ざっくり要約!
- 更地だから固定資産税が高くなるわけではなく、住宅以外の建物を建てた場合にも更地と同じくらい固定資産税がかかる
- 更地の固定資産税の負担を抑えるためには、取り壊しと竣工のタイミングを考慮する、アパートやマンションを建てるなどの対策がある
住宅が建っていた土地の固定資産税は特例によって低く抑えられていたため、建物を取り壊したことで土地の固定資産税が上がってしまった人もいると思います。
土地の固定資産税は更地だから高くなるわけではありません。
店舗やオフィスビル等の住宅以外の建物を建てても、土地の固定資産税は更地と同じです。
土地の固定資産税を安くするには、住宅用地の軽減措置を理解する必要があります。
この記事では、「更地の固定資産税」について解説します。
記事サマリー
更地の固定資産税が高いのはなぜ?
土地の固定資産税は、更地だから高いわけではありません。住宅用地以外の宅地が高いのです。
宅地とは、「現に建物の敷地に供せられている土地」または「建物を建てるために取引される土地」を指します。農地や林地は宅地に含みません。
住宅用地以外の宅地を、ここでは「非住宅用地」と呼ぶことにします。非住宅用地は、例えば更地の他、店舗やホテル、オフィスビル、工場、倉庫等の住宅以外の建物が建っている宅地のことです。
宅地の固定資産税の計算方法は、「住宅用地」と「非住宅用地」の2種類に分かれます。
住宅用地とは、一戸建てだけでなく、アパートや賃貸マンションが建っている土地も含まれます。
一定の要件を満たす住宅用地には、住宅用地の軽減措置という特例が適用されます。
適用されるのは、以下の要件を満たした宅地です。
・専用住宅
専ら人の居住の用に供する家屋の敷地の用に供されている土地で、その上に存在する家屋の総床面積の10倍までの土地のこと
・併用住宅
一部を人の居住の用に供する家屋で、その家屋の床面積に対する居住部分の割合が4分の1以上ある家屋の敷地の用に供されている土地のうち、その面積に下表の率を乗じて得た面積に相当する土地のこと
ただし、住宅用地の面積がその上に存在する家屋の床面積の10倍を超えているときは、床面積の10倍の面積に下表の率を乗じた面積となります。
上記の要件を満たす住宅用地では、固定資産税および都市計画税の課税標準額が下表のように計算されます。
課税標準額とは、税率を乗じて直接税金を求めるための額のことです。
区分 | 固定資産税 | 都市計画税※ | |
---|---|---|---|
小規模住宅用地 | 住宅用地で住宅1戸につき200平米までの部分 | 価格×1/6 | 価格×1/3 |
一般住宅用地 | 小規模住宅用地以外の住宅用地 | 価格×1/3 | 価格×2/3 |
上表の価格とは、固定資産税評価額のことを指します。
例えば、小規模住宅用地であれば固定資産税評価額の6分の1が課税標準額になるということです。
一方で、非住宅用地の課税標準額は、負担調整と呼ばれる調整措置が行われます。
調整措置は、負担水準に応じて下表のように調整方法が決まっています。
負担水準 | 税負担の調整措置 |
---|---|
70%超 | 当該年度の評価額の70%相当額を課税標準として計算した額が税額となる |
60%以上70%以下 | 一律に前年度の税額が据え置かれる |
60%未満 | 前年度課税標準額+固定資産税評価額×5% |
負担水準とは、以下の算式で求められるものです。
負担水準 = 前年度課税標準額 ÷ 当該年度の新評価額 × 100%
通常、負担水準は70%超となることが多いです。
負担水準が70%超の場合は、固定資産税評価額に70%を乗じたものが課税標準額になります。
固定資産税の税額は更地が一番高い
ここでは、以下の条件を例に更地(非住宅用地)の固定資産税が高い理由を、計算式を用いて解説します。
【条件】
固定資産税評価額:2,400万円
土地の面積:180平米
固定資産税は以下の式で計算されます。
固定資産税 = 課税標準額 × 1.4%
最初に当該宅地を住宅用地とした場合の固定資産税を計算します。
土地の面積は180平米ですので、土地の上に住宅が1戸建っていれば小規模住宅用地です。
小規模住宅用地の課税標準額は固定資産税評価額の6分の1ですので、固定資産税は以下のように計算されます。
課税標準額 = 固定資産税評価額 × 1/6
= 2,400万円 × 1/6
= 400万円
固定資産税 = 課税標準額 × 1.4%
= 400万円 × 1.4%
= 5.6万円
次に、当該宅地を非住宅用地とした場合の固定資産税を計算します。
ここで、当該宅地の負担水準は70%超とします。
負担水準が70%超の更地の固定資産税は、以下の通りです。
課税標準額 = 固定資産税評価額 × 70%
= 2,400万円 × 70%
= 1,680万円
固定資産税 = 課税標準額 × 1.4%
= 1,680万円 × 1.4%
= 23.52万円
固定資産税は住宅用地では5.6万円であったのに対し、更地(非住宅用地)では23.52万円になりました。
住宅用地から更地になることで、固定資産税は4.2倍に上がったことになります。
更地の固定資産税の負担を抑えるための対策や特例
ここでは、更地の固定資産税の負担を抑えるための対策について解説します。
住宅用地の特例が適用されるようにする
宅地の固定資産税は住宅用地か非住宅用地かの二択で決まりますので、住宅用地の特例が適用されるようにすると固定資産税は安くなります。
例えば、更地の上にマイホーム等の住宅を建てれば、土地には住宅用地の軽減措置が適用されます。
ただし、住宅を建てれば、家屋には新たに固定資産税が発生します。
分筆して無道路地を作っておく
実際にやるかどうかは別として、更地を分筆して敷地内に無道路地の筆(土地の単位のこと)を作ると全体としては固定資産税が安くなります。
分筆とは土地を分けること、無道路地とは道路に接していない土地のことです。
土地の固定資産税評価額は、それぞれの筆ごとに評価されます。
無道路地は、原則として建物を建てられない土地です。
建物を建てられない土地は利用価値が低いため、固定資産税評価額も低く評価されます。
例えば、1つの土地を接道している手前の部分と接道していない奥の部分の2筆に分筆したとします。
すると、固定資産税評価額は手前の接道している土地は高く、奥の接道していない土地は安くなります。
奥の接道していない土地の固定資産税評価額が下がることで、全体として土地の固定資産税は安くなるのです。
ただし、分筆をするには測量や登記のための費用が必要となります。
また、分筆して無道路地を生み出してしまうと、将来、相続等で所有者が変わり接道している土地だけが売却されるようなことが起こると、無価値な無道路地だけが残ってしまいます。
費用対効果の面と無道路地が残されるリスクを考慮すると、わざわざ無道路地を作ってまで固定資産税を下げることはおすすめしにくいといえます。
取り壊しと竣工のタイミングを考慮する
住宅用地か否かは1月1日時点で判断されます。
そのため、住宅の取り壊しや竣工のタイミングを調整すると固定資産税を抑えることができます。
例えば、12月31日までに家を取り壊してしまうと、翌年の1月1日時点は非住宅用地となるため、固定資産税は高くなってしまいます。
1月1日を過ぎてから取り壊せば、その年の固定資産税は住宅用地のままです。
逆に新築の場合、12月31日までに竣工しておけば、翌年の固定資産税は住宅用地が適用されます。
1月1日を過ぎてから竣工してしまうと、その年の固定資産税は非住宅用地のままです。
アパートや賃貸マンションを建てる
アパートや賃貸マンションも住宅ですので、建てると住宅用地となります。
住宅1戸につき200平米までが小規模住宅用地が適用されるため、例えば2戸のアパートを建てると400平米の土地が小規模住宅用地とみなされます。
例えば300平米の土地の場合、一戸建てを建てると200平米までが小規模住宅用地で、残りの100平米が一般住宅用地という扱いになります。
一般住宅用地の課税標準額は固定資産税評価額の3分の1であるため、小規模住宅用地よりも減額効果が少ないです。
一方で、2戸のアパートを建てれば400平米までの土地が小規模住宅用地とみなされることから、300平米の土地全体が小規模住宅用地となり、減額効果が大きくなります。
つまり、200平米超の土地の場合には、複数戸からなる集合住宅を建てた方が固定資産税は安くなります。
更地の固定資産税が高い場合の注意点
更地の固定資産税が高い場合の注意点について解説します。
駐車場にすると固定資産税がさらに高くなる場合も
前章で無道路地が含まれる土地は、その部分の固定資産税が低くなるため、結果的に固定資産税が安くなるということを紹介しました。
ただし、無道路地を含んでいる土地であっても、全体を駐車場にする等の一体利用をすると固定資産税が上がることがあるため、注意が必要です。
例えば、接道している手前の土地と無道路地の奥の土地の2筆から成り立っている土地があるとします。このような土地は、なにも利用していない更地の状態であれば、奥の無道路地の固定資産税評価額は低いままです。
ところが、この2筆の土地をすべて駐車場にした場合、固定資産税評価額が変わります。ここでは駐車場というのは特に重要ではなく、「無道路地を含めて一体利用しているか否か」がポイントです。
土地が一体利用されると、奥の無道路地の土地も手前の接道している土地と同様の効用を持つことになります。
同様の効用を持っているのに、奥の無道路地だけ固定資産税評価額が低いのは非合理的です。
そのため、一体利用がなされると、無道路地の土地も接道している土地と同じ固定資産税評価額となってしまいます。
つまり、敷地全体が接道している土地として再評価されるため、結果として土地の固定資産税が上がってしまうのです。
なお、無道路地の筆を含まない土地であれば、更地を駐車場にしても固定資産税はそのままとなります。
使用しない場合は売却するのがおすすめ
固定資産税の負担が重く、使用しない土地の場合には、売却するのも選択の一つです。
土地を売るなら、地下埋設物を撤去してくれるサービスを行ってくれる会社に任せることをおすすめします。
地下埋設物は、売主も把握できていない瑕疵(かし:キズのこと)の一つです。
地下埋設物を把握せずに売却してしまうと、売却後に売主責任を問われる可能性があります。
地下埋設物を撤去してくれる不動産会社に売却を依頼すれば、売主も安心して土地を売ることができます。
土地の査定は、まずは地下埋設物の撤去保証サービスの有無を調べた上で依頼することが望ましいです。
この記事のポイント
- 更地の固定資産税が高いのはなぜ?
更地だから固定資産税が高くなるわけではなく、住宅用地以外の宅地の固定資産税が高いのです。
宅地とは、「現に建物の敷地に供せられている土地」または「建物を建てるために取引される土地」を指します。農地や林地は宅地に含みません。
詳しくは「更地の固定資産税が高いのはなぜ?」をご覧ください。
- 更地の固定資産税が高い場合の注意点は?
更地の固定資産税が高い場合、安く抑えたいという理由で駐車場にする際には注意が必要です。
無道路地が含まれる土地があり、その全体を駐車場として一体利用した場合、固定資産税がさらに高くなる場合があります。
詳しくは「更地の固定資産税が高い場合の注意点」をご覧ください。
売りたい物件・時期がお決まりの方はこちら
60秒で入力完了!売却査定を承ります。
不動産の売却可能額を査定する