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マンションの管理費の相場は?修繕積立金との違いや高い場合の理由も

執筆者プロフィール

竹内 英二
不動産鑑定士

不動産鑑定事務所および宅地建物取引業者である(株)グロープロフィットの代表取締役。不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、住宅ローンアドバイザー、中小企業診断士の資格を保有。

ざっくり要約!

  • マンションの管理費とは共用部の維持管理を行うために徴収される費用
  • マンションの管理費の相場は、団地型に比べて単棟型の方が割高な傾向がある

分譲マンションを購入するにあたり、毎月発生する管理費や修繕積立金の金額は気になるところです。

管理費や修繕積立金が高い物件には、高くなってしまう理由が存在します。
高い物件の理由を知ると、管理費や修繕積立金が安い物件を上手に選ぶことができます。

マンション管理費の相場はどの程度であり、高い物件にはどのような特徴があるのでしょうか。
この記事では、「マンションの管理費の相場」について解説します。

そもそもマンションの管理費とは?

分譲マンションでは、所有者は毎月、管理費と修繕積立金を管理組合から徴収されます。
最初に、マンションの管理費とは何かを解説します。

共用部分の管理に使われる費用

分譲マンションのような集合住宅には、専有部と共用部があります。
専有部は、いわゆる購入した家の中のことです。共用部とは、専有部以外の部分のことを指します。

供用廊下や共用階段、エントランス、エレベーター、機械式駐車場等は全て共用部になります。

管理費は、共用部の維持管理を行うために徴収される費用です。

まず、分譲マンションの共用部には、エレベーターやエントランスの自動扉、機械式駐車場、給水ポンプ等の電力で駆動する部分があります。これらの設備を動かすには、電気代がかかります。

また、共用部の庭の植栽は、散水も必要です。供用のトイレやキッチンスタジオ等がある場合にも、水道代が生じます。これらの共用部に係る水道光熱費は、区分所有者から集められた管理費によって支払われています。

共用部の維持管理費用は水道光熱費だけではありません。設備の保守点検や法定点検等の点検費用や、管理人や清掃員の人件費、庭の防虫作業等も共用部の維持管理費用です。廊下やエントランスの電球の交換費用も、維持管理費用となります。

このように、マンションの共用部は維持していくために費用がかかり、これらのランニングコストを賄うために徴収されているのが管理費なのです。

修繕積立金との違い

分譲マンションでは、管理費の他に修繕積立金も生じます。
修繕積立金とは、将来共用部の修繕を行うことを目的に徴収される費用のことです。

管理費が毎月支出されていく費用であるのに対し、修繕積立金は毎月貯蓄されていく費用である点が大きな違いとなります。

マンションは、10~15年に一度のペースで、大規模な修繕を行っていきます。
例えば、外壁塗装やエレベーターの交換等が大規模修繕です。

大規模修繕は実施時に高額な費用がかかることから、必要なときに区分所有者から一度に集めるのは困難といえます。そこで、毎月住民から少しずつ修繕費を集め、将来のために貯蓄していくのが修繕積立金なのです。

管理費とは違い修繕積立金は増額の可能性あり

管理費は基本的に将来増額されない費用であるのに対し、修繕積立金は将来増額される費用であるという違いもあります。
理由としては、建物の修繕費は築年数が増えるほど大きくなるからです。

例えば、外壁塗装は15年に一度、エレベーターの交換は30年に一度行うものとします。
最初の15年目の大規模修繕は外壁塗装だけですので、比較的安く済みます。
しかしながら、次の30年目には大規模修繕は外壁塗装とエレベーターの交換の2つの工事を同時に行うことが必要です。
つまり、30年目の大規模修繕費は、15年目よりも高くなります。

このように建物の修繕項目は築年数が経過するほど増え、同時に行う工事も増えていくことが一般的です。
築年数が経過すると必要な工事も増えていくことから、修繕積立金は増えていく性質があります。

また、大規模修繕は時代の変化に応じて新築当初には計画していなかった工事を行うこともあります。
例えば、古いマンションの中には段差が多くバリアフリーがほとんど考慮されていない物件も存在します。
住民の高齢化が進み、住民の間からバリアフリー対策を行いたいという意見が増えれば、後からスロープを設置する等のバリアフリー工事を行うこともあるのです。

スロープの追加や防犯カメラの設置等は、すでにあるものを修繕するのではなく、追加で新規に設置する工事です。
後から当初計画以外の工事を行う場合は、従来の修繕積立金では不足してしまうため、毎月の徴収額が上がることになります。

マンションの管理費の相場

マンションの管理費の相場を解説します。

団地型より単棟型の方が管理費は高い傾向に

管理費の平均は、単棟型(1つの土地に1棟が建っているマンション)が 10,970 円、団地型(1つの土地に複数棟が建っているマンション)が 10,419 円となっています。

単棟型の方が戸数は少なく共用施設が充実していることが多いために、それに伴って管理費が割高な傾向があります。

出典:平成30年度マンション総合調査結果|国土交通省

マンションの管理費が高い理由

この章では、マンションの管理費が高い理由について解説します。

20階建て以上の高層マンションである

タワーマンションに正確な定義はありませんが、20階建て以上の高層マンションをタワーマンションと呼ぶ人もいます。

タワーマンションは、管理費・修繕積立金ともに割高なことが多いです。

タワーマンションの管理費が割高な理由は、一般的に共用部が充実していることが挙げられます。

タワーマンションは、エレベーターの本数も多いですし、駐車場も機械式駐車場であることも多いです。エントランスはガラス張りで広く、天井高も高くなっていることも多いため、エントランス部分の空調費も高くなります。

日中はコンシェルジュがいる物件もあり、高級物件の場合にはドアマンもいる物件も存在します。庭に人口の川や池が配置されている物件もあり、また、プールがある物件もあります。

このように、タワーマンションの共用施設は、一般のマンションよりもゴージャスなことが多いです。
ゴージャスな設備は維持費用もかかることから、管理費が割高となります。

また、タワーマンションは階数が高いことから、大規模修繕が特注の工事となることがよくあります。
特注工事は通常の工事よりも割高であることから、タワーマンションは修繕積立金も高くなってしまうのです。

近年建てられたマンションである

マンションは、古いマンションよりも新しいマンションの方が共用部は充実している傾向があります。
昔の古いマンションには、共用施設はほとんどありませんでした。
しかしながら、近年のマンションにはキッズルームやトレーニングルーム、コワーキングスペース、コインランドリー、ラウンジ等の共用施設が充実してきた傾向があります。

共用施設が充実していれば、その分、管理費も割高となってしまいます。
そのため、管理費は昔の古いマンションよりも今どきの新しいマンションの方が高いことが多いのです。

ただし、築年数の古いマンションは、管理費は安くても修繕積立金が新しいマンションより高くなっていることがあります。
ランニングコストを比較する際は、管理費だけでなく、修繕積立金も併せて考慮することが望ましいです。

戸数が少ない

全体の戸数が少ないマンションは、管理費も修繕積立金も割高となります。
共用部を100世帯で維持していくのと、20世帯で維持していくのでは1世帯当たりの費用負担が異なってきます。
修繕積立金も、同様に戸数が少ない物件ほど高くなることが通常です。

では、どのようなマンションが管理費と修繕積立金が安くなるかというと、「戸数が多く、共用施設の充実していない築年数の浅い板状型マンション」が該当します。

板状(ばんじょう)型マンションとは、いわゆる一般的な形状のマンションのことで、タワーマンション以外のマンションのことを指します。
一般的なマンションは、横から見ると板のようになっている物件が多いため、板状と呼ばれています。

タワーマンションも戸数が多いため、一見すると管理費や修繕積立金は安くなりそうです。
しかしながら、タワーマンションは共用部がゴージャスな物件が多いことや大規模修繕が特注工事になることが多いことから、割高となっています。

一般的な板状型マンションは、タワーマンションほど共用部は充実しておらず、大規模修繕も特注にはなりません。
そのため、戸数が多く、共用施設の充実していない築年数の浅い板状型マンションは、管理費も修繕積立金も割安となっていることが多いのです。

マンションの管理費は安い方がお得?

マンションの管理費は安い方が得かどうかについて解説します。

安すぎる場合は管理が不十分である可能性も

管理費は、合理的な理由で安くなっている場合には、特に問題ありません。
例えば、戸数が多く、共用施設の充実していない板状型マンションは、安いことが多いです。

一方で、所有者が不明の空き家が多く、十分な管理費を徴収できていないにもかかわらず、管理費が低いままの物件は、管理が不十分となっている可能性があります。
限界集落にちなんで「限界マンション」と呼ばれる古いマンションの中には、管理不全に陥っている物件も存在します。

マンションの管理費の相場にまつわるQ&A

マンションの管理費の相場に関するよくある疑問にについて解説します。

マンションの管理費が値上げ・値下げされることはある?

管理費は値上げされることは少ないですが、値下げされることはあります。
管理費は、竣工後に管理組合が自分たちで話し合い、管理メニューを見直すことで削減がなされるマンションがよくあります。
例えば、日中の有人管理を取り止めたり、管理会社を通さずに清掃を分離発注したりすることでコスト削減がなされている事例があります。

一方で、修繕積立金は、基本的に値上げがなされます。
長期修繕計画書を見れば、将来の増額がわかりますので、確認することをおすすめします。

マンションの管理費が相場よりも高い場合はどうする?

マンションの管理費が相場よりも高い場合は、管理組合の理事会で検討してもらうべきです。
マンションは自分たちの財産ですので、本来は自分たちで話し合って管理内容を決めるべきものになります。
管理費の削減には成功している物件も多いので、理事会で十分に勉強しながら削減していくことをおすすめします。

マンションの管理費が払えない場合の対処法は?

マンションの管理費を滞納すると、差し押さえられて最終的には競売にかけられてしまうこともあります。
マンションの管理費が払えない場合には、売却して維持費の安い物件に住み替えることが適切です。

マンションを購入した際、管理費以外にかかる費用は?

マンション購入にはさまざまな費用がかかります。管理費以外の費用は下表の通りです。

費用項目相場支払い時期
修繕積立金1~3万円程度毎月
駐車場代0.7~1.5万円程度毎月
固定資産税・都市計画税10~20万円程度毎年4回に分けて納税
火災保険料・地震保険料年間で3.5~4.0万円程度購入時に複数年一括で払うことも多い

この記事のポイント

マンションの管理費は何のために使われるのですか?

管理費は、共用部の維持管理を行うために徴収される費用です。

分譲マンションの共用部にあるエレベーターやエントランスの自動扉などの設備を動かすためには、当然ながら電気代がかかります。

そのほか、共用部に係る水道光熱費、設備の保守点検や法定点検等の点検費用や、管理人や清掃員の人件費、庭の防虫作業等など、共用部の維持管理にはさまざまな費用がかかります。

このように、マンションの共用部は維持していくために費用がかかり、これらのランニングコストを賄うために徴収されているのが管理費なのです。

詳しくは「そもそもマンションの管理費とは?」をご覧ください。

マンションの管理費は安い方がお得でしょうか?

合理的な理由で管理費が安くなっている場合には、特に問題ありません。

一方で、所有者が不明の空き家が多く、十分な管理費を徴収できていないにもかかわらず、管理費が低いままの物件は、管理が不十分となっている可能性があります。

詳しくは「マンションの管理費は安い方がお得?」をご覧ください。

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