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滅失登記は自分で申請できる?必要書類と手続きの流れ、費用まで紹介

執筆者プロフィール

橋本秋人

FPオフィス ノーサイド代表 NPO法人ら・し・さ副理事長
ファイナンシャル・プランナー(CFP®、1級FP技能士)終活アドバイザー
早稲田大学卒業後、住宅メーカーで30年以上不動産活用の営業、分譲地開発、CRE(企業不動産戦略)等を担当。FPとして独立後はライフプラン、不動産、終活、相続等に関するセミナー、コンサルティング、執筆等を行っている。会社員時代より不動産投資を始め、早期退職を実現した元サラリーマン大家でもある。

ざっくり要約!

  • 滅失登記は建物を取りこわした場合や地震・水害などの災害や火災で建物がなくなってしまった場合に行う
  • 滅失登記はひとつの土地の上に2棟の建物が重複して登記されることを避けるために必要

建物を取りこわしたときには「滅失登記」を行なうことが、不動産登記法という法律で定められています。滅失登記はたいへん重要な登記で、建物の解体後すみやかに滅失登記を行わないと、さまざまなデメリットやトラブルが生じます。また、滅失登記の手続きは不動産登記のなかでも比較的簡単にできるので、自分で滅失登記の申請を行うことも可能です。本記事では、滅失登記の基本や申請の流れ、自分で登記申請を行う方法などについてわかりやすく解説します。

滅失登記とは

滅失登記とは、「建物が消滅したことを登記記録に記録すること」です。
不動産の登記とは、土地や建物の所在や所有者などを記録し、公示(広く周知する)ことをいいます。建物を新築したり購入したりすると保存登記や移転登記をしますが、建物を取りこわしたときにも、「この場所に建っていた建物が消滅した」ということを記録して公示する必要があります。そのために行う登記が滅失登記です。

滅失登記は、建物を取りこわしたときだけではなく、地震・水害などの災害や火災で建物がなくなってしまった場合にも行う必要があります。

滅失登記の申請者は、建物の所有者です。建物が複数の人の共有になっている場合は、共有持分を持っている人のうちの一人が単独で申請することができます。

不動産登記法では、建物を滅失した日から1カ月以内に滅失登記の申請をしなければならないと定めていて、正当な理由なく期限内に滅失登記をしない場合は、10万円以下の過料を課すとしています。

滅失登記の必要性

滅失登記をしないと、実際には建物がなくても、登記上は建物が存在しつづけることになります。そのため、同じ土地の上に新しく建物を建築しようとしても、取り壊した建物が残っていることになっているため、建築許可がおりません。

このように滅失登記は、ひとつの土地の上に2棟の建物が重複して登記されることを避けるためにも行う必要があります。

滅失登記の手続きの流れと注意点

通常、滅失登記の申請手続きは土地家屋調査士に依頼します。
不動産登記は、一般的には司法書士に依頼するというイメージがありますが、不動産登記のうち、表題登記や滅失登記、分筆登記などは土地家屋調査士が行う業務です。

通常、土地家屋調査士は次のような流れで手続きを進めます。

  1. 法務局調査(登記簿謄本など資料の確認)
  2. 建物の現地調査(解体後の確認)
  3. 建物滅失登記申請書の作成
  4. 登記申請
  5. 登記完了証の受け取り

滅失登記の申請先は、建物があった場所を管轄する法務局になります。

自分で申請する場合の流れ

自分で滅失登記の申請を行う場合も同じ流れで行います。
なお、登記申請にあたっては、書面で申請する方法とオンラインで申請する方法があります。

法務局で書面申請する場合は、滅失登記申請書に必要書類を添付し、法務局の窓口に提出します。

事前予約の相談窓口を設けている法務局も多いので、滅失した建物がある場所を管轄している法務局に問い合わせて相談するのも良いでしょう。

オンライン申請は、パソコンに「申請用総合ソフト」をインストールして登記申請書を作成し、管轄の法務局にインターネットで送信します。インターネットが得意な人は、法務局に行く時間を省くことができます。
オンライン申請については、法務局ホームページ「不動産登記の申請様式について」で詳しく解説しているのでご覧ください。

土地家屋調査士に代行してもらう場合の流れ

滅失登記は比較的かんたんで自分でもできるとはいっても、手続きがむずかしいと感じる人や、忙しくて時間が取れないという人も多いと思います。

そのような場合には、土地家屋調査士に依頼することをおすすめします。自分で手続きを行うよりも費用はかかりますが、専門家なのでさまざまなケースに対応ができ、手続きもスムーズに進みます(必要書類や費用については後述します)。

滅失登記の必要書類

滅失登記の申請には、以下の書類が必要になります。

・建物滅失登記申請書
登記申請書には、建物の所在、家屋番号、種類、構造、床面積、登記原因(令和〇年〇月〇日取り壊し)などを記入します。ただし登記申請書に不動産番号を記載した場合は、これらの記載を省くことができます。
申請書は、法務局のホームページからダウンロードして作成することができます。自分で登記したい人は、記載例も出ているので、見本にして作成するとよいでしょう。

・建物滅失証明書
建物取り壊し証明書、解体証明書ともいい、建物を解体した業者が作成してくれます。
解体業者が建物を実際に解体したことを証明する書類で、取り壊した日を記入し、解体業者の実印を押印します。

・建物を解体した業者の資格証明書・印鑑証明書
建物滅失証明書と同じく、解体業者から取得し、建物滅失登記申請書に添付します。
なお、解体業者が法人の場合は、建物滅失登記申請書に解体業者の会社法人等番号を記載していれば、資格証明書、印鑑証明書は提出を省略することができます。

・住宅地図
建物の所在が確認できるよう、法務局から指定された地図を添付することもあります。

他にも、次のようなケースでは書類の提出が必要になります。

・登記事項証明書の住所と実際の住所が異なるとき
→住民票、戸籍謄本など住所変更したことが証明できる書類

・登記事項証明書の氏名と現在の氏名が異なるとき
→戸籍謄本や除籍謄本など、氏名を変更したことが証明できる書類

なお、登記完了証や返却書類を郵送してほしいときは、書留郵便用の封筒と切手(レターパックプラスも可)も添付する必要があります。

滅失登記の費用

滅失登記には、登録免許税が不要のため、他の登記と比べて安く行うことができます。滅失登記を自分で行う場合は、土地家屋調査士に支払う報酬が不要になります。

自分で申請する場合

自分で滅失登記を行う場合、費用はほとんどかかりません。
書面申請の場合でも、管轄の法務局が遠方でなければ交通費を含めてもかかるのは数千円です。
オンライン申請の場合は、さらに費用が抑えられます。

土地家屋調査士に代行してもらう場合

土地家屋調査士に依頼する場合は、申請代行の報酬がかかります。
報酬は5万円前後ですが、必要書類が増えると費用もかさむことがあります。

土地家屋調査士に依頼するときには、必要な手続きを確認してもらい、事前に見積りを取得してから判断することをおすすめします。

滅失登記にまつわるQ&A

ここからは、滅失登記に関するよくある疑問にお答えします。

建物滅失証明書がない場合の対処法は?

建物がなくなって時間が経過している場合や、相続後に滅失登記を行う場合、解体業者の建物滅失証明書が見つからない場合があります。解体業者に依頼して再度取得できる場合もありますが、解体業者にも記録がなかったり、解体業者自体がすでになくなっていたりすることもあります。

このような場合、建物滅失証明書の代わりに「上申書」を作成して提出します。

上申書には、解体した建物が特定できること、現在建物が存在しないという事実、解体時に滅失登記が行えなかった理由などを書きます。上申書は自分で作成するか、土地家屋調査士に依頼することもできます。

もともと登記をしていない建物も滅失登記は必要?

建物を建てても登記をしていないケースがあります。
住宅ローンを借りなければ建物に担保を付ける必要がないため、現金で家を建てた人の中には、建物の登記をしていない人もいます。

その場合、もともと建物を登記していないわけですから、滅失する建物自体もありません。
よって滅失登記は不要です。

滅失登記をしないとどうなる?

滅失登記をしないことによるデメリットは、新しい建物の建築許可がおりないこと、過料が課せられることの他にも、次のようなことがあげられます。

  • 滅失登記を行わないと、市町村がその建物がなくなったことを知らないため、実際には存在しない建物の固定資産税を払い続けることがある
  • 土地を担保にして銀行などから融資を受けたいときに、融資審査が通らない
  • 土地を売却したくても、滅失登記をしないと売却ができない

相続時の滅失登記はどうしたらいい?

登記簿上の所有者が亡くなったあと、建物の相続登記をしないで解体した場合、相続人のうちひとりが滅失登記の申請をすることができます。

その場合、所有者が亡くなったという記載がある戸籍と申請者が所有者の相続人であることが確認できる戸籍を添付します。
または、登記簿に記載されている所有者の住所と所有者の本籍とのつながりを確認できる戸籍の附票など(本籍が記載されているもの)を添付することもできます。
あわせて申請する相続人の住民票または戸籍の附票が必要になります。

抵当権付きの滅失登記はできる?

銀行等から住宅ローンなど融資を受けた場合、土地・建物に抵当権を設定します。
借り入れを完済してしまえば、抵当権も抹消することができるので建物の解体をすることはできます。しかし、住宅ローンを完済していない場合は、建物の解体をすることはできません。

ただし、住宅ローンを完済していても、抵当権を抹消していないケースもあります。
その場合、抵当権者の同意があれば解体することができるので、滅失登記も行えます。抵当権者が銀行の場合は、同意書もスムーズに発行してもらえます。

なお、抵当権がついたままの建物を解体すると、抵当権も自動的に抹消されるので、抵当権設定登記の抹消登記をあらためて行う必要はありません。

この記事のポイント

滅失登記はどのようにして行う?

滅失登記の申請手続きは土地家屋調査士に依頼するか、自分で行うこともできます。

自分で行う場合は書面で申請する方法とオンラインで申請する方法があります。

詳しくは「滅失登記の手続きの流れと注意点」をご覧ください。

滅失登記を申請する際の必要書類は?

滅失登記を申請する際には下記の書類が必要です。場合によっては追加書類が必要となることもあります。

  • 建物滅失登記申請書
  • 建物滅失証明書
  • 建物を解体した業者の資格証明書・印鑑証明書
  • 住宅地図

詳しくは「滅失登記の必要書類」をご覧ください。

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