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不動産売買の印紙代(印紙税)の金額は?軽減税率も解説

執筆者プロフィール

桜木 理恵
資格情報: Webライター、宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、管理業務主任者

大学在学中に宅地建物取引士に合格。新卒で大手不動産会社に入社し、売買仲介営業担当として約8年勤務。結婚・出産を機に大手ハウスメーカーのリフォームアドバイザーに転身し約5年勤務。その他信託銀行にて不動産事務として勤務経験あり。現在は不動産の知識と経験を活かし、フリーランスのWebライターとして活動。不動産や建築にまつわる記事を多数執筆。「宅地建物取引士」「2級ファイナンシャル・プランニング技能士」「管理業務主任者」所持。

ざっくり要約!

  • 不動産売買契約書は印紙税課税文書であり、契約金額に応じて印紙代がかかる
  • 2027年3月31日までに作成される不動産売買契約書で契約金額が10万円を超えるものは印紙税の軽減措置が適用となる

日常の生活の中で、印紙(収入印紙)を目にすることは少ないかもしれません。何となく「高額な買い物をしたときの領収書に貼ってある」というイメージを、持っている方が多いのではないでしょうか。

印紙税とは領収書や契約書など、印紙税法上の「課税文書」に対して課せられる税金で、印紙を貼って消印することによって納めます。

この記事では、そもそも印紙とはどのようなもので、またどのような文書に貼る必要があるのか解説します。

不動産売買における、印紙の取り扱いについての注意点や節税方法も紹介します。これから不動産の売買を控えている方はぜひ参考にしてください。

不動産売買の印紙代(印紙税)とは?

不動産売買契約書は、印紙税法上の課税文書です。不動産売買契約締結時にはその契約金額に応じた印紙を契約書に貼り、消印をすることによって税金を納めます。

印紙を貼らない、もしくは消印などをしない状態のままにすると罰金の対象になりますのでご注意ください。

不動産売買時の契約書などで必要

印紙税の対象となる課税文書には20種類の区分がありますが、そのなかでも代表的なのは、不動産売買契約書や工事請負契約書、金銭消費貸借契約書(ローン契約書)です。

課税文書に応じて印紙税額は異なります。後半でも紹介しますが、詳しくは「印紙税額の一覧表」をご参照ください。

出典: 印紙税額の一覧表|国税庁

収入印紙は郵便局や法務局の窓口などで購入できる

印紙は1円から10万円まで31種類あり、印紙税を納める額に応じて購入します。ちなみに切手と同じように、複数枚を貼ることもできます。

収入印紙を発行しているのは財務省ですが、法務局や郵便局などに販売を委託しています。収入印紙の種類を多く扱っており、ほぼすべての印紙を揃えているのは、法務局もしくは郵便局です。なお、法務局や郵便局での購入は平日のみになるので注意が必要です。

また「郵便切手販売所」もしくは「印紙売りさばき所」である、コンビニやたばこ屋でも購入することができます。しかし扱っている種類が少なく、200円の収入印紙しかないこともあります。直前に慌てることがないよう、前もって確認するようにしましょう。

少しでも安く手に入れたい場合は、金券ショップもおすすめです。しかし印紙は非課税ですが、金券ショップでは通常消費税が課税されています。経理上の勘定科目に違いがあるためご注意ください。

まとめると、印紙を扱っているおもな場所は以下の通りです。

  • 法務局
  • 郵便局
  • 役所
  • コンビニ
  • 金券ショップ
  • たばこ屋

不動産売買で印紙代が発生する書類

不動産売却の場面で、印紙代が発生する書類は以下の4つです。それぞれ詳しく紹介します。

① 不動産売買契約書
② 建築工事請負契約書
③ 金銭消費貸借書
④ 仲介手数料の領収書

不動産売買契約書

不動産売買契約書は印紙税課税文書です。記載された契約金額に応じて印紙税が定められています。2027年3月31日までに作成される不動産売買契約書については印紙税の軽減措置があります。詳しくは後半で説明いたします。

不動産譲渡に関する契約書に記載された契約金額通常の税率
10万円以下のもの200円
10万円を超え50万円以下のもの400円
50万円を超え100万円以下のもの1,000円
100万円を超え500万円以下のもの2,000円
500万円を超え1,000万円以下のもの1万円
1,000万円を超え5,000万円以下のもの2万円
5,000万円を超え1億円以下のもの6万円
1億円を超え5億円以下のもの10万円
5億を超え10億円以下のもの20万円
10億円を超え50億円以下のもの40万円
50億を超えるもの60万円

出典:印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで|国税庁

建築工事請負契約書

建設会社や工務店などへ建築工事を依頼する場合に締結する、工事請負契約書も印紙税課税文書です。

不動産売買契約書とは異なる第2号文書と定められており、印紙税額の税率が異なります。

なお工事請負契約書も軽減措置があり、2027年3月31日までに作成される文書については軽減税率が適用になります。軽減税率については、後述します。

工事請負契約書に記載された契約金額通常の税率軽減税率
100万円以下のもの200円―――
100万円を超え200万円以下のもの400円200円
200万円を超え300万円以下のもの1,000円500円
300万円を超え500万円以下のもの2,000円1,000円
500万円を超え1,000万円以下のもの1万円5,000円
1,000万円を超え5,000万円以下のもの2万円10,000円
5,000万円を超え1億円以下のもの6万円3万円
1億円を超え5億円以下のもの10万円6万円
※5億円超は省略

出典:不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置|国税庁

金銭消費貸借契約書(ローン契約)

住宅ローンを借り入れる場合には、金融機関と「金銭消費貸借契約」を締結しますが、このときの契約書も印紙税課税文書です。不動産売買契約書と同じ1号文書と定められており、納める印紙税額は同じです。

ただし、金銭消費貸借契約書については、不動産売買契約書や工事請負契約書とは異なり軽減措置はありません。たとえば3,000万円の借入れのケースは、印紙税額は2万円です。

金銭消費貸借契約書に記載された契約金額税率
10万円以下のもの200円
10万円を超え50万円以下のもの400円
50万円を超え100万円以下のもの1,000円
100万円を超え500万円以下のもの2,000円
500万円を超え1,000万円以下のもの1万円
1,000万円を超え5,000万円以下のもの2万円
5,000万円を超え1億円以下のもの6万円
※1億円超は省略

出典:印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで|国税庁

仲介手数料の領収書

不動産会社が発行する、仲介手数料の領収書も印紙税の課税対象となる書類です。不動産会社はその仲介手数料の金額に応じた印紙を貼り、消印をして納めます。

ちなみに個人である売主が不動産売却時に、買主へ発行する売買代金の領収書は、印紙税の課税文書にあたりません。営利目的であるか否かで判断されますので、個人であっても投資不動産の売却時や、不動産の売却を繰り返しているときは 課税されます。

不動産売買契約書・工事請負契約書の印紙代の軽減税率とは?

不動産売買契約書および工事請負契約書の印紙税額については、現在、税率が軽減されています。適用対象と条件について詳しく紹介します。

適用対象と条件

対象となるのは、2027年3月31日までに作成される不動産売買契約書および工事請負契約書です。不動産売買契約書については契約金額が10万円を超えるもの、工事請負契約書については請負金額が100万円を超えるものについて、印紙税の軽減措置 があります。それぞれ以下の通りです。

たとえば不動産売買契約の金額が5,000万円のケースで軽減税率が適用になる場合は、印紙税額が1万円になります。

不動産譲渡に関する契約書に記載された契約金額通常の税率軽減税率
10万円以下のもの200円―――
10万円を超え50万円以下のもの400円200円
50万円を超え100万円以下のもの1,000円500円
100万円を超え500万円以下のもの2,000円1,000円
500万円を超え1,000万円以下のもの1万円5,000円
1,000万円を超え5,000万円以下のもの2万円1万円
5,000万円を超え1億円以下のもの6万円3万円
1億円を超え5億円以下のもの10万円6万円
5億を超え10億円以下のもの20万円16万円
10億円を超え50億円以下のもの40万円32万円
50億を超えるもの60万円48万円

引用:不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置|国税庁
印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで|国税庁

不動産売買の印紙代にまつわるQ&A

最後に不動産売買の印紙代について、よくある質問4選 をQ&A形式で紹介します。

印紙代の負担者は売主・買主どちらになる?

不動産売買契約書は売主・買主それぞれが保有するために、2部作成するのが一般的です。そして売主・買主が平等に負担するのが通例で、それぞれ印紙を用意することになります。

ただし、売買契約書を1部のみ作成し、いずれか一方は写しや副本を保有するケースは注意が必要です。国税庁は写し(副本)であっても、契約の成立を証明するために作られたものであれば、印紙税の課税対象になるとしています 。

なお、1部作成の場合は、原本を保有する側が印紙代負担する場合が多いでしょう。ケースバイケースで、保有の関係なく売主、買主で折半することもあります。

出典:契約書の写し、副本謄本等|国税庁

収入印紙はどうやって貼る?

たとえば不動産売買価格が5,000万円の場合、印紙税額は1万円です。5,000円の印紙を2枚貼っても納税上は問題ありませんが、契約書のスペースを多く使うことになります。なるべく少ない枚数になるように準備しましょう。

印紙は切手と同じように裏面を水で濡らすと、その面がのりを塗ったような状態になります。もし水がない場合は、のりを塗って貼りましょう。

印紙を貼る位置は契約書の様式によって異なります。不動産会社の担当者に相談しましょう。もし複数枚貼る場合は並べて貼ります。

印紙を貼ったら、消印します。通常は実印を用いますが、2度と使わないようにできれば、認印やサインでも構いません。契約書と印紙に、印やサインがまたがるように消印(割り印)します。

万が一、印紙を貼らない、もしくは消印しないと、ペナルティとして本来納めるべき印紙税額の2倍を過怠税として徴収されます。つまり3倍の印紙税額を納めなければなりませんのでご注意ください。

収入印紙を貼り間違えたらはがしていい?

減税率があることを知らず、通常の印紙税額分の印紙を貼ってしまった場合は、過誤納金として還付を受けることができます。印紙ははがさず、まずはお近くの税務署へ契約書を持参のうえご相談ください。

また事前に契約書に印紙を貼ってしまったものの、契約自体が行われなかった場合も還付の対象になります。しかし契約後に解除や取り消しになった場合は、還付の対象外です。

手続きに必要なものは以下の通りです。

  • 収入印紙を多く貼り過ぎた売買契約書
  • 印鑑
  • 印紙税過誤納確認申請書(税務署で入手できます)

不動産取引の電子契約なら印紙代が節約できる?

2022年の宅建業法の改正により、不動産取引の電子契約が解禁になりました。電子契約とは、従来書面の交付が義務付けられていた売買契約書や重要事項説明書を用いることなく、オンライン上で契約を締結することです。署名押印ではなく、電子署名により締結します。

電子契約であれば印紙税は課税の対象になりません。したがって本来納めるべき印紙税を節約することができます。

ただし電子契約書をダウンロードし、売主・買主がその書面に署名押印した場合は、印紙税課税文書になります。

電子契約であっても、印紙を貼る必要がありますのでご注意ください。

この記事のポイント

不動産売買で印紙代が発生する書類にはどんなものがありますか?

不動産売買で印紙代が発生する書類は、不動産売買契約書、建築工事請負契約書、金銭消費貸借書、仲介手数料の領収書です。

詳しくは「不動産売買で印紙代が発生する書類」をご覧ください。

不動産売買の印紙代の負担者は売主・買主どちらになる?

不動産売買契約書は売主・買主それぞれが保有するために2部作成するのが一般的で、印紙代は売主・買主が平等に負担するのが通例です。

詳しくは「不動産売買の印紙代にまつわるQ&A」をご覧ください。

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