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マンション売却のコツ|売れない場合の理由と対処法

執筆者プロフィール

竹内 英二
不動産鑑定士

不動産鑑定事務所および宅地建物取引業者である(株)グロープロフィットの代表取締役。不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、住宅ローンアドバイザー、中小企業診断士の資格を保有。

ざっくり要約!

  • マンションが売れない最も大きな理由は価格が高過ぎること
  • マンションの立地条件が一般受けし辛い、築年数が古い等の特徴悪条件が存在する場合にはそれらが持つ欠点を踏まえた適正な価格に見直す必要がある

都市部では、中古マンション価格が高過ぎて、購入を諦める人たちも増えています。
購入を諦めた人たちは賃貸市場に流れており、最近では賃貸物件の家賃まで上がり始めている状況です。

裏を返すとマンションは価格が高いことが理由で需要が賃貸に流れており、以前よりも簡単には売却しにくくなってきました。
中には駅から近い、築年数が浅い等の条件の良い物件であっても、売却期間が長期化しているケースが散見されます。

マンションが売れない場合には、どのように対処すれば良いのでしょうか。
この記事では、「マンションが売れない場合」について解説します。

マンションが売れない理由

マンションが売れない理由

マンションが売れない理由について解説します。

価格設定が高すぎる

マンションが売れない最も大きな理由としては、価格が高過ぎるという点です。
価格が高過ぎるという点に関しては、「相場そのものが高過ぎる」ケースと、「物件の個性の割に高過ぎる」ケースの2パターンがあります。

近年のケースとしては、相場そのものが高過ぎることで売りにくくなっていることもあります。

例えば、東京都の特区部の中古マンションの平均価格は、2012年度が3,273万円、2023年度が6,299万円にもなっています。

11年間の間に約2倍弱も価格が上がっていますので、買主としては簡単には買いにくいわけです。

不動産は高額な商品であるため、日用品等と比べるとそもそも売りにくく、価格が上がってしまえばさらに売りにくくなります。

一方で売れない理由として、価格が物件の個性のわりに高過ぎるというケースもあります。

価格は、立地条件や築年数、管理の状態等の個性を反映した金額です。
例えば、立地条件が一般受けし辛い劣るにも関わらず高い、あるいは築年数が古いにも関わらず高いといったケースでは、適正価格ではないという理由で売却が難しくなります。

近年は、相場の価格そのものが高くなっていますので、適正価格を逸脱してしまうとさらに売却しにくくなります。

出典:年報マーケットウォッチ2023年・年度 表1 中古マンション|公益財団法人東日本不動産流通機構

立地条件が一般受けし辛い

立地条件が一般受けし辛い物件は、マンション価格の高騰に関わらず売却しにくいことがあります。
駅から徒歩15分以上離れている、周辺に生活利便施設がない、不便な路線の最寄り駅である、線路や大通りに近過ぎる等の特徴を持つ物件は売れるまでに時間がかかることがあります。

また、マンションの場合、部屋の位置も売却のしにくさに影響します。
例えば、北向きの部屋や1階の部屋等は基本的に売却しにくいです。
その他として、6階までは目の前に建物があって視界が悪いという物件は、6階以下の部屋は売却しにくいというケースもあります。

なお、駅から離れていることで繁華街から離れ落ち着いた住環境が実現できたり、階下に音が響かないことから小さな子供のいる家庭で1階を希望したりすることがあるなど、一般受けし辛いとされる要素が逆に魅力になることもあります。

物件のメリット・デメリットを整理したうえで、適正価格で売り出すことが重要です。

物件の状態が悪い

物件の状態が悪いことも、売れない理由の一つです。
床が汚い、壁が汚れている等の物件は、購入希望者の印象が悪く売却しにくいといえます。

また、マンションの場合、専有部だけでなく共用部の管理も劣ると売却しにくくなります。
古いマンションの中には「限界マンション」と呼ばれる物件も存在します。

限界マンションとは、老朽化や住人減少により、建物の維持管理が限界を超えてしまったマンションのことです。

限界マンションは住人から徴収できる管理費が減少しており、共用部の管理を十分に行うことができません。
限界マンションでは、共用部が汚い、廊下の電球が切れっ放し等の状態になっており、購入希望者の印象が悪く、売却しにくくなっています。

ターゲット層のニーズとずれている

マンションでは、間取りがターゲット層のニーズとずれているため、売却しにくいケースがあります。
典型的なのが、郊外にある2LDKや1LDKといった狭い間取りです。

郊外では3人以上のファミリー世帯の購入需要が強いため、買主が3LDK以上の間取りを求める傾向があります。

間取りが地域の主たるターゲット層と合致していないと、購入希望者が少なくなり、売却期間も長期化しがちです。

仕様が古過ぎる

仕様が古過ぎることも、売れない原因の一つです。
築年数の古い物件の中には、全室エアコンが設置できない物件も存在します。

例えば、バルコニー側の部屋は室外機が置けても、共用廊下側の部屋に室外機が置けず、共用廊下側の部屋にはエアコンが付けられないといったケースもあります。

近年は温暖化現象で夏場の気温が高いため、全室にエアコンが付けられない物件は死活問題です。
エアコンを設置可能にする工事は、共用部にスリーブ穴を空けることが必要であり、所有者の独断ではできません。
リフォームで対処できない問題であるため、売却を著しく困難とする要因になります。

売れないマンションの具体的な問題

売れないマンションの具体的な問題

売れないマンションの具体的な問題について解説します。

内覧時の印象が悪い

内覧時の印象が悪い物件も、問題の一つです。
住みながら売却している物件の中には、売主の生活感が溢れすぎていて物件の魅力が伝わらないケースも存在します。

一方で、空き家の状態で売る物件でも印象が悪くなるケースもあります。
例えば、キッチンの周辺の床に油汚れが残っており、歩くとスリッパに油汚れがついてくるような物件は、印象を悪くする人も多いです。

空き家の物件、基本的に綺麗な状態で売ることができますが、逆に些細なことで印象を悪くすることもあるため、しっかりと掃除をしてから売ることが望ましいといえます。

宣伝が不足している

宣伝不足は、マンションが売れない場合の大きな問題といえます。
昨今の不動産の売却は、購入希望者が自らインターネットで物件を探し、不動産会社に問い合わせて商談が始まる流れが主流です。

そのため、ポータルサイトに広告が掲出されていることが重要となります。
ポータルサイトとは、物件広告が掲出されているサイトのことです。

また、ポータルサイトに掲出されている内容も重要です。
せっかく情報が載っていても、アピールポイントが訴求不足であったり、掲載されている写真の数が少なかったり、同じような写真ばかりで内容が薄い物件は問い合わせも少ない傾向があります。

放置が招くマンション売却のデメリット

放置が招くマンション売却のデメリットについて解説します。

資産価値のさらなる減少

マンションの売却を諦め、長期間放置してしまうと、資産価値の更なる減少を招きます。
マンションの価格は、基本的に築年数が古くなるほど下がるため、放置すればそのうち価格が下落します。

維持費の負担がかかる

マンションは、固定資産税の他に管理費と修繕積立金の維持費が発生します。
戸建てに比べると維持費が多いため、売却を諦めてしまうと維持費の負担も重いです。

また、修繕積立金は、一般的に築年数が古くなるほど増額します。
そのため、長期間放置すると維持費がさらに増えていきます。

マンション売却を成功させるための対策

マンション売却を成功させるための対策

マンション売却を成功させるための対策について、解説します。

適切な価格設定

売れない物件は、価格が物件の個性のわりに高過ぎることが多いです。
立地条件が一般受けし辛い、築年数が古い等の特徴が存在する場合には、それらが持つ欠点を踏まえた適正な価格に見直す必要があります。

複数の不動産会社に査定を依頼している場合は、低めの価格を参考に価格を設定し直すと適正価格になる可能性が高いです。

魅力的な物件にするためのリフォーム

売却するために、魅力的な物件にするためのリフォームすることも対策の一つです。
基本的に売却のためのリフォームは不要ですが、近年はリフォーム済みの物件も増えている傾向があります。

特に築40年超の物件では、リフォームされている物件も多いです。
昨今は、築40年超の物件でも一昔前の新築価格と同水準の価格で売られているケースがあります。

築40年超の物件を高く売ろうとすると、やはり付加価値を付けないと売却は難しくなります。
そこで、築年数の古い物件では、近年の価格相場に相応させるためにリフォームを行っている物件も多いです。

一方で、築年数の浅い物件は、リフォームすることにリスクがあります。
築年数の浅い物件は、元々金額が高いため、投じたリフォーム費用の全額を販売価格に転嫁できないことが多いです。

築年数の浅い物件はリフォーム費用を上乗せすると、価格がさらに高くなってしまうため、リフォームする前よりも売れなくなってしまう懸念があります。

そのため、築年数の浅い物件は、リフォームではなく、ハウスクリーニングの実施やプロカメラマンに撮影してもらう等の対策が効果的です。

不動産会社を変更する

マンションが売れない場合には、不動産会社を変更することも一つの対策です。
媒介契約(不動産会社に依頼する仲介の契約のこと)は、一般的に契約期間が3ヶ月となっていますので、契約が切れたタイミングで切り替えることができます。

新しい不動産会社は、売主向けサービスが充実している会社を選ぶことが望ましいです。
売主向けサービスとは、建物保証や設備保証、ハウスクリーニング、バーチャルインテリアルーム、プロカメラマンによる撮影等があります。

サービスの内容は会社によって異なりますが、ハウスクリーニング等の物件の価値を向上させるサービスを提供している会社に依頼すれば、売却しやすくなります。
変更する場合は、不動産会社が提供するサービス内容を十分に調べた上で依頼することが適切です。

買取を検討する

なかなか売れない場合は、買取を選択するのもの一つです。
買取とは、再販を目的とした不動産会社に下取り価格で売る売却方法のことを指します。
買取は価格が安くなるデメリットはありますが、すぐに売れる点がメリットです。

買取に抵抗がある場合には、買取保証を利用するという選択もあります。
買取保証とは一定期間仲介による売却を試み、期限まで売れなかったら最後は買取になるという売却方法です。
買取保証であれば、仲介で高く売る可能性も探れますし、最終的に買取で確実に売ることができます。

ライターからのワンポイントアドバイス

ライターからのワンポイントアドバイス マンション売却,売れない場合

2024年3月に日銀がマイナス金利を解除する方針を示したことで、今後金利が上がる可能性が出てきました。

住宅ローンの金利が上がるとローンの返済額が増えることから、購入需要が減退してさらに売却しにくくなる懸念があります。

価格が下落局面に入ると、価格が下がるだけでなく、売却に必要な期間も長期化することが多いです。同じ物件を売るにしても、低金利の時期の方が売却はしやすいといえます。金利が本格的に上昇する前に、なんとか売り切ってしまうことをおすすめします。

この記事のポイント

マンションが売れない場合の具体的な問題とは?

マンションが売れない場合、内覧時の印象が悪いという可能性があります。

住みながら売却している物件の中には、売主の生活感が溢れすぎていて物件の魅力が伝わらないケースも存在します。

詳しくは「売れないマンションの具体的な問題」をご覧ください。

マンションを放置すると、売却時にどんなデメリットがある?

マンションの売却を諦め、長期間放置してしまうと、資産価値の更なる減少を招きます。

マンションの価格は、基本的に築年数が古くなるほど下がるため、放置すればそのうち価格が下落します。

詳しくは「放置が招くマンション売却のデメリット」をご覧ください。

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