共益費とは
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共益費とは?管理費との違いや相場、家賃との関係をわかりやすく解説

執筆者プロフィール

亀梨奈美

株式会社realwave代表取締役。大手不動産会社退社後、不動産ジャーナリストとして独立。
2020年には「わかりにくい不動産を初心者にもわかりやすく」をモットーに、不動産を“伝える”ことに特化した株式会社realwaveを設立。
住宅専門全国紙の記者として活動しながら、不動産会社や銀行、出版社メディアへ多数寄稿。不動産ジャンル書籍の執筆協力なども行う。

ざっくり要約!

  • 共益費とは、賃貸物件の共用部を維持していくために必要なランニング費用に充当されるお金
  • 共益費の全国平均は月5,000円程度で、主要都市においては月4,000円~6,500円程度が相場となる

賃貸物件を借りると共益費が発生する場合があります。
共益費とは、賃貸物件の共用部を維持するために借主から徴収する金銭のことです。

物件によっては共用部のない物件もありますし、管理費という名称で金銭を徴収されることもあります。
共益費とは、一体どのようなものなのでしょうか。
この記事では、賃貸物件の「共益費」について解説します。

賃貸物件を借りるときに知っておくべき「共益費」とは?

共益費とは何か

共益費とは、賃貸物件の共用部を維持するために借主から徴収する金銭のことです。共用部とは、共用廊下やエントランス、共用階段、エレベーター等の専有部以外の部分のことを指します。

共益費の役割

共用部の水道光熱費等の維持管理費は、借主が共同して費用を負担します。例えば、賃貸マンションやオフィスビルといった賃貸物件には、エントランスやエレベーター等の共用部分が存在します。エントランスの照明やエレベーターの駆動には、電気代が必要です。これらの電気代は共益費から賄われます。

その他として、共用廊下や共用階段の清掃費、給水ポンプの電気代、エレベーターの定期メンテナンス代、庭の散水等も共用部の維持に係るランニング費用です。共益費は、これらの共用部を維持していくために必要なあらゆるランニング費用に充当される費用となります。

共益費と管理費との違い

共益費と管理費は、一般用語としての意味は同じです。
日常的には混同して使用されています。

ただし、国土交通省が示す不動産鑑定評価基準では、共益費と管理費は以下のように使い分けられています。

名称内容
共益費   共用部を維持するために「借主」から徴収する金銭
管理費共用部を維持するために「貸主」が支払う徴収する金銭

共益費は、共用部を維持するために借主から徴収する金銭です。
一方で、管理費は貸主が徴収した共益費の中から共用部を維持するために電力会社やメンテナンス会社等に支払う金銭となります。

いずれも共用部を維持するための金銭ですが、共益費は貸主がもらうお金、管理費は貸主が支払うお金という意味で違いがあります。
ただし、ほとんど同じ意味なので日常的には同義で使われていることが多いです。

また、共益費という言葉は、オフィスビルのように事業用の賃貸物件で利用される傾向があります。
賃貸マンションやアパート等の住宅では、共益費ではなく管理費という言葉が使われることも多いです。
共益費と管理費が混同して使用されているのは、賃貸住宅に多い傾向があります。

なお、分譲マンションでは共用部を維持するために区分所有者から徴収する金銭は「管理費」と呼ばれています。
そのため、賃貸物件において借主から徴収する金銭で管理費という名称を用いても間違いとはいえません。

共益費は初期費用にも関わる?

賃貸住宅に入居する際に支払う敷金や礼金は、家賃の1〜2ヶ月分に設定されていることが多いものです。家賃と共益費が分かれている場合、共益費は敷金や礼金の計算に含まれないため、共益費は基本的に初期費用に影響しないということになります。逆に、家賃に共益費が含まれている物件は、初期費用が高額になります。

共益費がない物件があるのはどうして?

賃貸物件の中には、共用部が存在しない物件もあります。例えば、戸建て賃貸や一棟貸しのコンビニ等は、共用部の存在しない物件です。これらの共用部の存在しない物件には、共益費はありません。

また、共用部があってもほとんど共益費が生じない物件も存在します。例えば、2階建てのアパートで外廊下や外階段に照明もついていないような物件は、共用部にランニング費用が基本的に生じません。
そのため、アパートの場合、共益費が徴収されない物件もあります。ただし、近年新築されるアパートは、廊下や階段に照明や防犯カメラ等が付いている物件も多くなってきました。このように共用部分に電気代が生じる設備が付いている物件では、アパートであっても共益費が徴収されるケースが多いです。

共益費や管理費の平均相場

共益費や管理費の平均相場

政府統計(e-Stat)の令和5年住宅・土地統計調査によると、全国の主要都市における借家の専用住宅の共益費および管理費の平均は以下の通りです。

地区1ヶ月当たりの共益費の平均額
全国平均4,806円
札幌市4,203円
仙台市4,358円
さいたま市4,700円
千葉市4,331円
東京特別区   6,276円
横浜市5,267円
名古屋市5,117円
京都市5,624円
大阪市6,056円
神戸市4,805円
広島市3,938円
福岡市4,168円
※数値は専用住宅の1か月当たり共益費・管理費(住宅又は世帯)「0円を含まない」より抜粋

全国平均は月5,000円程度であり、主要都市においては月4,000円~6,500円程度が平均となります。

出典:令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計 全国・都道府県・市区町村 |政府統計(e-Stat)

共益費や管理費を支払うメリット

共益費や管理費のメリット

共益費や管理費(以下、共益費等)を支払うメリットについて解説します。

共用部分の掃除などを負担しなくて済む

共益費等の有無に関わらず、共用部分の管理は貸主側で行うことが通常です。
そのため、共益費等が徴収されない物件であっても、借主は共用部分の掃除等の負担をする必要はありません。

ただし、共益費等を支払えば、貸主側で共用部分を管理する義務がより明確になるため、借主が共用部分の管理を負担しなくても良いという主張をしやすくなります。

共用部分の管理体制の改善を求めることができる

共用部分の使用は専有部分の使用に必要な限度において当然に認められることから、共用部分の使用の対価も賃料の中に含まれています。
そのため、共益費等の有無に関わらず、借主は貸主に対して共用部分の管理体制の改善を求めることできます。

ただし、共益費等を支払えば、貸主側で共用部分を管理する義務がより明確になるため、共用部の管理体制の改善を求めやすいと考えることはできます。

共益費や管理費の支払いを拒否したらどうなる?

共益費や管理費の支払いを拒否したらどうなる

共益費等の支払いを拒否した場合には、基本的には家賃の不払いが発生したときと同様の対応が取られます。

入居時に敷金を充当している場合には、まずは敷金から不払い分が充当されていきます。
不払いのまま退去すれば、退去時に返還される敷金が減額されるということです。

次に共益費等を2ヶ月以上滞納した場合、賃貸借契約の解除事由に相当し、貸主から契約解除を求められます。

契約解除については、賃貸借契約書に記載されていることが一般的です。

標準的な賃貸借契約書には、共益費等の不払いについて以下のような記載がなされています。

(契約解除)
甲(貸主)は、乙(借主乙)が次に掲げる義務に違反した場合において、甲が相当の期間を定めて当該義務の履行を催告したにもかかわらず、その期間内に当該義務が履行されないときは本契約を解除することができる。
一 乙が賃料又は共益費の支払義務を2ヶ月以上怠ったとき

そのため、仮に1ヶ月分だけ滞納したとしても、すぐには契約解除はなされないことが通常です。

2ヶ月以上滞納し、貸主が相当の期間を定めて催告したにもかかわらず、それでも支払わない場合には退去しなければならないということになります。

共益費や管理費が高い物件の特徴

共益費や管理費が高い物件の特徴

この章では、共益費等が高い物件の特徴について解説します。

設備が充実している

共益費等が高い物件は、設備が充実している傾向があります。

例えば、内廊下の賃貸マンションで、共用廊下内に空調が設置されているような物件は共用部に空調代が発生することから共益費が高いです。
内廊下とは、建物内部に共用廊下がある物件のことを指します。

また、集合エントランスも、自動扉が2重になっている物件は、2つの自動扉を電気で動かす必要があり、その分電気代も高いです。

庭に植栽が植えてある物件は散水が必要なため、水道代も発生することから共益費等も高くなります。

駐車場が機械式駐車場となっている場合も、電気代が発生することから共益費等が高くなるといえます。

共用部分の維持管理に力を入れている

共用部分の維持管理に力を入れている物件も、共益費等は高くなります。
例えば都内には、一定規模以上の賃貸物件では、日中に管理人を常駐させなければいけないという条例が設けられている区もあります。

管理人が常駐し、有人管理が行われている賃貸物件は、管理人の人件費が生じることから共益費等が高いです。

また、共用部の清掃の頻度は、貸主側が任意で決めます。
高頻度に清掃を行っている物件であれば、清掃会社へ支払う費用が増えることから共益費等が高いです。

家賃を安くみせている

共益費は実質的に家賃の一部を構成しており、共益費を高くすることで家賃を安く見せている物件も存在します。

共益費は貸主が負担した実費を精算する必要はなく、相当な期間において実際のランニングコストと共益費の額が均衡していれば適正額であると考えられています。

つまり、共益費は緻密にランニングコストを積み上げて決まっているものではなく、貸主側である程度調整できる金銭であるということです。

例えば、貸主側が借主から月10万円の収入を得たい場合、「家賃を9.5万円、共益費を0.5万円」とすることもできますし、「家賃を9.0万円、共益費を1.0万円」とすることもできます。

このように家賃を低め、かつ、共益費を高めに設定することは、貸主にとっては別のメリットもあります。

例えば、万が一借主から賃下げ交渉を行われた場合、減額交渉の対象となるのが家賃だけにしやすいという点がメリットです。

仮に家賃が下げても共益費は下げずに済むため、家賃を低めに設定しておけば貸主の損失を低く抑えることができます。

共益費や管理費に消費税はかかる?

共益費や管理費に消費税はかかる?

共益費等に消費税がかかるかどうかについて解説します。

基本的に居住用の住宅にはかからない

結論からすると、賃貸マンションやアパート等の住宅に係る共益費等には消費税はかかりません。

消費税には、消費税が課税されない「非課税取引」と呼ばれるものが存在します。
非課税取引には、大きく分けて「税の性格から課税対象とすることがなじまないもの」と「社会政策的な配慮に基づくもの」の2種類があります。

税の性格から課税対象とすることがなじまないものとしては、土地の譲渡や貸付、利子、保証料、保険料、住民票の取得費用等の行政手数料等が挙げられます。

社会政策的な配慮に基づくものは、住宅の貸付や介護保険サービス、埋葬料、教科書用図書の譲渡等の取引です。

賃貸マンションやアパート等の住宅に係る共益費等は、住宅の貸付に該当することから非課税取引となっています。

居住用でない場合は課税対象

オフィスビルや医療モール、大型商業施設等の住宅以外の貸付は課税取引です。
課税取引ですので、住宅以外の賃貸物件で生じる共益費等には消費税が課税されます。

「共益費」に関するよくある質問と回答

共益費に関するよくある質問に対する回答をまとめました。

賃貸物件で共益費を支払っているのに共用部が汚いのですが……

共益費を支払っているにもかかわらず共用部が適切に管理されていない場合は、まず管理会社や家主に状況を具体的に報告し、改善を要請しましょう。

改善が見られない場合は、共益費の収支状況を請求し、何にどの程度の費用がかけられているのか、予算は余っているのかなどを確認することをおすすめします。写真などの証拠を残しながら、粘り強く交渉を続けることが重要です。

共益費は交渉することもできる?

共益費の交渉は可能です。ただし、交渉が受け入れられるとは限りません。

共益費は、一般的に建物の維持管理に必要な実費を元に算出されており、他の住人にも支払いが求められているため、値下げは難しい場合が多いといえるでしょう。しかし、近隣の同様の物件と比べて明らかに高額な場合は交渉の余地があります。とくに契約前であれば、交渉できる可能性は比較的高くなります。

共益費が0円の物件の注意点はある?

まず、共益費が家賃に含まれている可能性があるため、実質的な負担額を確認しましょう。また、共用部の管理体制や清掃頻度について事前の確認も重要な要素となります。

加えて、将来的に共益費が発生する可能性もあるため、契約時に確認しておくと安心でしょう。共用設備の維持管理が適切に行われているかは、実際に物件を見なければわかりません。共益費の有無や金額だけで善し悪しを判断せず、内見をして確かめることをおすすめします。

まとめ

共益費は、集合住宅の共用部を維持していくための費用です。共益費が無い物件も見られますが、その場合は家賃に含まれている可能性があります。そのため、共益費の有無や金額だけでは、共用部の状況や清掃頻度などはわかりません。内見時には、部屋だけでなく、エントランスや廊下、階段、ゴミ置き場などの共用部もチェックしましょう。

この記事のポイント

共益費や管理費の支払いを拒否したらどうなる?

共益費等の支払いを拒否した場合には、基本的には家賃の不払いが発生したときと同様の対応が取られます。
仮に1ヶ月分だけ滞納したとしても、すぐには契約解除はなされないことが通常です。

2ヶ月以上滞納し、貸主が相当の期間を定めて催告したにもかかわらず、それでも支払わない場合には退去しなければならないケースがほとんどです。

詳しくは「共益費や管理費の支払いを拒否したらどうなる?」をご覧ください。

共益費や管理費が高い物件の特徴は?

共益費等が高い物件は、設備が充実している傾向があります。

一方で、共益費は実質的に家賃の一部を構成しており、共益費を高くすることで家賃を安く見せている物件も存在します。

詳しくは「共益費や管理費が高い物件の特徴」をご覧ください。

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