ざっくり要約!
- 立ち退き料は必ず支払わなければならないものではないため、厳密にいえば相場はないが家賃の6カ月程度とされることが多い
- 賃借人が賃貸契約違反をしたなどの場合は立ち退き料を支払わなくても良い
立ち退き料とは、大家や管理会社が何らかの理由によって、入居者に退去してもらう必要があるときにその代償として支払う費用です。
借地借家法では入居者の住む権利が保護されており、退去を求めることは簡単ではありません。
大家が借主に退去を求める場合、正当な事由が必要であり、立ち退き料の支払いがその正当性の判断に影響するといわれています。
つまり大家は、不当に借主を退去させることはできません。立ち退きについて正当な理由があったとしても、基本的には立ち退き料は支払うべきものです。
この記事では、立ち退き料の相場や立ち退き料が不要になるケースについて解説します。立ち退きを求める際のポイントも紹介しますので、今後入居者に立ち退きを交渉しようと思っている方は、ぜひ参考にしてください。
立ち退き料の相場は?
立ち退き料は、貸主と入居者の話し合いで決めるものであり、法律によって定められているものではありません。その点も踏まえて、実際のところ相場はどうなっているのか解説します。
立ち退き料の相場は状況によって変動する
立ち退き料の相場は入居者の状況や立ち退きを求める理由、立ち退きまでのスケジュールによっても変動します。状況によっては相場よりも高額または少額になることがあります。
例えば、たまたま入居者も引越しを予定していたタイミングであれば、立ち退き料がかからない、もしくは少額で済む可能性もあります。入居者の考え次第で、立ち退き料は変動します。最初からあまりにも高額な立ち退き料を提案しないようにしましょう。
家賃の半年~1年分を立ち退き料として支払う場合も
立ち退き料は必ず支払わなければならないものではないため、厳密にいえば相場はありませんが、一般的な例では家賃の6カ月程度とされることが多いようです。例えば賃料が1ヶ月10万円であれば、10万円×6ヶ月=60万円です。
金額だけを見ると、高額に感じるかもしれません。しかし入居者は新居を借りるために敷金や礼金、仲介手数料、引っ越し代もかかるため、その労力も考えればさほど高額ではないでしょう。
例えば子どもの学区内で引越し先を探す場合、思うような家賃で転居先を見つけられないこともあります。その場合は見合う立ち退き料を支払わなければ、入居者と折り合いがつかない可能性もあるでしょう。
また入居者が法人の場合、退去による損失や住所変更の手間も考慮しなければなりません。場合によっては高額になることもあります。
事務所として利用していた場合、家賃6ヶ月~1年分、店舗であれば2~3年が相場です。
立ち退き料の支払いが必要なのはどんな場合?
そもそも立ち退き料が必要になるのは、どのようなケースなのでしょうか。ここでは代表的なケースを3つ紹介します。
- 大家都合で退去を求めるケース
- マンションや店舗の建替えによる退去を求めるケース
- 再開発による退去を求めるケース
大家都合で退去を求めるケース
大家の都合で退去を求めるケースは、立ち退きを求める正当な理由が必要で、基本的には立ち退き料が必要になります。
例えばマンションやアパートを建て替えするケースや、そのマンションやアパートに自分や家族が住むケースなどが考えられます。
マンションや店舗の建て替えによる退去を求めるケース
マンションやアパート、店舗などの老朽化によって建て替えする場合で、退去を求める場合も基本的には立ち退き料がかかります。
ただし入居者にあらかじめ期間を限定している旨を伝えて、定期建物賃貸借契約を締結していた場合は、期間満了とともに退去を求めることができます。その場合は、基本的には立ち退き料はかかりません。
再開発による退去を求めるケース
再開発や都市計画道路の拡張などによって、マンションやアパートを解体する場合、国から買い取り額以外に、高額な立ち退き料が支払われます。
したがって、その再開発などによって入居者に退去を求める場合、その国から受け取った立ち退き料に見合う金額を入居者へも支払うことになるでしょう。
再開発や都市計画道路の拡張による立ち退きは、数年から数十年単位で計画されます。事業決定されたら、入居者とは定期建物賃貸借契約を結ぶことをおすすめします。
立ち退き料を支払わなくてもいいのはどんな場合?
立ち退き料は数十万円~数百万になることもあります。支払いが不要になれば、かかる経費を安く抑えることができます。支払わなくてもよいケースを確認しておきましょう。
- 賃借人が賃貸契約違反をしたケース
- 定期建物賃貸借契約が満了したケース
- 建物の老朽化で重大な危険があるケース
- 競売によってオーナーが変わったケース
賃借人が賃貸契約違反をしたケース
賃貸人が賃貸契約で定められた内容に違反した場合、契約解除を求めることができます。しかし賃貸人は借地借家法によって保護されており、即座に退去を求められるわけではありませんので注意しましょう。
契約違反として認められるのは、以下のようなケースです。
- 賃貸人が家賃を3ヶ月以上滞納しているケースで、支払う意思がない場合
- 賃貸人がたびたび家賃の滞納を繰り返していて、信頼関係が破綻した場合
- ペット飼育が不可物件にもかかわらず、ペットを飼育している場合
- 大家に無断で転貸もしくは無断で民泊などによって貸し出している場合
- 大音量で音楽を聴いたり、近隣へ迷惑になるような騒音を発したりするなどして、注意してもおさまらない場合
- 室内に発火性がある危険物や、悪臭を放つものを保管している場合
- 賃貸人が犯罪を起こした場合
- 単身用物件にもかかわらず、大家に相談なく複数人で居住している場合
- 反社会的勢力の事務所やその拠点として利用している場合
定期建物賃貸借契約が満了したケース
賃貸借契約は一般的に2年間で契約しますが、更新することができます(普通借家契約)。しかし定期建物賃貸借契約の場合、契約期間を定めることができ、期間満了とともに契約を終了とすることができます。
1年未満の契約も可能なため、将来的にマンションの売却やアパートの建替えを検討している場合は、定期建物賃貸借契約にすることをおすすめします。
ただし、賃貸借契約書とは別に、更新がない賃貸契約であることを記載した書面を発行し、賃貸人に説明しなければなりません。また大家は賃貸契約が満了する1年前から6カ月前までに、賃貸借契約が終了する旨を通知しなければなりません。
万が一忘れてしまうと、事前に定めたタイミングで賃貸借契約を終了とすることができなくなります。書面の準備や賃貸人への通知は不動産会社や管理会社に依頼できますが、自分でも忘れないように注意しましょう。
建物の老朽化で重大な危険があるケース
マンションやアパートの老朽化により建替えする場合は、立ち退きを求める正当な理由として認められています。しかし基本的には、入居者への立ち退き料の支払いは必要です。
しかしマンションやアパートの老朽化が進んでおり、そのまま入居者が住み続けることが危険であると判断された場合は、立ち退き料が不要だった判例があります(2016年9月6日東京地方裁判所判決)。
だからといって、どのケースでも立ち退き料が不要となるわけではありません。ケースバイケースになりますので注意しましょう。
ちなみにマンションやアパートを建て替える場合でも、倒壊の可能性がない段階で、収益アップのために建て替えする場合は、正当な理由とは認められません。
競売によりオーナーが変わったケース
競売によってマンションやアパートのオーナーが変わることがありますが、もし賃貸借契約よりも抵当権の方が先に設定されていた場合は、賃貸借契約は競売によって消滅します。
つまり競売によって大家が変わった場合は、新所有者と賃貸借契約を締結しない限り入居者は賃貸物件に住むことができません。
入居者は6ヶ月の猶予期間中に引越しをしなければならず、立ち退き料の支払いは基本的には不要です。
しかし法律上立ち退き料が不要であるとしても、入居者から立ち退き料を請求される可能性はあります。
立ち退き料についてトラブルになる可能性がある場合は、弁護士への相談も視野に入れましょう。
賃借人に立ち退きを求める際の交渉のポイント
立ち退きをスムーズに進めるためには、押さえるべき交渉のポイントがあります。ここでは代表的なポイントを紹介します。
- 契約満了の1年から6ヶ月前までに立ち退きの交渉を行う
- 立ち退きの正当事由を確認しておく
- 立ち退きのスケジュールに余裕を持たせる
- 立ち退きに関する条件を書面に残す
- うまくいかない場合は弁護士への依頼を検討する
契約満了の1年から6ヶ月前までに立ち退きの交渉を行う
入居者に立ち退きを求める場合、契約満了の1年から6ヶ月前までには立ち退きの交渉を始めるようにしましょう。
借地借家法によれば、賃貸借について契約期間の定めがある場合、当事者は1年前から6ヶ月前までに、相手側に更新しない旨を通知する必要があるとしています。もし通知しなかった場合は、従前の契約と同じ内容で更新したものとみなされてしまいます。
立ち退きの正当事由を確認しておく
入居者への立ち退き要求は、正当事由が必要です。立ち退き料を支払ったとしても、正当な事由がなければ、認められません。正当として認められる事由を確認し、事前にその事由に該当するのか確認しておきましょう。
立ち退きの正当事由として認められる可能性が高いのは、大家が自分もしくは家族が住むことを理由に退去を求めるケースや、マンションやアパートなど建物が老朽化していて、そのまま住み続けると危険なケースです。
立ち退きのスケジュールに余裕を持たせる
入居者の転居先が思うように決まらない可能性があり、そうなると引っ越しにも時間がかかります。立ち退きを入居者に求める場合は、スケジュールにゆとりを持って計画を立てましょう。
立ち退きに関する条件を書面に残す
立ち退きは後になって入居者とトラブルになるケースが多いため、入居者が立ち退きを了承した場合でも、立ち退きに関する合意書を作成し、書面で残すようにします。一般的には以下の内容を明記します。
- 賃貸借契約の解除することに合意した旨
- 退去日までの猶予期間
- 退去日に入居者が退去しなかった場合には損害金を請求すること
- 立ち退き料
- 立ち退き料の支払い期日
- 敷金の返還について
うまくいかない場合は弁護士への依頼を検討する
立ち退きの交渉が上手くいかない場合は、弁護士への依頼を検討しましょう。立ち退き交渉を専門としている弁護士事務所もあります。実績や専門性を確認して相談することをおすすめします。
この記事のポイント
- 立ち退き料の相場は?
立ち退き料は必ず支払わなければならないものではないため、厳密にいえば相場はありませんが、一般的な例では家賃の6カ月程度とされることが多いようです。
例えば賃料が1ヶ月10万円であれば、10万円×6ヶ月=60万円です。
詳しくは「立ち退き料の相場は?」をご覧ください。
- 立ち退き料を支払わなくてもいいのはどんな場合?
賃借人が賃貸契約違反をした、定期建物賃貸借契約が満了した、建物の老朽化で重大な危険がある、競売によってオーナーが変わったなどの場合は、立ち退き料を支払う必要はありません。
詳しくは「立ち退き料を支払わなくてもいいのはどんな場合?」をご覧ください。
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