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法面とは?売却・購入のポイントや法面工事の種類を解説

執筆者プロフィール

竹内 英二
不動産鑑定士

不動産鑑定事務所および宅地建物取引業者である(株)グロープロフィットの代表取締役。不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、住宅ローンアドバイザー、中小企業診断士の資格を保有。

ざっくり要約!

  • 法面とは川の堤防の斜面部分や田畑の中に通る道路の両脇などにある斜面部分のこと
  • 購入した土地にコンクリートに覆われていない法面が存在する場合、擁壁を造成しなければいけないことがある

法面(のりめん)とは、土地の傾きのある部分のことを指します。
敷地内に斜面があると、傾斜角度によってはその部分を利用しにくくなることが多いです。

大きな傾斜がある土地は、利用効率が落ちるため、土地価格の減価要因となります。
建築の障害となる斜面を含む土地は、売主は減額の可能性を知っておくことが注意点です。
一方で、買主は斜面を含む土地がどの程度有効に活用できるかを見極めてから購入することが注意点となります。
この記事では、「法面」を含む土地について解説します。

法面(法地)とは

最初に、法面の特徴について解説します。

切土や盛土によって作られた人工的な斜面

法面は、敷地の中で斜面になっている部分のことです。

広辞苑によれば、法面は切土や盛土などによってつくられた斜面と解説されています。
例えば、川の堤防の斜面部分や田畑の中に通る道路の両脇の斜面部分が法面です。
一般的には「のりめん」と読みますが、「のりづら」と呼ぶこともあります。

また、土地の法面は法地(のりち)とも表現されることもあります。法地は、実際に宅地として利用できない斜面のことです。

法地というと、切土や盛土によって人工的に作られた斜面の他、自然の地形によるものも含まれます。そのため、法地の方が法面よりもやや広い概念の斜面を表すことになります。

英語にすると、法面は「slope face」、法地は「slope land」と訳されることが多いようです。英語でも法面が一部の面を指しているのに対し、法地はやや広い部分を指している概念であるといえます。

ただし、日本語の一般用語としては法面も法地もほぼ同義で使われていることが多いです。

自然にできた斜面か、人工的にできた斜面かに関わらず、「敷地の中にある斜面の部分」を法面あるいは法地と表現されていることがよくあります。

一般的に、土地の売買で問題となるのは、敷地内に存在する自然にできた斜面です。つまり、法地(自然斜面を含む)の方が問題視されることが多いといえます。

人工的に斜面が作られた法面のある土地の場合、法面の上の土地は平たんで使いやすくなっていることから、あまり問題とならないことも多いです。

なお、建築用語にも、法面という言葉があります。建築用語の法面は「地面の掘削の過程で生じる地下の斜面の部分」のことです。

建築工事で土工事をする際、根切りと呼ばれる基礎をつくるために地盤の掘削を行います。根切りによって生じた法面は、基礎を作った後に埋め戻されます。

埋め戻しや盛土をしていないむき出しの状態の自然な法面のことを、地山(じやま)と呼びます。

法面勾配とは

法面勾配とは、法面の傾きのことです。
角度ではなく、底辺と高さの数値の比率で表すことが特徴となっています。

直角三角形の高さが「1」、底辺が「n」の場合、法面勾配は「1:n」と表現されます。
法面勾配が「1:1」の場合は、45度の傾斜角を表します。

法面整形とは

法面整形とは、法面の余分な部分の土地を切り取る仕上げの土工事のことです。工事の終盤においてショベルカーで余分な土を削ぎ落し、斜面を綺麗に仕上げていくのが一般的です。

堤防等の大きな法面を作る際は、少し余分な部分を残しながら切土または盛土の工事を行っていきます。

法面と崖地の違い

法面も崖地も、斜面の部分を表すという意味では同じです。
ただし、崖というと一般的には勾配が30度を超える土地のことを指します。

全国の自治体では、崖の崩落から建築物の安全確保を図るために「がけ条例」が定められていることが多いです。
がけ条例では、崖のことを「勾配が30度を超える土地」と定めていることがよくあります。

法地があるような土地は、周辺部も傾斜が多いため、実際には敷地内の法面ではなく隣地の崖が不動産取引上のネックになることも多いです。

がけ条例では、隣地の崖の崩壊からも身を守るため、隣地の崖から一定距離を離さないと建物を建築できないという規定になっていることがよくあります。

つまり、自分の土地が平たんであっても、隣地が崖の場合、隣地の崖に近い部分は実質的に利用できない土地になります。

がけ条例では、高さが2mを超え、角度が30度を超えていると規制の対象になる崖となることが多いです。

一般的な市街地であっても、隣地に2mを超えるがけが存在するケースはよくあります。隣地にがけ条例に該当する崖がある場合には、その崖から一定距離を離さないと建物を建てることができません。

つまり、有効敷地が大幅に減るということです。

土地を購入する際は、購入予定の土地に崖があるか否かだけでなく、隣地に崖がないかどうかも十分に注意する必要があります。

法面工事(法面保護工)の種類

法面工事とは、斜面が崩壊・落石しないように、保護・強化・安定化を図る工事のことです。
この章では、法面工事の種類について解説します。

植生工

植生工とは、植物の根によって法面表層部の保護・安定化を図る工事のことを指します。
具体的には苗木を植えて植物を繁殖させることで、法面の強化を図る工法です。

植生工は、山の斜面が木の根っこにより強度が保たれ土砂崩れがしにくくなっている自然の力を利用しています。
植物が成長すれば、風雨による法面の浸食を防ぐ役割も果たしてくれます。

構造物工

構造物工とは、モルタルやコンクリートによって法面の保護・強化・安定化を図る工事のことです。
コンクリート等の構造物によって法面を強化することから、構造物工と呼ばれています。

構造物工は、植生工とは異なり強度を上げる部分の深さを人工的に調整できることから、地中の深い部分の崩壊等を防ぎたいときに有効な補強方法です。

排水工

排水工は、法面の上部に降った雨を地表に排水することで、法面の風化や浸食、崩壊を防ぐ工事のことです。
人工的に作った法面は、上部の土地の降った雨をせき止めてしまうと内部から水圧がかかって斜面が崩壊する可能性があります。

排水工は、法面内部から水圧がかからないように水を逃すための排水路を作る工事になります。

不動産広告上の法面の注意点

チラシやインターネット広告等、不動産の広告では消費者が物件を正しく選択できるようにするために、表現の規制が定められています。
この章では、不動産広告を見る上での法面に関する注意点について解説します。

不動産広告の宅地面積には法面も含まれる

不動産の広告では、傾斜地を含む土地の広告表現に規制があります。
具体的には、傾斜地の割合が当該土地の面積の概ね30%以上を占める場合には、傾斜地を含む旨および傾斜地の割合を明示しなければならないことになっています。

例えば、100坪の土地のうち、40坪が傾斜地であれば傾斜地を含む旨と割合が表示されるということです。
逆に、100坪の土地のうち、20坪しか傾斜地がない場合は、傾斜地を含むことは表示されません。

ただし、傾斜地の割合が30%以上であるか否かに関わらず、傾斜地を含むことにより当該土地の有効な利用が著しく阻害される場合は、傾斜地を含む旨と割合が明示されます。

また、傾斜地の広告ルールは、マンションや別荘地では適用されない点も特徴です。
別荘地は傾斜地を含む山の上にあることが多いですが、別荘地の場合には30%以上の傾斜地があっても傾斜地の表示がされていないことになります。

土地購入後に造成工事が必要となることも

傾斜地を含む土地は、購入後に造成工事が必要となる場合もあります。
例えば、コンクリートに覆われていない法面が存在する場合、擁壁を造成しなければいけないこともあります。

また、がけ条例の対象となる崖を含む土地を購入する場合は、特に注意が必要です。
がけ条例では「自分の土地に崖があり、崖の上の土地に建物を建てる場合、崖から一定距離を離さないと建物を建てられない」と規制されていることがよくあります。

加えて、隣地に崖があり、崖の下の土地に建物を建てる場合も、崖から一定距離を離さないと建物を建てられないと規制されていることも多いです。

がけ条例は有効面積を大きく左右することから、どのような影響が生じるのか購入前にしっかりと確認する必要があります。

法面がある土地の売却・購入のポイント

法面がある土地の売却・購入のポイントについて解説します。

法面がある土地を売却したい場合

法面のある土地の売却では、売却価格が安くなる可能性があるのが注意点です。
特に崖地(傾斜度が30度)は土地の利用効率を落とす要因となるため、崖地を含む土地は価値が下がります。

参考までに、崖地を含む土地の相続税評価額を求める際に利用される「がけ地補正率」は下表のようになっています。

崖地割合西
0.10以上0.96 0.95 0.94 0.93 
0.20以上0.920.910.90.88
0.30以上0.880.870.860.83
0.40以上0.850.840.820.78
0.50以上0.820.810.780.73
0.60以上0.790.770.740.68
0.70以上0.760.740.70.63
0.80以上0.730.70.660.58
0.90以上0.70.650.60.53

出典:付表8 がけ地補正率表(平3課評2-4外・平11課評2-12外改正)|国税庁

がけ地補正率は、斜面の向きによって減額割合が異なります。

例えば、崖地割合が「0.10以上0.20未満」で、斜面が北向きの場合には、がけ地補正率は0.93です。つまり、平坦な土地よりも7%減額されるということです。崖地割合とは、対象地の中に含まれる崖地の面積の割合のことを指します。

実際の取引では、必ずしもがけ地補正率通りに減額されるわけではありませんが、減価の考え方の根拠にはなっています。

減価の割合は、崖地割合が大きいほど高くなり、また南向き斜面よりも北向き斜面の方が高いです。

法面がある土地を購入したい場合

法面のある土地を購入する場合、購入後に造成工事が必要となるケースがあります。
参考までに国税庁が開示している東京都における傾斜地の宅地造成費を示すと、下表の通りです。

傾斜度金額
3度超~5度以下20,300 円/平米
5度超~10度以下24,700 円/平米
10度超~15度以下37,600 円/平米
15度超~20度以下52,700 円/平米
20度超~25度以下58,400 円/平米
25度超~30度以下64,300 円/平米

出典:令和5年分(東京都)宅地造成費の金額表|国税庁

また、法面のある土地を購入する場合には、事前に一度設計者に建物プランを相談することをおすすめします。設計者に相談すれば、がけ地条例を考慮した有効面積がどの程度あるかを回答してくれます。

がけ条例の存在はかなりネックになりますので、購入前はがけ条例の影響を正確に把握するようにしましょう。

この記事のポイント

法面(法地)とはどんな土地?

法面は、敷地の中で斜面になっている部分のことです。

例えば、川の堤防の斜面部分や田畑の中に通る道路の両脇の斜面部分が法面に当たります。

また、土地の法面は法地(のりち)とも表現されることもあり、実際に宅地として利用できない斜面を指します。

詳しくは「法面(法地)とは」をご覧ください。

不動産広告上の法面の注意点は?

不動産の広告では、傾斜地を含む土地の広告表現に規制があります。

具体的には、傾斜地の割合が当該土地の面積の概ね30%以上を占める場合には、傾斜地を含む旨および傾斜地の割合を明示しなければならないことになっています。

ただし、傾斜地の割合が30%以上であるか否かに関わらず、傾斜地を含むことにより当該土地の有効な利用が著しく阻害される場合は、傾斜地を含む旨と割合が明示されます。

詳しくは「不動産広告上の法面の注意点」をご覧ください。

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