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ガレージの固定資産税はいくら?かかる場合と計算方法

執筆者プロフィール

竹内 英二
不動産鑑定士

不動産鑑定事務所および宅地建物取引業者である(株)グロープロフィットの代表取締役。不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、住宅ローンアドバイザー、中小企業診断士の資格を保有。

ざっくり要約!

  • ガレージハウスは一般の住宅よりも固定資産税の課税対象の床面積が広くなり、固定資産税が一般の住宅より高くなることが多い
  • 固定資産税がかかる建物の要件は外気分断性があること、定着性があること、用途性があることの3つ

ガレージは、インターネット上で固定資産税が安くなるという誤情報が存在します。

駐車場は建築基準法の容積対象の床面積から一部除外されるため、その情報と混同して固定資産税まで安くなると誤解してしまう人が多いようです。

結論からすると、ガレージを建てても固定資産税が安くなることはありません。

ガレージを建てると、なぜガレージ部分も固定資産税が発生してしまうのでしょうか。
この記事では「ガレージの固定資産税」について解説します。

ガレージと固定資産税の基礎知識

最初にガレージと固定資産税の基礎知識について解説します。

ガレージとは

ガレージとは、屋根と壁で囲まれた車庫を指すことが一般的です。
屋根と壁で囲まれている点が特徴であり、青空駐車場やカーポートとは異なります。
カーポートとは、屋根を付けただけの壁に囲まれていない駐車スペースを指します。

ガレージは、住宅と併設して一つの建物として建てられることも多いです。
住宅の中にガレージが含まれているタイプを「ビルトインガレージ」または「インナーガレージ」と呼びます。

ビルトインガレージまたはインナーガレージの形式で建てられた住宅は「ガレージハウス」と呼ばれることが一般的です。

ガレージハウスは、車庫の部分も固定資産税の対象となります。

ガレージハウスは一般の住宅よりも固定資産税の課税対象の床面積が広くなることから、固定資産税が一般の住宅より高くなることも多いです。

固定資産税とは

固定資産税とは、1月1日時点において土地または建物を所有している人に対して課される市町村税(東京23区は都税)です。

固定資産税は、原則として固定資産税評価額に1.4%の税率を乗じることで求められます。

建物が住宅の場合、新築であれば一定期間、「建物」の固定資産税が減額される制度があります。
ガレージハウスは住宅ですので、ガレージハウスを新築すると一定期間、建物の固定資産税が2分の1に減額されます。

固定資産税の減額を適用するには、以下の要件を満たした住宅であることが必要です。

  • 2026年(令和8年)3月31日までに新築された家屋であること
  • 専用住宅や併用住宅であること(併用住宅については、居住部分の床面積の割合が2分の1以上のものに限られます)
  • 床面積が50平米(一戸建以外の貸家住宅の場合は40平米)以上280平米以下であること

上記の要件を満たすと、1戸当たり120平米まで部分の建物の固定資産税が2分の1に減額されます。

2分の1に減額される期間は、以下の通りです。

【2分の1に減額される期間】

(一般の住宅)

  • 原則として3年間
  • 3階建以上の中高層耐火住宅等は5年間

(認定長期優良住宅※)

  • 原則として5年間
  • 3階建以上の中高層耐火住宅等は7年間

※認定長期優良住宅とは、長期に渡り良好な状態で使用するための措置が講じられ、行政の認定を受けた住宅のことです。

ガレージハウスを建てた場合の土地の固定資産税は?

例えば、一般の住宅で2階建てのガレージハウスを建てた場合、120平米までの部分の固定資産税が3年間、2分の1に減額されます。

ガレージハウスは床面積が大きいため、ガレージ部分も含めると延床面積が120平米を超えてしまうこともよくあります。

120平米を超えている場合には、超えている部分に関しては新築当初から満額の固定資産税が発生するということです。

4年目からは120平米以内の部分も満額の固定資産税がかかるため、固定資産税はさらに高くなります。

なお、建物の固定資産税とは別に、土地の固定資産税には住宅用地の軽減措置という制度が存在します。

住宅用地の軽減措置とは、住宅を建てると「土地」の固定資産税が安くなるという制度です。

ガレージハウスは住宅ですので、ガレージハウスを建てると住宅用地の軽減措置が適用され、土地の固定資産税が安くなります。

出典:固定資産税・都市計画税(土地・家屋)|東京都主税局

固定資産税がかかるガレージの条件

ガレージか否かにかかわらず、以下の3つの要件を全て満たした建物は、固定資産税が生じる建物です。

【固定資産税がかかる建物の要件】

  • 外気分断性があること
  • 定着性があること
  • 用途性があること

外気分断性

外気分断性とは、室内と屋外が区画されている状態が備わっていることです。
3方向以上の壁で囲まれ、屋根がある建物が外気分断性のある建物に該当します。

例えば、カーポートには屋根がありますが壁がないため、外気分断性がない建物となります。

定着性

定着性とは、建物が基礎等で土地に固定されており、容易に移動ができない状態が備わっていることです。
例えば、単に地上に置いているだけの物置は固定性がなく、定着性がないものに該当します。

用途性

用途性とは、建物が目的に応じて利用できる状態が備わっていることを指します。
住宅や倉庫、駐車場等棟は、建物の用途の一つです。

例えば、未完成の建物は用途性のない建物に該当します。

固定資産税がかかるガレージの種類

固定資産税がかかるガレージの種類について解説します。

コンテナハウス

コンテナハウスとは、トランクルームのように見える建物のことです。
トランクルームの土地活用では、コンテナハウスが建てられます。

コンテナハウスは、一見するとコンテナを置いているだけのように見えますが、基礎を作って建物をしっかり固定しており、定着性のある建物です。

また、壁と屋根に囲まれており、外気分断性もあります。完成すれば用途性も満たします。

よって、コンテナハウスは外気分断性と定着性、用途性を備えた建物であることから、固定資産税が発生する建物です。

ビルトインガレージ

住宅の中にあるビルトインガレージも、外気分断性と定着性、用途性の3つの条件を全て満たしています。

そのため、ビルトインガレージも固定資産税が発生する建物です。

固定資産税がかからないガレージの種類

固定資産税がかからないガレージの種類について解説します。

プレハブ小屋(物置)

いわゆる物置と呼ばれるプレハブ小屋は、単に大きなボックスを地上に置いているだけのものです。

基礎でしっかり固定しているわけではないため、定着性がありません。

外気分断性や用途性は満たしていますが、定着性がないことから単に置いてあるだけの物置は固定資産税が発生しないことになります。

ただし、プレハブ小屋であっても、しっかり基礎を作っており、定着性が認められる建物は固定資産税の課税対象です。

農家住宅では、固定資産税の課税対象となっている納屋が存在することがあります。

バイクガレージ(バイク置き場)

一般的なバイク置き場は、屋根を付けただけの壁に囲まれていない構築物になります。

壁に囲まれていない構築物は、外気分断性を満たしていないため、定着性や用途性があっても固定資産税の課税対象にはなりません。

カーポート

カーポートとは、一般的に屋根を付けただけの壁に囲まれていない駐車スペースのことです。

カーポートも外気分断性を満たしていないことから、固定資産税の課税対象にはならない構築物となります。

ガレージの固定資産税計算方法

固定資産税は、課税標準額に1.4%を乗じることで求められます。
課税標準額とは、税率を乗じて直接税金を求めることができる額のことです。

建物の固定資産税は、固定資産税評価額がそのまま課税標準額となります。
固定資産税評価額は、毎年送付される固定資産税納税通知書で確認することができます。

建物の固定資産税の計算式を示すと、以下の通りです。

固定資産税 = 課税標準額 × 1.4%
      = 固定資産税評価額 × 1.4%

新築住宅に関しては、120平米までの部分は一定期間固定資産税が2分の1となります。

一定期間における120平米までの部分の固定資産税は、以下の通りです。

【新築当初の建物の固定資産税(120平米以内)】
固定資産税 = 固定資産税評価額 × 1.4% × (1/2)

節税対策としてのガレージ活用法

「ガレージハウスは固定資産税が安くなる」という誤情報も多いですが、それには理由があります。

誤情報の原因は、容積率の対象床面積と固定資産税の課税対象面積を混同している人が多いからです。
容積率とは、敷地面積に対する建物の延床面積の割合のことを指します。

まず、容積率の対象床面積と固定資産税の課税対象面積はまったく別物であり、関係がありません。

容積率に関しては、自動車車庫部分は延床面積の5分の1まで算入されないという緩和規定があります。

そのため、ガレージハウスのように自動車車庫部分を含む建物は、同じ容積率が指定されている土地でも一般の住宅よりも延床面積を広く確保することが可能です。

つまり、ガレージハウスは一般の住宅よりも大きな延床面積の建物を建てやすいということになります。

一方でガレージハウスは、外気分断性や定着性、用途性を備えた建物であることから、固定資産税の課税対象面積です。

建築時の容積対象床面積とは全く異なる概念であり、外気分断性や定着性、用途性を備えた床面積が増えれば、当然に固定資産税も増えます。

よって、ガレージハウスも一般の住宅も区別はなく、延床面積が増えれば固定資産税も増えると認識することが必要です。

ただし、節税という観点からすると、新築建物は床面積が120平米以内の部分は一定期間2分の1になる減額制度がありました。

そのため、ガレージハウスでも延床面積を120平米以内に収めれば、建物全体の固定資産税が一定期間2分の1となり、節税ができます(ただし、50平米以上であることが必要です)。

節税におすすめなのは認定長期優良住宅のガレージハウス

認定長期優良住宅のガレージハウスを建てると、さらに固定資産税を節税できます。節税期間は一般の住宅よりも認定長期優良住宅の方が長いためです。

さらに、3階建以上の中高層耐火住宅等にすると、節税期間がプラス2年間伸びます。
例えば、鉄筋コンクリート造の3階建ての認定長期優良住宅型のガレージハウスを建てれば、固定資産税は最長で7年間、2分の1になるということです。

なお、ガレージハウスは床面積の5分の1まで容積率が不算入になるという建築基準法の規定があるため、表面的には容積率がオーバーしていることがよくあります。

しかしながら、表面上の容積率がオーバーしていたとしても、車庫部分を延床面積の5分の1まで容積率に算入しない規定を遵守していれば違反建築ではありません。

建築基準法の規定を遵守していれば違反建築ではないため、将来的に売却する際も特に障害が発生することはないといえます。

将来の売却時に合法的な建物であることを証明するには、竣工後に受領する検査済証をしっかり保管しておくことが必要です。

この記事のポイント

固定資産税がかかるガレージの条件は?

ガレージか否かにかかわらず、「外気分断性があること」「定着性があること」「用途性があること」という3つの要件を全て満たした建物は固定資産税が生じます。

詳しくは「固定資産税がかかるガレージの条件」をご覧ください。

固定資産税がかからないガレージはある?

基本的にカーポート、バイクガレージ(バイク置き場)、プレハブ小屋(物置)であれば固定資産税はかかりません。

ただし、プレハブ小屋であっても、しっかり基礎を作っており、定着性が認められる建物は固定資産税の課税対象です。

詳しくは「固定資産税がかからないガレージの種類」をご覧ください。

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