更新日:  

附帯工事とはどういう意味?本体工事との違いは?建設業法との関係も

執筆者プロフィール

竹内 英二
不動産鑑定士

不動産鑑定事務所および宅地建物取引業者である(株)グロープロフィットの代表取締役。不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、住宅ローンアドバイザー、中小企業診断士の資格を保有。

ざっくり要約!

  • 附帯工事には一般用語としての意味と建設業法上の意味がある
  • 附帯工事の相場は総費用の2~3割程度だが、既存建物の解体費用を含んでいると高くなる

建物の工事費には、附帯工事費と呼ばれる建物の本体以外にかかる工事費もあります。
附帯工事費は、見積書の中に含まれないこともありますので、本体以外にどのような工事費がかかるかを知っておくことが望ましいです。

特に注文住宅で住宅ローンを組む人は、見積に含まれていない附帯工事費を審査の前に把握しておく必要があります。
住宅ローンは、後から増額することが難しいため、審査の時点でいくら借りる必要があるかを確定しておくことが適切です。
附帯工事には、どのようなものがあるのでしょうか。
この記事では「附帯工事」について解説します。

附帯工事とは

附帯工事には、一般用語としての意味と建設業法上の意味の2通りがあります。

一般用語としての附帯工事は、本体工事以外にかかる工事費のことです。
附帯工事費は「別途工事費」と呼ばれることもあります。

建物本体そのものの工事費のことを、本体工事費と呼びます。
具体的には、建物の柱や梁(柱と柱をつなぐ横架材)等の構造体や仕上げ、設備工事等が本体工事費になります。

附帯工事費は本体工事費以外の工事費ですので、例えば従前の古い建物の解体費用や庭の外構工事等はすべて附帯工事と捉えることができます。

一般用語としての附帯工事は厳密な定義もないため、何が附帯工事であるかも曖昧です。
附帯工事の内容が本体工事の見積書の中に含まれることもありますし、含まれないこともあります。

例えば、カーテンやブラインドは附帯工事ですが、見積書に含まれているケースや含まれていないケースも存在します。

一方で、附帯工事には建設業法上の意味も存在します。
建設業法上の意味が存在する理由は、工事を行うにあたり建設業の許可を必要とするか否かを明確にするためです。

建設業法上の附帯工事に該当すれば、建設業の許可を受けてない事業者でも工事を行うことができます。

建設業法上の附帯工事の定義は、以下の通りです。

【建設業法上の附帯工事の定義】
附帯工事とは、主たる建設工事を施工するために必要を生じた他の従たる建設工事または主たる建設工事の施工により必要を生じた他の従たる建設工事
出典:建設業許可事務ガイドラインについて|国土交通省

例えば、外壁の塗装工事を行うための足場組立工事が建設業法上の附帯工事となります。

建設業法上の附帯工事は、建設業の免許の要否を明確にするために使用されている用語であり、一般用語としての附帯工事とはニュアンスが異なります。

そのため、一般用語としての附帯工事は、建設業法上の附帯工事と分ける意味でも「別途工事」という言葉が使用されることも多いです。

附帯工事と本体工事の違い

建設業法上の附帯工事は「附」の字を用いています。
一方で、一般用語としての附帯工事には表記のゆれが存在し、「付」の字を用いて付帯工事と表記されることも多いです。
そのため、附帯工事は建築基準法および一般用語の表記として用いられることがあり、付帯工事は一般用語の表記としても用いられるという違いがあります。
ここからは一般用語としての附帯工事(別途工事)の意味を前提に、附帯工事と本体工事の違いについて解説します。

本体工事

本体工事とは、建物本体の工事費になります。
一般的に本体工事に該当するのには、以下のような項目です。

【本体工事の項目】

  • 仮設工事
  • 建設工事
  • 電気工事
  • 空調設備工事
  • 給排水衛生設備工事

仮設工事とは、現場作業を安全かつ円滑に進めるために必要となる工事のことです。

仮設工事は、大きく共有仮設と直接仮設の2つに分かれます。
共通仮設とは、現場事務所の設置や仮囲い等の現場全体を円滑に進めるための仮設工事のことです。
直接工事とは、仮設足場の設置等の建設に直接かかわる仮設工事のことを指します。

建設工事とは、設備以外の建物本体の工事のことです。
土工や地業、躯体、外部仕上げ、内部仕上げ等の工事が建設工事に該当します。

電気工事とは主に照明や屋内電気配線等の工事のことで、空調工事とは主にエアコン等の工事のことを指します。

給排水衛生設備工事とは、主にバスやトイレ等の工事のことです。

附帯工事

一般的に附帯工事に該当するのには、以下のような項目です。

【附帯工事の項目】

  • 外構工事
  • 既存建物の解体工事
  • 測量費
  • 地盤調査費
  • 地盤改良費
  • 近隣対策費(電波障害対策費、日影補償費等)
  • 什器備品、カーテン、ブラインド
  • 消火器
  • インフラの引き込み工事費、負担金
  • 土壌汚染対策費用
  • 本工事中に支障をきたす地中障害物が発見されたときの撤去費用

附帯工事の中には、当初に見積もることができず、後から追加で発生する費用も存在します。

例えば「本工事中に支障をきたす地中障害物が発見されたときの撤去費用」は、着工前に見積もることができない費用です。

実際工事に着手してみたら地中障害物が埋まっていたことが発覚し、除去しなければ工事ができないときに生じる費用に相当します。

その他、土壌汚染対策費用も後から追加で生じる可能性のある費用です。
地中の下に汚染土が埋まっており、敷地外に搬出するときに余計な処分費用がかかるケースがあります。

地中障害物や土壌汚染は、実際に土を掘り返してみないと存在の有無や物量を把握できないことから、着工前に金額を見積もることができないのです。

そのため、地中障害物や土壌汚染の対策費用は、見積書の中に「追加で発生する可能性がある」ことが注記されていることが一般的となっています。

見積書を見る際は、注記もしっかり確認し、別途発生する可能性のある工事費にどのようなものがあるかを把握しておくことが適切です。

附帯工事費の相場とは

附帯工事の相場は、総費用の2~3割程度です。
本体工事費が総費用の7~8割程度を占めますので、残りの2~3割が附帯工事費になります。

附帯工事費は、既存建物の解体費用を含んでいると高くなります。
解体費用を含む場合は総費用の3割程度、含まない場合は総費用の2割程度が附帯工事費です。

附帯工事の主な内訳

この章では、附帯工事費の主な内訳について解説します。

整地・造成工事

整地や造成が必要な土地の場合には、整地費や造成費が発生します。
分譲地を購入している場合には、最初から整地・造成済ですので、整地費や造成費は不要です。

整地とは、凹凸(おうとつ)がある土地の地面を地ならしするための工事を指します。
整地費の相場は、坪2,500~3,000円程度です。

造成とは、主に傾斜地を平らにする工事を指します。
造成は、盛土をするのか、切土をするのか、擁壁も作るのか等の内容によって工事費がかなり異なることが特徴です。

敷地内の傾斜地の角度も影響し、角度が急なほど造成費も高くなります。
造成費の相場は、内容によって坪2万円~20万円程度であり、幅もかなり広いです。

地盤改良工事

地盤改良とは、そのままでは直接基礎を工事できない場合において、土地に必要な支持力を与えるために行う工事のことです。
直接基礎とは、建物の基礎を直接固い地盤の上に作り、荷重を地盤の広い範囲に分散させる形式の基礎のことを指します。
一般的な規模も木造戸建て住宅は、自重が比較的軽いことから直接基礎が用いられることが多いです。

地盤改良工事を算出するためには、建物を支持できる地盤の深さを調べることが必要となります。
支持地盤の深さを調べる調査のことを、地盤調査と呼びます。

地盤調査費も、附帯工事費の一つです。
地盤調査費は「ボーリング調査」と呼ばれる本格的な調査と、「スウェーデン式サウンディング」と呼ばれる簡易な調査の2種類があります。

ボーリング調査費用の相場は、1ポイントあたり40~60万円程度です。
調査ポイント数は、100坪未満の土地であれば1~2ポイント程度となります。

一方、スウェーデン式サウンディングの調査費用の相場は5~10万円程度です。

地盤改良は、地番調査の結果によって「改良の必要なし」「表層改良」「柱状改良」「鋼管杭」の4つに分かれます。

改良の必要なしとは、良好な地盤のときに現れる結果であり、地盤改良を行う必要がなく土地の上に直接基礎を築くことができます。
改良の必要なしの場合には、地盤改良費は不要です。

表層改良は、軟弱な地盤が深さ2m程度未満である場合に生じる地盤改良で、表層改良費の相場は坪1~2万円程度です。

柱状改良は、軟弱な地盤が深さ2~8m程度である場合に生じる地盤改良です。費用相場は坪2~3万円程度になります。

鋼管杭は、軟弱な地盤が深さ5~10m程度である場合に生じる地盤改良となり、費用相場は、坪4~6万円程度です。

古い家の解体工事

古い家が残っている場合、解体工事費が発生します。
解体工事費は、木造の場合で家屋だけであれば坪5~6万円程度です。

建物の中に家財道具等の不用品が残っている場合や庭の植木や庭石を処分しなければならない場合は、家屋の解体費も併せて坪10~12万円程度になることもあります。

水道分担金

新たに水道を引き込む場合には、水道分担金(負担金)が発生します。
水道分担金は、引き込む給水管の口径によって異なります。

一般的な住宅の場合、水道の口径は20mmまたは25mmです。
水道分担金は20mmなら30万円程度、25mmなら50万円程度が相場となります。

なお、すでに水道管を引き込んでいる土地の場合、口径を大きくするときは既存の口径と新規の口径の差額を収めることになるため、水道分担金が安くなります。

外構・造園工事

外構・造園工事は、どのような庭を造るかによっても工事費は大きく異なります。
外構・造園工事の相場は、坪2.5~10万円程度です。
立派な門扉や生垣、デザイン性の高いアプローチ等を選択すれば、その分工事費は高くなります。

地中障害物撤去費用

地中障害物が存在する場合、地中障害物撤去費用も発生します。
地中障害物には、コンクリートガラや浄化槽、コンクリート基礎等があります。

撤去費用の相場は、1トン当たりコンクリートガラが2~3万円程度、浄化槽が3~4万円程度、コンクリート基礎が2~3万円程度です。

附帯工事費を安くするには

附帯工事費を安くするには、工事の内容によっていくつかの方法があります。

まず、相見積を取ることで工事費全体を安くすることができるため、附帯工事費も相対的に安くすることができます。

古い建物の解体が必要な場合、建物内に残っている家財道具等の不用品を自分で処分しておくのが解体費を安くするコツです。

土地に関しても、分譲地を購入すれば通常は整地費や造成費が発生しませんので、附帯費用を抑えられます。
すぐに建築できる整備された土地を買うという点がポイントです。

また、カーテン等の設置は、竣工後に自分で行うという方法もあります。
什器備品の購入も、自分でできるものがあれば自分で行った方が安くなることも多いです。

この記事のポイント

附帯工事とはなんですか?

附帯工事には、一般用語としての意味と建設業法上の意味の2通りがあります。

一般用語としての附帯工事は、本体工事以外にかかる工事費のことです。附帯工事費は「別途工事費」と呼ばれることもあります。

一方で、附帯工事には建設業法上の意味も存在します。

建設業法上の意味が存在する理由は、工事を行うにあたり建設業の許可を必要とするか否かを明確にするためです。

詳しくは「附帯工事とは」をご覧ください。

附帯工事費の相場は?

附帯工事の相場は、総費用の2~3割程度です。

本体工事費が総費用の7~8割程度を占めますので、残りの2~3割が附帯工事費になります。

詳しくは「附帯工事費の相場とは」をご覧ください。

自宅や職場にいながらオンラインでご相談

電話やビデオ通話を使ってご自宅にいながら相談できます。

東急リバブルのオンライン相談