ざっくり要約!
- 農地は所有者の都合で簡単に売ることはできず、売却する際は農地法に基づく許可が必要
- 農地を宅地などに転用して売却する場合、都道府県知事の許可(市街化区域内にある農地は農業委員会の許可)をとらなければならない
農地を売却しようとするときは、農地法に基づく許可が必要です。農地を売却したいと思っている方にとっては、宅地と同じように取引できないことを面倒に感じるかもしれません。
今回は農地の売却を検討している方のために、農地として売却する流れと、農地を農地以外に転用して売却する流れを解説します。
また、農地売却について相談できる機関を5つ紹介します。農地を売る流れや方法を理解して、農地の売却を成功させましょう。
記事サマリー
農地売却の注意点|売却には許可が必要
農地は国内の食料供給を支える重要な資源であり、安定した生産量を確保するために農地法によって保護されています。
ゆえに、農地は所有者の都合で簡単に売ることはできず、売却する際は農地法に基づく許可が必要になります。
たとえ畑に見えない土地であっても、地目が田や畑であれば許可が必要になります。
私道だと思って宅地と一緒に売却しようと思ったら、地目が畑だったというケースもあり、注意が必要です。
売却を検討するときは、地目の種類を確認しましょう。地目は登記簿謄本(登記事項証明書)で調べることができ、法務局のオンラインシステムを利用すれば、法務局へ足を運ぶ必要はありません。
農地を農地として売却する場合は「第3条許可」、農地を農地以外として売却する場合「第5条許可」が必要です。それぞれの許可について、もう少し詳しく解説します。
出典:農地法(昭和二十七年法律第二百二十九号)|e-Gov 法令検索
第3条許可
農地を農地として売却(もしくは賃貸)する場合であっても、市町村の農業委員会の許可が必要です。農地法の第3条で定められていることから、第3条許可と呼ばれています。
なお農地を購入できるのは農業従事者、もしくはこれから農業を従事する人のみです。
農業委員会によって多少手続きが異なりますが、農業をする意思や能力を確認するために面談が必要になることもあります。
また許可申請や農業委員会が許可の可否を話し合う定例会のタイミングによっては、申請から許可までに2カ月~3カ月ほどかかることも少なくありません。
もし第3条許可を受けずに所有権を移転した場合、売買契約は無効になり、3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科される可能性があります。
許可申請は少々難解で時間もかかりますが、手続の流れや要件については農業委員会によく相談し、引渡しの時期も余裕を持って計画しましょう。
ちなみに2023年4月1日の農地法の一部改正に伴い、下限面積要件(50アール・北海道は2ヘクタール)が原則撤廃になりました(地域の実績に応じて別途定めることが可能)。
農地法の改正によって、小規模の農地も売却できるようになりましたが、農業従事者の高齢化が進み、後継者が不足している状態です。農地を欲しがる人も減っているため、買い手を見つけることが難しくなっています。
農地の売却に困ったら、後半に紹介する「農地売却に関して相談できる機関」に相談することをおすすめします。
第5条許可
農地を宅地などに転用して売却する場合、都道府県知事の許可(市街化区域内にある農地は農業委員会の許可)が必要です。
農地法の第5条で定められていることから、第5条許可とも呼ばれています。
ちなみに自分が所有する農地を宅地などに転用をする場合は、第4条許可が必要です。つまり所有権を移転しない場合でも、農地を転用するときは許可が必要です。
第5条許可を受けずに売却した場合、売買契約は無効になり、3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科される可能性があります。
なお農地によっては「総合的に農業の振興を図ることが必要であると認められる地域」に指定されていることがあります。農地の中でもとくに保護する必要があることから、まず「農業振興地域の除外申請」が必要になります。
第5条許可と異なり、申請から許可までに年単位の期間がかかることがあるといわれています。まずは許可が下りる可能性があるのかも含めて農業委員会に相談し、必要に応じて行政書士や司法書士などの専門家へ相談しましょう。
農地として売却する場合の基本の流れ
農地を農地として売却する場合の、基本的な流れを紹介します。なお農業委員会によって多少手続きの内容が変わることがあります。実際に許可を申請する場合は、農業委員会にて確認するようにしましょう。
1.買主を探す
まず、買主を探しましょう。農地を購入できるのは、農家やこれから農業に従事しようとする人です。宅地と異なり買い手が限定されるため、知り合いや農業関連団体などを通じて探してみましょう。
2.買主と売買契約を結ぶ
買主が見つかったら、売買契約を結びます。農地を農地として売却する場合は第3条許可が必要になり、許可なく売買契約を締結した場合は無効になります。
第3条許可が下りなかったときは、売買契約を解除することを買主に了承してもらい、売買契約書にはその旨を特約(条項)として記載しましょう。
3.農業委員会に第3条許可を申請する
売買契約締結後に、農業委員会へ第3条許可を申請します。申請をする際は登記事項証明書や公図などが必要になります。
必要書類は自治体によって異なることがあります。事前に市町村の窓口やホームページで確認しておきましょう。
4.許可が出たら決済・引き渡し・所有権移転をする
農業委員会から農地の所有権移転について許可証が交付されたら、買主と残代金決済をし、農地の引き渡しと所有権移転登記をします。
農地転用して売却する場合の基本の流れ
農地を転用して売却し、所有権移転登記をするまでの基本的な流れを紹介します。
1.農地売買に詳しい不動産会社に相談する
農地を転用して売却する場合は、買主が農業従事者に限定されることがありません。広く買主を探すためにも、不動産会社に売却の相談をしましょう。
農地を転用して売買する場合は、第5条許可が必要です。
宅地とは異なる手続きが必要になるため、農地売買に詳しく、実績も豊富な不動産会社を選ぶことをおすすめします。
2.買主が見つかったら売買契約を結ぶ
不動産会社の仲介によって買主が見つかったら、売買契約を結びます。農地を転用して売却する場合は第5条許可が必要になり、許可なく売買契約を締結した場合は無効になります。
第5条許可が下りなかったときは、売買契約を解除することを買主に了承してもらい、売買契約書にはその旨を特約(条項)として記載しましょう。
3.農業委員会を通じ第5条許可の申請をする
農地の転用許可を申請する際は、買主の情報や転用目的、利用計画を示す必要があるため、売買契約締結後に農業委員会(もしくは都道府県知事)に許可申請をします。
申請をする際は登記事項証明書や公図のほか、建築予定の建物の設計図書なども必要になりますが、必要書類は自治体によって異なることがあります。事前に市町村の窓口やホームページなどで、必要書類を確認しておきましょう。
4.地目変更登記をおこなう
農業委員会(もしくは都道府県知事)から農地転用の許可が下りたら、地目を用途に合わせて変更します。
地目変更登記は、個人でも行うことができます。地目変更登記申請書や農業委員会の許可証、土地の案内図を持参して、法務局へ申請しましょう。
なお平日に法務局へ出向くのが難しいときや、専門家へ依頼したい場合は、通常土地家屋調査士に依頼します。
5.決済・引き渡し・所有権移転登記をする
地目変更登記が完了したら、残代金を決済・農地の引き渡し・所有権移転登記を行います。
第5条許可は、申請までに通常2カ月~3カ月かかります。引渡しまでのスケジュールについては買主に理解してもらい、余裕を持って計画しましょう。
農地売却に関して相談できる機関5つ
最後に、農地売却に関して相談できる期間を5つ紹介します。困ったときに備えて、相談できる窓口を把握しておきましょう。
1.農業委員会
農地の売買や転用については、基本的に市町村の農業委員会に許可申請することになります。
農地の売却を検討する際は、まず農業委員会に相談し、必要な手続きや申請から許可が下りるまでの流れやかかる期間を確認しておきましょう。
ちなみに農地や農用地区域内の農地を売る場合に、買主をあっせんしてくれるケースもあります。
・「農地転用後の土地交換」に関する記事はこちら 農地転用後の土地交換 |
2.不動産会社
土地の売却は、不動産会社に相談しましょう。農地の査定や税金面についても相談でき、基本的にかかるのは売却時の仲介手数料のみです。
ただし、農地の売却は許可を得る必要があり、手続きに慣れていない場合は取引に苦労するおそれがあります。
農地売却の実績が豊富で、ノウハウを持っている不動産会社を選ぶようにしましょう。
3.行政書士
農業委員会へ許可を得る申請をする場合、行政書士へ手続きを依頼するのが一般的です。個人でも申請手続きをすることは可能ですが、慣れていない場合、書類の準備や手続きに苦労する可能性があります。
農地転用や売却を専門的に扱っている行政書士もいます。なるべくスムーズに手続きを進めたい方は、行政書士への依頼を検討しましょう。
4.司法書士
農地の所有権移転登記は、司法書士へ依頼することになります。一連の手続きに不安がある場合は、許可申請の段階から相談してみましょう。ちなみに司法書士には、相続登記や遺産分割協議書の作成など権利関係についても相談できます。
司法書士を不動産会社から紹介してもらうことも可能ですが、日本司法書士会連合会のホームページなどからも探せます。
5.弁護士
買主との間でトラブルが発生したときは、農地売却に詳しい弁護士に相談しましょう。弁護士は、それぞれ得意とする分野があります。
依頼先に困ったらインターネットで検索するか、日本弁護士連合会の「全国の弁護士会の法律相談センター」から検索して探してみましょう。
ライターからのワンポイントアドバイス
農地は宅地や住宅のように、自由に売却することはできません。農地を農地として売却する、もしくは農地を転用して売却するのにそれぞれ申請が必要で、許可を得るまでに2カ月~3カ月かかることも少なくありません。
農地の売却を検討する場合は、農地売却の実績が豊富で、ノウハウを持った不動産会社に相談しましょう。農地の査定はもちろんですが、許可申請についても相談できるので、安心して取引ができるでしょう。
この記事のポイント
- 農地売却の注意点は?
農地は国内の食料供給を支える重要な資源であり、安定した生産量を確保するために農地法によって保護されています。
ゆえに、農地は所有者の都合で簡単に売ることはできず、売却する際は農地法に基づく許可が必要になります。
たとえ畑に見えない土地であっても、地目が田や畑であれば許可が必要になります。
詳しくは「農地売却の注意点|売却には許可が必要」をご覧ください。
- 農地売却に関して相談できる機関は?
農地の売買や転用については、基本的に市町村の農業委員会に許可申請することになります。
農地の売却を検討する際は、まず農業委員会に相談し、必要な手続きや申請から許可が下りるまでの流れやかかる期間を確認しておきましょう。
また、売却が決まっている場合は不動産会社に相談しましょう。その際には農地売却の実績が豊富で、ノウハウを持っている不動産会社を選ぶようにしてください。
詳しくは「農地売却に関して相談できる機関5つ」をご覧ください。
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