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土地の権利書を紛失したらどうする?登記簿との違いも解説

執筆者プロフィール

桜木 理恵
資格情報: Webライター、宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、管理業務主任者

大学在学中に宅地建物取引士に合格。新卒で大手不動産会社に入社し、売買仲介営業担当として約8年勤務。結婚・出産を機に大手ハウスメーカーのリフォームアドバイザーに転身し約5年勤務。その他信託銀行にて不動産事務として勤務経験あり。現在は不動産の知識と経験を活かし、フリーランスのWebライターとして活動。不動産や建築にまつわる記事を多数執筆。「宅地建物取引士」「2級ファイナンシャル・プランニング技能士」「管理業務主任者」所持。

ざっくり要約!

  • 土地の権利書は「権利証」や「登記済権利証」などと呼ばれることもあるが、正式名称は「登記済証」
  • 土地の権利書は土地の売却時や相続時、住宅ローンの借り換え時などで必要となる

土地の権利書は非常に大切なものです。万が一権利書を紛失してしまったら、再発行できませんが、所有権を失うわけではありません。しかし悪用される可能性があるため、注意が必要です。

この記事では土地の権利書と登記簿の違いや、土地の権利書が必要になるタイミング、紛失したときの対処法、紛失した場合のトラブル防止策を紹介します。土地の権利証についてあらためて知っておきたいという方はぜひ参考にしてください。

土地の権利書とは

土地の権利書は、権利証や登記済権利書、登記識別情報通知書などいろいろな呼び方をしますが、どのような書類なのでしょうか。

土地や不動産の所有者であることの証明書

土地の権利書とは、土地の登記完了時に登記所(法務局)が土地の所有者に対して交付する書面で、登記名義人であることを証明する証明書です。

権利証や登記済権利証などと呼ばれることもありますが、正式には「登記済証」です。

昔は建物について登記しないこともありましたが、住宅ローンを借り入れする際は建物について登記する必要があるため、基本的には建物も同様に登記するのが一般的です。

また、2005年に施行された新不動産登記法によって、不動産登記についてもオンライン申請に対応できるように、登記済証に代わる本人確認する手段として登記識別情報の制度が導入されました。現在発行されるのはすべて登記識別情報通知書です。

登記識別情報通知書にはアラビア数字やその他の符号の12桁の組み合わせが記載されており、そこに目隠しシールが貼られています。第三者に盗み見られないように、シールははがさずに保管します。

登記済証と登記識別情報通知書は、呼び名も見た目も異なりますが、どちらも同じように不動産の所有者を証明するものです。

土地の権利書と登記簿の違い

土地の権利書は、土地の登記完了時に登記所(法務局)が土地の所有者に対して交付する書面ですが、一方で登記簿とは不動産の権利関係の履歴や土地の地積、建物の床面積などを記録した帳簿のことです。

法務局(登記所)へ申請すれば、誰でも取得することができます。土地と建物は別に登記されているため、土地・建物それぞれに登記簿があります。

現在登記簿は電子化され、インターネットでも証明書を取得できるようになりました。以前は登記簿の写しを登記簿謄本と呼んでいましたが、現在はデータから証明書を発行することになったため、「登記事項証明書」と呼ばれるようになりました。

土地の権利書が必要になるタイミング

土地の権利書が必要になるタイミングはおもに土地を売却するときや住宅ローンの借り換え、または相続のときです。それぞれ詳しく解説します。

  • 不動産を売却するとき
  • 住宅ローンの借り換えをするとき
  • 不動産の相続を行うとき

不動産を売却するとき

不動産を売却するときには、土地の権利書(登記済証もしくは登記識別情報通知書)が必要になります。

まず不動産会社に不動産査定を依頼するときに、提示を求められることがあります。

なくても査定依頼することはできますが、紛失した場合は不動産会社の担当者へは伝えておきましょう。

実際には不動産の所有権を移転等にするときに、土地の権利書が必要になります。

紛失したとしても所有権を失う訳ではありませんが、手続きが必要になりますので、早めに相談するようにしましょう。なお紛失した場合の対処法は、後半で紹介します。

住宅ローンの借り換えをするとき

住宅ローンの借り入れをしている場合、より安い金利の住宅ローンに借り換えることがあります。その場合は土地の権利書(登記済証もしくは登記識別情報通知書)が必要になります。

住宅ローンを借り入れする際は、金融機関が不動産に抵当権を設定します。その抵当権の設定を抹消・変更する際に、土地の権利書が必要になります。

つまり住宅ローンの借り換えをする際は、抵当権抹消や設定のための登記費用(登録免許税・司法書士への報酬)、金融機関への事務手数料がかかります。

不動産の相続を行うとき

相続が発生し、不動産の相続登記をする際、基本的には土地の権利書(登記済証もしくは登記識別情報通知書)は不要です。

しかし被相続人の住所を証明できないときや遺贈により相続登記をする際は、登土地の権利書が必要になります。

遺贈とは、被相続人の遺言によって遺産のすべてもしくは一部を譲ることです。譲る相手は相続人や特定の個人とは限りません。

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土地の権利書を紛失した場合の対処法

土地の権利書(登記済証もしくは登記識別情報通知書)は再発行できませんが、所有権を失ってしまうわけではありません。

権利書を紛失したときの対処法として、3つの方法を紹介します。どの方法もある程度時間がかかるため、不動産の売却を検討している場合は、早めに対処法を実践しておくことをおすすめします。

事前通知制度を利用する

事前通知制度とは、登記所(法務局)が土地の権利書(登記済証もしくは登記識別情報通知書)が提供されない申請について、その登記申請が登記名義人の意思に基づくものなのかを確認したうえで登記手続きをする方法です。

具体的には土地の権利書を添付せず、添付できない理由を記載して登記申請手続きを行います。

その申請に対して登記官は、登記があった旨とその登記が登記名義人の意思に基づくものであるのであれば、一定期間内に申し出るように登記名義人に通知します。

そして書面で申請した場合は、事前通知書に登記名義人が署名・捺印して登記所(法務局)へ返送します。

登記名義人は事前通知書が発送されてから、原則2週間以内に申出する必要があり、登記官はその書面を受領した後に登記を実行します。

事前通知制度は費用がほぼかかりません。しかし登記までに時間がかかるうえ、不確かな要素もあります。不動産の所有権移転について事前通知制度を利用する場合は、事前に買主側に了承してもらう必要があるでしょう。

資格者代理人による本人確認情報制度を利用する

資格者代理人による本人確認情報制度とは、土地の権利書(登記済証もしくは登記識別情報通知書)を紛失した場合などに、司法書士などに本人確認をしてもらい、その本人確認情報を添えて登記を申請する制度です。

具体的には、司法書士など資格代理人が申請者である登記名義人と面談し、聞き取りなどによって本人確認します。登記名義人本人であることが確認できれば、司法書士は本人確認情報を作成します。

司法書士は、登記官に登記申請者が登記名義人であることを確認できる情報を提供し、登記官が問題ないと判断できれば、不動産移転登記がなされます。

登記名義人本人であると確認するために、運転免許証やパスポートなどを確認します。本人確認情報制度を司法書士へ依頼する場合、司法書士によって異なりますが所有権移転登記費用とは別に5~10万円かかるのが一般的です。

公証人による本人確認を行う

土地の権利書(登記済証もしくは登記識別情報通知書)を紛失した場合に、公証人に本人確認してもらう方法があります。

登記名義人が公証人の面前で登記申請の委任状等に署名・捺印して、その書面が真正なものであることを公証人に認証してもらう方法です。その後公証人によって認証された登記委任状を司法書士に託し、登記所(法務局)へ登記申請します。

公証人に認証してもらう場合は数千円の手数料がかかりますが、司法書士へ依頼するよりかなり費用を抑えることができます。

なお公証役場は全国にありますが、平日しか手続きできません。また通常予約が必要になるので、早めに手続きすることをおすすめします。

土地の権利書を紛失した場合のトラブル防止策

前述した通り、土地の権利書を紛失しても、その所有権を失うわけではありません。しかし第三者に権利書を悪用される恐れがあります。

権利書の紛失に気付いたら、不動産売却の予定がない場合でも、なるべく早く対処するようにしましょう。

最後に、権利書を紛失した場合のトラブル防止策を2つ紹介します。また不動産の売却を予定している場合は不動産会社にも紛失した旨を伝えて、事前に相談しておくことをおすすめします。

  • 不正登記防止の申出を行う
  • 登記識別情報の失効の申出を行う

不正登記防止の申出を行う

不正登記防止の申出とは、土地の権利書が不正に登記される可能性があるときに利用できる制度です。

登記識別情報通知書には、アラビア数字やその他の符号の12桁の組み合わせが記載されています。シールがはがされていて盗み見された可能性がある場合や、登記済証や印鑑証明書が盗難された場合に、不動産を管轄する登記所(法務局)へ不正登記防止の申出を行います。

不正登記防止の申出をした場合は、申出から3ヶ月以内に不動産について登記申請があった場合、申出をした人に登記申請があった旨を通知し、登記申請が登記名義人本人によるものなのか確認します。

継続して不安がある場合は、3ヶ月ごとに申出する必要があります。基本的には登記名義人が登記所(法務局)に出向いて申出を行わなければなりませんが、やむを得ない事情がある場合は、代理人が申出することもできます。

なお不正登記防止の申出に費用はかかりません。紛失に気付いたら、なるべく早く不正登記防止の申出をするようにしましょう。

登記識別情報の失効の申出を行う

土地の権利書(登記識別情報通知書)を紛失しても、所有権を失うわけではありませんが、悪用される可能性はあります。

登記識別情報通知書を紛失したときや、アラビア数字やその他の符号の12桁の組み合わせを盗み見された可能性がある場合に、登記識別情報の効力を失効させる方法があります。

具体的には、不動産を管轄する登記所(法務局)へ登記識別情報の効力を失効させる申出を行います。

登記識別情報を一度失効させると、再発行はできません。不動産を売却するときは、資格者代理人による本人確認情報制度や公証人による本人確認、もしくは事前確認制度が必要になります。

権利書や登記識別情報通知書を紛失すると、費用や労力がかかります。保管にはくれぐれも注意しましょう。

この記事のポイント

土地の権利書が必要になるタイミングは?

土地の権利書が必要になるタイミングは、基本的に不動産を売却するとき、住宅ローンの借り換えをするとき、不動産の相続を行うときです。

詳しくは「土地の権利書が必要になるタイミング」をご覧ください。

土地の権利書を紛失した場合はどうしたらいい?

事前通知制度を利用する、資格者代理人による本人確認情報制度を利用する、公証人による本人確認を行うといった方法で対処することができます。

ただし、いずれも手続きにある程度時間がかかるため、不動産の売却を検討している場合は、早めに対処しておきましょう。

詳しくは「土地の権利書を紛失した場合の対処法」をご覧ください。

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