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日本家屋の間取り例は?玄関や屋根はどうする?中古購入時の注意点も

執筆者プロフィール

竹内 英二
不動産鑑定士

不動産鑑定事務所および宅地建物取引業者である(株)グロープロフィットの代表取締役。不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、住宅ローンアドバイザー、中小企業診断士の資格を保有。

ざっくり要約!

  • 日本家屋は日本の気候や日本人の生活習慣にあった建物で、壁や屋根などにさまざまな特徴がある
  • 新築の日本家屋は供給が少なく、現存している中古の古民家に需要が集中している

風景に自然と溶け込む日本家屋は、なんとなく落ち着く感じがする人も多いと思います。
伝統的な日本家屋は、デザイン性も高く、細部にこだわった粋な計らいが施されています。

普段何気なく見ている和室でさえ、さまざまな部分が洋室と異なる造作がなされています。
日本家屋のことを勉強していくと、奥の深い世界に気付くことが多いです。

日本家屋とは、一体どのようなものなのでしょうか。
この記事では「日本家屋」について解説します。

日本家屋の間取り例、玄関や屋根の特徴

日本家屋には、日本家屋らしさを生み出すさまざまな特徴があります。

日本家屋の床の特徴

床に関しては、各室は畳敷き、台所や廊下、縁側等は板張りです。
また、戸が引き戸であるという点も特徴として挙げられます。
洋風建築のドアのような開き戸ではなく、各部屋は襖や障子といった引き戸が使われています。

床が畳というのは、日本家屋にとって重要な要素となります。
今でも建築業界では「坪」という単位が使われていますが、坪とは畳2枚分の正方形のことです。
元々、日本家屋は畳のサイズを基本に設計していたことから、その名残りで坪という単位がいまだに使われています。

日本家屋の壁の特徴

日本家屋の壁は「真壁」と呼ばれる壁が用いられていることが特徴です。
真壁とは、柱が見える壁のことを指します。
それに対して、洋室の壁は柱の見えない大壁になります。
何気なく見ている壁ですが、柱が表側に出ている壁は和風建築らしさを生み出している要因です。

また、日本家屋の室内の壁には巾木はありません。

巾木とは、壁の下部の損傷を保護する横材のことです。
巾木は、元々室内で靴を履く習慣のある西洋において足の当たりやすい壁下を保護する目的で付けられたものであり、洋室に存在するものです。

気付きにくいですが、巾木がないことも和風建築ならではの特徴となります。

日本家屋の床の間の特徴

日本家屋の最も特徴的で、かつ粋な部分は床の間です。
床の間とは和室の上座で、一般的に床が一段高くなっており、掛軸や置物、花瓶等を装飾できる空間のことを指します。
床の間は、訪れた人を圧巻させる日本家屋の最大の見せ場です。

日本家屋は柱が見える真壁が採用されていますが、床の間では「床柱」と呼ばれる柱が意匠的な意味合いを持っており、完全に「魅せる柱」となっています。

床柱とは、床の間と床脇の間に立つ柱のことです。
床脇とは、床の間の脇につくられる座敷飾りのことを指します。
床柱には、見栄えのする高級な柱が使われることが一般的です。

床脇はさらに奥が深い場所です。
段差のある棚(違い棚)を意匠的に表現している空間であり、書院造りから派生し、長い時間をかけて生まれてきたさまざまな種類の違い棚があります。

日本家屋の玄関の特徴

玄関に関しては、戸は引き戸であり、靴を脱ぐ習慣があることから、廊下は玄関よりも一段高いことが特徴です。

一段高くすることで、靴の下についている砂や泥を室内に引き込まない効果があります。
玄関の床の段差にある横材のことを「玄関框」と呼び、日本家屋ならではの要素です。

日本家屋の屋根の特徴

屋根に関しては、瓦葺(かわらぶき)の入母屋(いりもや)が日本家屋らしい屋根の一つといえます。
入母屋屋根とは、四方に伸びた屋根の上に切妻作りの屋根がのっている形状の屋根のことです。
切妻作りとは、2つの斜面からなる山形の屋根のことです。

入母屋屋根は、四方向の斜面の上に二方向の斜面の屋根がのっていることで、屋根の表情が豊かになっており、高級感のあるデザインとなっています。

実はこの入母屋屋根は、構造が複雑であることから、雨漏りのリスクが高く、建てるのに高度な技術を要します。

日本家屋の屋根は、雨漏りのリスクを取りながらも果敢に意匠にこだわったことでできた部分であり、粋な計らいを感じる箇所でもあるのです。

日本家屋のメリット

日本家屋のメリットは、日本の気候や日本人の生活習慣にあった建物だという点です。

日本家屋は「家のつくりようは夏をもって旨とすべし」という伝統的な考え方で設計されており、蒸し暑い日本の夏を涼しく暮らせる工夫がされています。
クーラーがないことが前提で設計されていますので、風通しの良い空間となっています。
引き戸は網戸とセットにすることで、虫の浸入を気にすることなく全開にでき、風通しを良くすることができます。

また、家の中では靴を脱ぐという日本人の習慣に合っている点も特徴です。
玄関と廊下には段差があり、壁に下部には巾木がありません。
部屋の床も畳となっており、素足で歩いても底冷えせず、温かみのある床となっています。

和室では、床の間に生け花や掛軸を飾ることができ、茶道も楽しめ、日本の伝統的な文化を満喫できる点が魅力です。

日本家屋のデメリット

日本家屋は木造ですので、火災時に燃えやすい点がデメリットです。
また、通気性が良い反面、気密性が低いことから断熱性も低い点はデメリットといえます。

現代社会では夏場にエアコンを使うのは当り前ですので、エアコンを前提としていなかった日本家屋は時代にそぐわなくなってきました。
通気性が良いことから隙間風も多く、冬は寒いです。

建築に関しては、日本家屋は在来工法と呼ばれる昔ながらの工法で建てるため、工期が長くなる点がデメリットといえます。

在来工法は現場で大工が家を組み上げていくことから、家の品質が職人の腕に左右されやすいです。

日本家屋は中古と新築どちらがおすすめ?選び方のポイント

この章では、日本家屋の選び方について解説します。

不動産市場での日本家屋の位置づけ

昨今の不動産市場においては、日本家屋は決してメジャーとはいえません。
純然たる日本家屋は、数が少なく購入もしにくくなっています。

日本家屋が減ってきたことは、生活様式の変化や工業化工法の台頭による影響が大きいです。

生活様式の変化としては、エアコンを使うようになったことや、ベッド等の重い家具を置くようになったことが挙げられます。
エアコンを前提とすると、通気性の良い日本家屋は効率が悪いです。

また、ベッド等の重い家具は畳の部屋に置くと畳がへこんでしまうため、置きにくいです。
そのため、和室は敬遠される傾向にあり、和室だらけの日本家屋は現代のニーズに合わなくなっていきました。

さらに、昨今では新築される建物は、ハウスメーカー等による工業化工法を用いた建物が増えています。
工業化工法とは、工場である程度部材を完成させ、現場で一気に組み立てるイメージの工法のことです。
工業化工法は、工場で作ることから品質が安定し、工期も短くなっています。
工業化工法が台頭してきたことから、在来工法で作る伝統的な日本家屋は減ってきている状況です。

日本家屋の中古と新築の比較

近年の日本家屋は、古民家と称されるものが人気となっています。
古くて味わいのある古民家が残っている物件は、それだけで価値があり、高値で取引が行われている状況です。

新築の日本家屋は供給が少ない状況ですので、現存している中古の古民家に需要が集中しています。

古民家には、新築では出せない木の美しさがある点が魅力です。
古い神社やお寺を見ると分かりますが、古い木造建物は木が完全に黒ずんでおり、汚らしさを感じさせません。

木造住宅は、古くなると木が汚らしくなっていく時期がありますが、それを通り過ぎて更に古くなると完全に黒ずみ、逆に汚らしさを感じさせなくなっていきます。

古民家には汚らしさを通り越した美しさが備わっており、新築では生み出せない価値が存在します。
そのため、魅力的な日本家屋は、新築よりも古民家に多く存在しています。

購入前に知っておくべきポイント

現在、日本は国策として住宅の耐震化を推進する方向に動いており、古民家のような古い住宅に関しては補助が手薄いです。

例えば、住宅ローン控除は、原則として1982年(昭和57年)1月1日以降に建てられたものでないと利用することはできません。

また、国策として2050年までにCO2排出量をゼロにするカーボンニュートラルも推進しています。
省エネ性能の低い住宅は、購入時の補助金制度がないという状況です。

一方で、購入した中古住宅を耐震化したり、省エネ化したりする際の減税や補助金制度は充実しています。
古民家を購入して補助金を使いたい場合には、購入後のリフォーム等で活用するのが良いといえます。

日本家屋のリノベーション

日本家屋のリノベーションについて解説します。

伝統的な要素を活かす

日本家屋をリノベーションするには、伝統的な要素を生かしながら暮らしやすい家に変えていくことがポイントです。

例えば、日本家屋の中には太くて立派な梁(柱と柱を繋ぐ横架材)があります。

よくある事例としては、特徴的な大きな梁をあえて見せるような形とし、複数の和室を1つの大きなリビングにし、床もフローリングに変えるというものがあります。

エコフレンドリーな改修方法

日本家屋は、自然素材と相性のいい建物です。
床に無垢の木材を使用したり、壁に漆喰や珪藻土を取り入れたりしてもなじみます。
自然素材にはシックハウスを引き起こすアレルギー素材がほとんど含まれていない点がメリットです。

日本家屋の維持と管理のポイント

日本家屋の所有後の管理方法について解説します。

和室や畳の適切な管理方法

和室は基本的に畳の目に沿って掃き掃除を行います。
実際には掃除機も普通に使えますので、目に沿って掃除機で掃除しても大丈夫です。

畳は日焼けすることから、直接日光にさらさないことが望ましいといえます。
重い家具を置くとへこんでしまうため、重い家具を置く場合には、板を敷いてその上に置くことが適切です。

畳は、年に1度天日干しをすることで、防カビと防虫の効果があります。
汚れてきたら表替えを行い、裏返して使える点が畳のメリットです。

長寿命を保つための定期的な保守作業

住宅を保つには、定期的な保守作業も必要です。
日本家屋は木造であるため、5年に1度程度のペースでシロアリの防虫処理を行うことが望ましいといえます。

また、日本家屋には襖や障子の引き戸がありますが、引き戸の下にあるレール上の敷居が収縮により反ることで、開閉しにくくなることがあります。
引き戸の開閉がしにくくなったら、敷居を修理することも必要です。

この記事のポイント

日本家屋の玄関や屋根の特徴は?

玄関に関しては、戸は引き戸であり、靴を脱ぐ習慣があることから、廊下は玄関よりも一段高いことが特徴です。

一段高くすることで、靴の下についている砂や泥を室内に引き込まない効果があります。

屋根に関しては、瓦葺(かわらぶき)の入母屋(いりもや)が日本家屋らしい屋根の一つといえます。

入母屋屋根は、四方向の斜面の上に二方向の斜面の屋根がのっていることで、屋根の表情が豊かになっており、高級感のあるデザインとなっています。

詳しくは「日本家屋の間取り例、玄関や屋根の特徴」をご覧ください。

日本家屋は中古と新築どちらがおすすめ?

新築の日本家屋は供給が少ない状況で、現存している中古の古民家に需要が集中しています。

古民家は、新築では出せない木の美しさがある点が魅力です。

木造住宅は、古くなると木が汚らしくなっていく時期がありますが、それを通り過ぎて更に古くなると完全に黒ずみ、逆に汚らしさを感じさせなくなっていきます。

古民家には汚らしさを通り越した美しさが備わっており、新築では生み出せない価値が存在します。そのため、魅力的な日本家屋は、新築よりも古民家に多く存在しています。

詳しくは「日本家屋は中古と新築どちらがおすすめ?選び方のポイント」をご覧ください。

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