%
長期譲渡所得5年超15%5%

復興特別所得税の税率は、所得税に対して2.1%を乗じます。

相続で引き継いだ山林の所有期間は、親の所有期間も引き継ぎます。
親の所有期間が5年超であれば、相続後、すぐに売却しても長期譲渡所得です。

【山林所得税】

山林所得とは、所有期間が 5 年超の山林において、伐採し譲渡して得られる所得や立木のままで譲渡したことで得られる所得のことです。

林業を行っている人が山を売り、土地の部分とは別に立木に値段が付いている場合は、その立木の部分が山林所得に該当します。
山の土地の部分の値段に関しては、譲渡所得として計算されます。

山林所得の求め方は、以下の通りです。

山林所得 = 総収入金額 - 必要経費 - 特別控除額(最高50万円)

総収入金額は立木等の売却額、必要経費は植林費などの取得費のほか、下刈費などの育成費、維持管理費、伐採費、搬出費、仲介手数料等が該当します。

税金は、「5分5乗方式」と呼ばれる方法で計算されます。

山林所得の所得税額 = (山林所得 × 5分の1 × 税率) × 5

税率は「山林所得の5分の1」に乗じた額の所得税率を用いることになります。

この記事のポイント

山の売却前に必要な準備は?

山の売却前には、所有者や土地について確認する、境界をある程度示せるようにしておく、可能な範囲で手入れしておくことなどが必要です。

詳しくは「山の売却前に必要な準備」をご覧ください。

山の売却・査定方法にはどんなものがありますか?

山林売却を得意とする不動産会社に査定を依頼するか、森林組合に相談するといった方法があります。

査定依頼時や相談時に必要となる書類もあるので、事前に確認しておきましょう。

詳しくは「山の売却・査定方法2つ」をご覧ください。

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