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違法建築とは?農地転用や消防法との関係を解説

執筆者プロフィール

竹内 英二
不動産鑑定士

不動産鑑定事務所および宅地建物取引業者である(株)グロープロフィットの代表取締役。不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、住宅ローンアドバイザー、中小企業診断士の資格を保有。

ざっくり要約!

  • 違法建築物は、建築基準法はもちろん都市計画法や消防法、農地法、条例等のその他の法律に反するものが該当する
  • 違法物件の中でも簡単に是正できない深刻な違反がある場合には、購入時に住宅ローンが組めないこともある

建物は建築する際、建築基準法を中心にさまざまな法令を遵守して建てられます。
ただし、実際には建築当時に何らかの理由で法令が遵守されずに建てられた違法建築物も存在します。

また、違法建築物の中には、建築当初は遵法性が守られていたとしても、増築等により後から違法建築物になっている物件も多いです。

違法建築物とは、一体どのような物件なのでしょうか。
この記事では、「違法建築」について解説します。

違法建築とは

違法建築物とは、新築または増改築時の法律に反する建築物のことです。
違法建築物は、大きく分けて新築当初から違法になっているケースと、竣工後に増改築をすることで違法になってしまったケースがあります。
この章では、違法建築の概要について解説します。

違法建築の法的定義

違法建築物は、建築基準法では「違反建築物」という言葉で表現されています。
違反建築物とは、手続きや避難、構造規定等、参照すべき建築基準法の規定に適合しないまま作られた建築物のことです。

ただし、広義の意味では、違法建築物は建築基準法だけでなく、都市計画法や消防法、農地法、条例等のその他の法律に反するものも違法建築物に含まれます。

つまり、建築当時に関連する全ての法令を遵守していない物件は、違法建築物ということになります。

違法建築と既存不適格建築の違い

違法建築物とは別に、「既存不適格建築物」という建物もあります。
既存不適格建築物とは、建築当初は合法的な建物であったものの、法令の改正によって現在の法令には適合しなくなった建物のことです。

既存不適格建築物は、あくまでも合法的な建物ですので違法建築物とは扱いが全く異なります。

既存不適格建築物の例としては、旧耐震基準の建物が挙げられます。

耐震基準は1981年(昭和56年)6月1日を境に大きく変わりましたが、それより以前の法律に基づく耐震基準の建物は現在では建てることはできません。
しかしながら、1981年(昭和56年)5月31日以前に建築確認申請を通過した旧耐震基準の建物は、当時の建築基準法は満たしていたことから合法的な建物ということになります。
つまり、旧耐震基準の建物は、違法建築物ではなく既存不適格建築物であるということです。

また、建築当初は合法的に建てられた建物でも、竣工後に違法な増改築を行った場合は違法建築物となります。
よくあるのが、サンルームを後付けしたことで容積率がオーバーしているという物件です。
容積率とは、敷地面積に対する延床面積の割合のことを指します。

違法建築のリスクと影響

違法建築のリスクと影響について解説します。

法的問題と罰則

建築基準法では、違反建築物に関して以下の3つの罰則が設けられています。

根拠罰則内容
法9条1項建築主や請負人等に対し、特定行政庁※が通知書を交付し、意見書の提出等の一定の手続きを経た後に工事の施工停止が命じられる。建物の除却や使用禁止の措置がある。
法9条7項緊急を要する場合に出され、一時的な使用禁止や使用制限がなされる。
法9条10項    建築基準法令またはその許可に付した条件に違反することが明確な工事中の建築物に対して施工停止が命じられる。

※特定行政庁:建築主事という建築専門の役人が配置されている自治体のこと。比較的大きな市町村が該当する。

安全性への影響

違法物件の中で、避難階段や排煙設備、防火設備、非常用照明等の防火対策に関連する部分が違反している物件は、危険な建物といえます。

火災等が発生した場合、中の人が逃げ遅れてしまう可能性があるため、安全性に問題があります。

資産価値への影響

違法物件の中でも簡単に是正できない深刻な違反がある場合には、購入時に住宅ローンが組めないこともあります。

住宅ローンの本審査には、不動産会社は発行する重要事項説明書が提出書類となることが一般的です。
金融機関は、重要事項説明書に基づき、法令違反がない物件かを確認します。

住宅ローンが組めない物件となると、購入希望者は全額自己資金で買える人に限られてしまうため、需要が大きく減退します。
売却価格を下げないと売れなくなることから、違法物件は資産価値を下げる要因となります。

違法建築の該当例は?農地転用やブロック塀はOK?

違法建築の例を紹介します。

違法増築

建物の中には、本来建物が建てられない土地に建っている違法建築物が存在します。
違法建築物の例としては、接道義務を満たしていない土地に建っている建物や市街化調整区域に無許可で建っている建物が存在します。

接道義務とは、建物を建てるには土地が原則として幅員が4m以上の道路に間口が2m以上接していなければならない義務のことです。

市街化調整区域とは、市街化を抑制する区域のことであり、原則として建物を建てられない地域のことを指します。

接道義務を満たしていない土地でも、実際には建築確認申請等の手続きを経ずに違法で建てられている建物が存在します。
建築確認申請とは、建築予定の建物が合法的であるかどうかを着工前に図面で審査する手続きのことです。

また、市街化調整区域では、建物を建てるのに原則として許可が必要となりますが、実際には許可を経ずに建てられてしまっている建物も存在します。

これらの建ててはいけない土地に建てられている建物は、手続き違反によって建てられているものであり、違法建築物となります。

建ぺい率オーバー

建ぺい率とは、敷地面積に対する建築面積の割合を指します。
建築面積とは、端的にいうと建物を上から見たときの面積のことです。

違法建築物の中には、建築面積が建ぺい率をオーバーしている物件もあります。
建築面積は実は細かい規定があり、例えば庇や軒は先端から1m差し引いた残りの部分が建築面積に算入されます。
片持ち(片方で固定されていること)で跳ね出たバルコニーやベランダも、先端から1m差し引いた残りの部分は建築面積です。

後付けで庇やバルコニーを付けた場合は、建ぺい率がオーバーしてしまうこともあります。

採光不良

建築基準法では、居室に必要な採光窓を設ける規定を定めています。
用途が住宅の場合、有効採光面積を床面積で割った値が7分の1以上であることが必要です。

採光の条件を満たしていないからといって、必ずしも違反建築になるわけではありません。
採光の条件を満たしていない部屋は、居室ではなく納戸の扱いとなります。

規定を満たさないロフト

ロフト部分を床面積に算入させないためには、一定の要件を満たす必要があります。

ロフト部分の面積は、ロフトのある階の床面積の2分の1未満であることが必要です。
また、ロフトの床から天井までの高さは1.4m以下にする必要もあります。

これらの要件を満たしていないロフトがあっても、すぐさま違法建築になるわけではなく、ロフト部分の床面積が建物の床面積に算入されるということです。

床面積に算入されるロフトと他の床の合計の床面積が、容積率の範囲内に収まっていれば違法にはなりません。

界壁工事の手抜き

界壁とは、賃貸マンション等の共同住宅において住戸間に設ける壁のことです。
界壁は、耐火建築物であれば耐火構造、準耐火建築物であれば準耐火構造とし、小屋裏(屋根と天井との間の空間)もしくは強化天井までに達しなければならないとされています。

耐火建築物とは、耐火構造で火災が終了するまで火熱に耐えられる、または建物の周囲で発生した火災に耐えられる建築物のことです。
準耐火建築物とは、耐火建築物以外の建築物で、火災による延焼を抑制できるものを指します。

界壁に関する施工上の要件を満たしていなければ、違法建築物となります。

農地転用

農地を農地以外にすることを農地転用と呼びます。
農地に建物を建てるには、原則として農地転用の許可が必要です。
例外として、畜舎や農業用倉庫、農機具収納施設等は農地転用の許可は不要で建てられます。
畜舎等以外で農地転用の許可を経ずに農地に建っている建物は、違反建築物になります。

ブロック塀

ブロック塀は、比較的違法のものがよくあります。

まず、ブロック塀は、建物の新築時に同時に建てる場合には、建築確認申請の対象となることから合法性のチェックがなされる機会が存在します。
そのため、新築時に造られたブロック塀は、適法なものが多いです。

一方で、竣工後に建てるブロック塀は、防火地域または準防火地域以外では建築確認申請を経ずに建てることができます。
防火地域や準防火地域は、中心市街地の一部のエリアに指定されていることが多く、その他の広い範囲が防火地域または準防火地域以外に該当します。

竣工後に建てるブロック塀は、合法性がチェックされる機会がないことから、違法のまま建っていることも多いです。
具体的には、鉄筋が入っていない等の強度不足となっている違法のブロック塀が多く存在します。

違法建築を避けるには

違法建築を避けるには、基本的には実績豊富な不動産会社の仲介を通じて購入することが望ましいです。

ただし、不動産会社は建築の専門家ではないことから、細かい違法部分を気付けない場合もあります。

そこで、この章では、より確実に違法建築物の購入を避ける方法について解説します。

検査済証の確認

検査済証とは、確認申請を通った建物が図面通りに建築されている証明書のことです。
確認申請はあくまでも着工前の図面審査であるため、確認申請を通っているからといって本当に合法的な建物が建てられている保証はありません。
着工後、勝手に設計が変更されて竣工してしまう可能性もあるからです。

そこで、確認申請手続きでは、竣工時に確認申請の図面通りに建てられたかをチェックする竣工検査が行われます。
竣工検査に合格した建物に発行されるのが、検査済証です。
検査済証があれば、少なくとも新築時は合法的な建物であったことが確認できます。

専門家への相談

建物は竣工後、違法な増改築が行われる恐れがあるため、検査済証だけで合法性を見抜くのは不十分です。

そこで、現状の建物が合法的であるかどうかをチェックする方法があります。
具体的には建物の専門家に「エンジニアリングレポート」と呼ばれる書類の作成を依頼します。
エンジニアリングレポートでは、竣工後に行われた増改築等の遵法性に関しても調査が行われます。

一棟の賃貸マンション等の高額物件を購入する場合には、念のためエンジニアリングレポートを取得してみても良いかもしれません。

この記事のポイント

違法建築のリスクと影響は?

場合によっては建築基準法違反となり、罰則が設けられているだけでなく、避難階段や排煙設備、防火設備、非常用照明等の防火対策に関連する部分が違反しているケースでは火災時の危険があります。

また、不動産の資産価値を下げることもあります。

詳しくは「違法建築のリスクと影響」をご覧ください。

違法建築の該当例は?

違法建築には、建ぺい率オーバー、畜舎等以外で農地転用の許可を経ずに農地に建っている建物などさまざまな例があります。

また、竣工後に建てたブロック塀は、合法性がチェックされる機会がないことから、違法のまま建っていることも多いです。

詳しくは「違法建築の該当例は?農地転用やブロック塀はOK?」をご覧ください。

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