ざっくり要約!
- 相続した土地を売るときは相続登記がなされているかどうかをまずは確認
- 宅地を売却予定の場合は道路や隣地も含めて全ての境界を確定しておくことが望ましい
更地は建物がないため、一見すると単純に売却できそうな気がします。
しかしながら、土地を売るときも注意点は存在します。
特に都市部ではやや広い程度の土地でも、買主がプロの不動産会社となることが多いです。
プロの不動産会社は、購入後のトラブルを避けるため、売主に一定の条件を要求してきます。
土地をスムーズに売るには、買主に要求される事項を想定し、あらかじめ準備をしておくことが望ましいです。
この記事では「土地を売るときの注意点」について解説します。
記事サマリー
土地を売る前の注意点7選
土地を売るときは、まずは状況の把握が必要です。
この状況把握に関して、土地を売る前の注意点を紹介します。
1.相続した土地を売りたいときはまず相続登記する
相続した土地を売るときは、相続登記がなされていることを確認します。
相続登記とは、相続により所有者が移転した場合における名義変更の登記のことです。
相続した土地を売る場合、名義変更は必須となります。
理由としては、相続が発生した段階では不動産は相続人の共有名義で引き継がれているからです。
相続登記がなされていない不動産は、第三者から見ると誰が所有者なのかがわかりません。
売主と名乗っている人の他にも、他の共有者が存在する可能性があります。
共有物件の売却には、共有者全員の同意が必要であるため、仮に目の前の売主と売買契約をしても、後から知らない共有者が現れて反対された場合は購入できなくなります。
このように相続登記がなされていない物件は、他に共有者が潜んでいる可能性があり、リスクがあるため、購入する人は少ないのです。
よって、相続した物件を売却するには実務上、相続登記が必須となっています。
相続登記の義務化
なお、相続登記は2024年4月から義務化されました。
新しい相続登記制度では「相続人申告登記」と呼ばれる、まずは相続登記の義務を履行するための簡易な登記制度もあります。
相続人申告登記とは、登記簿上の所有者が亡くなっていることだけを公示する登記のことです。
相続人申告登記は、所有者が亡くなったことを示すだけの登記であり、いわゆる相続登記ではありません。
売買を行うには新たな所有者に名義変更する必要があり、相続人申告登記ではなく従来通りの相続登記を行うことが必要です。
出典:相続登記が義務化されました(令和6年4月1日制度開始)~なくそう 所有者不明土地 !~|東京法務局
2.不動産登記内容を確認する
不動産登記の内容は、法務局で登記事項証明書を取得することで確認できます。
確認内容としては、所有者や面積、地上権や抵当権等の所有権以外の権利が付着していないか等を確認することが適切です。
また、相続した土地は、念のため隣地の登記簿謄本も取得して所有者を確認することをおすすめします。
たまに、隣地の小さな筆(ふで:土地の単位のこと)も実は所有していたというケースがあります。
隣地の小さな筆が自分の土地であると判明した場合には、売りにくい小さな隣地だけ残ってしまうことを防ぐために隣地も含めて売却することが望ましいです。
3.売りたい土地の境界を確定する
土地の中でも宅地を売却予定の場合は、道路や隣地も含めて全ての境界を確定しておくことが望ましいです。
宅地とは、現に建物の敷地に供されている土地や、建物を建てるために取引される土地のことを指し、林地や農地は除きます。
宅地の取引の場合、実務上、境界が全て確定していることが購入の条件となることが多いです。
そのため、宅地を売る場合には、境界確定を済ませておくことが実質的に必須となっています。
確定測量図とは
道路や隣地の境界が全て確定している場合、「確定測量図」と呼ばれる実測図があるはずです。
確定測量図がある場合、全ての境界が確定しているということですので、念のため、図面通りに境界標があるかも確認しておきます。
何らかの事情で境界標が飛んでしまっている場合には、再度境界標を打つことを測量会社に依頼することが適切です。
確定測量図がない場合は?
確定測量図がない場合には、境界が確定していないと推測されますので、測量会社に確定測量図の作成を依頼します。
その際、各境界の隣地所有者と「筆界確認書」を締結しておくことが望ましいです。
筆界確認書とは、境界ラインを双方で合意したことを示す書面となります。
また、隣地との間で越境物がある場合には、「越境の覚書」も締結しておきましょう。
越境の覚書とは、越境物の所有権の確認および是正方法について合意したことを示す書面となります。
越境の覚書を締結する際、例えば木の枝の越境等の簡易に是正できる越境物であれば、売却前に是正しておいた方が購入希望者の印象は良いです。
なお、確定測量図を有している土地でも、越境物があるにも関わらず越境の覚書が存在しない土地もあります。
越境物があって越境の覚書がない場合には、売却前に測量会社に越境の覚書の作成を依頼することが適切です。
4.調べられる範囲で地歴を確認しておく
売却する土地は、調べられる範囲で地歴を確認しておく必要があります。
理由としては、購入希望者は「土壌汚染」と「地下埋設物」の存否の可能性を知りたがるからです。
例えば、土地が以前に化学工場等の敷地に供されていた場合には、土壌汚染の可能性が疑われます。
一方で山林や住宅地として利用されていた場合には、土壌汚染の可能性は低いと考えられます。
地下埋設物に関しては、よくあるケースが下水の浄化槽です。
地域に下水が通っていなかった時代に敷地内にコンクリートの浄化槽を設け、その浄化槽がそのまま地下に埋まっていることがあります。
その他としては、都市部では地下室の躯体がそのまま残っているケースもあります。
土壌汚染や地下埋設物の可能性に関しては、所有者でないと知り得ないことも多いです。
親戚等に聞ける範囲で構わないので、可能な限り昔の土地の利用状況を確認しておくことをおすすめします。
5.売りたい土地の価格相場を把握しておく
土地を売却する場合には、自分でも相場を把握しておくことが望ましいです。
相場を知っておけば、売り出し価格に関して高過ぎる、もしくは安過ぎるといった判断をすることができます。
土地の相場は、国土交通省が運営している「不動産情報ライブラリ」で、ある程度調べることが可能です。
6.ローン関連について確認する
法人が保有している土地や、中小企業の社長が保有している土地等においては、たまに土地に根抵当権が設定されているケースがあります。
根抵当権とは、極度額の範囲で繰り返し融資を受けることができる抵当権のことです。
極度額とは、債権者(銀行のこと)が優先弁済を受けることができる最大限度額のことを指します。
根抵当権が設定されている状態のままでは、実質的に第三者に売却できませんので、売却前に債権者と交渉して根抵当権を抹消しておくことが必要です。
7.仲介をお願いする不動産会社を選ぶ
売却の準備が整ったら、不動産会社に査定を依頼します。
不動産会社に依頼する査定は無料です。
適正な査定価格を判断するためにも、査定は複数の不動産会社に依頼した方が望ましいといえます。
複数の査定結果を比較すれば、査定価格が高過ぎる、もしくは安過ぎるといった判断をすることができる方です。
複数の査定結果を得ると適切なストライクゾーンが見えてきますので、損をせず確実に売るためにも、適正価格の範囲内で売り出すことをおすすめします。
土地を売り出すときの注意点2選
実際に売却活動を始める際の注意点について解説します。
1.状況に応じた媒介契約をする
依頼する不動産会社が決まったら、媒介契約を締結します。
媒介契約とは、不動産会社との間で締結する仲介の契約のことです。
媒介契約には、一般媒介契約と専任媒介契約、専属専任媒介契約の3種類があります。
一般媒介契約とは、同時に複数の不動産会社に売却を依頼できる契約のことです。
専任媒介契約と専属専任媒介契約は、1社だけにしか依頼できない契約になります。
専属専任媒介契約では、自己発見取引と呼ばれる売主が自分で買主を見つけてくる行為が禁止されています。
それぞれの契約の特徴を理解し、状況に応じて適切な媒介契約を選択していただければと思います。
2.売却には3カ月以上かかる
土地の売却は、売りに出してから買主が決まるまで概ね3カ月程度の時間がかかることが一般的です。
売却には時間が必要ですので、余裕を持ったスケジュールを組むことをおすすめします。
なお、境界が確定していない状態で売却活動をスタートした場合には、早めに境界確定の作業に着手し、引渡時までに境界を確定できるようにしておくことが望ましいです。
土地の売買契約における注意点
土地の売買契約書は、契約締結前に売主と買主の双方が事前確認できることが一般的です。
売主が売買契約書で特に確認したい点は、契約不適合責任に関する特約事項になります。
契約不適合責任とは、契約の目的とは異なるものを売ったときに売主が問われる責任のことです。
売主が契約不適合責任を問われると、売却後に買主から修補請求(修繕の請求のこと)や契約解除、損害賠償の請求を受ける恐れがあります。
土地の売却で特に意識しておきたいのが、土壌汚染と地下埋設物の取り扱いです。
土壌汚染と地下埋設物は、売主も完全に把握できないため、売却後に発覚しやすいものとなります。
そのため売買契約書では、買主と合意の上、土壌汚染と地下埋設物に関しては売主に契約不適合責任を問わないようにすると特約を記載しておくことが理想です。
売買契約書の内容に不安がある場合には、遠慮なく不動産会社に伝えることが適切といえます。
土地の引き渡し後の注意点
土地の売却によって売却益が出た場合には、確定申告が必要です。
確定申告は通常、売却の翌年の2/16~3/15の間に行います。
納税を怠ると、延滞税が発生します。
ライターからのワンポイントアドバイス
土地は、立地によって売却のしやすさが大きく異なってくる点が特徴です。特に立地が良いとはいえない土地は売却しにくいため、売却活動に入る前に境界を確定しておく、越境の覚書を締結しておく等の万全な準備が求められます。
また、可能であれば地中埋設物や土壌汚染等の売主しか知り得ない情報も確認しておくことが望ましいです。土地売却に不安な点がある場合には、早めに不動産会社に相談し、疑問点を解消したうえで売却活動に臨むことが適切といえます。
この記事のポイント
- 土地を売り出すときの注意点は?
土地を売り出す際には、不動産会社と状況に応じた媒介契約をすること、売却には3カ月以上かかると理解しておくことが大切です。
詳しくは「土地を売り出すときの注意点2選」をご覧ください。
- 土地の売買契約における注意点は?
土地の売買契約において売主が注意する点としては、売買契約書で契約不適合責任に関する特約事項をしっかり確認しておくことが挙げられます。
契約不適合責任とは、契約の目的とは異なるものを売ったときに売主が問われる責任のことです。
売主が契約不適合責任を問われると、売却後に買主から修補請求(修繕の請求のこと)や契約解除、損害賠償の請求を受ける恐れがあります。
詳しくは「土地の売買契約における注意点」をご覧ください。
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