更新日:  

UA値とは?基準や断熱性を高める方法、省エネ対策を紹介

執筆者プロフィール

竹内 英二
不動産鑑定士

不動産鑑定事務所および宅地建物取引業者である(株)グロープロフィットの代表取締役。不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、住宅ローンアドバイザー、中小企業診断士の資格を保有。

ざっくり要約!

  • UA値が小さいほど、熱を伝えにくく断熱性が高いことを示している
  • UA値が低い建物は断熱性が高いだけでなく、税金面でも有利になる

UA値とは、建物の断熱性を表す係数のことです。
日本は2050年までにCO2排出量をゼロとするカーボンニュートラルの目標を掲げていることから、近年UA値という言葉を目にするようになりました。

UA値は、2013年の省エネ法改正によって創設された数値であり、比較的新しい概念です。
住宅性能評価基準における断熱等性能等級を決める数値でもあります。

UA値とは、一体どのようなものなのでしょうか?
この記事では「UA値」について解説します。

UA値とは?

UA値とは、断熱性を表す係数である「外皮平均熱貫流率」のことです。
Uとは熱貫流を示す単位のことで、Aはaverage(平均)の頭文字であり、外皮平均熱貫流率をUA値と表しています。

UA値は、建築物の内部と外部の温度差を1℃としたときに、建築物内部から外界へ逃げる時間あたりの熱量を外皮表面積(住戸表面積)で割った数値です。室内と外気の熱の出入りのしやすさの指標となります。
UA値が小さいほど熱が出入りしにくく、断熱性が高いということです。

2013年の省エネ法が改正される以前は、類似の概念としてQ値と呼ばれる熱損失係数が使用されていました。

Q値は損失熱量を「床面積」で割っていた値でしたが、UA値は損失熱量を「外皮面積」で割って求めるため、UA値の方がより実勢値に近いといわれています。

UA値は、住宅性能評価書において断熱等性能等級の決定に用いられる数値です。
住宅性能評価書とは、登録住宅性能評価機関が発行する住宅の性能を客観的に示す書面になります。

なぜUA値が重要なのか?

室内環境を外部の暑さや寒さから守るには、エアコン等の設備機器のエネルギー効率を向上させる方法と、冷暖房の負荷を削減させる方法の2通りがあります。

そのため、温熱対策の評価方法としても、設備機器のエネルギー効率を評価する指標と、冷暖房の負荷の低減を評価する指標の2つが存在します。

設備機器のエネルギー効率を評価する指標が「一次エネルギー消費量等級」であり、冷暖房の負荷の低減を評価する指標が「断熱等性能等級」です。

一次エネルギー消費量等級は、設備機器自体の性能に大きく左右される指標であることから、純粋に建物の性能を表しているとは言いにくい部分があります。

一方で、断熱等性能等級は、建築物の外皮(外壁、屋根、天井、床、基礎、窓等の外周部位)の断熱化や日射量のコントロールを反映した数値であり、建物そのものの性能といえます。

断熱等性能等級を示すUA値は、冬は暖かく、夏は涼しいという建物そのものの性能を表していることから、温熱対策を判断する上で重要な数値といえるのです。

UA値が低い建物と高い建物の違い

UA値は数値が小さいほど、熱を伝えにくく断熱性が高いことを示しています。
そのため、UA値が低い建物は、冬は暖かく、夏は涼しい建物となっています。

UA値が低い建物は、断熱性が高いことから、空調の負荷も少ないです。
そのため、電気代の使用量を抑えることができます。

日本は火力発電も行っていますので、電気を発電する際に石炭や石油、天然ガス等の化石燃料を燃やすことから地球温暖化の原因となるCO2を発生させてしまいます。
各家庭で電気代の使用量を抑えることは、火力発電の発電量を減らすことになり、CO2の削減に寄与するのです。

現在日本は2050年までにCO2排出量を実質ゼロとするカーボンニュートラルに取り組んでおり、CO2の削減に寄与する建物はさまざまな恩恵を受けられる施策が行われています。

2024年以降は、新築物件に関しては原則として省エネ基準適合住宅やZEH水準省エネ住宅等のCO2削減に寄与した建物でないと住宅ローン控除を受けられないことになっています。(中古物件は一般住宅も引き続き住宅ローン控除の対象となります。)

住宅ローン控除とは、住宅ローンを組んで一定の要件を満たすマイホームを購入した人が税金を節税できる制度のことです。

省エネ基準適合住宅とは、断熱等性能等級が4以上、かつ、一次エネルギー消費量等級が4以上の性能を有する住宅のことを指します。

ZEH水準省エネ住宅とは、断熱等性能等級が5以上、かつ、一次エネルギー消費量等級が6以上の性能を有する住宅のことです。

UA値が低い建物は、単に断熱性が高いというだけでなく、税金面でも有利な建物ということになります。

UA値が低い建物の特徴

UA値が低い建物の特徴は、エアコンの効率が高くなることから、冬は暖かく、夏は涼しく過ごせるという点です。

UA値が低い建物とは、極端な例というと断熱材に囲まれた壁で密閉した建物になります。
ただし、このような建物は非現実的であり、実際には建物には配管等の断熱層を貫通している部分や窓などの開口部が存在します。

建物のうち、断熱材を貫通している柱や梁、下地材、窓枠、配線、配管等の部分は、外部の熱を通しやすく、熱橋と呼ばれています。
熱橋は、大きな熱損失を発生させるため、UA値を高めてしまう原因です。
UA値が低い建物とするには、熱橋となる部分が少ない方が望ましいといえます。

また、開口部も、大きな熱損失を発生させるため、UA値を高めてしまう原因となります。

UA値が低い建物とするには、窓ガラスに複層ガラスを設け、サッシも樹脂製にする等の仕様にするのが良いでしょう。

UA値が高い建物の特徴

UA値が高い建物の特徴は、エアコンの効率が悪くなることから、冬は温まりにくく、夏はなかなか涼しくならないという点です。

UA値が高い建物は、熱橋となる部分や断熱対策を行っていない開口部が多くなります。

推奨されるUA値

後述しますが、推奨されるUA値は地域によって異なります。
ここでは、東京を含む地域区分における推奨されるUA値について解説します。

快適な住環境を実現するための基準

東京における断熱等性能等級とUA値の関係は、下表の通りです。

等級内容UA値
等級7熱損失等のより著しい削減のための対策が講じられている0.26
等級6熱損失等の著しい削減のための対策が講じられている0.46
等級5熱損失等のより大きな削減のための対策が講じられている0.6
等級4熱損失等の大きな削減のための対策が講じられている0.87
等級3熱損失等の一定程度の削減のための対策が講じられている1.54
等級2熱損失の小さな削減のための対策が講じられている1.67

国は明確に推奨値を定めているわけではありませんが、断熱等性能等級4以上は住宅ローン控除が利用できる省エネ基準適合住宅の一つの要件を満たすことになります。

そのため、UA値は0.87以下が望ましい数値と考えられます。

地域ごとの推奨されるUA値

この章では、地域ごとの推奨されるUA値について解説します。

全国8ヶ所の地域区分

地域区分とは、温熱に関する建物評価を目的とし、全国の気象条件の違いに応じて区分した地域のことです。

地域区分主な都道府県名
1、2北海道
3青森県、岩手県、秋田県、
4宮城県、山形県、福島県、栃木県、新潟県、長野県
5、6茨城県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、富山県、石川県、福井県、山梨県、岐阜県、静岡県、愛知県、三重県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県、鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県、徳島県、香川県、愛媛県、高知県、福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県
7宮崎県、鹿児島県
8沖縄県

断熱等性能等級4となる地域区分を示すと、下表のようになります。

地域区分12345678
UA値0.460.460.560.750.870.870.87

市町村単位の地域区分

地域区分は、市町村単位で詳細に定められています。
例えば、北海道には1と2の地域区分がありますが、夕張市は1、札幌市は2です。
函館市や室蘭市は3に分類されています。

地域区分は国土交通省の「地域区分新旧表」で公表されていますので、お住まいの地域を確認してみましょう。

UA値の計算方法

UA値の算出方法について解説します。

UA値の計算式の解説

UA値の求め方を数式で表すと、以下のようになります。

UA = 単位温度差当たりの外皮総熱損失量 ÷ 外皮総面積

実際にUA値を求めるにあたっては、建築研究所等のHPで公開されているExcel形式の外皮性能計算シートが使用されていることが一般的です。

実際の計算例の紹介

以下の条件でUA値を計算してみます。

(条件)
外皮総面積:307.51平米
外皮総熱損失量:262.4W/K

(計算)
UA = 単位温度差当たりの外皮総熱損失量 ÷ 外皮総面積
   = 262.4W/K ÷ 307.51平米
   = 0.86 (切り上げ処理)

UA値を低くして断熱性を高める方法・省エネ対策

UA値を低くして断熱性を高める方法について解説します。

断熱材の選び方と施工方法

断熱材は、高性能グラスウールも用いることが一般的です。
高性能グラスウールの性能は「K」という単位で表現され、Kの数値が高くなるほど高性能になります。

壁の断熱材であれば、16Kの高性能グラスウールが用いられることが多いです。
東京を含む地域区分であれば、外壁は16Kで断熱等性能等級4を実現することができます。

施工方法は、高性能グラスウールは室内側に向けて覆うことが基本です。
さらに外壁と高性能グラスウールとの間に押出法ポリスチレンフォーム3種やフェノールフォームを挟むと断熱性が向上します。

窓の断熱改善策

窓に関してはガラスとサッシにより断熱性を高めていきます。
ガラスは、断熱性が低い順から透明複層ガラス、Low-E複層ガラス、ダブルLow-E三層複層ガラスとなります。
サッシは、断熱性が低い順からアルミ樹脂複合サッシ、樹脂製サッシです。

断熱性は、ガラスとサッシを組み合わせていくことで高められます。
例えば、透明複層ガラスとアルミ樹脂複合サッシの組み合わせであれば、断熱等性能等級4を実現できます。
Low-E複層ガラスと樹脂製サッシの組み合わせであれば、断熱等性能等級6です。

天井や床の断熱工事のポイント

天井や床も、高性能グラスウールを用いて断熱を行っていきます。
高性能グラスウールの単位は、床であれば24K、天井であれば16~20Kが多いです。

例えば、床を24Kの高性能グラスウール、天井を16Kの高性能グラスウールで覆うと、断熱等性能等級4を実現できます。

この記事のポイント

UA値が低い建物は税金面でも有利になる?

UA値が低い建物は、電気代の使用量を抑えることができるため、火力発電の発電量を減らすことになり、CO2の削減に寄与します。

2024年以降は、省エネ基準適合住宅やZEH水準省エネ住宅等のCO2削減に寄与した建物でないと住宅ローン控除を受けられないことになっています。そのため、UA値が低い建物は税金面でも有利になるといえます。

詳しくは「UA値とは?」をご覧ください。

UA値の計算方法は?

UA値の求め方を数式で表すと、以下のようになります。

UA = 単位温度差当たりの外皮総熱損失量 ÷ 外皮総面積

実際にUA値を求めるにあたっては、建築研究所等のHPで公開されているExcel形式の外皮性能計算シートが使用されていることが一般的です。

詳しくは「UA値の計算方法」をご覧ください。

ハッシュタグから物件検索!

300種類以上のハッシュタグから「理想の住まい」を探してみませんか?
#タワーマンション #ペット #リノベーション

「ハッシュタグ検索」はこちら