更新日:  

液状化現象はなぜ起こる?起こりやすい場所や事例、原因と対策を解説

執筆者プロフィール

竹内 英二
不動産鑑定士

不動産鑑定事務所および宅地建物取引業者である(株)グロープロフィットの代表取締役。不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、住宅ローンアドバイザー、中小企業診断士の資格を保有。

ざっくり要約!

  • 液状化現象とは「地盤全体がドロドロの液体のような状態になる現象」のことで、地震が原因で起こる
  • 液状化現象は影響を受ける範囲は広いものの、その範囲の中での影響の受け方は一様ではない点が特徴

地震によって引き起こされる災害の一つに「液状化現象」があります。
東日本大震災では、首都圏の埋立地で広範囲に液状化現象が生じたことから、その存在が広く知られるようになりました。

液状化現象は、砂質土がゆるく堆積して地下水位が高い地盤が地震で強く揺れた時に発生する現象であるため、発生する場所をある程度予測することができます。
液状化現象はなぜ起こり、どのような場所で生じるのでしょうか。
この記事では「液状化現象」について解説します。

液状化現象とは

液状化現象とは「地盤全体がドロドロの液体のような状態になる現象」のことをいいます。

発生の原因は地震であり、地震によって地盤が強い衝撃を受けると、互いに接して支えあっていた土の粒子がバラバラになることで液状化が生じます。

液状化では、地盤から水が噴き出し、広範囲で建物が傾いたり、道路がゆがんだりする現象が発生します。

東日本大震災では、地中に埋まっていたマンホールや埋設管が浮かんで地上に飛び出す現象も発生しました。

液状化現象が世界的に注目されたのは、1964年に生じた新潟地震がきっかけです。
当時、新潟市では、地面から砂を含んだ水が一斉に噴き上がり、その跡にクレーターのような大小の穴が空く等の大きな被害が生じました。
新潟地震では、4階建てアパートが無傷のまま倒壊しています。

液状化に関しては、1964年の新潟地震を契機に本格的な研究が開始されたという歴史があります。

液状化現象の原因

液状化現象の原因について解説します。

地震と液状化現象の関係

液状化現象の原因は地震です。まず、液状化は埋立地や大河川沿いの沿岸地等の地下水位が高い場所で生じることが知られています。

地下水位の高い地盤のエリアでは、土の粒子が互いに結合して支えあい、その結合の間を水が満たして地盤を支えていることが普段の状態です。

大きな地震が生じると、その衝撃で地盤の中にある土の結合がなくなり、土の結合粒子がバラバラになります。
土の結合がバラバラになると、結合の間を満たしていた水が浮き始めます。さらに土の粒子と水の分離が進むと、噴水や噴砂が発生して地盤の沈下や亀裂が生じます。

地盤の沈下や亀裂の結果、建物が傾く、道路がゆがむ、マンホールが浮き上がる等の被害が生じるのが液状化現象です。

液状化現象が起こりやすい場所・建物

液状化現象は、砂質土がゆるく堆積し地下水位が高い地盤で発生する現象です。

砂質土がゆるく堆積し地下水位が高い地盤は、以下のような場所に集中しています。

【液状化現象が起こりやすい場所】

  1. 臨海部
  2. 大河川沿いの沿岸地
  3. 海岸砂丘の裾、砂丘間の低地
  4. 埋立地
  5. 低地(湿地)上の盛土造成地
  6. 砂利(砂鉄)等採取後の埋戻し地
  7. 丘陵地や台地の谷埋め盛土造成地

上記の「4.埋立地」~「7.丘陵地や台地の谷埋め盛土造成地」は「人工改変地」と呼ばれる場所です。
人工改変地とは、人工的に改変された土地を指します。

人工改変地は、過去の地震で液状化被害の発生が顕著となっており、これらの地域では繰り返し液状化現象が生じていることが特徴です。

埋立地や臨海部、大河川沿いの沿岸地、海岸砂丘の裾、砂丘間の低地等は低い土地であるため、地下水位が高いことがイメージしやすいかもしれません。

一方で、「7.丘陵地や台地の谷埋め盛土造成地」は、液状化が生じる場所としてはイメージがしにくい土地と思われます。

自然の地形の中では、地下水は地下をなだらかな傾斜で流れており、地表面に見られる砂丘や凹地(谷)ほどの高低差が生じていないことが特徴です。

地下水位は小高い砂丘の部分では低くなっており、谷の部分では高くなっています。
つまり、丘陵地や台地のように海から離れた場所でも、もともと地下水位の高い場所が存在します。

そのため、谷を埋めた盛土造成地は地表近くに地下水が流れている状態となっており、液状化現象が発生しやすい土地となっています。

画像出典:リスクコミュニケーションを取るための液状化ハザードマップ作成の手引き|国土交通省

【建物】
建物に関しても液状化現象の被害を受けやすい建物と受けにくい建物が存在します。

液状化現象の被害を受けやすい建物は戸建てであり、被害を受けにくい建物はマンションです。

首都圏には埋立地に多くのマンションが建っていますが、東日本大震災で液状化の被害を受けたのはほとんどが埋立地内の戸建てでした。

例えば、埋立地内に多くのマンションと戸建てが建っている千葉県浦安市では、液状化の被害を受けたのはほとんど戸建てです。

マンションが液状化の被害を受けにくいのは、支持杭によって建物を支えているためです。支持杭とは、地中深くの支持地盤まで達する杭を指します。

マンションは支持杭で建物を支えていることから、土地の表層部で液状化現象が生じても、建物が傾くといった現象は生じにくいのです。

一方で、戸建ては建物が軽いことから支持杭を採用する必要がなく、杭を打たないか、もしくは摩擦杭で建物を支えています。

摩擦杭とは、摩擦抵抗で建物を支え、支持層までは達していない浅い杭のことです。
支持杭で支えていない戸建ては、液状化を受けやすい建物といえます。

ただし、戸建てであっても、地盤改良を行った土地の上に建てた戸建ては液状化による被害を受けることが少ないです。

東日本大震災では、同じ埋立地内にある戸建て住宅街でも、すぐ隣は液状化の被害を大きく受けたのに、自分の家は液状化の被害をほとんど受けなかったという例も存在します。

そのため、戸建てだからといって液状化の被害を受けやすいとは限らず、戸建ての場合は地盤改良工事をしっかり行っているか否かが被害の受けやすさの要因となります。

液状化現象の影響・被害と事例

液状化現象の事例や影響について解説します。

建物の傾斜・沈下

液状化現象の被害として知られているのが、建物の傾斜や沈下です。
建物の傾斜や沈下は、主に地盤改良が不十分な土地の上に建つ戸建てで生じています。

支持杭で支えているマンションに関しては、建物の傾斜や沈下の被害は少ないといえます。

傾斜に関しては建物だけでなく、電柱が傾いてしまうことも多いです。
電柱の傾きが生じると、その道路を救急車や消防車等の緊急車両が通ることができず、二次被害を拡大させてしまう原因となります。

側方流動

側方流動とは「地震時に発生する液状化に伴って地盤が水平方向に大きく変位する現象」のことです。

側方流動では、主にライフラインの被害が多く発生します。
地下に埋まっているガス管や水道管、下水管等が曲がり、溶接部分が破断してしまう被害が知られています。

噴水や噴砂

液状化現象では、広範囲に噴水や噴砂の被害が生じます。
埋立地の団地では、公園や学校の校庭のような場所から水が噴き出し、また道路のさまざまなところから砂が噴き出します。

砂は歩道や広場で使用されているインターロッキングの間から噴き出すケースが多いです。インターロッキングとは、レンガ調の舗装の仕上げ材のことを指します。

地震発生直後は、多くの甚大な被害に対処しなければならないため、砂の被害は対処が後回しにされがちです。
東日本大震災で液状化が生じた街では、砂まみれの状態が長らく続いていました。

地中構造物の浮き上がりや破損

液状化現象では、地中構造物の浮き上がりや破損の被害もあります。
東日本大震災では、マンホールの蓋と下部の筒状の部分が人の背の高さほど浮き上がるという被害もありました。
熊本地震では、逆に電柱が下へ沈下するという被害も生じています。

液状化現象が生じた街では、道路がゆがみ、今まで平坦だった部分に段差が生じてしまうことも多いです。

液状化現象の事例

液状化現象は広域的に生じますが、被害の状況は局所的に異なることが多いです。

例えば、マンションの目の前の道路では液状化の被害を大きく受けていても、マンション自体は被害をほとんど受けていないといったこともあります。

戸建て住宅街においても、自分が住んでいる戸建ては大丈夫でも、隣の家は大きな被害を受けたというケースもあります。

道路に関しては、噴砂によって道がすべて砂で堆積してしまう道路もありますが、ほとんど噴砂の影響を受けない道路も存在します。

そのため、液状化現象は影響を受ける範囲は広いものの、その範囲の中での影響の受け方は一様ではない点が特徴です。

液状化現象への対策

液状化現象の対策について解説します。

液状化危険度マップを確認

液状化の被害を避ける対策としては、液状化被害が生じにくい場所を選んで購入することが最も重要な対策です。

液状化被害に関しては、各自治体が公表している地震ハザードマップ等で確認することができます。

埋立地は液状化現象が生じやすいため、基本的にわかりやすいと思われます。

一方で、注意すべきは内陸部にある丘陵地や台地の谷埋め盛土造成地です。
谷を埋め立てて造った団地は地下水位の高い土地となっており、液状化の恐れがあります。

なお、地震や液状化のハザードマップに関しては、宅地建物取引業者による重要事項説明の対象とはなっていません。

重要事項説明で説明義務の対象となっているのは、水害のハザードマップだけです。

そのため、地震や液状化のハザードマップに関しては、不動産会社から何ら説明を受けないことになっています。
自分で調べる必要がありますので、気になる方は自治体のホームページを確認することをおすすめします。

出典:ハザードマップポータルサイト|国土交通省

地盤改良を行う

液状化が懸念される地域で戸建てを建てる場合には、地盤改良を行うことが液状化対策となります。

液状化対策のための地盤改良工事としては「地盤の密度を増大して粒度の改善を行う」もしくは「セメントや薬液を注入して異質の地盤にする」等の対策があります。

液状化現象が懸念される土地では、施工会社から地盤改良工事が提案されることが通常です。

余計なコストはかかってしまいますが、地盤改良は液状化現象を回避するために必要な工事です。施工会社からの提案内容をよく聞いた上で、実施することが望ましいといえます。

この記事のポイント

液状化現象の原因は?

液状化現象の原因は地震です。
液状化は埋立地や大河川沿いの沿岸地等の地下水位が高い場所で生じることが知られていますが、このエリアでは土の粒子が互いに結合して支えあい、その結合の間を水が満たして地盤を支えています。

しかし、大きな地震が生じると、その衝撃で地盤の中にある土の結合がなくなり、土の結合粒子がバラバラになります。すると結合の間を満たしていた水が浮き始めます。さらに土の粒子と水の分離が進むと、噴水や噴砂が発生して地盤の沈下や亀裂が生じます。

詳しくは「液状化現象の原因」をご覧ください。

液状化現象が起こりやすい場所・建物は?

液状化現象が起こりやすいのは、臨海部、大河川沿いの沿岸地、海岸砂丘の裾、砂丘間の低地、埋立地などです。

また、液状化現象の被害を受けやすい建物は戸建てであり、被害を受けにくい建物はマンションです。ただし、戸建てであっても、地盤改良を行った土地の上に建てた戸建ては液状化による被害を受けることが少ないです。

詳しくは「液状化現象が起こりやすい場所・建物」をご覧ください。

物件探しや売却がもっと便利に。

無料登録で最新物件情報をお届けいたします。

Myリバブルのサービス詳細はこちら