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不動産は個人売買できる?流れやトラブル例を紹介

執筆者プロフィール

竹内 英二
不動産鑑定士

不動産鑑定事務所および宅地建物取引業者である(株)グロープロフィットの代表取締役。不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、住宅ローンアドバイザー、中小企業診断士の資格を保有。

ざっくり要約!

  • 不動産の個人売買には仲介手数料がかからないなどのメリットがある
  • 不動産の個人売買には買主が見つかりにくく、売却価格が安くなる可能性があるなどのデメリットがある

不動産の個人売買は、親せきや友人、借家人、借地人、隣地所有者、関連会社等、売主と買主との間に一定の関係が存在する場合に、昔からよく行われています。

売主と買主がすでに決まっており、双方でトラブルを解決できる間柄である場合、または買主が物件のことをよく知っている場合には、わざわざ不動産会社を仲介に入れる必要はありません。

一方で、買主がまったく知らない第三者、もしくは物件のことをよく知らない人となる場合、不動産の個人売買はまだまだ難しい状況です。
まったく知らない第三者等への不動産の個人売買はできるのでしょうか?
この記事では、売主向けに「不動産の個人売買」について解説します。

不動産の個人売買の流れ

ここでは、買主がまったく知らない第三者、もしくは物件のことをよく知らない人であることを想定して、不動産の個人売買の流れを解説します。

1.家の売却相場を確認する

不動産を売る場合、いくらで売るかが最初の問題となります。安く売れば損をしますし、高く売りだせばなかなか売れません。
損をせず、確実に売却を成し遂げるには適正価格で売り出すことが必要であるため、値付けは結構難しいです。

マンションであれば、一般の方でもそれなりに妥当な価格を出せる可能性があります。同じマンション内で他の部屋が売りに出されていれば、物件チラシから単価を割り出し、自分の部屋の面積を乗じることで相応の適正価格にはなります。

一方で、戸建ては適正価格を出すことが難しいです。戸建ての場合、周辺の売り事例とは土地の面積や建物の築年数等が異なり、妥当な価格が推測しにくくなっています。

2.売却の事前準備を行う

売り出し価格を決めたら、売却の準備を行います。
具体的には、売主として物件の不具合を把握することが第一歩です。
空き家で売る場合には、家財道具等はすべて撤去し、きれいに掃除をしておくと物件の印象が良くなります。

3.買主を探す

売却の準備ができたら、買い主を探します。
最近では、コミュニティサイトを通じて物件を売りに出している事例が増えてきました。
インターネットの力によって、以前よりは買主を見つけやすくなったといえます。

不動産会社の仲介を通じて売却する場合には、本気で買いたいという購入希望者が現れたら、その人から買付証明書を受領することが一般的です。
個人売買でも、相手方の正式な意思を確認し、売買契約に向けてスムーズに移行させるためにも買付証明書は受領しておくことをおすすめします。

4.売買契約書を作成して売買契約を締結する

不動産は金額が大きく、売却後にトラブルとなる可能性もあることから、書面で売買契約を締結して売ることが通常です。

不動産の売買では、売買契約と引渡を別日で行うことが一般的となっています。
参考までに仲介による売買では、売買契約と引渡との間を1ヶ月程度空けることが通常です。

売買契約はあくまで書面で約束をするだけであり、所有権の移転と売買代金の受領は引渡日です。
不動産の売買では、売買契約と引渡との間に期間が空いてしまうことから、売買契約時に契約が成立した証として買主から手付金を受領することが一般的となっています。
手付金の相場は、売買代金の10%程度です。

手付金は引渡日まで特に何もなければ売買代金の一部として充当されます。
そのため、引渡日は手付金を除いた残金(売買代金の90%程度)が振り込まれる形です。

売買契約と引渡の間が空く場合は、その間に売主または買主の一方的な都合によって契約が解除される可能性があります。
手付金は、双方の一方的な都合で契約を解除する場合にも利用される金銭です。
買主から契約解除する場合には手付金を放棄し、売主から契約解除する場合には手付金の倍額を買主に支払うことになります。

手付金を安くすると安易に契約解除されやすくなるため、手付金は安くしないことが適切です。
売買代金の10%程度を手付金とすることで双方が解除しにくくなり、無事に引渡ができる確率が上がります。

5.物件の引き渡し

引渡日では、買主による残代金の支払いと所有権の移転を行います。
売買代金によって住宅ローンを返済する場合には、残代金の入金と同時に一括返済も行います。

仲介による売買では、引渡日に固定資産税等の精算を行うことが通常です。
固定資産税等の精算とは、引渡日以降の固定資産税等の実質的な負担を買主に移転するための調整になります。

具体的には売却年における固定資産税等の引渡日以降の日割り計算した額を、買主が売主へ支払います。固定資産税等の精算を行うかどうかは任意であり、実施すべきか否かは売主と買主が合意して決める事項です。

入金等がすべて確認できたら、最後に鍵を売主から買主へ渡して引渡は終了となります。
鍵はスペアキーや複製キーも含めて、すべて渡すことが必要です。

6.不動産の名義変更

引渡を終えたら、そのまま売主と買主で法務局に向かって所有権移転の登記手続きを行います。

抵当権が付いている物件の場合には、抵当権の抹消登記も必要です。抵当権とは、債権者(銀行)がその担保物件から優先的に弁済を受けることができる権利を指します。

法務局で登記を行う際は、登録免許税が発生します。

不動産の売買では、所有権移転の登記費用は買主、抵当権抹消の登記費用は売主が負担するというのが商習慣です。
あくまでも商習慣ですので、登記費用をどちらが負担すべきか双方で話し合って決めても構いません。

不動産の個人売買のメリット・デメリット

不動産の個人売買のメリットとデメリットを解説します。

メリット

・仲介手数料がかからない

個人売買は、仲介手数料がかからないという点がメリットです。
不動産会社に仲介してもらう場合の仲介手数料は、取引額が400万円超の場合には「取引額×3%+6万円」が上限額となります。

・自由な売り方ができる

個人売買は、自由な売り方ができる点がメリットです。
仲介による売買では、一般的に引渡時は家財道具道を一切撤去した状態にする必要があります。
一方で、個人売買は特に売り方に制限はないため、例えば家の中が片付いていない状態でも売りに出すことはできますし、家具を買主に引き取ってもらうような売り方もできます。

デメリット

・買主が見つかりにくい

個人売買の最大のデメリットは、買主が見つかりにくいという点です。
知人や親せきに売る場合は別ですが、まったくの第三者をゼロから見つけ出すことは難しいといえます。

買主が見つかりにくい理由としては、いくつかあります。

1つ目は、個人売買サイト等を使った売却方法は一般的ではないため、買主側の認知度が低く、多くの購入希望者の目に留まらないためです。
2つ目は、重要事項説明書等の住宅ローンの審査に必要な書類が揃わないことから、買主が住宅ローンを組みにくくなるからです。
3つ目は、不動産会社を介さない取引は買主がリスクを感じやすいためです。

不動産売買は金額が高額であり、建築可能な用途の制限等の一般の人が知らない制限もあることから、買主が不測の事態に陥りやすい商品といえます。
買主が安全に不動産を購入できるようにするために、不動産会社を介した場合は専門知識を有する宅地建物取引士が重要事項説明を行います。

このように不動産会社は買主も守る働きもあるため、不動産会社を入れないことは買主にとって大きなデメリットが生じることになり、売却しにくくなるのです。

・売却価格が安くなる可能性がある

買主が見つかりにくい個人売買では、不動産は売却しにくくなることから値下げも生じやすくなります。
ようやく現れた買主がさまざまな理由を付けて価格交渉をしてくる可能性もあり、相談できる不動産会社がいないと判断や対応がしにくいです。
場合によっては仲介手数料以上に値下げせざる得ないこともあり、結局のところ、不動産会社に依頼するよりも損をしてしまうこともあります。

・手間がかかる

個人売買では、売却方法を一から調べたり、売買契約書等も自分で作成したりするため、すべてにおいて手間がかかります。
法律の知識も必要であり、不安や疑問も誰にも相談できない点がデメリットです。

不動産の個人売買のトラブル例

不動産の個人売買のトラブル例について解説します。

登記手続きで不備があった

個人売買では自分たちで登記を行おうとすると、必要書類の不備等で登記ができないこともあります。
登記手続きは自分たちでもできないわけではありませんが、自力で行う場合には手続き方法を事前に法務局に確認しておくことが必要です。

また、個人売買でも、登記手続きだけは司法書士に任せることもあります。
特に抵当権抹消と所有権移転の2つの登記手続きが必要となる売買には、手続きが煩雑となるため、司法書士に任せてしまうことをおすすめします。

引き渡し後に事前の条件と違うことに気づいた

不動産の売買では、売主に契約不適合責任と呼ばれる売主責任が課されます。
契約不適合責任とは、契約の目的とは異なるものを売った場合に、引渡後に買主から修繕や契約解除、損害賠償といった請求を受ける可能性のある責任です。

例えば、雨漏りしている物件を雨漏りしていないものとして売ってしまった場合には、契約の目的(例えば買主が住居として住むこと)とは反するものを売ったことになるため、売主は契約不適合責任を負います。

この場合、契約不適合責任を負わないようにするには、買い主の了解の下、売買契約書に雨漏りに関して売主は契約不適合責任を負わないとすることを明記することが必要です。

民法上、売主には契約不適合責任という売主責任があることから、売主は売却前に物件の不具合を把握しておくことが求められます。

売却の準備で売主は物件の不具合を把握することが第一歩とお伝えしましたが、これは契約不適合責任を負わない売買契約書を作成するために必須の手順です。

売買契約書の収入印紙を貼り忘れた

売買契約書は印紙を貼らなければいけない課税文書となります。
個人売買か否かに関わらず、売買契約書に印紙を貼ることは必要です。

個人売買では、印紙をうやむやにして貼らないといったことも考えられます。
印紙を貼らないと、例えば売主が売却後に確定申告で売買契約書の写しを証拠書類として提出するときに貼っていないことが判明し、過怠税が生じてしまうことがあります。
こうしたトラブルを回避するには、正しく印紙を貼ることが最も適切な対策です。

この記事のポイント

不動産の個人売買の流れは?

基本的に不動産の個人売買は、家の売却相場を確認する→売却の事前準備を行う→買主を探す→売買契約書を作成して売買契約を締結する→物件の引き渡し→不動産の名義変更といった流れで行われます。

詳しくは「不動産の個人売買の流れ」をご覧ください。

不動産の個人売買のトラブル例にはどんなものがありますか?

登記手続きで不備があった、引き渡し後に事前の条件と違うことに気づいた、売買契約書の収入印紙を貼り忘れたなどのトラブルが起こることがあります。

詳しくは「不動産の個人売買のトラブル例」をご覧ください。

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