ざっくり要約!
- 建物解体後1カ月以内に滅失登記の申請を行うことが定められている
- 滅失登記はひとつの土地の上に2棟の建物が重複して登記されることを避けるためにも行う必要がある
建物を取りこわしたときには「滅失登記」をしなければいけません。不動産登記法では、建物解体後1カ月以内に滅失登記の申請を行うことが定められています。一般的に滅失登記を行う際には土地家屋調査士に依頼しますが、滅失登記は自分で行うこともできます。滅失登記を土地家屋調査士に依頼した場合、自分で行った場合、それぞれどのくらいの費用がかかるのでしょうか。本記事では、滅失登記の基本や申請の流れ、自分で滅失登記の申請を行う方法や費用などについてわかりやすく解説します。
記事サマリー
建物の滅失登記とは?かかる費用も紹介
はじめに建物の滅失登記の概要や、かかる費用について解説します。
建物の滅失登記とは
建物の滅失登記とは、建物が消滅したことを登記記録に記録することです。
不動産の登記とは、土地や建物の所在や所有者などを記録し、公示(広く周知する)ことをいいます。
建物を新築したり購入したりすると保存登記や所有権移転登記をしますが、建物を取りこわしたときにも、「この場所に建っていた建物が滅失した」ということを記録して公示する必要があります。このときに行なう登記が滅失登記です。
滅失登記は、建物を解体したときだけではなく、地震・水害などの災害や火災で建物が無くなってしまった場合にも行います。
滅失登記の申請者は、建物の所有者です。建物が複数の人の共有になっている場合は、共有持分を持っている人のうちの一人が単独で滅失登記の申請をすることができます。
不動産登記法では、建物を解体した日から1カ月以内に滅失登記の申請をしなければならないと定めています。正当な理由なく期限内に滅失登記をしない場合は10万円以下の過料を課すとしています。
滅失登記は法律上の義務です。万が一滅失登記を行わないと、法律上のペナルティだけではなく、トラブルの元にもなります。
滅失登記を行わないと、実際には建物がなくても、登記上は建物が存在しつづけることになります。
そのため、同じ土地の上に新しく建物を建築しようとしても、登記上では取りこわしたはずの建物が残っているため、建築許可がおりません。
このように滅失登記は、ひとつの土地の上に2棟の建物が重複して登記されることを避けるためにも行う必要があります。
当然、土地の活用時だけはなく、売却の際にも、滅失登記をしていないとトラブルになる恐れがあります。自分で滅失登記を行う場合に限らず、滅失登記は必ず行わなければいけないということを忘れないようにしましょう。
滅失登記の申請手続きはそれほど難しくはありません。また、自分で滅失登記を行うとほとんど費用がかからずにすみます。そのため、滅失登記を行う必要が生じた場合には、自分で申請することを検討してみてもよいでしょう。
登記にかかる費用の相場
滅失登記では、登録免許税がかからないため、所有権移転登記や抵当権設定登記など他の登記よりも費用は安くなります。ただし、登記申請を土地家屋調査士に依頼する場合は、申請代行の報酬がかかります。
土地家屋調査士に支払う報酬は5万円前後ですが、必要書類が増えると費用が増えることもあります。
土地家屋調査士に依頼する際には、はじめに必要な手続きを確認してもらい、事前に見積りを出してもらってから進めることをおすすめします。
建物の滅失登記の流れや自分で行う方法
建物の滅失登記の流れと、自分で行う方法について解説します。
建物の滅失登記の流れ
通常、滅失登記の申請手続きは土地家屋調査士に依頼します。
不動産登記は、一般的には司法書士に依頼するというイメージがありますが、不動産登記のうち、表題登記や滅失登記、分筆登記などは土地家屋調査士が行う業務です。
土地家屋調査士は、滅失登記の手続きを次のような流れで進めます。
- 法務局調査(登記簿謄本など資料の確認)
- 建物の現地調査(建物が実際に解体されているかどうかの確認)
- 建物滅失登記申請書の作成
- 登記申請
- 登記完了証の受け取り
滅失登記の申請先は、建物が建っていた所を管轄する法務局になります。
自分で滅失登記の申請をする場合の流れ
自分で滅失登記の申請を行う場合も、土地家屋調査士に依頼する場合と同様の流れで行います。
なお、登記申請にあたっては「書面で申請する方法」と「オンラインで申請する方法」があります。
法務局に行き、書面で申請する場合は、滅失登記申請書に必要書類を添付し、法務局の窓口に提出します。事前予約の相談窓口を設けている法務局も多いので、滅失した建物の所在地を管轄している法務局に問い合わせて、事前に相談するのも良いでしょう。
オンライン申請は、パソコンに「申請用総合ソフト」をインストールして登記申請書を作成し、管轄の法務局にインターネットで送信します。インターネットを使い慣れている場合は、法務局に行く時間を省くことができます。
オンライン申請については、法務局ホームページ「不動産登記の申請様式について」で詳しく解説しているのでご覧ください。
建物の滅失登記に必要な書類
滅失登記の申請に必要な書類は、土地家屋調査士に依頼する場合でも自分で登記申請を行う場合でも同じです。
登記申請には次の書類が必要になります。
建物滅失登記申請書
登記申請書には、建物の所在、家屋番号、種類、構造、床面積、登記原因(令和〇年〇月〇日取り壊し)などを記入します。ただし登記申請書に不動産番号を記載した場合は、これらの記載を省くことができます。
申請書は法務局のホームページからダウンロードして作成することができます。自分で登記したい人は記載例も出ているので、見本にして作成するとよいでしょう。
建物滅失証明書
建物取り壊し証明書、解体証明書ともいい、建物を解体した業者が作成してくれます。
解体業者が建物を実際に解体したことを証明する書類で、取り壊した日を記入し、解体業者の実印を押印します。
建物を解体した業者の資格証明書・印鑑証明書
建物滅失証明書と同じく、解体業者から取得し、建物滅失登記申請書に添付します。
解体業者が法人の場合は、建物滅失登記申請書に解体業者の会社法人等番号を記載していれば、資格証明書と印鑑証明書の提出を省略することができます。
住宅地図
建物の所在が確認できるよう、法務局から指定された地図を添付することもあります。
その他の必要書類
他にも、次のようなケースでは書類の提出が必要になります。
・登記事項証明書の住所と実際の住所が異なるとき
→住民票、戸籍の附票など住所変更したことが証明できる書類
・登記事項証明書の氏名と現在の氏名が異なるとき
→戸籍謄本や除籍謄本など、氏名を変更したことが証明できる書類
登記申請後に、登記完了証や返却書類を郵送してほしいときは、書留郵便用の封筒と切手(レターパックプラスも可)も添付する必要があります。
なお、建物を解体してからかなりの時間が経過しているケースや、相続後に滅失登記を行うケースでは、上記の必要書類のうち、解体業者から受け取ったはずの建物滅失証明書、資格証明書、印鑑証明書が見つからないことがあります。
解体業者に依頼して再度取得できる場合もありますが、時間が経っていると解体業者にも記録がなかったり、解体業者自体がすでになくなっていたりすることもあります。
このような場合、建物滅失証明書の代わりに「上申書」を作成して提出します。
上申書には、解体した建物が特定できること、現在建物が存在しないという事実、解体時に滅失登記が行えなかった理由などを書きます。上申書は土地家屋調査士が作成してくれます。
建物の滅失登記を自分で行うメリット
滅失登記は、登記のなかでも比較的手続きが簡単です。そのため、滅失登記を自分で行うことも可能です。
手続きを自分で行うメリットは、土地家屋調査士に依頼した場合に支払う報酬が不要になることです。
もともと滅失登記では登録免許税がかからないため、土地家屋調査士への支払いがなければ、滅失登記にかかる費用自体ほとんどかかりません。
書面申請の場合でも、管轄の法務局が遠くなければ交通費を含めてもかかるのは数千円です。また、オンライン申請の場合はさらに費用が抑えられます。
建物の滅失登記を自分で行うデメリット
滅失登記は比較的手続きが簡単といっても、多くの人は慣れていないため、必要書類をそろえたり、登記申請書に記入したりすることなどが負担に感じる場合もあります。
さらに、建物滅失証明書などの必要書類自体が見つからない場合は、専門家でないとなかなか対応ができません。
また、滅失登記は申請期限が短いため、申請する時間が取れないという人もいます。
そのような場合は、費用はかかっても土地家屋調査士に依頼することを選択肢に入れておいたほうがよいでしょう。
滅失登記を自分で行う場合の注意点
滅失登記を自分で行う場合には注意点があります。
前述の通り、滅失登記の申請には期限があり、建物を解体した日から1カ月以内に申請をしなければいけません。
しかし、自分で滅失登記を行なう場合、十分な知識や情報がなく、書類の収集などに戸惑っているうちに、申請期限が過ぎてしまう心配があります。必ず申請期限に間に合うように意識をして手続きを行いましょう。
この記事のポイント
- 建物の滅失登記を自分で行う方法は?
自分で滅失登記の申請を行う場合、土地家屋調査士に依頼する場合と同様の流れで行います。
なお、登記申請にあたっては「書面で申請する方法」と「オンラインで申請する方法」があります。
詳しくは「建物の滅失登記を自分で行う方法」をご覧ください。
- 建物の滅失登記を自分で行うメリットは?
手続きを自分で行うメリットは、土地家屋調査士に依頼した場合に支払う報酬が不要になることです。
もともと滅失登記では登録免許税がかからないため、土地家屋調査士への支払いがなければ、滅失登記にかかる費用自体ほとんどかかりません。
詳しくは「建物の滅失登記を自分で行うメリット」をご覧ください。
自宅や職場にいながらオンラインでご相談
電話やビデオ通話を使ってご自宅にいながら相談できます。
東急リバブルのオンライン相談