ざっくり要約!
- 2辺以上が道路に接する角地を利用する場合、その角にあたる部分を一部空地にすることを隅切りといい、「角敷地の建築制限」とも呼ばれる
- 隅切りに対する基準や法的要件は各自治体によって異なるため、事前に確認することが必要
角地は2辺以上が道路に面しているため開放感があり、また道路から玄関へのアプローチも2面以上が候補になるため、プランの自由度が高いのが魅力です。また一定の条件を満たすことで建ぺい率が10%緩和されるため人気があり(角地緩和)、角地は資産価値も比較的高いといえます。
しかし、接する道路の幅員や条件によっては「隅切り」しなければならない可能性があります。隅切りとは角にあたる部分を一部空地としなければならない建築制限で、その部分に建物を建てることはできません。
この記事では、隅切りの定義や注意点を詳しく解説し、隅切りの基準やトラブルになるケースを紹介します。土地やマイホームの購入を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
記事サマリー
隅切りとは?
2辺以上が道路に接する角地を利用する場合、その角にあたる部分を一部空地にすることを隅切りといい、「角敷地の建築制限」とも呼ばれます。車両や歩行者の安全で円滑な通行を確保することを目的としており、隅切り部分に建物を建てることはできません。
隅切りの定義について詳しく解説します。
隅切り(角敷地の建築制限)の定義について
建物を建築する場合は建築基準法や条例を遵守する必要がありますが、隅切りもそのルールの一つです。隅切りの要件や形状については自治体ごとに安全条例等で定められており、その取扱いも異なります。
一般的には、道路の幅員が比較的狭いときに適用されます。
たとえば東京都建築安全条例は、それぞれ幅員6m未満の道路が交わる角地が対象となり、その敷地の角にあたる点を頂点として、長さが2mの底辺を有する二等辺三角形となる部分を道路状に整備しなければなりません。
道路上にした部分には、通行の妨げになるような建物(塀や看板などの工作物を含む)を
建てることができず、屋根部分などを突き出して建築することも不可能です。なお高さ
4.5mを超える部分はこの限りではありません。
ちなみに隅切りした部分は敷地面積として参入することができます。
ただし、位置指定道路にするために隅切りする場合は、隅切り部分は道路として提供するため敷地面積に算入できません。位置指定道路の隅切りと、安全条例による隅切りは意味合いが異なります。
なお、車両や歩行者の安全で円滑な通行を確保するためのルールであるため、角が120度
以上の場合には隅切りは不要としています。また接する道路が歩行者専用であるときや、
高低差があり造成が難しいときで安全上問題がないと判断できる場合は、隅切りが適用さ
れないこともあります。
ここまで東京都建築安全条例に基づいて説明しましたが、自治体によって要件や扱いが異
なります。実際には役所の建築指導課など、担当窓口へ確認するようにしてください。
出典:東京都建築安全条例
引用:角敷地における建蔽率の緩和(角地緩和)、隅切りについて|八王子市
隅切りの不動産売買における注意点
隅切りに関する要件やルールは自治体によって異なるため、購入前によく確認しておく必要があります。隅切りについては重要事項説明書等で説明すべき内容ですが、もし事前に詳しく知りたい場合は、役所の建築指導課などで相談するとよいでしょう。
この章では、とくに注意したいポイントを紹介します。角地の購入を検討している方はぜひ参考にしてください。
隅切り部分の固定資産税は課税される?
隅切り部分を道路状に整備することで、自治体によっては固定資産税や都市計画税が非課税になることがあります。たとえば東京都では、一定の要件を満たし、土地が所在する区の都税事務所へ申告することで非課税になるとしています。なお建物を建築するときに敷地面積として算入した場合も対象になります。
自治体によって要件や申告方法は異なりますので、実際には役所などへ確認するようにしてください。
また自治体によっては隅切り部分を寄付できるケースもあります。寄付の可否については、売買契約前に確認しておくことをおすすめします。隅切り部分を寄付すれば、固定資産税はかかりません。
隅切り部分が売買対象になるとは限らない
前所有者がすでに自治体へ寄付している場合は、そもそも隅切り部分は売買対象に含まれません。
売主が寄付したことにより隅切り部分が敷地として参入できなくなる場合、既存の建物の建ぺい率・容積率がオーバーし、既存不適格物件になるケースがあります。
角地を購入する際は、隅切り部分が売買対象に含まれるのか確認しましょう。既存不適格物件については後半でも詳しく解説しますが、以下の記事でも解説しています。
・「再建築不可物件」に関する記事はこちら 再建築不可物件は売却が難しい?詳細とメリット・デメリットを解説 |
隅切りの基準について
隅切りに対する基準や法的要件は、各自治体によって異なります。基準の違いや法的要件、管理方法について紹介します。
各自治体の隅切り基準の違い
隅切りは建築基準法ではなく、各自治体の条例によって定められています。そのため、それぞれ要件や隅切りする形状も異なります。
また隅切りについて罰則を設けていない自治体もあれば、しっかりと罰則を設定しているケースもあります。
隅切りに関するルールについては、土地が所在する自治体の役所へ相談するようにしましょう。
隅切りの合法性と法的要件
たとえば大阪府では、隅切りについて大阪府建築基準法施行条例により定められています。角地の隅角をはさむ辺の長さ2ⅿの二等辺三角形の部分には、建築物や工作物を建築してはならないとしています。
一方、東京都では隅切りする部分について、二等辺三角形の底辺の長さを2ⅿと規定していますから、それぞれ隅切りの形状が異なります。
また角地は一定の要件を満たすことで建ぺい率が10%緩和されますが、隅切りを要件としていることが多く、角地であれば緩和(角地緩和)されるわけではありませんので注意が必要です。
なお角地緩和についても条例により要件が定められており、自治体によって異なります。
隅切りの管理方法
土地の所有者が隅切り部分の管理についても行うとしているケースが多いですが、自治体によって扱いは異なります。土地の所有者が道路状に整備する必要がある場合もあれば、空地にすれば足りるケースもあります。
たとえば東京都大田区では隅切りを道路状に整備することとしていますが、道路状について「人や自動車が容易に通行できる砂利舗装等」と説明しています。
管理方法についても自治体によって取り決めが異なります。実際には自治体に確認するようにしましょう。
隅切りのよくあるトラブル
隅切りに関してトラブルになることがありますが、この章では4つのケースを紹介します。
私道の隅切り部分の扱い
前面道路が私道の場合でも、一定の場合は隅切りする必要があります。私道の場合は、隅切りした部分を私道の一部として扱われる可能性があります。
公道に面する場合、自治体によっては隅切りした部分は寄付できることもありますが、私道の場合は同様に寄付することはできません。公道と私道で扱いが異なりますので、注意しましょう。
なお、私道として一般の人が制限なく通行でき、一定の要件を満たす場合は、申請により固定資産税が非課税になることもあります。
既存不適格や違反建築物
自治体によっては、隅切り部分の寄付を受け付けているケースがあります。しかし隅切り部分を敷地として参入している場合、既存建物が建ぺい率や容積率がオーバーしてしまい、既存不適格物件になってしまう可能性があります。
既存不適格物件とは、新築当時に法令や条例に従って建てられていた建物で、その後の法改正により現行の基準を満たしていない建物をいいます。
新築時にすでに違法である違法建築物とは異なり、処罰等を受けることはありません。しかし建て替えや増改築、大規模修繕をする際は現行の基準を満たす必要があり、同じ規模の建物にすることができない可能性があります。
既存不適格物件や違反建築物になると資産価値が下がり、売却しにくくなるおそれがあります。隅切り部分について寄付が可能なのか事前に確認し、よく検討したうえで建築プランを立てましょう。
石やブロックなどの設置
建ぺい率や容積率を計算するときに隅切り部分も敷地として参入できますが、建物や塀を建てることができません。
とくに幅員が狭い道路の場合は、隅切りしていても塀を車両にこすられる可能性があることから、注意を促すために大きな石やブロックを設置している光景を目にすることがあります。
しかし隅切り部分は、道路のように空地としなければなりません。歩行者や車両の通行の妨げになる場合は、道路交通法で違法と判断されるケースもあるため注意が必要です。
道路斜線やセットバックによる影響
角地は一定の要件を満たすことで建ぺい率が10%緩和されますが(角地緩和)、道路斜線制限により想定よりも大きな家を建てられないことがあります。また前面道路の幅員が4ⅿに満たない場合は、セットバックしなければならず、建築できる面積が減少します。
建物を建築する場合、建築基準法により原則幅員4m(一部の地域では6ⅿ)以上の道路に2m以上接道しなければならないと定められています。
セットバックとは、道路中心線からお互いに2ⅿのところまで道路との境界線を後退することで4ⅿの道路にすることをいいます(対面が河川などでセットバックできない場合は、河川と道路の境界線から4ⅿの位置までセットバック)。
道路として提供した部分は建物を建築することはできず、敷地面積として算入することはできません。
道路斜線制限とは、採光や日照、通風を確保するために前面道路の反対側までの距離に応じて建物の高さが制限されるもので、道路斜線を越えて建築することはできません。角地の場合、道路に面する部分が多いため、その分道路斜線制限の影響は大きくなります。
土地を購入する際は隅切りやセットバックの必要があるのか確認し、実際にどれくらいの建物が建築できるのかハウスメーカーや工務店に相談することをおすすめします。
・「セットバック」に関する記事はこちら 私道負担のメリット・デメリットは?セットバックとの違いも説明 |
この記事のポイント
- 隅切りの不動産売買における注意点は?
隅切りに関する要件やルールは自治体によって異なるため、購入前によく確認しておく必要があります。
たとえば東京都では、一定の要件を満たし、土地が所在する区の都税事務所へ申告することで非課税になるとしています。なお建物を建築するときに敷地面積として算入した場合も対象になります。
詳しくは「隅切りの不動産売買における注意点」をご覧ください。
- 隅切りのよくあるトラブルとは?
隅切りに関しては、 私道の隅切り部分の扱い、既存不適格や違反建築物、石やブロックなどの設置、道路斜線やセットバックによる影響などでトラブルが起こる可能性があります。
詳しくは「隅切りのよくあるトラブル」をご覧ください。
ハッシュタグから物件検索!
300種類以上のハッシュタグから「理想の住まい」を探してみませんか?
#タワーマンション #ペット #リノベーション
「ハッシュタグ検索」はこちら