ざっくり要約!
- 重要事項説明書は「取引物件に関する事項」「取引条件に関する事項」「その他の重要事項」の3つのパートに分かれる
- 重要事項説明書における「取引条件に関する事項」は契約の解除や違約金・損害賠償など理解しておくべきポイントが多い
不動産の売買契約前に必ずされる重要事項説明ですが、聞き慣れない専門用語も多いでしょう。しかし、不動産引渡し後のトラブルを避けるためにも、内容をしっかり確認して売買契約に進むことが大切です。
そこで本記事では、重要事項説明の際に交付される重要事項説明書の記載内容やチェックポイントについて、画像付きで解説します。
重要事項説明書とは
重要事項説明は宅地建物取引業法で定められた手続きで、不動産の売買契約に先立ち必ず行われるものです。
この重要事項が記載された書類が「重要事項説明書」であり、買主に交付されます。
重要事項説明書の記載事項は大きく分けて3つ
重要事項説明書は、大きく「取引物件に関する事項」「取引条件に関する事項」「その他の重要事項」の3つのパートに分かれます。
ここからは、マンションの重要事項説明書を例に解説します。
引用:FRK標準重要事項説明書の見方|一般社団法人 不動産流通経営協会
重要事項説明書の取引建物に関する事項
「取引建物に関する事項」として、売買対象となる建物の現況や権利関係などが記載されます。
物件の所在地・種類・構造・床面積
マンション(区分建物)の所在地・種類・構造・床面積や、敷地権の目的となる土地の詳細が登記事項証明書のとおりに転記されます。
登記された権利の種類
権利部(甲区)には、現在の建物所有者の情報、所有権移転の仮登記や差押えの登記など所有権にかかる権利に関する事項の有無が記載されます。
権利部(乙区)には所有権以外の権利が記されます。具体的にはローンを組んでマンションを購入した場合に、この欄に抵当権の詳細が記載されることとなります。
法令(都市計画法・建築基準法)に関する事項
不動産には関連する法律が多数あり、公法上の制限を知らずに不動産を購入した場合、不動産を使用・処分等するうえで、思わぬ支障が発生し損害を被ることがあります。そのようなことを防ぐため、法令に関する事項は重要事項として記載されているのです。
建築される建物の種類や階数、面積などに影響する「都市計画法」や、建ぺい率や容積率、高さ制限など建物の建築に影響する「建築基準法」による制限が記載されます。
上下水道・電気・ガスの整備状況
利用可能なライフライン設備の状況、または今後整備される予定があればその時期と負担金が記載されます。
管理・使用について(区分所有物件の場合)
対象物件がマンションの場合、次の事項が記載されます。
- 敷地に関する権利の種類及び内容
- 共有部分の範囲は使用方法
- 専有部分の用途その他利用の制限に関する規定の定め
- 専有使用権に関する規定の定め
- 修繕積立金や管理費に関する規定の定め
- 管理の委託先に関する事項
造成宅地防災区域内かどうか
造成宅地防災区域とは、宅地造成工事規制区域外の造成宅地で、地震等による崖崩れや土砂流出等の災害発生の恐れがあるとして都道府県知事が指定する区域です。
この造成宅地防災区域の区域内か否かを確認することが可能です。
アスベスト(石綿)使用の調査内容
現在は使用禁止のアスベストですが、2006年8月以前に建築に着手した建物にはアスベストが使用されている可能性があります。
宅地建物取引業者はマンションのアスベスト使用有無の調査の実施は義務づけられていないものの、調査の結果が記録されていれば次の記録内容を説明しなくてはなりません。
- 調査の実施機関
- 調査実施の日付
- 調査範囲
- アスベストの使用の有無及び使用箇所
アスベストの調査結果の記録からは判明しない項目に関しては、売主に補足情報を求め、それでも判明しなければその旨を説明します。
・「アスベスト」に関する記事はこちら アスベスト(石綿)は危険な素材?人体への影響と対策について解説 |
水防法に基づく水害ハザードマップにおける所在地
不動産購入の意思決定において水害リスクに関する情報は重要な要素となるため、重要事項説明時には水害リスクについて説明されます。
重要事項説明における水害ハザードマップは次の3種類です。
- 洪水ハザードマップ
- 雨水出水ハザードマップ
- 高潮ハザードマップ
上記3種類のハザードマップの有無の説明とともに、対象物件のある市区町村が用意する印刷物や市区町村のホームページ上に掲載されたハザードマップを印刷して対象物件の位置や避難所を示します。
市区町村で水害ハザードマップを作成していない場合はその旨説明をしなくてはなりません。
重要事項説明書の取引条件に関する事項
重要事項説明書における取引条件は契約の解除や、違約金・損害賠償など理解しておくべきポイントが多いです。それぞれ詳しく解説します。
売買代金およびその他の金銭について
対象物件の売買代金とそれ以外に必要な金銭について記載されます。売買代金以外にかかる金銭は、固定資産税・都市計画税の精算金やマンション管理費や修繕積立金の精算金、手付金などです。
ここに記載される金銭は、売主・買主間で直接授受されるものに限られ、第三者に支払う諸費用(仲介手数料や登記費用など)は記載されません。
契約の解除
「契約の解除に関する事項」は契約の存否に関わる重要な事項です。
契約締結後に、どのような場合であれば解除ができるのかについて記載されています。
手付解除
売主は受領済みの手付金の返還にプラスして手付金と同額の金員を支払うことで手付解除が可能です。
一方、買主は手付解除が可能な期日内に、支払済みの手付金を放棄することで解除できます。
引渡し完了前の滅失・毀損による解除
引渡し完了前に天災地変などにより滅失・毀損し売買契約が履行できなくなったときには、契約の解除が可能です。
なお売主は受領済みの手付金を無利息で返還する必要があります。
融資利用の特約による解除
後に解説する「金銭の貸借のあっせん」に関連した解除条項で「ローン特約」とも呼ばれます。
住宅ローンの本審査は売買契約締結後に行われます。
- 住宅ローンの本審査が通らなかった
- 満額借りることができなかった
万が一、上記のような状態が生じた場合、買主保護の観点から、「融資利用の特約」を結び買主へ白紙解除が認められるようにするのです。解除期日前に買主から売主に通知をすることで違約金などの問題も生じません。
売買契約書、重要事項説明書に記載された金融機関のローンに限りこの特約が適用される点には注意が必要です。
なお、売主は受領済みの手付金を、買主に返還しなければなりません。
譲渡承諾の特約による解除
譲渡承諾の特約による解除は、マンションの敷地が賃借権の場合、つまり敷地権の譲渡に関し地主の承諾書が必要になる取引で適用されます。
この承諾書が取得できなかった場合には、買主は支払済みの手付金の返還を受け、売主は受領済みの手付金を返還し、契約解除できます。
なお、譲渡承諾を不要とする覚書が取り交わされている場合は、この解除条項は適用になりません。
契約違反による解除
相手方が売買契約に係る債務の履行を怠った場合(遅延したとき)、以下のステップを踏んだのち、売買契約を解除できることが記載されています。
- 書面で相当の期間を定めて債務の履行を催告
- その期間内に履行がされない
契約違反による解除については、違約金を請求できます。違約金については後ほど解説します。
供託や保険の加入
宅建業者が売主である場合、買主保護を目的とし、一定額を超える手付金等を受領する場合には宅建業者に手付金等の保全をするため供託や保険に加入する義務が課せられます。
この保全措置の有無や、保全の方式、保全機関が記載されます。
損害賠償額の予定・違約金
契約違反による解除をする場合、解除と同時に相手方に違約金の請求が可能です。
この違約金をあらかじめ取り決めた場合には重要事項として説明します。
違約金の額には売買代金の10~20%の間で定められることが一般的です。
ただし、違約金を取り決めたからといって契約の履行請求権を失うわけではありません。
たとえば買主が自己都合で契約を撤回したいと申し出た場合でも、買主に違約金を請求して契約解除をするのか、契約の履行を求めるのかは売主次第です。
支払金、預り金の保全措置(宅建業者自らが売主の場合)
支払金、預り金とは売主・買主から宅建業者が預かる金銭を指し保全措置を講じるか否かは宅建業者の任意です。ここではその保全措置の有無が記載されます。
なお、支払金、預り金は以下のものは除外されます。
- 受領する額が50万円未満
- 宅建業法第41条または第41条の2の規定により保全措置が講じられている手付金
- 売主又は交換の当事者である宅建業者が登記以後に受領するもの
- 仲介手数料等の報酬
金銭の貸借のあっせん
不動産会社の提携ローンを利用する場合は「あっせん有」それ以外のローンを利用する場合は「あっせん無」にローンの詳細が記載されます。
売買契約書に明記されたローンのみが「融資利用の特約による解除」の対象になることにも注意が必要です。
なお、売買契約書に金利や返済期間が記載されていない場合は、重要事項説明書に明記されているか確認するようにしましょう。
契約不適合による修補請求
目的物が契約内容に適合していない場合、売主が買主に対して負う責任を「契約不適合責任」といいます。
この契約不適合責任は任意規定のため、買主・売主の合意により、責任範囲を限定すること、通知期間を短縮・伸長することや責任を免責とすることが可能です。
売主にとっても、引渡し後に負うべき責任の概要は重要なため、取り決めた内容と記載された事項に間違いがないか確認することが大切です。
・「契約不適合責任」に関する記事はこちら 契約不適合責任とは?不動産取引で買主ができる4つの請求と売主がとるべき対策を解説 |
担保責任の履行に関する措置
前述した契約不適合責任の履行に関して、保証保険契約等の締結やその他の措置を講ずるか否かの説明がされます。
履行に関しての備えをする場合には、備考欄に保険(保証)を行う機関の名称・商号や保険(保証)期間などの詳細が記載されます。
重要事項説明書のその他重要な事項
宅建業者は上記以外の事項でも、相手方に告知すべき重要な事項は説明する必要があります。その時点で売主が把握している事情は全て記載することが、後のトラブル防止に役立ちます。
以下はその他重要な事項の具体例の一部です。
- 越境・境界:境界に関する取り決めや隣地との紛争、越境状況など
- 騒音・振動・異臭等:一般的には気になると思われるもの
- 心理的な瑕疵:売買物件、その近隣での自殺や殺人事件、ゴミ屋敷等
- 環境的瑕疵:ゴミ処理場・葬儀場・墓地・ギャンブル施設等
- 過去の浸水被害
- 近隣の建築計画
- 相隣関係(町内会の取り決めなど)
この記事のポイント
- 重要事項説明書の取引建物に関する事項には何が書いてある?
物件の所在地・種類・構造・床面積といった売買対象となる建物の現況や、権利関係などが記載されます。
詳しくは「重要事項説明書の取引建物に関する事項」をご覧ください。
- 重要事項説明書の取引条件に関する事項には何が書いてある?
契約の解除に関する内容や、違約金・損害賠償など理解しておくべきポイントがたくさん書かれています。
事前に取り決めた内容と記載された事項に間違いがないか確認するようにしましょう。
詳しくは「重要事項説明書の取引条件に関する事項」をご覧ください。
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