ざっくり要約!
- 境界標とは土地の境界点を示すもので、隣地や道路との境界点に設置される
- 個人で境界標を設置することはできず、土地家屋調査士に依頼して設置する必要がある
土地や建物を売却する際は、売主は買主に対して、売買の目的物である土地の範囲を明示しなければなりません。一般的な不動産売買契約書には境界の明示について条文が盛り込まれており、境界標がない場合は原則として、売主の責任と負担により境界標を設置することになります。
土地の売却が決まったものの「境界の位置を聞かれて困った」というケースは少なくないでしょう。普段はあまり目にすることがない境界標ですが、不動産売買において境界明示は売主の義務になります。
この記事では、境界標の種類や識別方法、設置する場合の費用相場を紹介します。また境界標の設置基準や勝手に設置された場合の対処法、また依頼先についても触れますので、不動産の売却や購入を予定されている方は、ぜひ参考にしてください。
記事サマリー
境界標とは?
境界標とは土地の境界点を示すもので、隣地や道路との境界点に設置します。民法には「境界標を設置できる」と定めた条文はありますが、本来土地の所有者に設置の義務はありません。
しかし不動産を売却する際に売主には境界明示義務があり、一般的な不動産売買契約書にはその旨の条文が盛り込まれています。また境界標がない場合は、売主の責任と負担により、境界標を設置すると定めています。土地や戸建てを購入する際は、かならず境界標の有無を確認しましょう。
原則は境界を明示する必要がありますが、地積測量図がないなど境界を明示できない場合は、買主と相談の上で非明示することも可能です。
ただし、境界が明示できないことは買主にとって不安材料になるため、売却が難しくなる可能性があります。売買価格が市場よりも安くなることも想定しておきましょう。
境界標の種類と特徴
境界標には種類があり、通常その場に合ったタイプを選んで設置されます。この章では代表的な境界の種類と、その特徴を紹介します。
境界の種類 | 特徴 |
---|---|
金属標 | 地面がコンクリートなどの場合で、杭を打つことができないときに使用します。矢印や十字、一本線が表示されていて、細かく境界点を示すことができます。 |
金属鋲 | 地面がコンクリートで覆われていている場所で、段差があるなど金属標の設置が難しい位置などに使用されます。金属の鋲だけのタイプや、目立つようにプラスチックのかぶせがついたタイプもあります。 |
コンクリート杭 | 地面が土や砂利のところへ設置することが多い杭です。表面に矢印や十字、1本線の刻みがあり、境界点を細かく標すことができます。金属のタイプやプラスチックの杭に比べて設置する手間がかかるため、設置費用は比較的高くなります。 |
石杭 | コンクリート杭と基本的には同じです。地面が土や砂利のところへ設置します。金属のタイプやプラスチックの杭に比べると、手間とコストがかかります。 |
プラスチック杭 | 地面が土や砂利などに使用することが多い杭です。石杭などに比べて安価なのが特徴で、比較的広範囲に設置する場合に採用します。見える部分が赤いタイプが一般的で、見つけやすくなっています。 |
境界標にできないもの
境界標に、移動したり朽ちたりするものは使えません。不動産登記規則には、石杭や金属標など、持続性があるものにしなければならないと定められています。
境界などに木杭が設置される場合もありますが、そのほとんどは仮杭です。土地の境界点を標すためではなく、一時的に位置を標すために使用します。
境界標について法律で定められるより以前は、特徴のある大きな石や樹木などを、お互いの境界とすることもありました。
また今でも、赤いペイントや刻み(刻印)で境界点を標したものを見ることもありますが、今後売買するタイミングなどで石杭や金属標に代わっていくでしょう。
境界標の識別方法と設置費用
境界標の識別方法と設置にかかる費用相場を紹介します。
境界標の識別方法
境界標にはいくつか種類があり、境界点を示すために矢印や十字、1本線などが標されています。
測量図には、通常設置されている境界標のタイプが記載されており、現地で境界標を探すときに役立ちます。
なお仮で境界標を設置している場合があり、本当の境界標でないこともあります。現地で測量図を照らし合わせながら確認するようにしましょう。
引用:知って得する、境界標の「知識」|日本土地家屋調査士会連合会
境界標の設置方法と費用
ホームセンターなどでコンクリート杭などを見かけることがありますが、個人で境界標を設置することはできません。土地家屋調査士に依頼して設置する必要があります。
たとえば確定測量をする場合は、測量後に隣地所有者に境界確認の立会いを依頼し、境界確認書に署名押印をしてもらいます。そして登記所へ申請手続きを行いますが、この一連の業務は土地家屋調査士が行います。
確定測量にかかる費用は、土地の大きさや接道している道路の種類などによって大きく異なります。一般的な確定測量は40~60万円が相場です。しかし国道に面している場合は境界確認の立会いに手間と時間がかかるため、10~30万円ほどプラスになることが多いでしょう。
実際の費用は、依頼する前に土地家屋調査士に確認するようにしましょう。
境界標設置のメリット
土地や一戸建てを売却する場合は、基本的には境界標を設置して売却することになりますが、隣地とのトラブルを避けるためにも境界標を設置することをおすすめします。
この章では境界標を設置するおもなメリットを5つ紹介します。
土地管理のしやすさ
境界標を設置することで、自分の敷地の範囲が明確になります。住宅街など塀がある場合は境界標がなくてもそれほど不便に感じないかもしれません。
しかし農地や山林など、そもそもどこまでが自分の土地なのかわからない状態だと、土地の管理も難しいでしょう。境界標を設置することで自分の敷地管理がしやすくなり、有効活用できるようになります。
境界紛争を避けられる
境界点の位置について隣地所有者と認識が異なる場合、トラブルに発展するおそれがあります。とくに土地価格が高いエリアでは、数㎝ずれただけでも大きな損害が生じます。
隣り合う隣地所有者が立会い、境界点を確認して境界標を設置することを確定測量といいますが、お互いに境界標の位置を認めることになるため、境界紛争を未然に防ぐことができます。
また境界標で自己の所有地であることを第三者へも明示できるため、境界侵害の予防にも役立ちます。
確定測量が不動産売買で必要な理由については、以下の記事で詳しく解説しています。
・「確定測量が不動産売買で必要な理由」に関する記事はこちら 確定測量が不動産売買で必要な理由を解説!かかる費用や測量の流れも紹介 |
正確な地図の基礎と登記の実現
ひと昔前は現在のような測量機械はなく、また測量技術も高かったとはいえません。また、年貢の負担を減らすために、実際の面積よりも小さく申告することもあったようです。
したがって現在の測量技術で測量し直すと、縄伸びや縄縮みといって大きくなることや、逆に小さくなることがあります。
測量して境界標を設置することで正確な測量図を作成することができ、実測による面積を登記することができます。ただし、境界標がある場合でも測量をし直すことはあります。
災害後の復旧支援の円滑化
地震や津波で建物や塀が倒壊し、境界標が動いてしまったとしても、正確な地積測量図が登記所に備えられていれば、境界標を復旧する際に境界の調査や測量する手間を省くことができます。
たとえば広範囲で境界標を復旧しなければならない場合、復興までに時間がかかってしまうおそれがありますが、地積測量図があれば境界の復旧を円滑に進めることができます。
計画的な土地活用
境界標が設置されていれば、売却する場合でもスムーズに進めることができ、建物を建て替えする場合も土地面積を最大限利用してプランを立てられます。
境界について隣地所有者とトラブルになると、売却自体も難しくなるおそれもあります。また今現在支障がなくても、相続や売買により隣地所有者が変わったタイミングでトラブルになる可能性もあります。
隣地所有者との関係性が良好なうちに、境界標を設置することをおすすめします。
境界標の設置基準は?勝手に設置されたらどうする?
この章では境界標設置時に確認したいポイントと、境界標がなくなってしまったときの対処法を紹介します。
設置時に確認したいポイント
万が一、境界標が撤去もしくは移動してしまった場合に備えて目印となるものと一緒に写真を撮影して保存しておきましょう。通常、境界確認書にも境界の写真が掲載されていることがありますが、自分でも写真を撮って確認・保存しておくと安心です。
境界標がなくなった場合は?
境界標は道路工事や塀の撤去などによって、誤って撤去されてしまうことがあります。境界標の近くで工事がある場合は、工事責任者に境界標の位置を伝えて、注意して工事してもらうようにしましょう。
工事などにより境界標が損壊、もしくは勝手に別の場所に設置されたり、撤去されたりした場合は、工事主に地積測量図を基に復旧してもらいましょう。
もし解決が難しい場合は、土地家屋調査士会が運営する「ADR境界問題相談センター」に相談してみましょう。土地家屋調査士と弁護士に、調停人として当事者間の話し合いに入ってもらうことができます。
ちなみに境界標を損壊や移動、除去して境界を認識できないようにしてしまうと、5年以下の懲役もしくは50万円以下の罰金を科されるなど処罰の対象となります。自分が撤去や破損する側にならないように注意しましょう。
境界標に関して依頼できる専門家
境界標は勝手に個人で設置することはできません。境界標を設置するためには土地を調査・測量する必要があり、専門家である土地家屋調査士に依頼します。土地の測量から登記申請手続きまでの、一連の業務を依頼できます。
土地家屋調査士は、日本土地家屋調査士連合会の「土地家屋調査士検索」のページ、もしくは最寄りの都道府県の土地家屋調査士会のウェブサイトから検索できます。
この記事のポイント
- 境界標設置のメリットは?
土地管理がしやすくなる、境界紛争を避けられる、正確な地図の基礎と登記が実現できる、災害後の復旧支援が円滑に進むなどのメリットがあります。
詳しくは「境界標設置のメリット」をご覧ください。
- 境界標を勝手に設置されたらどうする?
工事などにより境界標が損壊、もしくは勝手に別の場所に設置されたり、撤去されたりした場合は、工事主に地積測量図を基に復旧してもらいましょう。
もし解決が難しい場合は、土地家屋調査士会が運営する「ADR境界問題相談センター」に相談してみましょう。土地家屋調査士と弁護士に、調停人として当事者間の話し合いに入ってもらうことができます。
詳しくは「境界標の設置基準は?勝手に設置されたらどうする?」をご覧ください。
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