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不動産の取引態様とは?仲介手数料との関係も紹介

執筆者プロフィール

竹内 英二
不動産鑑定士

不動産鑑定事務所および宅地建物取引業者である(株)グロープロフィットの代表取締役。不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、住宅ローンアドバイザー、中小企業診断士の資格を保有。

ざっくり要約!

  • 取引態様とは対象となる物件広告を出している不動産会社の立場を示すもの
  • 取引態様ごとに仲介手数料の有無が変わる

チラシやインターネット広告等の不動産広告の中には、取引態様が記載されています。
取引態様とは、広告を掲出している不動産会社の立場を表したものです。

取引態様は仲介手数料の有無にも関わることから、意味を知っておくと物件広告の見方も変わってきます。
特に中古物件の購入者にとっては、物件の売主が誰かなのかが分かる取引態様は重要な情報です。

取引態様とは一体、どのようなものなのでしょうか。
この記事では、「取引態様」について解説します。

態様(取引態様)とは?

はじめに、取引態様の意味を解説します。

不動産会社が取引する際の立場を示すもの

取引態様とは、物件広告に必ず記載されている情報です。
対象となる物件広告を掲出している不動産会社の立場を表示したものが、取引態様となります。

いわゆる不動産会社とは、宅地建物取引業の免許を有している会社のことを指します。
宅地建物取引業者は、自ら物件を反復継続して売却することもできますが、媒介や代理も行うことができます。

媒介とは仲介のことであり、売主(貸主)と買主(借主)との間を仲立ちして取引を成立させる行為のことです。
代理とは、売主(貸主)の代理人となって取引を成立させる行為を指します。

つまり、宅地建物取引業者は、自ら売主や貸主となることもできれば、媒介や代理の立場として不動産を扱うことができるのです。

物件Aが売りに出されている場合、物件Aは不動産会社が自ら売主となっている可能性もあれば、仲介として関与している可能性もあります。

不動産会社がどのような立場で物件に関与しているかは、外部からは分かりません。
そこで、不動産会社の立場を明らかにするのが、取引態様なのです。

不動産広告では取引態様の種類の明示が義務に

不動産会社は、売主(貸主)や代理、媒介といった複数の立場で物件に関与することができます。

例えば、不動産会社から直接物件を購入したい場合、広告を見ていちいち不動産会社に立場を確認するのは不都合です。

そこで、不動産の広告は「不動産の表示に関する公正競争規約(以下、公正競争規約)」によって、広告に必ず取引態様を記載しなければいけないと定められています。

公正競争規約とは、不動産業界における広告の自主規制ですが、公正競争規約に従うことで景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)を遵守していることになります。

つまり、取引態様を記載しないと景品表示法に違反することになるため、不動産広告には必ず取引態様が記載されるということです。

ここでいう不動産広告とは、チラシだけでなく、インターネット広告等を含めたあらゆる物件広告が該当します。インターネット広告でも、よく見ていくと取引態様は必ず記載されています。

なお、取引態様の明示義務は、宅地建物取引業法第34条にも定められており、不動産会社にとっては遵守すべき重要な事項です。

態様(取引態様)の種類

ここでは、取引態様の種類と特徴について解説します。

仲介(媒介)

「仲介(媒介)」とは、売主(貸主)と買主(借主)との間に立ち、売買契約(賃貸借契約)の成立に向けて尽力する行為のことで、「あっせん」とも表現されます。仲介(媒介)はあっせんの法律用語となります。

通常、仲介物件の取引態様は法律用語である「媒介」と記載されています。
つまり、媒介と表示されていれば、その広告を掲出している不動産会社とは別の人が売主(貸主)になっているということです。

売買の媒介には、一般媒介と専任媒介、専属専任媒介の3種類があります。

一般媒介とは、依頼者が複数の不動産会社に重ねて仲介を依頼できる契約のことです。
専任媒介または専属専任媒介は、依頼者が1社の不動産会社にしか仲介を依頼できない契約になります。

専任媒介と専属専任媒介との主な違いは、自己発見取引ができるか否かという点です。
自己発見取引とは、売主が自ら買主を見つけることです。専任媒介は自己発見取引ができ、専属専任媒介は自己発見取引ができないことになっています。

インターネットで物件を探していくと、たまに同じ物件を複数の不動産会社がそれぞれ別に広告を掲出しているケースを見かけることがあります。これは、売主が一般媒介で売却を依頼しているためです。

物件も売主も同じですが、仲介で関与している不動産会社が複数存在するため、広告も複数存在しているという現象になります。

また、媒介の取引態様の表示では、単に「媒介」という表示だけでなく、「専任媒介」や「専属専任媒介」という表示をしても良いことになっています。

専任媒介や専属専任媒介となっている物件は、他社に割り込まれて物件を他の人に買われてしまう可能性が低いため、買主はじっくり検討しやすいです。

売主が他社には依頼していないことから、売主と1対1の関係が成立しやすく、場合によっては価格交渉もしやすいケースもあります。

よって、仲介物件では、専任媒介や専属専任媒介の物件を優先的に検討してみるのも一つの考え方です。

代理

「代理」とは、不動産会社が売主(貸主)の代理人となって取引を成立させる行為のことです。中古物件の場合、売買では代理の取引はほとんどありません。

一方で、賃貸物件では代理は多いです。賃貸の媒介には、専任媒介や専属専任媒介といった1社だけが独占して仲介を行う制度がないため、代理が専任媒介や専属専任媒介のような役割を果たしています。

一般的には、賃貸物件を管理している不動産会社が代理となり、貸主を募集しているケースが多いです。

借主の立場からすると、媒介も代理もほとんど違いがありません。ただ、代理は貸主に変わって自ら判断をすることができ、例えば入居審査も不動産会社が貸主に変わって判断ができます。

そのため、代理の方が媒介よりも比較的スムーズに契約が進む傾向はあります。

売主(売買)

「売主」と記載されている広告は、広告主である不動産会社が自ら売主となっています。

不動産会社が売主の場合、不動産会社は最低2年以上の契約不適合責任を負わなければいけないことになっています。契約不適合責任とは、契約の目的とは異なるものを売ったときに売主に課される責任のことです。

個人が売主の物件は契約不適合責任が免責されてしまうことも多く、購入後の不具合を発見しても売主に対して契約不適合責任を問えないこともあります。

最低2年は契約不適合責任を負うことになる不動産会社は、契約不適合責任を問われないようにするために不具合等をしっかり修繕したうえで売却していることが通常です。

そのため、個人が売主の物件よりも不動産会社が売主の物件の方が、不具合リスクが少なく、安心して購入しやすくなっています。

また、不動産会社が売主となっている中古物件の中で、一定の要件を満たすリフォーム等が行われている物件は「買取再販物件」と呼ばれています。

個人が売主となっている物件の住宅ローンの控除期間は10年であるのに対し、買取再販物件は住宅ローンの控除期間が13年であり、買取再販物件の方が節税には有利です。

不動産会社が売主の物件では、契約不適合責任や住宅ローン控除の面で有利であることから、取引態様が売主となっている物件を優先的に検討するのも一つの選択といえます。

貸主

「貸主」と表示されているのは、広告主である不動産会社が自ら貸主となっている物件です。

プロの不動産会社が貸主であり、貸主が借地借家法等の法律を十分に理解していることから、安心して借りやすいといえます。借地借家法とは、借主を守るための法律です。

不動産会社が貸主の物件は、法律をあまり理解していない可能性がある個人が貸主となっている物件よりもトラブルは発生しにくいといえます。

代理や仲介(媒介)では宅建業の免許が必要

不動産の媒介や代理、反復継続を伴う売却を行うには、宅地建物取引業の免許が必要です。
宅地建物取引業の免許を取得するには、例えば事務所ごとに専任の宅地建物取引士を5人に1人以上配置しなければならない等の一定の要件を満たす必要があります。

ただし、貸主に関しては、宅地建物取引業の免許は不要です。
一般の人でもアパート経営ができるのは、貸主は宅地建物取引業の免許が不要だからということになります。

態様(取引態様)ごとの仲介手数料

取引態様ごとの仲介手数料について解説します。

仲介(媒介)

媒介は仲介物件ですので、仲介手数料が発生します。
売買の仲介手数料は、取引額に応じて不動産会社が受領できる上限額が下表のように決まっています。

取引額仲介手数料(別途消費税)
800万円以下一律30万円
800万円超取引額の3%+6万円

また、賃貸の仲介手数料は、「家賃の1ヵ月分」(別途消費税)が不動産会社の受領できる上限額となります。

代理

代理は代理を依頼した人に仲介手数料が発生します。
通常は貸主が代理を依頼するため、貸主側に仲介手数料が発生することが多いです。
上限額は、媒介と同様の「家賃の1ヵ月分」(別途消費税)となります。

売主(売買)

取引態様が売主となっている物件は、仲介物件ではないため、仲介手数料は発生しません。

貸主

取引態様が貸主となっている物件は、仲介物件ではないため、仲介手数料は生じないです。

態様(取引態様)に関する注意点

取引態様に関する注意点について、解説します。

貸主の物件はデメリットを把握しておく

貸主の物件は、仲介物件ではないため、不動産会社が賃貸借契約の前に重要事項説明を行う義務がありません。
重要事項説明に類似するような説明が行われない場合には、借主側から積極的に質問をし、疑問点を解消することが望ましいです。

買取再販物件を探している場合は不動産会社に確認する

取引態様が売主となっている物件は、仲介手数料もなく、不動産会社が2年間の契約不適合責任を負ってくれることから、個人の売主から購入するよりも有利な点が多いです。

さらに、買取再販物件であれば住宅ローンの控除期間が最大で13年間となるため、節税面でも有利となります。

ただし、取引態様が売主となっていても、全ての物件が買取再販物件であるとは限りません。

買取再販物件か否かは広告にも記載されていないことが多いため、買取再販物件を希望している人は売主の不動産会社に直接問い合わせることが必要です。

この記事のポイント

態様(取引態様)にはどんな種類がある?

態様(取引態様)の種類には仲介(媒介)、代理 、売主(売買)、貸主があり、それぞれ特徴が異なります。

詳しくは「態様(取引態様)の種類」をご覧ください。

態様(取引態様)によっては仲介手数料がかからない?

仲介(媒介)と代理は仲介手数料が発生します。

一方、売主と貸主は仲介手数料が発生しません。

ただし、仲介手数料の有無だけで判断せず、それぞれの取引態様についてしっかりと把握した上で物件を決めることが大切です。

詳しくは「態様(取引態様)ごとの仲介手数料」をご覧ください。

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