ざっくり要約!
- 店舗兼住宅には、仕事と家事・育児が両立しやすい、建築費などを経費として計上できる、テナント料がかからないなどのメリットがある
- 店舗兼住宅で住宅ローンを利用したい場合、住居部分の床面積が全体の1/2以上であることや、店舗を自己使用することが原則求められる
店舗兼住宅とは、同じ建物内に生活空間と事業用スペースがあり、双方を行き来できる作りの建物をいいます。
店舗兼住宅は自宅の一部が事業用のスペースになるため、通勤時間がかかりません。また自宅と店舗を別々に設けるよりも費用を抑えやすいため、自営業の方や店舗を開店したい人におすすめです。
しかしメリットがある一方で、デメリットもあるので注意が必要です。この記事では、店舗兼住宅のメリットとデメリット、住宅ローンを借り入れる際の条件、税制優遇を受けるための要件を解説します。
また店舗兼住宅のおすすめの間取りや、店舗経営を成功させるためのポイントも紹介します。店舗兼住宅の建築を予定している方や、これから開業を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
記事サマリー
店舗兼住宅(店舗併用住宅)とは
まず店舗兼住宅の特徴と、店舗併用住宅との違いを解説します。
生活空間と事業用スペースが存在する建物
店舗兼住宅とは、同じ建物内に生活空間と事業用スペースがあり、双方を自由に行き来できる作りの建物をいいます。
一方で店舗併用住宅は、生活空間と事業用スペースがありながら、それぞれが独立して使用できる建物をいいます。
店舗兼住宅と店舗併用住宅に大して違いがないようにも思えますが、実は建築できる地域(用途地域)が異なるため、事前に用途地域を確認する必要があります。
店舗兼住宅にする場合、1階を店舗や事務所にして2階を住宅にするプランや、1階の一部を店舗にし、残りの1階と2階すべてを住居とするプランも考えられます。
生活空間と事業用スペースをそれぞれ独立させて店舗併用住宅にすれば、将来的に事業用スペースを賃貸して、家賃収入を得ることもできます。
出典:改正宅地建物取引業法に 関するQ&A ~ 「宅地建物取引業法」改正に伴う新たな制度に関して ~|国土交通省
店舗兼住宅のメリット
店舗兼住宅の代表的なメリットを3つ紹介します。
- 仕事と家事・育児が両立しやすい
- 建築費などを経費として計上できる
- テナント料がかからない
仕事と家事・育児が両立しやすい
店舗兼住宅の店舗部分で仕事をする場合、通勤時間はかかりません。スキマ時間で家事を片付けることもでき、また学校から帰宅した子どもを迎えることができます。
仕事場に通勤して仕事をするスタイルに比べて、仕事と家事や育児を両立しやすいのがメリットです。
特に子どもが小さいときは、店舗部分で面倒を見ることもできます。子どもが生まれても仕事を続けやすいことも、店舗兼住宅であることのメリットといえます。
建設費などを経費として計上できる
店舗の家賃は経費として計上できるため節税になりますが、店舗兼用住宅を建築した場合、建築費用のうち店舗に相当する部分は減価償却費として計上できます。
また、店舗部分に相当するローンの利息についても経費として計上できるため、十分節税効果を期待できます。
土地や建物を所有する人に対して、毎年固定資産税や都市計画税がかかります。店舗に対して軽減措置はありませんが、住宅の敷地に対しては特例措置があり、一定の要件を満たすことによって店舗兼住宅も軽減措置が適用になります。
固定資産税については、後半で詳しく解説します。
テナント料がかからない
店舗兼住宅で仕事ができれば、店舗を借りる際の賃料や初期費用がかからないのがメリットです。
ちなみに店舗を借りる場合、毎月の賃料の他に保証金や礼金、仲介手数料がかかります。また内装工事する場合はその費用もかかり、退去の際は原状回復費用が発生します。
保証金は家賃の数ヵ月分~12ヶ月分となることもあり、店舗を借りる場合に初期費用が大きな負担になるため、開業のネックになることがあります。
店舗兼住宅のデメリット
店舗兼住宅の代表的なデメリットを3つ紹介します。
- 間取によっては生活に不便
- セキュリティを厳重にする必要がある
- 建てられるエリアと店舗面積が限られる
間取りによっては生活に不便
店舗兼住宅を建てる場合、一つの敷地に店舗と住宅の間取りを配置しなければなりません。希望通りの間取りを配置することや、十分な床面積を確保することが難しい場合があります。
何かを優先すると、そのしわ寄せがどこかに生じます。生活するのに不便な間取プランにならないように注意が必要です。
店舗兼住宅の設計プランを依頼する際は、店舗兼住宅の施工実績があり、生活する人の立場になってアドバイスしてくれる会社へ依頼することをおすすめします。
セキュリティを厳重にする必要がある
業種によっては店舗に不特定多数の人が出入りします。また住居に比べて、店舗は外部に対して開放的な作りになっています。
店舗から住居部分に自由に行き来できる間取りになっている場合は、特にセキュリティを厳重にする必要があります。
防犯カメラの設置やドアの施錠など、防犯対策をするようにしましょう。
建てられるエリアと店舗面積が限られる
店舗の面積や間取りのプランによっては、建てられるエリア(用途地域)に制限があります。
店舗兼住宅は一定の要件を満たすことによって、低層の住宅しか建てられない地域(第一種低層住居専用地域)にも建てることができます。しかし店舗併用住宅は、建てることができません。
第一種低層住居専用地域に店舗兼住宅を建てる際は、室内で行き来できること、店舗部分の面積が住宅部分と同等もしくは小さいこと、店舗部分の面積が50㎡以下であることが条件になります。
店舗兼住宅や店舗併用住宅を建てる場合は、用途地域を確認した上で施工業者に相談することをおすすめします。
店舗兼住宅は住宅ローンが通らない?
店舗兼住宅は住宅ローンが使えるのでしょうか。住宅ローンが使えなければ、そもそも住宅ローン控除も受けられません。
店舗兼住宅は住宅ローンが利用できるのか、また住宅ローン控除が適用になる範囲を解説します。
条件次第で住宅ローン利用可能
住宅ローンは、住宅を取得する際に利用できるローンです。その判断は金融機関によって異なりますが、店舗兼住宅の店舗部分に対しては金利が安い住宅ローンが使えず、事業用ローンを提案されることがあります。
また店舗兼住宅に対して住宅ローンを利用できる場合でも、住居部分の床面積が全体の1/2以上であることや、店舗を自己使用することが原則求められます。
金融機関によって住宅ローンの条件や金利が異なるため、早めに金融機関に相談しておきましょう。
店舗兼住宅は住宅ローン控除の適用対象
住宅ローン控除を受けるためには、まず借入期間が10年以上であることなど一定の要件を満たしていることが前提になります。
その上で店舗兼住宅の場合、住宅ローン控除が適用になるのは、住宅部分に対してです。
住宅ローンの借入額をそれぞれの面積で按分して、対象となる金額を計算します。
例えば、住宅ローンの年末のローン残高が4,000万円で、住宅部分の面積が全体の3/4である場合は「4,000万円×3/4」と計算し、3,000万円が対象になります。
出典:住宅ローン控除を受ける方へ|国税庁
店舗併用住宅を新築した場合|国税庁
店舗兼住宅にまつわるQ&A
店舗兼住宅にまつわるよくある質問をQ&A形式で紹介します。
- 固定資産税の軽減措置は受けられる?
- 店舗兼住宅はどんな間取りがおすすめ?
- 店舗兼住宅で店舗経営を成功させるポイントは?
固定資産税の軽減措置は受けられる?
固定資産税とは、土地や建物を所有している人に対して課税される税金です。課税標準額に対して1.4%の税率がかかります(自治体により税率が異なる場合あり)。
都市計画税とは、市街化区域内に土地や建物を所有している人に対して課税される税金です。課税標準額に対し0.3%の税率がかかります。自治体は必要に応じて異なる税率を定めることができますが、0.3%を超える税率にはできません。
店舗やその敷地に対して固定資産税の軽減措置はありませんが、住宅用地に対しては特例措置があります。200㎡までは固定資産税は1/6、都市計画税は1/3に軽減されます(200㎡を越える部分については、固定資産税は1/3、都市計画税は2/3に軽減)。
店舗兼住宅(店舗併用住宅)の場合は、住宅部分の床面積が全体の1/4以上であれば、住宅と条件は異なりますが軽減措置を受けることができます。
店舗兼住宅を建築する場合はなるべく固定資産税等の軽減措置を受けられるように、条件を確認したうえで計画するようにしましょう。
・「固定資産税」に関する記事はこちら 固定資産税とは?新築一戸建てやマンションの計算事例や税金が軽減される条件を解説! |
出典:不動産取得税|東京都主税局
固定資産税・都市計画税(土地・家屋)|東京都主税局
店舗兼住宅はどんな間取りがおすすめ?
店舗兼住宅の間取りを検討する場合、玄関を共有するかどうかで、そのプランは異なります。
建築コストを抑えることを優先するのであれば、設備を共有にすることによって費用は削減できます。
プライバシーや防犯面を重視するのであれば、店舗と住宅の入り口は別に設けることをおすすめします。店舗のエントランスは一般的に前面道路に面するところに設けますが、住宅の玄関は道路から見て建物の側面に配置すると、プライバシーを守りやすくなります。
なるべく1階の店舗面積を大きくしたいときは、住宅の玄関を2階にすることで、店舗に使える面積が大きくなります。
店舗兼住宅は見栄えも重要です。洗濯物など生活感が出るものは見えないようにしましょう。洗濯を干すためのバルコニーを建物の裏側に設けるか、洗濯乾燥機を活用しましょう。
店舗兼住宅で店舗経営を成功させるポイントは?
住宅と店舗兼住宅とでは目的が異なるため、建築する上で重視するポイントが異なります。最後に、店舗経営を成功させるためのポイントを4つ紹介します。
1. 住環境よりも集客力を重視する
店舗兼住宅で事業を営む場合、その事業の内容にもよりますが、住環境よりも集客力を重視する必要があります。
例えば目につきやすい大通りの路面店や、商店街の通り沿いなど、認知されやすい立地を検討しましょう。
業種やコンセプトにもよりますが、基本的には看板を設置して、集客しやすい店舗づくりを心がけましょう。
2. 敷地の間口は広く、エントランスは明るくする
店舗兼住宅を建てる場合、道路に面する間口が広ければ、その分周囲に認知されやすくなります。またエントランスも広くし、なるべく道路から中の様子が見える作りにしましょう。
ガラス戸や大きな窓を設置するのもおすすめです。明るい店内はそれだけで安心感があり、入店しやすい雰囲気を演出できます。
建物は柱が少ない構造を選び、店舗に使える面積を有効に使いましょう。また天井を高くすると開放感が生まれ、気持ちのよい空間になります。
3. 駐車場を設ける
立地や業種によっては、駐車スペースを設けましょう。駐車できる台数も重要ですが、車が乗り入れやすさも確認しましょう。駐車にストレスを感じる場合、2回目以降の来店が難しくなります。
駐車場が用意できない場合は、近くにコインパーキングがあると便利です。
4. 無理のない資金計画
事業が軌道にのるまで、ある程度時間がかかる可能性があります。立地や店舗の見栄えも大切ですが、無理な資金計画は破綻する恐れがあります。
建築費用や土地の購入費用はバランスを考えて計画し、無理のない資金計画を立てましょう。
この記事のポイント
- 店舗兼住宅は住宅ローンが通らないって本当ですか?
住宅ローンは、住宅を取得する際に利用できるローンです。金融機関によって異なりますが、店舗兼住宅の店舗部分に対しては金利が安い住宅ローンが使えず、事業用ローンを提案されることがあります。
また、住宅ローンを利用できる場合でも、住居部分の床面積が全体の1/2以上であることや、店舗を自己使用することが原則求められます。
詳しくは「店舗兼住宅は住宅ローンが通らない?」をご覧ください。
- 店舗兼住宅は固定資産税の軽減措置を受けられる?
店舗やその敷地に対して固定資産税の軽減措置はありませんが、住宅用地に対しては特例措置があります。
200㎡までは固定資産税は1/6、都市計画税は1/3に軽減されます(200㎡を越える部分については、固定資産税は1/3、都市計画税は2/3に軽減)。
店舗兼住宅(店舗併用住宅)の場合は、住宅部分の床面積が全体の1/4以上であれば、住宅と条件は異なりますが軽減措置を受けることができます。
詳しくは「固定資産税の軽減措置は受けられる?」をご覧ください。
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