ざっくり要約!
- プレキャストコンクリートとは、建築現場で組み立てることを想定して工場などで事前に製造したコンクリート製品や部材
- プレキャストコンクリートは品質が安定しており、高い強度や防音性が期待できる
建物の工法や構造にはさまざまな種類があり「自分が希望する住宅にどの工法が適しているのかわからない」と悩んでいる方は少なくありません。
工法や構造には、それぞれメリットやデメリットがあります。しっかりと把握したうえで選択したいものです。
この記事では、プレキャストコンクリート(工法)について解説します。プレキャストコンクリート工法のメリット・デメリット、またRC造との違いも紹介します。
新築や住み替えを検討している方は、ぜひ参考にしてください。
記事サマリー
プレキャストコンクリートとは?
プレキャストコンクリート(precast concrete)とは、建築現場で組み立てることを想定し、工場などで事前に製造したコンクリート製品や部材をいいます。
たとえば、身近なものではマンホールや側溝などもプレキャストコンクリートといえます。また建物の壁や、橋げたの一部に使われるような大型のものもあります。
工場であらかじめ製造したコンクリートの壁や部材を運搬し、建築現場で組み立てて完成させる工法を「プレキャストコンクリート工法」といい、省略して「PC工法」と表記されることもあります。
プレキャストコンクリート工法とRC工法の違い
プレキャストコンクリート工法と同じように、コンクリートを使った工法に「RC工法」があります。この章では、2つの違いについて紹介します。
プレキャスト工法 | RC工法 | |
---|---|---|
工事にかかる期間 | 現場での工事期間を短縮することが可能 | 現場でコンクリートを打設するため、比較的工期は長くなる |
天候や気温による影響 | 工場で製造するため影響なし | 現場でコンクリートを左折するため、天候や気温が品質に影響する |
向いている建物 | 大規模な建物(高層ビルやマンションなど) | 小規模な建物(個人宅や賃貸住宅など) |
現場作業員の人数 | 少ない人数でも施工可能 | 比較的多くの作業員を必要。コンクリートの打設にはある程度技術が必要 |
デザインの自由度 | 既製品のためデザインに自由度はなし | 現場で施工するため、デザインの自由度あり |
工事による騒音 | 比較的騒音が少ない | コンクリート打設時と型枠解体時に騒音が出る |
プレキャストコンクリートは、工場で製造した部材を現場で組み立てることで完成できるため、現場での作業にそれほど手がかかりません。高層ビルやマンションなど、比較的大規模な建物を建設するのに向いています。
またコンクリートが乾くのを待つ必要がなく、養生期間を設ける必要がありません。天候や気温に左右されることがないため、品質を維持しやすく、比較的スムーズに工事を進めることができます。
一方、RC工法は現場でコンクリートを打設するため、天候や気温によっては工期を延期せざるをえない事態も想定しなければなりません。ゆとりをもって工期を組む必要があります。
またコンクリートを打設するときに、ある程度技術が必要です。実績が豊富な施工先を選ぶようにしましょう。
RC工法は現場でコンクリートを打設するため、デザインの自由度が高いのが魅力です。したがって個人宅や比較的小規模な建物に向いています。
プレキャストコンクリート工法のメリット
プレキャストコンクリート工法の、主なメリットを5つ紹介します。
強度や防音性が高い
プレキャストコンクリート工法は、コンクリートの特性により構造としての強度が高く、また防音性も高いのがメリットです。
同じコンクリートを使った工法と比較しても、工場で製造されたプレキャストコンクリートは品質も安定しているため、より高い強度や防音性を期待できます。
コストが抑えられる
プレキャストコンクリート工法は、工場で大量生産した工場製品(既製品)を使います。型枠を再利用できないRC工法と比べて、材料のコストを抑えることができます。
また比較的工期が短く、現場での作業も少ないため、建築コストも抑えることができます。
しかし木造や鉄骨造と比べた場合、相対的には材料や建築コストは高くなるでしょう。実際にかかるコストは、ハウスメーカーや建設会社にご相談ください。
工期が短くて済む
プレキャストコンクリート工法は、工場であらかじめ製造されたパネルや部材を建築現場へ運搬し、現場で組み立てて完成させます。工場製品(既製品)を使うため工期が短いのが特徴であり、メリットといえます。
現場でコンクリートを打設する必要がなく、天候や気温に左右されることはありません。基本的には予定した工期で完成します。
環境にやさしい
プレキャストコンクリート工法で使われるコンクリートパネルや部材は、工場で製造されています。規格化された型枠を利用して製造しているため、施工するごとに新しい型枠を利用するRC工法に比べて、資源の排出や産業廃棄物を抑えることができます。
また比較的工期が短いことから周辺環境への負担も少なく、近隣住民への配慮が可能です。
部材が高品質
コンクリートを打設する際は、品質を維持するために気温や湿度を配慮しなければなりません。コンクリートの品質は建物の強度や耐久性にも影響する、大切なポイントといえます。
その点、工場で製造するプレキャストコンクリートは、室温などが管理された工場内で製造するため品質を維持することが可能です。
プレキャストコンクリート工法のデメリット
プレキャストコンクリート工法の、主なデメリットを5つ紹介します。
接合部の耐久性が弱い
プレキャストコンクリートは管理された工場内で製造されるため、部材としての品質や強度が優れています。
しかしその部材同士の接合は現場で行うため、強度にバラつきが出る可能性があり、弱点になりえます。接合部がきちんと処理されていないと、漏水の原因になるため注意が必要です。
耐久性を重視するのであれば、接合部をなるべく減らすことが対策となります。
規格外の施工やデザインは難しい
プレキャストコンクリート工法は、工場で製造されたパネルや部材を利用します。規格はある程度統一されており、その中から選ぶことになります。
したがって規格外のサイズや形状、デザインを施工することは難しいでしょう。規格外の施工を増やしてしまうと、プレキャストコンクリート工法のメリットを生かせなくなり、またその分コストも高くなります。
また、プレキャストコンクリート工法では、クレーンなどの重機でパネルや部材を吊り上げて設置する必要があり、前面道路の幅員が狭い場合や住宅密集地では施工が難しい可能性もあります。
工事の状況に応じた柔軟性に欠ける
プレキャストコンクリート工法は、工場で製造した規格品を現場まで運び、現地で組み立てて施工します。
また壁や床、屋根を構成することで構造計算をしています。急遽仕様を変更したり、部材を小さくしてから運び入れたりするような、柔軟な対応は難しいでしょう。
したがって、コンクリートパネルや部材の選定から輸送計画、現場での施工まで綿密な計画を立てる必要があります。
リフォーム時の間取り変更が難しい
プレキャストコンクリート工法は、コンクリートパネルで壁や床、屋根を構成しています。いわゆる壁式構造のため、床や屋根を支える壁を撤去することはできません。
したがって、間取り変更するようなリフォームは物理的に難しいでしょう。システムキッチンやユニットバスの交換や、クロスの張り替えなどのリフォームは可能です。
運送費が高くつくことがある
プレキャストコンクリート工法は、コンクリートパネルや部材を工場から運搬します。
工場から建築現場までの距離によっては、運送費が高額になるケースもあります。
「コストが抑えられるのがメリット」と紹介しましたが、建築する立地によってはコストが高くなる可能性はあります。
プレキャストコンクリート工法がおすすめなのはこんな人
プレキャストコンクリート工法が向いているのは、次のような方です。
耐久性を重視している
プレキャストコンクリートは工場内で製造されるため、一定の品質を保てるように管理されています。基本的に建築現場で作業したときに生じるような、天候や作業員の技術レベルによる品質のばらつきはありません。
建物の耐久性や強度を重視する方には、プレキャストコンクリート工法がおすすめです。
もちろん他の工法や構造に、強度や耐久性が足りないということではありません。それぞれのメリットやデメリットを考慮したうえで、工法や構造を選択することをおすすめします。
デザインに対するこだわりがない
プレキャストコンクリート工法は、工場で製造された部材を利用します。つまり規格が決まっているためデザインの自由度は低く、オリジナルのデザインを施すことは難しいでしょう。逆にいえば、デザインよりも機能性などを重視している、プロによるデザインにお任せしたい、既存のデザインの中から選びたいといった場合にピッタリです。
建物のデザインにこだわりたい方や、すでに希望するデザインのイメージがある方は、RC工法や他の工法をおすすめします。
できるだけ工期を短くしたい
ほとんどの部材を工場で製造し、現場で組み立てるプレキャストコンクリート工法は、従来の工法に比べて工期が短いのが魅力です。
また天候や気温などにも左右されないため、工事は基本的にスケジュール通りに進みます。工事期間を短くしたい方や近隣への配慮が必要なエリアでは、プレキャストコンクリート工法が安心です。
この記事のポイント
- プレキャストコンクリート工法とRC工法の違いは?
プレキャストコンクリートは、工場で製造した部材を現場で組み立てることで完成できるため、現場での作業にそれほど手がかかりません。
またコンクリートが乾くのを待つ必要がなく、養生期間を設ける必要がありません。天候や気温に左右されることがないため、品質を維持しやすく、比較的スムーズに工事を進めることができます。
一方、RC工法は現場でコンクリートを打設するため、天候や気温によっては工期を延期せざるをえない事態も想定しなければなりません。
詳しくは「プレキャストコンクリート工法とRC工法の違い」をご覧ください。
- プレキャストコンクリート工法のメリットは?
プレキャストコンクリート工法は、コンクリートの特性により構造としての強度が高く、防音性も高いのがメリットです。
同じコンクリートを使った工法と比較しても、工場で製造されたプレキャストコンクリートは品質も安定しているため、より高い強度や防音性を期待できます。
また、工場で大量生産した工場製品(既製品)を使うことから、型枠を再利用できないRC工法と比べて、材料のコストを抑えることができます。
詳しくは「プレキャストコンクリート工法のメリット」をご覧ください。
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