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空き家を放置すると税金がかかる?固定資産税が6倍ではなく3~4倍になるのはなぜ?

執筆者プロフィール

竹内 英二
不動産鑑定士

不動産鑑定事務所および宅地建物取引業者である(株)グロープロフィットの代表取締役。不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、住宅ローンアドバイザー、中小企業診断士の資格を保有。

ざっくり要約!

  • 空き家にかかる税金として固定資産税、都市計画税、相続税などがある
  • 空き家の住宅を取り壊すと非住宅用地となり、住宅用地の軽減措置は適用されない

空き家は放置すると、土地の固定資産税が上がる懸念があります。
残念ながらインターネット上では土地の固定資産税が6倍になるという誤情報がなかなか消えませんが、6倍ではなく3~4倍になる可能性はあります。
最近ではマスコミも間違いに気づき始め、6倍という表現はあまり使用しなくなりました。

また、2023年12月から改正された空き家特別措置法によって管理不全空き家という制度が創設され、以前よりも空き家の固定資産税が上がりやすくなっている状況です。
空き家の固定資産税は、どうなると上がってしまうのでしょうか。

この記事では、「空き家の税金」について解説します。

空き家にかかる税金とは

空き家にかかる税金について解説します。

空き家にかかる税金 ①固定資産税

固定資産税とは、1月1日時点において土地または建物を所有している人に対して課される市町村税(東京23区は都税)です。

固定資産税は、課税標準額に1.4%を乗じることで求められます。課税標準額とは、税率を乗じて直接税金を求めることができる額のことです。

固定資産税 = 課税標準額 × 1.4%

課税標準額は、建物は固定資産税評価額と同額ですが、土地は固定資産税評価額とは異なることが一般的です。
土地の課税標準額は、固定資産税評価額に一定率を乗じたものとなっています。

空き家にかかる税金 ②都市計画税

都市計画税とは、都市計画で指定されている市街化区域内の不動産を保有している人に課される税金のことです。

都市計画税も固定資産税と同じ納税通知書が送付され、固定資産税と同じタイミングで納税します。

都市計画税は、原則として課税標準額に0.3%を乗じて計算されます。
都市計画税の計算式は、以下の通りです。

都市計画税 = 課税標準額 × 0.3%(標準)

都市計画税の税率は標準が0.3%ですが、自治体によって異なる場合があります。

空き家にかかる税金 ③相続税

空き家を相続した場合は、相続税が発生することもあります。
相続税は全国では1割程度の人しか課税されない税金であるため、ほとんどの人は空き家を相続しても相続税は発生しません。

相続税は、空き家だけで計算されるものではなく、被相続人(死亡した人)が保有していた資産全体を元に計算されます。

被相続人が基礎控除額以上の財産を持っている場合は、基礎控除額を超えた財産に対して相続税が計算されます。

基礎控除額とは、以下の計算式で求められるものになります。

基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数

9割近くの被相続人が基礎控除額を超える財産を残していないため、相続税は結果的に1割程度の一部の資産家にしか課税されない税金となっています。

空き家にかかる税金を支払うタイミング

固定資産税および都市計画税は、1月1日時点の所有者に対して課される税金です。
被相続人(死亡した人)が1月1日時点の所有者であれば、相続人も納税義務を引き継ぎます。

固定資産税および都市計画税の支払いのタイミングは毎年4回に分かれており、自治体により支払いのタイミングは異なるため納税通知書はしっかり確認しましょう。
固定資産税の納税通知書は、毎年4~5月に届きます。

相続人が複数人存在し、空き家を引き継ぐ人が決まっていない場合には、相続人全員が相続割合で応分して支払うことが望ましいです。
空き家を引き継ぐ人が決まった後は、引き継いだ人が支払います。

また、相続税に関しては、相続の開始を知った日の翌日から10ヶ月以内が納税期限です。

空き家にかかる税金には軽減措置がある?

固定資産税の住宅用地の軽減措置について解説します。

固定資産税の軽減措置

住宅用地の軽減措置とは、住宅が建っていると「土地」の固定資産税が安くなるという制度です。
住宅用地では、面積に応じて課税標準額の計算方法が2種類定められています。

面積に応じた課税標準額の計算方法は下表のとおりです。

区分課税標準額
小規模住宅用地 住宅用地で住宅1戸につき200平米までの部分固定資産税評価額の6分の1  
一般住宅用地住宅用地で住宅1戸につき200平米を超え、家屋の床面積の10倍までの部分固定資産税評価額の3分の1

都市計画税の軽減措置

都市計画税に関しても、同様に住宅用地の軽減措置があります。

住宅用地の面積区分は固定資産税と同じであり、課税標準額の計算方法は下表のとおりです。

区分課税標準額
小規模住宅用地 住宅用地で住宅1戸につき200平米までの部分固定資産税評価額の3分の1  
一般住宅用地住宅用地で住宅1戸につき200平米を超え、家屋の床面積の10倍までの部分固定資産税評価額の3分の2

固定資産税と都市計画税の住宅用地の軽減措置は、いずれも住宅が建っていることで適用される特例です。

そのため、空き家の住宅を取り壊すと非住宅用地となり、住宅用地の軽減措置は適用されません。

空き家の固定資産税が6倍ではなく3~4倍になるのはなぜ?いつから?

空き家の固定資産税が上がる理由について、解説します。

「管理不全空き家」になると固定資産税が3~4倍になる

管理不全空き家とは、放置すれば特定空き家になる恐れのある空き家のことです。
特定空き家とは、放置すれば倒壊など著しく保安上危険となる恐れのある状態など、一定の要件を満たす空き家のことを指します。

2023年12月以降は、空き家対策特別措置法(空家等対策の推進に関する特別措置法)により、行政から管理不全空き家に指定され勧告を受けると住宅用地の軽減措置が外されることになりました。

住宅用地とは住宅が建っている土地のことであり、住宅が建っていない土地のことを非住宅用地と呼びます。

非住宅用地の課税標準額は、負担調整の負担水準によって課税標準額が計算されます。
負担水準の求め方は、以下の通りです。

負担水準 = 前年度課税標準額 ÷ 当該年度の新評価額 × 100%

負担水準に応じた課税標準額の計算方法は下表のようになります。

負担水準税負担の調整措置
70%超当該年度の評価額の70%相当額を課税標準として計算した額が税額となる
60%以上70%以下一律に前年度の税額が据え置かれる
60%未満前年度課税標準額+固定資産税評価額×5%

負担水準は70%超となることが一般的であり、非住宅用地の課税標準額は「当該年度の評価額の70%」となることがほとんどです。

そのため、実質的な非住宅用の固定資産税の計算式は以下のようになります。

固定資産税 = 固定資産税評価額 × 70% × 1.4%

空き家が管理不全空き家に指定され、勧告を受けると住宅用地の軽減措置が外されることから非住宅用地の扱いとなります。

ここで負担水準が70%超であることを前提に、住宅用地が非住宅用地になった場合の固定資産税の違いについて2つのシミュレーションを行います。

1つ目として、全体の敷地が小規模住宅用地(土地面積が200平米以内ということ)のケースです。

(条件)
固定資産税評価額:3,600万円
土地の面積:150平米

(住宅が1戸建っている住宅用地)
課税標準額 = 固定資産税評価額 × 1/6
      = 3,600万円 × 1/6
      = 600万円

固定資産税 = 課税標準額 × 1.4%
      = 600万円 × 1.4%
      = 8.4万円

(非住宅用地となった場合)
固定資産税 = 課税標準額 × 1.4%
      = 固定資産税評価額 × 70% × 1.4%
      = 3,600万円 × 70% × 1.4%
      ≒ 35.3万円

固定資産税は、8.4万円から35.3万円となり、4.2倍(=35.3÷8.4)に上がりました。

2つ目は、全体敷地が200平米超であり、敷地の一部が一般住宅用地となっているケースです。

(条件)
固定資産税評価額:3,600万円
土地の面積:300平米

(住宅が1戸建っている住宅用地)
小規模住宅用地は住宅用地で住宅1戸につき200平米までの部分であるため、200平米までが小規模住宅用地、残りの100平米が一般住宅用地となります。
それぞれの課税標準額と固定資産税は以下の通りです。

小規模住宅用地の課税標準額 = 固定資産税評価額 × (200平米÷全体面積) × 1/6
      = 3,600万円 × (200平米÷300平米) × 1/6
      = 2,400万円 × 1/6
      = 400万円

一般住宅用地の課税標準額 = 固定資産税評価額 × (200平米超の部分÷全体面積) × 1/3
      = 3,600万円 × (100平米÷300平米) × 1/3
      = 1,200万円 × 1/3
      = 400万円

課税標準額 = 小規模住宅用地の課税標準額 + 一般住宅用地の課税標準額
      = 400万円 + 400万円
      = 800万円

固定資産税 = 課税標準額 × 1.4%
      = 800万円 × 1.4%
      = 11.2万円

(非住宅用地となった場合)
固定資産税 = 課税標準額 × 1.4%
      = 固定資産税評価額 × 70% × 1.4%
      = 3,600万円 × 70% × 1.4%
      ≒ 35.3万円

固定資産税は、11.2万円から35.3万円となり、約3.2倍(=35.3÷11.2)に上がりました。

固定資産税がどれだけ上がるかは、一般住宅用地がどれだけ含まれているかによって異なります。

すべて小規模住宅用地であれば4.2倍ですが、一部に一般住宅用地があれば3~4.2倍の間となります。

よって、住宅用地の軽減措置がなくなると、固定資産税は6倍ではなく3~4倍になるということです。

「管理不全空き家」に指定されないためにすること

管理不全空き家に指定されないためには、以下のような対応が必要です。

  • 管理サービスを行っている不動産会社に管理を依頼する
  • 賃貸に出す
  • 売却する
  • 取り壊して新たな土地活用を行う

出典:空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報|国土交通省

空き家にかかるお金についてのQ&A

空き家にかかるお金についてのQ&Aを紹介します。

空き家の相続税と土地の相続税ならどちらが安い?

相続税は、被相続人が所有している財産の相続税評価額を元に計算されます。
相続財産が空き家の場合、土地と建物の両方に相続税評価額が発生するため、相続財産が土地だけのときよりも相続税評価額は高くなることが通常です。
そのため、土地だけよりも空き家の方が相続税は高くなってしまう可能性はあります。

ただし、相続税は被相続人が基礎控除額を超える財産を残している場合に課税される税金です。
空き家を残したとしても、そもそも基礎控除額を下回る財産しか残していない場合、相続税は発生しないことになります。

空き家を売却するなら相続する前?後?

相続税の納税義務のある人(日本の中の1割程度の人)であれば、売却は相続後に行うことが望ましいといえます。

理由としては、一般的に相続税評価額は不動産よりも現金の方が高いため、相続前に売却して現金化してしまうと相続税が増えてしまうからです。

一方で、相続税の納税義務のない人(日本の中の9割程度の人)はどちらでも構いません。
ただし、被相続人が生前中にマイホームとして売却すれば3,000万円特別控除の適用がしやすいです。

3,000万円特別控除は、相続後も一定の要件を満たす空き家には適用できますが、相続空き家の3,000万円特別控除は適用要件が厳しく、利用できないこともよくあります。

そのため、相続空き家の3,000万円特別控除を適用できない場合には、相続前に売却した方が売却時の税金を節税しやすいといえます。

出典:No.3302 マイホームを売ったときの特例|国税庁

空き家の固定資産税を滞納するとどうなる?

固定資産税を滞納すると、延滞金が生じます。
延滞金も支払わないと財産が差し押さえられ、最終的には強制的に売却されることもあります。

この記事のポイント

空き家にかかる税金を支払うタイミングは?

固定資産税および都市計画税の支払いのタイミングは毎年4回に分かれており、4月と7月、12月、翌年の2月となることが通常です。

固定資産税の納税通知書は、毎年4~5月に届きます。

詳しくは「空き家にかかる税金を支払うタイミング」をご覧ください。

空き家の固定資産税が6倍ではなく3~4倍になるのはなぜ?

2023年12月以降、空き家対策特別措置法(空家等対策の推進に関する特別措置法)により、行政から管理不全空き家に指定され勧告を受けると住宅用地の軽減措置が外されることになりました。

住宅用地の軽減措置がなくなると、固定資産税は6倍ではなく3~4倍になることがあります。

詳しくは「空き家の固定資産税が6倍ではなく3~4倍になるのはなぜ?いつから?」をご覧ください。

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