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更地とは?意味や固定資産税対策について紹介

執筆者プロフィール

竹内 英二
不動産鑑定士

不動産鑑定事務所および宅地建物取引業者である(株)グロープロフィットの代表取締役。不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、住宅ローンアドバイザー、中小企業診断士の資格を保有。

ざっくり要約!

  • 更地とは、建物等の定着物がなく、かつ使用収益を制約する権利の付着していない宅地
  • 更地にするためにかかる費用は、木造戸建て住宅なら150~200万円程度が相場

近年のように不動産価格の上昇が顕著になってくると、更地に注目が集まってきます。
バブル時代には「土地転がし」と呼ばれる更地を転売する投資が流行りましたが、更地は今でも投資対象として魅力的な不動産の一つです。

ただし、更地はキャピタルゲイン(転売益)を得やすいものの、インカムゲイン(運用益)は得にくい不動産となっています。

不動産への投資環境の好機が続く現在において、いま一度更地について理解を深めたいと考えている人も多いのではないでしょうか。

この記事では「更地」について解説します。

更地とは?

最初に更地とは何か、概要や特徴について解説します。

建物がなく土地に関わる権利が付帯していない土地

国土交通省が定めている不動産鑑定評価基準によると、更地とは以下のように定義されています。

【更地の定義】

更地とは、建物等の定着物がなく、かつ、使用収益を制約する権利の付着していない宅地をいう。

最後に「宅地をいう」と書かれていますが、宅地も不動産鑑定評価基準において、以下のように定められています。

(宅地の定義)
宅地とは、宅地地域のうちにある土地をいう。

(宅地地域の定義)
宅地地域とは、居住、商業活動、工業生産活動等の用に供される建物、構築物等の敷地の用に供されることが、自然的、社会的、経済的及び行政的観点からみて合理的と判断される地域をいう。

出典:国土交通省|不動産鑑定評価基準

少しややこしいですが、更地は宅地の一つであり、宅地は宅地地域の中の土地となります。

宅地地域とは、「居住等の用に供される建物等の敷地の用に供されることが合理的と判断される地域」です。

つまり、建物を建てるのに適した地域の中にある土地を宅地と呼び、農地や林地は宅地から外されます。

農地や林地は宅地ではないことから、更地でもないといえます。

次に、更地の定義に再び戻ると、「建物等の定着物がなく」と記載されています。
そのため、建物がある土地は更地ではありません。
さらに、「使用収益を制約する権利の付着していない」とも記載されています。

使用収益を制約する権利とは、例えば借地や地上権、賃借権等が挙げられます。
使用収益を制約する権利の付着していない宅地であるため、借地権が設定されている土地は更地ではないということです。

月極駐車場やコインパーキングも、建物所有目的以外の土地の賃借権という弱い権利が設定されており、使用収益を制約する権利の付着していることから厳密には更地ではないということになります。

更地は使用収益を制約する権利の付着していない土地であることから、購入者が買った後すぐに自由に利用することが可能です。

農地でもないため建物を建築しやすく、また、林地でもないことから伐採等も不要となります。

更地は投資対象に適した不動産

更地は購入者がすぐに利用できて使いやすい土地であることから、不動産の中でも流動性は高いです。

また、更地は建物等がないことから、長期間保有していたとしても築年数の経過に応じて資産価値が落ちるといったこともない点が特徴となります。

資産価値が落ちにくく、かつ、流動性が高いため、タイミングを見計らって売却がしやすいです。

そのため、更地はキャピタルゲイン(転売益)を得やすい資産である点が特徴となっています。ただし、建物がなく大きな賃料収入は得られないため、インカムゲイン(運用益)は得にくいです。

バブル時代に「土地転がし」はありましたが、「戸建て転がし」や「マンション転がし」はありませんでした。

建物付きの不動産は保有期間が長くなると建物価値が下落してしまうため、その分、キャピタルゲインが得にくいことが、戸建て転がし等がなかった理由となります。

よって、昨今のような不動産価格が上昇基調にあるときにキャピタルゲインを狙って行う投資であれば、更地こそが投資対象に適した不動産といえるのです。

更地と整地の違い

整地とは、土地を造成等によって建物を建てるのに適した状態にすることです。
つまり、「整地した土地」が「更地」になるという関係になります。

国税庁では、整地費を「凹凸がある土地の地面を地ならしするための工事費」または「土盛工事を要する土地について、土盛工事をした後の地面を地ならしするための工事費」と定義しています。

参考までに国税庁が示す2022年分の東京都の宅地造成費の金額表を示すと、下表の通りです。

工事費目平米単価
整地費 整地費 800円
伐採・伐根費 1,000円
地盤改良費 1,600円
土盛費 7,200円
土止費 76,600円

出典:国税庁|宅地造成費の金額表 令和4年分(東京都)

更地にするためにかかる費用

この章では、更地にするためにかかる費用について解説します。

建物の構造によって相場が変わる

住宅の取り壊し費用の相場は、下表のようになります。

構造坪単価
木造4~6万円
鉄骨造6~8万円
鉄筋コンクリート造8~10万円

一般的な広さの木造戸建て住宅は、30~35坪程度のものが多いです。
木造戸建て住宅の取り壊し費用は、150~200万円程度が相場となります。

更地にすると固定資産税が高くなる?

必ずしも更地にしたからといって、土地の固定資産税が高くなるわけではありません。

土地の固定資産税は、その上に「住宅」が建っていると安くなるという特例があります。

そのため、住宅が建っている土地であれば住宅を取り壊すことで特例がなくなり、土地の固定資産税は高くなります。

一方で、店舗や工場、ホテル、オフィスビル、倉庫等の住宅以外の建物が建っている場合は特定の適用外となるため、土地の固定資産税は安くなりません。

そのため、住宅以外の建物が建っている土地の場合、元々の土地の固定資産税が高いため、建物を取り壊したとしても土地の固定資産税は高いままです。

住宅が建っている土地の3~4倍になることも

ここでは、住宅用地の軽減措置が適用されている土地が更地になると固定資産税高くなる仕組みを解説します。

まず、土地の固定資産税は以下の式で計算されます。

固定資産税 = 課税標準額 × 1.4%

課税標準額とは、税率を乗じて直接税金を求めるための額のことです。

更地の状態の課税標準額は、以下のような負担調整が行われて課税標準額が計算されます。

負担水準税負担の調整措置
70%超当該年度の評価額の70%相当額を課税標準として計算した額が税額となる
60%以上70%以下一律に前年度の税額が据え置かれる
60%未満前年度課税標準額+固定資産税評価額×5%

負担水準とは、以下の算式で求められるものです。

負担水準 = 前年度課税標準額 ÷ 当該年度の新評価額 × 100%

多くの場合、負担水準は70%超となることが一般的となっています。
負担水準が70%超の場合は、固定資産税評価額に70%を乗じたものが課税標準額です。

つまり、更地の固定資産税は一般的には以下の式で求められます。

固定資産税 = 固定資産税評価額 × 70% × 1.4%

次に、住宅用地の軽減措置が適用される場合の課税標準額の求め方を示します。
住宅用地は面積に応じて「小規模住宅用地」と「一般住宅用地」の2種類があり、それぞれの課税標準額の求め方は下表の通りです。

区分課税標準額
小規模住宅用地住宅用地で住宅1戸につき200平米までの部分価格×1/6
一般住宅用地小規模住宅用地以外の住宅用地価格×1/3

ここで、以下のような条件を元に住宅用地の場合と更地の場合の固定資産税を比較してみます。

(ケース1)
固定資産税評価額:3,600万円
土地の面積:300平米

(300平米の土地に一戸建てが建っている場合)

小規模住宅用地の課税標準額 = 固定資産税評価額 × (200平米÷全体面積) × 1/6
      = 3,600万円 × (200平米÷300平米) × 1/6
      = 2,400万円 × 1/6
      = 400万円

一般住宅用地の課税標準額 = 固定資産税評価額 × (200平米超の部分÷全体面積) × 1/3
      = 3,600万円 × (100平米÷300平米) × 1/3
      = 1,200万円 × 1/3
      = 400万円

課税標準額 = 小規模住宅用地の課税標準額 + 一般住宅用地の課税標準額
      = 400万円 + 400万円
      = 800万円

固定資産税 = 課税標準額 × 1.4%
      = 800万円 × 1.4%
      = 11.2万円

(更地の場合)
固定資産税 = 課税標準額 × 1.4%
      = 固定資産税評価額 × 70% × 1.4%
      = 3,600万円 × 70% × 1.4%
      ≒ 35.3万円

更地にしたことで固定資産税は約3.2倍(=35.3÷11.2)となりました。

(ケース2)
固定資産税評価額:3,600万円
土地の面積:150平米

(150平米の土地に一戸建てが建っている場合)

課税標準額 = 固定資産税評価額 × 1/6
      = 3,600万円 × 1/6
      = 600万円

固定資産税 = 課税標準額 × 1.4%
      = 600万円 × 1.4%
      = 8.4万円

(更地の場合)
固定資産税 = 課税標準額 × 1.4%
      = 固定資産税評価額 × 70% × 1.4%
      = 3,600万円 × 70% × 1.4%
      ≒ 35.3万円

更地にしたことで固定資産税は約4.2倍(=35.3÷8.4)となりました。

ケース1と2より、住宅を取り壊して更地にすると、固定資産税は3~4倍になります。

更地の固定資産税対策

この章では、更地の固定資産税対策を解説します。

売却する

更地を売却すれば、所有者ではなくなるため、当然ながら固定資産税の負担はなくなります。

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土地活用する

アパートや賃貸マンション、戸建て賃貸といった住宅系の土地活用を行えば、住宅用地の軽減措置が適用され、土地の固定資産税が安くなります。

・「土地活用」に関する記事はこちら
土地活用は儲かる?ケース別の土地活用方法10選!

取り壊しの時期を考慮する

固定資産税は1月1日時点で住宅用地かどうかを判断されます。
1月1日以降に取り壊せば、その年の1年間だけは土地には住宅用地の軽減措置が適用されるため、土地の固定資産税は安いままです。

ただし、その年は建物を取り壊したとしても、建物の固定資産税も発生します。

更地と空き家はどっちが売却しやすい?

更地と空き家の売却のしやすさを解説します。

それぞれかかる手間や費用が異なる

一般的な話とすると、更地の方が売却しやすいです。

更地は買主がすぐに利用できる状態ですし、建物がなければ建物の掃除や内覧対応(購入希望者に家の中を見せること)も不要となります。

一方で、空き家など建物が残っていれば、建物の固定資産税や火災・地震保険料等の維持費も発生します。

以下に、それぞれのメリット・デメリット、注意点を示します。

更地の場合

メリット・購入者の自由度が高いため、多くの人に興味を持たれて売却しやすくなる
デメリット・更地化するために取り壊し費用がかかる
注意点・繁茂した雑草や不法投棄のゴミがあれば除去しておく

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空き家の場合

メリット・空き家に価値を見出す人にそのまま売れる可能性がある
デメリット・空き家があることで売却しにくくなる恐れがある
注意点・取り壊しが必要な空き家であれば、更地価格よりも安くなることが多い

・「古い家を売る」に関する記事はこちら
古い家を売るのは難しい?売る方法や注意点など徹底解説
・「空き家 売却」に関する記事はこちら
空き家の売却について解説!解体して更地にする、そのまま売る以外の方法も紹介
・東急リバブルの「一戸建て売却・査定」はこちらから

この記事のポイント

更地にすると固定資産税が高くなるって本当?

必ずしも更地にしたからといって、土地の固定資産税が高くなるわけではありません。

土地の固定資産税は、その上に「住宅」が建っていると安くなるという特例があります。

そのため、住宅が建っている土地であれば住宅を取り壊すことで特例がなくなり、土地の固定資産税は高くなります。

一方、住宅以外が建っている場合はそもそも特例の適用外なので、更地にしても固定資産税の高さはそのままです。

詳しくは「更地にすると固定資産税が高くなる?」をご覧ください。

更地の固定資産税対策にはどんなものがありますか?

売却する、アパートや賃貸マンション、戸建て賃貸などを建てて土地活用する、取り壊しの時期を考慮するといった対策があります。

詳しくは「更地の固定資産税対策」をご覧ください。

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