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賃貸管理とは?賃貸管理費・共益費・管理費の違いも説明

執筆者プロフィール

竹内 英二
不動産鑑定士

不動産鑑定事務所および宅地建物取引業者である(株)グロープロフィットの代表取締役。不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、住宅ローンアドバイザー、中小企業診断士の資格を保有。

ざっくり要約!

  • 賃貸管理とは、アパートや賃貸マンション、貸店舗、貸事務所等の賃貸物件のさまざまな管理業務を行うこと
  • 賃貸管理には自主管理、委託管理、サブリースといった形態がある

アパートや賃貸マンションを保有している方は、管理を管理会社に任せている人も多いです。

賃貸経営は管理の部分を管理会社に任せることで、賃貸経営の手間を大幅に削減することができます。

管理会社をうまく活用すれば、遠方の物件でも賃貸経営をすることができ、物件の選択肢を大幅に広げられます。

賃貸管理には、どのような特徴があるのでしょうか。また、賃貸管理費や共益費、管理費とは、どのようなものなのでしょうか。
この記事では、「賃貸管理」について解説します。

賃貸管理とは

賃貸管理とは、アパートや賃貸マンション、貸店舗、貸事務所等の賃貸物件の管理をする業務のことです。

具体的には、以下のような業務を行うことが賃貸管理に相当します。

【賃貸管理の業務】

  • 家賃の入出金管理
  • 家賃の督促業務
  • クレーム対応
  • 設備業者・清掃業者等の手配
  • 契約更新手続き
  • 原状回復の確認
  • 鍵の管理

毎月行われる業務としては、家賃の入出金管理です。
借主から家賃を受け取り、預かったお金から管理委託料を差し引いた残額を貸主に送金する業務が入出金管理になります。

仮に借主が家賃の不払いを発生させた場合には、督促を行うことも賃貸管理の業務です。
家賃の督促は、後日に裁判になることも踏まえ適切に対処する必要があり、専門的な知識を要する業務になります。

また、「お湯が出ない」「家賃を下げて欲しい」等の借主からの設備トラブル対応や要望、あるいはクレームを受ける窓口も管理会社の仕事です。

建物の修繕費用は原則として貸主の負担となりますが、管理会社は適切な設備業者・清掃業者等の手配も行ってくれます。
複数の業者から見積もりを取得し、貸主に選んでもらうことも管理会社の仕事です。

入居者が賃貸借契約を更新する場合には、更新手続きも管理会社が行ってくれます。
具体的には、更新の覚書を締結する業務を行うことが通常です。

入居者が退去する場合には、原状回復の対応も管理会社が行います。
具体的には退去時の状況を確認し、借主が意図的に破損したものがある場合には借主に修繕費用を請求します。
修繕費用を敷金から差し引く場合には、精算業務も管理会社の仕事です。

アパート等で入居者が入れ替わる場合には、鍵を交換することが通常です。
鍵を交換し、次の入居者が決まるまで鍵を預かって管理することも管理会社の仕事となります。

管理業務の中に入居者募集業務は含まれない

なお、上記の管理業務の中には、入居者募集業務が含まれていないことが特徴です。
入居者募集業務とは、空室に新たな入居者を決める業務のことであり、賃貸仲介に相当します。

賃貸仲介は、宅地建物取引業の免許がないとできない業務です。
一般的に賃貸管理業務には入居者募集業務も含まれると考えられがちですが、厳密には賃貸管理業務と入居者募集業務は異なります。

賃貸管理業務は宅地建物取引業の免許が不要な業務ですが、入居者募集業務は宅地建物取引業の免許が必要な業務である点が違いです。

不動産会社は通常、宅地建物取引業の免許を有していますので、入居者募集業務も対応することができます。

管理会社が不動産会社であることが多いのは、不動産会社が管理会社として入居者募集業務も行うことができる点が理由です。

実際には管理会社は宅地建物取引業者であることがほとんどであり、管理会社は空室が生じれば入居者募集業務も行うことが一般的となっています。

賃貸管理の目的と重要性

賃貸管理は、貸主と借主の両者に利益を図ることを目的に行われています。
貸主に対しては、家賃の入出金管理等に代表されるように貸主の業務を代行する形で利益を提供しています。

一方で、借主に対しては借主の権利を保護することで利益を提供しています。
具体的には、借地借家法の観点から借主の権利を守り、貸主との利害を調整する業務を行っていることが一般的です。

賃貸管理は、貸主と借主の利害を調整し、円滑な賃貸経営を進めていくうえで重要な役割を果たしています。

賃貸管理費・共益費・管理費の違い

賃貸管理費という言葉が利用されるケースは少なく、一般的には共益費または管理費という言葉が使用されます。

共益費とは、共用部分の維持や管理費に必要な費用のことです。
具体的には、階段や廊下、エレベーター等の水道光熱費、清掃費用、共用部の電球の交換費用等が該当します。

管理費も、共益費と同じく共用部分の維持や管理費に必要な費用のことです。

国土交通省が示す不動産鑑定評価基準では、共益費は借主から徴収する金銭、管理費は貸主が支払う金銭として使い分けられています。

ただし、実際には共益費も管理費も同じ意味として貸主や借主に対しても用いられています。

賃貸物件の募集広告では、借主に対して管理費という名称で金額を提示しているケースも多いです。

なお、貸主が管理会社に対して支払う費用は、管理委託料と呼ばれることが一般的となっています。

賃貸管理の管理形態

賃貸管理の管理形態について解説します。

自主管理

自主管理とは、管理会社に管理を依頼せず、全て自分で物件を管理する形態のことです。
ひと昔前まで定番だった借主が大家さんの家まで家賃を手渡しで払いに行っていた形式は、自主管理に相当します。

平成の最初のころまで自主管理は残っていましたので、自主管理は特別なことではありません。
物件が自宅の近くにあり、戸数も少ないケースでは自主管理ができる場合もあります。

自主管理のメリット

自主管理は、管理委託料が節約できる点がメリットです。
また、借主と直接会って挨拶や日常会話を行うことで一定の人間関係が構築できるため、早期退去を防止しやすいというメリットもあります。

早期退去を防止し入居期間が長くなれば、入居者の入れ替えに伴う仲介手数料等の費用も削減することができます。

自主管理のデメリット

自主管理は、手間がかかるという点がデメリットです。
深夜や土日にクレーム対応をしなければならないこともありますし、家賃の不払いが生じれば督促を行わなければならないこともあります。

時間的な余裕があり、一定の知識が備わっていないと選択しにくい管理方式です。

委託管理

委託管理とは、管理会社と委託契約を締結することで行う管理のことです。
管理会社とは管理委託契約、入居者とは賃貸借契約を締結します。

委託管理のメリット

委託管理は、家賃保証型サブリースに比べると管理料が安いという点がメリットです。
管理を全てプロに任せることができるため、遠方の物件でも賃貸経営ができます。

また、委託契約は簡単に契約を解除できるため、管理会社を切り替えやすい点もメリットです。

委託管理のデメリット

委託管理は、各入居者と直接賃貸借契約を締結する必要があることから、戸数が多いと契約の手間が多く発生する点がデメリットです。

サブリース

サブリースとは転貸方式による管理形態になります。
貸主は管理会社と一棟借り上げの賃貸借契約を締結し、各入居者は管理会社を貸主として賃貸借契約を締結します。

サブリースのメリット

サブリースは最初に管理会社と賃貸借契約を1本だけ締結すれば良く、契約の手間が省ける点がメリットです。
各入居者が入れ替わっても契約を締結し直す必要がないため、賃貸マンション等の戸数の多い物件ではメリットが出てきます。

サブリースのデメリット

サブリースの中には、空室が発生しても管理会社から支払われる家賃が変わらないという家賃保証型サブリースも存在します。
家賃保証型サブリースは、管理会社が差し引く管理料相当額が高いため、貸主の収益性が低くなる点がデメリットです。

賃貸管理のトラブル対応とリスク管理

賃貸管理のトラブル対応とリスク管理について解説します。

入居者のクレーム対応

管理会社に賃貸管理を依頼すると、入居者からのクレームに対応してもらえます。
具体的には「隣接住戸の音がうるさい」「家賃を下げて欲しい」等が入居者からのクレームです。

入居者からのクレームは、深夜や土日に発生することも多いため、管理会社に管理を委託しておくと深夜や土日も安心して過ごすことができます。

設備トラブル

エアコンや温水洗浄便座等、貸主側で設置している設備は、老朽化や製品不良によって動かなくなるケースがあります。

貸主側の資産は借主で勝手に修繕することはできないため、貸主に修繕対応が求められます。

管理会社に管理を任せていると借主から故障の連絡が管理会社に入り、迅速な初期対応を行うことができます。

リスク管理のポイント

賃貸物件の管理上のリスクは、入居者に起因するリスクと建物に起因するリスクに大別されます。

入居者に関するリスクに関しては、適切な入居審査を実施して善良な借主に借りてもらうことがリスクヘッジをするポイントです。

また、建物に起因するリスクに関しては、計画的に大規模修繕等を実施して建物機能を適切に維持していくことがポイントとなります。

賃貸管理を効率的に行うためにできること

賃貸管理を効率的に行うためにできることについて、解説します。

ツールの利用

近年は、不動産会社向けに賃貸管理の業務を効率化するための、さまざまなITテクノロジーが提供されています。

仮想現実や拡張現実技術を使ってリモート内見や竣工予想図の確認ができるサービスや、IT重説や電子契約ができるツールが存在します。

これらのツールは貸主が直接利用できるものは少ないですが、貸主はITテクノロジーを駆使している管理会社を選択することはできます。

ITテクノロジーを積極的に取り入れている管理会社、賃貸仲介に強いことも多いです。
リモート内見を取り入れている会社は、多くの入居希望者の内見に対応できるため、空室が決まりやすくなることが期待できます。

入居者対応

入居者対応を効率化させるには、まずは悪質な借主を入居させないことが対応策です。
悪質な借主を入居させないためには、入居前に家賃の支払い能力だけでなく人物審査も適切に実施していく必要があります。

適切な人物審査を行うには管理会社の経験値が重要になってくることから、管理は実績豊富な管理会社に依頼することが望ましいです。

メンテナンス計画

設備トラブル等の建物に起因するリスクを抑えていくには、大規模修繕を計画的に実施していくことが対策です。
適切な大規模修繕を実施するには、メンテナンス計画を立てておく必要があります。

大規模修繕は「予防保全」と呼ばれる修繕であり、壊れる前に実施するメンテナンスです。
建物の寿命を延ばす効果がありますので、建物に起因するリスクを少なくすることが期待できます。

この記事のポイント

賃貸管理費・共益費・管理費の違いは?

賃貸管理費という言葉が利用されるケースは少なく、一般的には共益費または管理費という言葉が使用されます。

共益費とは、共用部分の維持や管理費に必要な費用のことです。

具体的には、階段や廊下、エレベーター等の水道光熱費、清掃費用、共用部の電球の交換費用等が該当します。

管理費も、共益費と同じく共用部分の維持や管理費に必要な費用のことです。

詳しくは「賃貸管理費・共益費・管理費の違い」をご覧ください。

賃貸管理でよくあるトラブルにはどう対応すればいい?

賃貸管理でよくあるトラブルのひとつに、入居者のクレーム対応があります。

管理会社に賃貸管理を依頼すると、入居者からのクレームに対応してもらえます。

具体的には「お湯が出ない」「排水管が詰まった」「家賃を下げて欲しい」等が入居者からのクレームです。

入居者からのクレームは、深夜や土日に発生することも多いため、管理会社に管理を委託しておくと深夜や土日も安心して過ごすことができます。

詳しくは「賃貸管理のトラブル対応とリスク管理」をご覧ください。

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