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不動産契約で手付金が返ってくるのはいつ?知っておきたい条件や相場

執筆者プロフィール

桜木 理恵
資格情報: Webライター、宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、管理業務主任者

大学在学中に宅地建物取引士に合格。新卒で大手不動産会社に入社し、売買仲介営業担当として約8年勤務。結婚・出産を機に大手ハウスメーカーのリフォームアドバイザーに転身し約5年勤務。その他信託銀行にて不動産事務として勤務経験あり。現在は不動産の知識と経験を活かし、フリーランスのWebライターとして活動。不動産や建築にまつわる記事を多数執筆。「宅地建物取引士」「2級ファイナンシャル・プランニング技能士」「管理業務主任者」所持。

ざっくり要約!

  • 手付金は残代金決済時に売買代金の一部として充当されるが、売買契約が不成立となった場合に返ってくる可能性がある
  • 手付金返還の対応は、売主の都合による手付解除や違約による解除と買主の住宅ローン特約による解除で異なる

不動産の売買契約を締結する際は、買主・売主間で手付金を授受します。手付金には契約を確約する意味や解約手付金の役割があり、売買代金の5~10%の間で取り決めるのが一般的です。

手付金は、残代金決済時に売買代金の一部として充当することになりますが、不動産売買契約が不成立の場合などは戻ってくることがあります。

この記事では、手付金の相場や返還されるケースについて解説します。また手付金が返ってくるときの流れや注意点も紹介しますので、不動産の購入を予定している方だけでなく、売却を予定している方もぜひ参考にしてください。

不動産契約の手付金とは?相場も紹介

不動産売買契約において、手付金にはどのような役割があるのでしょうか。この章では、手付金の役割と一般的な相場について解説します。

不動産契約の手付金とは

不動産の売買契約における手付金には、次の3つの役割があります。

  • 証約手付
  • 解約手付
  • 違約手付

証約手付

証約手付とは、不動産売買契約が成立したことを証するために、買主・売主間で授受するものです。

売買契約締結後に、買主が残代金を支払うまで期間が空いてしまうことが多く、残代金決済まで契約を安定させる意味があります。つまり簡単に契約を解除させないために、売主・買主間で手付金を授受します。

ちなみに売買契約を締結した時点では、手付金は売買代金の一部ではありませんが、決済時に売買代金の一部として充当されます。

解約手付

手付金は、解約手付の役割もします。不動産売買契約締結後でも、買主は手付金を放棄して契約を解除することができ、売主は受領した手付金を買主に返還し、手付金に相当する金額を買主に支払うことで契約を解除できます。

しかし、いつまでも手付金を放棄できてしまうと、相手側に損害が生じる可能性があるため、解除できる期限を取り決めます。また、相手側が契約の履行に着手した場合は解除できません。

履行に着手したと認められるケース

  • 土地を実測売買するときで、売主が土地の測量を依頼したとき
  • 更地渡しが条件で、売主が建物を解体したとき
  • 買主が引っ越し会社と契約したとき
  • 買主が中間金を支払ったとき

売買契約が解約となり、手付金が返ってくる流れについては、この後に続く章で詳しく紹介します。

出典:住宅売買契約における手付解除とクーリングオフ|一般財団法人 住宅金融普及協会

違約手付

売買契約の履行をしなかったときは、買主は違約金として手付金を放棄し、売主は受領済みの手付金を買主に返還し、手付金と同額の金銭を違約金として買主に支払います。

つまり契約時に授受する手付金は、債務不履行に対する違約金としての役割も担っていることになります。

不動産契約における手付金の相場

宅地建物取引業者が売主の場合は、宅地建物取引業法により個人から受け取ることができる手付金の上限額が定められており、売買代金の20%を超えてはなりません。

個人が売主の場合については、手付金の上限額に関するルールはありません。しかし高すぎると契約のハードルが上がってしまう可能性があり、安すぎると安易な解約につながってしまいます。

したがって個人間の売買契約では、売買代金の5~10%を手付金とするのが一般的です。たとえば売買代金が3,000万円の場合、手付金は150~300万円が相場です。

出典:宅地建物取引業法|e-Gov法令検索

手付金が返ってくる4つのパターン

本来手付金は、残代金決済時に売買代金の一部として充当されますが、売買契約が不成立となった場合に返ってくる可能性があります。

この章では、手付金が返ってくるケースを以下の通り4つ紹介します。

  • 住宅ローン特約での返還
  • 売主都合の場合の手付倍返し
  • 売主が契約違反となったとき
  • 売主が倒産することになったとき

住宅ローン特約での返還

住宅ローン特約とは、買主が住宅ローンの全部もしくは一部について承認が得られないときは、売買契約を解除できる特約です。

買主を救済するためのルールで、住宅ローンが借入できなかったときは、契約時に定めたローン特約期日までであれば契約を白紙解除できます。この場合、買主は手付金を放棄する必要はなく、売主から返還されます。

売主都合の場合の手付倍返し

契約時に定めた手付解除期日まで、もしくは相手側が契約の履行に着手するまでであれば、売主は自己都合でも契約を解除できます。

もし売主の都合で手付解除になるときは、支払い済みの手付金は買主に返還され、手付金と同額を買主に支払うことになります。

つまり、買主に対して手付金の倍額を支払うため、倍返しと表現することがあります。

売主が契約違反となったとき

売主の契約違反により、手付金が戻ってくる可能性があります。

たとえば決済日に買主は残代金を支払う準備ができているのにもかかわらず、売主が所有権移転できないときは契約違反になります。

1週間程度の猶予期間を設定して催告しても、所有権移転に応じないときは、買主は売買契約を解除できます。売主は受領済みの手付金を返還するとともに、違約金を買主へ支払うことになります。

なお、売主が所有権移転できないことによって損害が生じた場合、買主は損害賠償請求をすることもできます。

違約金については売買契約書で定めておくべき事項であり、一般的には「売買代金の20%相当額」などと取り決めます。この場合、損害賠償額は違約金に準じます。

売主が倒産することになったとき

売買契約後に不動産会社である売主が倒産した場合でも、手付金が戻ってくる可能性があります。

ただし、手付金が戻るのは、売買代金の10%もしくは1,000万円超を超える手付金を授受する取引が対象となる「手付金等保管制度」を利用した場合に限られるでしょう。

手付金の保全措置が講じられていない場合は、基本的に不動産の引渡しを受けていない限り、破産管財人に対抗できないからです。

不動産会社から不動産を購入する場合は、手付金の保全措置が講じられているのか確認するようにしてください。

出典:手付金等保管制度|公益社団法人 全国宅地建物取引業保証協会

手付金が返ってくるまでの流れや手続き

基本的に売買契約後の契約解除は相手側に迷惑をかけることになるため、もし契約を解除したいときは、なるべく早く申し出るようにしましょう。

この章では、手付金の返還を求める際の流れや、手付解除を希望する場合の手続きについて解説します。

手付金が返ってくる時期はいつ?

売主の都合による手付解除や違約による解除と、買主の住宅ローン特約による解除では対応が異なります。

買主の立場で、住宅ローン特約による解除をする場合は、売主に落ち度はありません。手付金を返してもらう権利はありますが、高圧的な態度で要求しないようにしましょう。あまりに遅いと感じる場合は、不動産会社を介して返還を要求します。

売主の都合や違約にもかかわらず、手付金の返還や支払いに応じないときは、弁護士への相談も視野に入れる必要があるでしょう。実際には、不動産会社の担当者と相談して進めることになります。

手付解除を希望する場合の手続き

手付解除を希望する場合、書面により相手側に通知することになります。
まずは不動産会社の担当者に連絡をし、書面に記載する内容などは相談するようにしましょう。

また書面は、確実に相手側に届いたことを確認するためにも、内容証明郵便や配達証明付きの方法で送ることをおすすめします。

手付解除を希望する旨について書面で通知後、手付金の振込先となる銀行口座を教えてもらい、なるべく早く手付金に相当する額を振り込むようにします。

売買契約における手付金に関する注意点

最後に、売買契約における手付金に関する注意点を紹介します。

手付金に関する注意点

本来は売買契約書に署名・押印してから、買主は売主へ手付金を払います。したがって契約日に現金で用意するのが一般的です。しかし大金を持ち歩くことを懸念して、銀行口座へ振り込む方もいます。

万が一契約日までに売主が倒産もしくは行方不明になると、振り込んだ手付金を回収できなくなるおそれがあるため、契約前に振込を求められた場合は注意が必要です。

なお、不動産会社によっては直接相手の口座には振り込まない、信託口座を利用した事前振込に対応していることもあります。

現金を持ち歩くのが心配な場合は、ネット銀行を利用するか小切手を利用するなど、不動産会社の担当者に相談して工夫しましょう。

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手付金に関する不動産取引の特例

住宅を購入する資金として父母や祖父母などから贈与を受ける場合、一定の条件を満たすことで省エネ住宅は1,000万円まで(省エネ住宅以外は500万円まで)贈与税が非課税になります(住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度)。

しかし、贈与として受けた金銭を、手付金に充てる場合は注意が必要です。贈与を受けた年の翌年の3月15日までに不動産(住宅)の引き渡しを受け、速やかに居住を開始しなければなりません。

贈与のタイミングが早すぎると、特例の対象外になることがあるため注意が必要です。

住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度については、他にも満たすべき要件があります。利用する場合は不動産会社の担当者や税理士などに相談することをおすすめします。

出典:「住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税」 等のあらまし|国税庁
No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税|国税庁

この記事のポイント

手付金が返ってくるのはどんなとき?

手付金が返ってくるケースは、主に住宅ローン特約での返還、売主都合の場合の手付倍返し、売主が契約違反となったとき、売主が倒産することになったときです。

詳しくは「手付金が返ってくる4つのパターン」をご覧ください。

手付金返還に必要な手続きは?

何らかの理由で手付解除を希望する場合、書面により相手側に通知することになります。

まずは不動産会社の担当者に連絡をし、書面に記載する内容などは相談するようにしましょう。

詳しくは「手付金が返ってくるまでの流れや手続き」をご覧ください。

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