土地,売却,消費税
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土地売却で消費税が発生する費用とは? 課税・非課税の費用を解説

執筆者プロフィール

竹内 英二
不動産鑑定士

不動産鑑定事務所および宅地建物取引業者である(株)グロープロフィットの代表取締役。不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、住宅ローンアドバイザー、中小企業診断士の資格を保有。

ざっくり要約!

  • 不動産の売買での消費税は土地が非課税、建物が原則として課税となる
  • 土地の売却に伴って発生するサービスの対価に関しては原則通り消費税は課税対象

不動産の売却における消費税は、土地は非課税、建物は原則として課税です。
消費税は海外における付加価値税をモデルとして設計された税金であり、土地の取引は税の性格から課税対象になじまないため、非課税となっています。

そのため、売主が個人や法人に関わらず、売主が誰であっても土地を売却したときの消費税は非課税です。
一方で、土地の売却に伴う仲介手数料や司法書士手数料等のサービス料に関しては、原則通り消費税が課税されます。
不動産の売却では、消費税のルールはどのようになっているのでしょうか。
この記事では、「土地売却の消費税」について解説します。

土地売却で発生する消費税とは

土地売却で発生する消費税とは

最初に消費税について解説します。

そもそも消費税とは

消費税とは「国内での商品の販売、サービスの提供および輸入される貨物を課税対象として取引ごとに課税される間接税」のことです。

「国内の取引であること」「事業として行われるもの」「対価を得て行われるもの」「譲渡や貸付、役務の提供があること」等が要件となります。

消費税とは、海外の「付加価値税」をモデルとした税金とされています。

付加価値税とは

付加価値税とは、取引で生じる付加価値に対して課される税金のことです。

消費税は間接税であり、事業者が顧客から預かった消費税(預かり消費税)と、事業者が仕入れ先等に支払った消費税(支払い消費税)の差額を納める税金となっています。

例えば、80円(税抜き)で仕入れた商品を100円(税抜き)で売る場合を例とします。
消費税率を10%とすると、仕入れの段階で税込み88円を支払いますので、事業者の支払い消費税は8円です。
顧客には税込み110円で売りますので、事業者の預かり消費税は10円となります。

事業者は預かり消費税と支払い消費税の差額を納税しますので、2円(=10円-8円)を国に納めているということです。

この2円は「売値の100円から仕入れ値の80円を差し引いた20円の利益に対して10%の税金が課税されている」という見方もできます。

20円の利益というのは、事業者が小売りというサービスによって生み出した付加価値です。
付加価値に対して税金が課税されていることになるため、付加価値税ということになります。

日本には付加価値税という税金はありませんが、消費税は実質的に付加価値税と同じ仕組みであるため、消費税は付加価値税の一つとも考えられているのです。

土地売却で消費税が課される費用の種類

不動産の売買では、消費税は土地が非課税、建物が原則として課税となります。
土地が非課税である理由は、消費税が付加価値税の考え方に基づいているからです。

土地は元々地球上に存在するものであるため、人がサービス等によって生み出したものではありません。

土地の取引は、単に地球上にあるものを右から左に流すだけであり、付加価値を生んでいないと解されることから税の性格上、課税対象にはなじまないと考えられています。
そのため土地の取引は、法人や個人に関わらず、売主が誰であろうと消費税は非課税です。

一方で、建物は人が生み出したものであり、付加価値が存在します。
建物の取引は、付加価値が存在するものを取引することから、建物は原則として消費税の課税対象です。

不動産の消費税の非課税対象と課税対象の取引をまとめると、下表のようになります。

非課税対象課税対象
・土地の売買
・庭石や庭木を宅地と一緒に売買する場合
・土地の貸付
・住宅の貸付
・個人が売るマイホームの建物
・建物の売買
・住宅以外の建物の貸付
・グランドやテニスコートなど施設の利用またはサービスの提供をともなう土地の貸付
・駐車場としての用途に応じて、地面の整備、フェンス、区画、建物の設備等を行っている場合

消費税の課税と納税

消費税に関しては、課税と納税で別の議論があります。
納税に関しては、課税事業者と免税事業者の2つの分類が存在します。
事業者とは法人のことではなく、法人と個人に関わらず要件を満たせば個人も事業者です。

課税事業者とは、基準期間における課税売上高が1,000万円を超える事業者のことを指します。
免税事業者とは、課税事業者に該当しない事業者のことです。
基準期間とは、個人事業主なら前々年、法人なら原則前々事業年度になります。

消費税は、課税事業者は納税しなければなりませんが、免税事業者は納税しなくても良いことになっています。

そのため、消費税が発生する取引を行っても、事業者が免税事業者であれば消費税の納税は不要です。

例えば、個人が数台の駐車場を貸しているケースがあります。
駐車場の貸し出しは課税対象なので、駐車場使用料には消費税が発生します。
ただし、数台の駐車場であれば、貸主が免税事業者となっていることも多いです。
免税事業者であれば、納税義務はないため、駐車場使用者から預かった消費税を納税しなくても良いことになります。

では、駐車場使用者が消費税だと思って支払った10%分の料金はどうなるかというと、単純に免税事業者の利益になっているということです。
このような免税事業者による利益は「益税」と呼ばれます。

消費税には課税と納税で別の制度があるため、課税されるからといって必ずしも納税まで必要とは限らない点が特徴となります。

土地売却で消費税の課税対象となる費用

土地売却で消費税の課税対象となる費用

土地の売却では、土地そのものに対する消費税は非課税です。
一方で、土地の売却に伴って発生するサービスの対価に関しては、原則通り消費税は課税対象となります。
この章では、土地売却で消費税の課税対象となる費用について解説します。

仲介手数料

仲介手数料とは、不動産会社の仲介を通じて土地を売却した場合において不動産会社に対して支払う報酬のことです。
仲介手数料は、不動産会社による仲介サービスの対価であるため、消費税が発生します。

仲介手数料は不動産会社が受領できる上限額が決まっており、上限額の計算方法は下表の通りです。

取引額仲介手数料(別途消費税)
200万円以下取引額 × 5%
200万円超から400万円以下取引額 × 4% + 2万円
400万円超取引額 × 3% + 6万円

※なお、令和6年7月1日の媒介報酬規制の見直しにより、物件価格が800万円以下の宅地建物についてはこの限りではありません。

上記の計算式の中で「取引額」は、消費税を除いた金額のことです。
土地の取引の場合は、土地は非課税であるため、土地の売却価格がそのまま取引額になります。
建物も売却する場合には、建物消費税を除いた売却価格が取引額です。
売買金額を税込で決定した場合には、税抜き価格を計算した上で仲介手数料を計算する必要があります。

繰り上げ返済手数料

ローンが残っている不動産を売却する場合、売却と同時に残債を一括返済します。
銀行にもよりますが、残債を一括返済する場合には繰り上げ返済手数料が発生することが一般的です。

繰り上げ返済手数料は、銀行に対して支払うサービス料であるため、消費税の課税対象となります。

司法書士手数料

ローンが残っている不動産を売却する場合、売却と同時に抵当権を抹消する必要があります。
抵当権とは、債権者(主に銀行のこと)が担保物件から優先的に弁済を受けることのできる権利のことです。

抵当権は登記簿謄本上に記載があることから、ローンを完済したら同時に登記簿謄本から抵当権の記載を抹消する必要があります。
抵当権の抹消の登記手続きは、司法書士に依頼することが多いです。

抵当権抹消の手続きを司法書士に依頼する際に発生する司法書士手数料は、サービス料であるため消費税の課税対象となります。

土地家屋調査士手数料

土地を売却するにあたり、測量等を行うことで測量費や土地家屋調査士手数料が生じる場合があります。
測量費や土地家屋調査士手数料は、測量会社や土地家屋調査士に支払うサービス料であるため、消費税の課税対象となります。

事業者による建物の売却

建物の売却は、原則として消費税の課税対象です。
事業者とは個人または法人に限らないため、個人が売主であっても原則として建物は消費税の課税対象となります。

例えば、アパート経営を行っている個人がアパートを売る場合、建物は消費税の課税対象となります。

ただし、消費税には課税と納税で別の制度があります。
アパートの売主が免税事業者であれば、アパートを売った場合に建物に消費税は課税されても納税は不要となります。

また、個人が売主の場合、事業者というのは「事業的規模」の事業者とは関係がありません。
事業的規模とは、一定規模以上(アパートなら10室以上)の不動産の貸付を行っている税務上の分類のことです。

消費税の事業者と賃貸経営の事業的規模は別の制度であるため、戸数の少ないアパートを売ったとしても、建物には消費税が原則通り課税されることになります。

事業者による地下にある車庫の売却

地下に駐車場施設がある場合は、土地は非課税ですが、駐車場施設に対して消費税が課税されます。

土地と地下施設を一体として取引する場合には、土地価格と施設価格の内訳を分けることが必要です。

土地売却で消費税の課税対象にならない項目

土地売却で消費税の課税対象にならない項目

この章では、土地売却で消費税の課税対象にならない項目について解説します。

印紙税

税金そのものに税金はかかりません。
そのため、売買契約書に貼り付ける印紙代(印紙税)に関しては、消費税は非課税となります。

登録免許税

ローンが残っている不動産を売却する場合、売却と同時に抵当権を抹消することが必要です。
登記簿上の抵当権の記載を抹消するには、抵当権抹消の登録免許税が発生します。

登録免許税も税金であることから、消費税は非課税です。

個人によるマイホームの建物の売却

建物は原則として消費税が課税されますが、例外的に個人によるマイホームの建物を売却する場合には、建物の消費税は非課税になります。
理由としては、個人がマイホームを売ることは事業を目的としたものではないからです。

そのため、例えば個人が戸建てを売却する場合は、土地にも建物にも消費税が課税されないことになります。

ライターからのワンポイントアドバイス

ライターからのワンポイントアドバイス 土地,売却,消費税

不動産の売買に関する消費税に関しては、まず土地の取引は消費税が非課税になるという例外を抑えることがポイントです。その他は、原則通り消費税が課税されますので、仲介手数料や司法書士手数料等には消費税が発生します。建物に関しても、原則通り基本的には消費税の課税対象です。

ただし、例外的に個人が売るマイホームの建物だけは消費税が非課税となっています。一見すると複雑ですが、基本的には土地と個人が売るマイホームの建物が消費税は非課税ということです。不明点があれば税理士に相談することをおすすめします。

この記事のポイント

土地売却で消費税の課税対象となる費用とは?

土地売却で消費税の課税対象となる費用としては、仲介手数料、繰り上げ返済手数料、司法書士手数料、土地家屋調査士手数料、事業者による建物の売却、事業者による地下にある車庫の売却が挙げられます。

詳しくは「土地売却で消費税の課税対象となる費用」をご覧ください。

土地売却で消費税の課税対象にならない項目とは?

土地売却で消費税の課税対象にならない項目には印紙税、登録免許税、個人によるマイホームの建物の売却があります。

詳しくは「土地売却で消費税の課税対象にならない項目」をご覧ください。

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