ざっくり要約!
- 不動産売却にかかる税金は印紙税・消費税・登録免許税・譲渡所得税
- 譲渡所得税は控除特例の適用により税額が抑えられる
不動産の売却では、さまざまな税金が課されます。中でも譲渡所得税は高額になり得ますが、すべての方に課されるわけではありません。また、控除特例によって税額を抑えたり、ゼロにしたりすることができる可能性があります。
そこで本記事では、不動産売却にかかる税金の計算方法や控除特例、支払い時期について解説します。
記事サマリー
不動産売却にはどのような税金がかかる?
不動産売却で課される可能性のある税金は、次の4つです。
印紙税
不動産の売買契約書は、印紙税が課される文章です。税額は、売却金額によって次のように異なります。なお、2027年3月31日までに作成される売買契約書は、表右の軽減税率が適用されます。
契約金額 | 本則税率 | 軽減税率 |
10万円を超え50万円以下のもの | 400円 | 200円 |
50万円を超え100万円以下のもの | 1,000円 | 500円 |
100万円を超え500万円以下のもの | 2,000円 | 1,000円 |
500万円を超え1,000万円以下のもの | 1万円 | 5,000円 |
1,000万円を超え5,000万円以下のもの | 2万円 | 1万円 |
5,000万円を超え1億円以下のもの | 6万円 | 3万円 |
1億円を超え5億円以下のもの | 10万円 | 6万円 |
5億を超え10億円以下のもの | 20万円 | 16万円 |
10億円を超え50億円以下のもの | 40万円 | 32万円 |
なお、電子契約書には印紙税は課されません。
消費税
不動産の売却でかかる以下の諸費用には、消費税が課されます。
- 仲介手数料
- 住宅ローン完済手数料
- 司法書士報酬
仲介手数料は、不動産会社に支払う成功報酬です。上限額は「(売却金額×3%+6万円)+消費税」と定められています。
住宅ローン完済手数料とは、住宅ローンを完済する際に金融機関に支払う手数料です。金額は金融機関によって異なりますが「1〜5万円+消費税」程度が一般的です。
そして司法書士報酬は、住宅ローンを完済する際に抵当権の抹消手続きをしてくれる司法書士に支払う報酬です。こちらも司法書士によって金額は異なるものの「1.5〜1.8万円+消費税」程度が一般的です。
登録免許税
抵当権抹消登記には、登録免許税が課されます。税額は、1つの不動産につき1,000円です。建物と土地が1つずつの不動産の抵当権抹消にかかる登録免許税は2,000円です。
・「抵当権抹消」に関する記事はこちら
抵当権抹消とは?抹消が必要になるケースや費用、手続きの方法を解説
譲渡所得税(住民税・所得税・復興特別所得税)
譲渡所得税は、不動産売却で発生した「譲渡所得」に対して課される税金です。譲渡所得税は総称で、譲渡所得には住民税・所得税・復興特別所得税が課されます。譲渡所得とは、簡単にいえば不動産を売ったことによる利益です。計算方法については、次の章で解説します。
「譲渡所得」の計算方法
譲渡所得は、次の計算式で算出します。
譲渡所得=総収入金額−(取得費+譲渡費用)
総収入金額とは、売却によって得た金額を指します。売却金額に加え、固定資産税などの精算金も総収入金額に含まれます。
取得費は、不動産の取得にかかった費用です。購入金額に加え、購入にかかった仲介手数料などの諸費用やリフォーム費用も含まれます。建物は、取得費の合計額から減価償却費を控除します。減価償却とは、長期間にわたって使用する資産を複数年にわたって経費計上する手続きです。住宅の減価償却費は、以下の計算式で算出します。
減価償却費=購入代金×0.9×償却率×経過年数
住宅用建物の定額法償却率は、次のとおりです。
構造 | 非業務用 | 業務用 | |||
---|---|---|---|---|---|
耐用年数 | 償却率 | 耐用年数 | 償却率 | ||
木造 | 33年 | 0.031 | 22年 | 0.046 | |
鉄骨造 | 4mm超 | 51年 | 0.020 | 34年 | 0.030 |
3mm超4mm以下 | 40年 | 0.025 | 27年 | 0.038 | |
3mm以下 | 28年 | 0.036 | 19年 | 0.053 | |
鉄筋コンクリート造 | 70年 | 0.015 | 47年 | 0.022 |
そして譲渡費用とは、仲介手数料や測量費など売却にかかった費用を指します。
ここからは、以下の条件で譲渡所得の計算をシミュレーションしてみましょう。
<シミュレーション条件>
新築で取得した鉄筋コンクリート造の居住用マンションを7年後に売却
- 購入時の金額:3,000万円
- 購入にかかった費用:200万円
- 売却時の金額:4,000万円
- 売却にかかった費用:120万円
- 固定資産税精算金:10万円
取得費を算出する
まずは、減価償却費から計算していきましょう。
減価償却費=購入代金×0.9×償却率×経過年数
減価償却費の計算式は、上記のとおり。シミュレーション条件は、鉄筋コンクリート造の居住用マンションなので、償却率は「0.015」です。
購入代金[3,000万円]×0.9×償却率[0.015]×経過年数[7年]=283.5万円
減価償却費は「283.5万円」と算出できました。
続いて、取得費を計算します。取得費は、購入金額に購入にかかった費用を足し、減価償却費を引いたものです。
購入代金[3,000万円]+購入にかかった費用[200万円]-減価償却費[283.5万円]=2916.5万円
取得費は「2916.5万円」と算出できました。
譲渡所得を算出する
譲渡所得の計算式は、以下のとおりです。
譲渡所得=総収入金額−(取得費+譲渡費用)
取得費が算出できたため、当てはめてみましょう。
総収入金額[4,000万円+10万円]-(取得費[2916.5万円]+譲渡費用[120万円])=973.5万円
このマンションの譲渡所得は「973.5万円」と算出できました。
譲渡所得にかかる税率は売却した不動産の所有期間によって異なる
譲渡所得に課される所得税・住民税・復興特別所得税の税率は、不動産を所有していた期間によって次のように異なります。
所有期間 | 住民税 | 所得税 | 復興特別所得税 |
5年以下(短期譲渡所得) | 9% | 30% | 0.63% |
5年超(長期譲渡所得) | 5% | 15% | 0.315% |
なお「所有期間」は、不動産を売却した年の1月1日時点のものを指しますのでご注意ください。
先のシミュレーションの税額は、所有期間7年で譲渡所得は「973.5万円」のため、住民税が48万6,750円(973.5万円×5%)、所得税が146万250円(973.5万円×15%)、復興特別所得税が3万665円(973.5万円×0.315%)で、譲渡所得税は合計「197万7,665円」となります。
譲渡所得税がかからないこともある?譲渡所得が控除できる特例
譲渡所得税は高額になり得る税金ですが、次のような控除特例が適用できれば税額を下げたり、ゼロにしたりすることができます。
3,000万円特別控除(マイホーム特例)
「マイホーム特例」とも呼ばれる「3,000万円特別控除」は、マイホームの売却で発生した譲渡所得を最大3,000万円控除できる特例です。譲渡所得が3,000万円以下であれば、税額はゼロとなります。
・「3,000万円控除」に関する記事はこちら
3,000万円控除とは?制度の概要、適用条件や具体的な計算方法も解説
国税庁「マイホームを売ったときの特例」
軽減税率の特例
所有期間が10年を超えるマイホームの売却では「軽減税率の特例」も適用になる可能性があります。軽減税率は、以下のとおりです。
譲渡所得金額 | 税率 |
6,000万円以下の部分 | 所得税:10.21% ※復興特別所得税含む 住民税:4% |
6,000万円超の部分 | 所得税:15.315% ※復興特別所得税含む 住民税:5% |
買い換え特例
マイホームの買い換えでは「買い換え特例」が適用できる可能性があります。買い換え特例は、譲渡所得の控除ではなく、課税が繰り越せる特例です。買い換え先を売却するときまで、課税が繰り越せます。
国税庁「特定のマイホームを買い換えたときの特例」
・「居住用財産の譲渡の特例」に関する記事はこちら
自宅売却の特例と特例対象となる自宅売却の形態について
・「買い換え特例」に関する記事はこちら
居住用財産の買換え特例とは?併用できない特例と適用要件をわかりやすく解説
相続空き家の3,000万円特別控除
相続した空き家の譲渡所得を最大3,000万円控除できる特例です。相続した空き家であることとともに、築年数や売却時の状態などの要件もあるため、適用要件をよく確認しましょう。
・「相続空き家の3,000万円特別控除」に関する記事はこちら
相続空き家に係る居住用財産の3,000万円特別控除の適用要件と取扱について
取得費加算の特例
「取得費加算の特例」は、相続時に納税した相続税を取得費に加算することで譲渡所得を引き下げる効果のある特例です。加算する税額は、次の計算式で算出した金額です。
取得費に加算する金額=特例を受ける人の相続税額×(売却した不動産の相続税課税額/相続資産全体の課税額+債務控除)
国税庁「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」
不動産売却に課される税金はいつ払うの?
不動産売却に課される印紙税・消費税・登録免許税・譲渡所得税の納税時期は、以下のとおりです。
税金 | 納税時期 | |
---|---|---|
印紙税 | 売買契約時 | |
消費税 | 仲介手数料 | 売買契約時と決済時に半金ずつ支払うのが一般的 |
住宅ローン完済手数料 | 決済時 | |
司法書士報酬 | 決済時 | |
登録免許税 | 決済時 | |
譲渡所得税 | 売却した翌年の2月16日~3月15日に確定申告し、所得税を納税。住民税は、売却翌年の6月頃に納税通知書が届く。 |
不動産の売却では、売買契約から1〜2ヶ月後に手付金を除いた残代金の決済が行われるのが一般的ですが、売買契約と決済が同日になることもあります。
・「決済」に関する記事はこちら
不動産売却時の残代金とは? 決済のタイミングや必要なものを解説
まとめ
不動産売却にかかる税金は、印紙税・消費税・登録免許税・譲渡所得税(所得税・住民税・復興特別所得税)です。譲渡所得税は高額になり得る税金ですが、控除特例の適用により、税額を抑えることもできます。控除特例を適用するには、不動産を売却した翌年に確定申告する必要があります。税額の計算や適用できる控除特例に悩む場合は、税理士や不動産会社に相談しましょう。
この記事のポイント
- 不動産を売却したら、どのような税金がかかりますか?
不動産売却で課される可能性のある税金は4つあります。
詳しくは「不動産売却にはどのような税金がかかる?」をご覧ください。
- 「譲渡所得」はどのように計算できますか?
総収入金額とは、売却によって得た金額を指します。売却金額に加え、固定資産税などの精算金も総収入金額に含まれます。
詳しい計算方法は「『譲渡所得』の計算方法」をご覧ください。
- 譲渡所得がかからない特例はありますか?
譲渡所得税は高額になり得る税金ですが、控除特例が適用できれば税額を下げたり、ゼロにしたりすることができます。
詳しくは「譲渡所得税がかからないこともある?譲渡所得が控除できる特例」をご覧ください。
ライターからのワンポイントアドバイス
不動産売却で課される税金のうち、譲渡所得税は高額になる可能性があります。マイホームや相続した実家であれば控除特例の適用で税額が抑えられますが、それぞれの控除特例には適用要件があります。あらかじめどのような特例が適用になるか確認し、適用要件を把握しておきましょう。
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