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マンション相続後の売却の流れとは?必要な手続きや費用・税金を解説

執筆者プロフィール

桜木 理恵
資格情報: Webライター、宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、管理業務主任者

大学在学中に宅地建物取引士に合格。新卒で大手不動産会社に入社し、売買仲介営業担当として約8年勤務。結婚・出産を機に大手ハウスメーカーのリフォームアドバイザーに転身し約5年勤務。その他信託銀行にて不動産事務として勤務経験あり。現在は不動産の知識と経験を活かし、フリーランスのWebライターとして活動。不動産や建築にまつわる記事を多数執筆。「宅地建物取引士」「2級ファイナンシャル・プランニング技能士」「管理業務主任者」所持。

ざっくり要約!

  • 相続したマンションを売却する際には遺産分割協議→相続登記→相続税の申告・納付といった手続きが必要
  • 相続したマンションの売却時に特例が活用できるケースがある

マンションを相続したら、何から始めたらよいのでしょうか。
相続登記や相続税の納税をせずに放置してしまうと、過料や延滞税が課せられる可能性があるため注意が必要です。

今回は、マンションを相続してから売却するまでの流れや、必要な手続きについて解説します。また相続してから売却するまでの間に発生する税金や活用できる税金の特例、相続したマンションを売却する際に注意すべきポイントを紹介します。

マンション相続から売却までの流れや必要な手続き

マンション相続から売却までの流れや必要な手続き

相続したマンションを売却する場合、さまざまな手続きが必要になります。ここでは、おもな流れと手続きを、3つのステップで解説します。

  1. 遺産分割協議をおこなう
  2. 相続登記する
  3. 相続税の申告・納付する

1.遺産分割協議をおこなう

まず、個人の遺言書があるのか確認しましょう。

遺言書があれば、基本的にはその内容にしたがって相続の手続きを進めることになります。遺言書がない場合は、法定相続分(相続割合)を基準にして遺産を分割するのが一般的です。

ただし法定相続分は相続人全員の同意が得られなかったときの基準であり、かならずしも法定相続分で分割する必要はありません。

また遺言書があったとしても、相続人全員の同意があれば、遺言書と異なる遺産分割をすることも可能です。

故人の財産である不動産は法定相続人の共有財産になるため、誰かが単独で売却することはできません。法定相続人で遺産分割協議をおこない、相続登記をしてから売却する必要があります。

法定相続人とは、被相続人の財産を相続できる人のことで、民法によって定められています。被相続人の配偶者は常に相続人となりますが、相続分はその他の相続人の順位に応じて変動します。

第1順位の者がいなければ、第2順位の者が配偶者とともに相続人になり、第2順位の者がいなければ、第3順位の者が配偶者とともに相続人になります。

法定相続人配偶者の法定相続分配偶者以外の法定相続分
配偶者・子ども1/21/2(子どもで均等に分割)
配偶者・父母(直系尊属)2/31/3(直系尊属で均等に分割)
配偶者・兄弟3/41/4(兄弟で均等に分割)

第1順位:被相続人の子ども(子どもが死亡している場合は、その子供)
第2順位:被相続人の父母(父母が死亡しているときは祖父母)
第3順位:被相続人の兄弟

たとえば配偶者と子どもが2人の家族の場合、配偶者は1/2、子どもはそれぞれ1/4が法定相続分です。

遺産分割する場合は、「現物分割」「代償分割」「換価分割」のいずれかの方法を採用することになります。

マンションは売却して現金化したのち、法定相続分などの割合に応じて分割するケースが多いです。

現物分割

現物分割とは、相続財産を現物のまま遺産分割する方法です。たとえば配偶者がマンションを相続し、長男は別荘、長女は株式を受け継ぐような方法です。ちなみにマンションを持分で相続する場合も、現物分割になります。

不動産を売却する必要がないため比較的シンプルな分割方法ともいえますが、均等に分割できないと、不公平感からトラブルに発展することもあります。

代償分割

代償分割とは、相続人の1人が相続し、他の相続人へ法定相続分に応じた現金を代償として支払う方法です。たとえば配偶者が評価3,000万円のマンションを相続するのであれば、2人の子どもへ750万円ずつ支払うことで分割します。

不動産を共有名義にしないで済むため、将来のトラブルを回避できる方法ともいえます。しかし遺産の評価額が適正なのか判断が難しく、また多額の現金を用意しなければならず、代償分割が難しいケースも多いかもしれません。

換価分割

遺産である不動産などを売却し、現金化してから法定相続人で分割する方法です。たとえばマンションに住む人がいない場合などは、換価分割が向いているでしょう。

また実際に売却して手元に残った資産を分割できるため、法定相続人の全員が納得しやすいのがメリットです。

出典:相続人の範囲と法定相続分|国税庁

2.相続登記する

遺産分割協議によりマンションを相続することが決まったら、次は相続登記をします。
相続登記とは、不動産の登記簿上の所有者を故人から相続人に変更する登記のことです。

故人が所有者のままではマンションを売却できないため、なるべく早く相続登記の手続きを始めましょう。

ちなみに2024年4月1日から、相続登記が義務化されました。所有権を知ったとき、もしくは遺産分割協議が成立したときから3年以内に相続登記をしなければなりません。

正当な理由がなく相続登記を怠ると、10万円以下の過料が課せられる可能性があるので注意しましょう。

相続登記は個人でもできますが、法定相続人の特定や戸籍の証明書の取得、遺産分割協議書の作成などをする必要があります。難しい場合は司法書士へ依頼しましょう。

出典:登記申請手続きのご案内(相続登記①遺産分割協議編)|法務省民事局

3.相続税の申告・納付する

相続財産が基礎控除額を超える場合は、相続税が発生します。相続の開始があったことを知った日(被相続人が亡くなった日)の翌日から10ヵ月以内に、税務署に相続税について申告し、納税することになります。

基礎控除額は、以下の計算式で求めます。

遺産に係る基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人の人数)

たとえば配偶者と子どもが2人の場合は、基礎控除額は4,800万円となります。つまり相続財産が4,800万円以下であれば相続税は発生せず、相続税について申告は不要です。

ちなみに配偶者については、「配偶者の税額の軽減」という特例があります。

1憶6,000万円まで、もしくは配偶者の法定相続分の相当額までは相続税がかかりません。なお、この制度を利用する場合は、税務署へ相続税について申告する必要があります。

また未成年が相続人になる場合は「未成年者の税額控除」を利用でき、一定の条件を満たす場合は、未成年者が18歳になるまでの年数1年につき10万円が控除できます。

相続税が発生する場合は利用できる軽減措置や控除がないか確認し、必要に応じて税務署や自治体の税務相談会、不動産会社の担当者などに相談してみましょう。

出典:相続税のあらまし|税務署
配偶者の税額軽減|国税庁
未成年者の税額控除|国税庁

4.不動産会社に仲介と買取のどちらを頼むか決める

相続したマンションを売却する場合、不動産会社に依頼して買主を探してもらう「仲介」と、不動産会社に直接買い取ってもらう「買取」の2つの方法があります。

それぞれにメリット・デメリットがあるため、よく検討したうえで売却方法を決定しましょう。


仲介買取
メリット・相場価格で売却できる可能性が高い
・売却価格について納得しやすい
・現金化までが早く、手間がかからない
・仲介手数料がかからない
デメリット  ・売却までに時間がかかる可能性がある
・仲介手数料がかかる
・仲介よりも安くなる可能性が高い
・買取価格が適正なのか、相場価格を自分で調べる必要がある

仲介による売却は、一般の市場で売却するため、相場価格で売却できる可能性が高いのがメリットです。

また希望する価格で売り出すことができるため、結果的に値下げすることになったとしても、売却価格について納得しやすいでしょう。

しかし売却までに時間がかかる可能性があり、一般的には3ヵ月程度といわれていますが、タイミングや条件によっては長引くこともあります。また不動産会社へ仲介手数料を支払う必要があります。

買取による売却は、早ければ1週間程度で売買契約を締結できる可能性があり、現金化まで早いのがメリットです。

不動産会社が直接買い取る場合は、仲介手数料がかかりません。さらに内覧対応も不要なため、売却までに手間がかからないのが特徴です。

ただし買取の場合は、不動産会社は再販することを目的として買い取るため、相場価格よりも安くなることが多いです。納得できるか価格なのか判断するためにも、相場価格を把握しておくとよいでしょう。

5.不動産会社に査定を依頼する

マンションの売却価格を設定するために、不動産会社へ査定を依頼します。

仲介・買取にかかわらず、適正な価格であるのか判断するためにも、自分でも周辺で売り出されているマンションの価格や成約事例を調べておくとよいでしょう。

また不動産会社によって査定価格や買取価格は異なるため、少なくとも2~3社には査定依頼することをおすすめします。

仲介による売却の場合「査定額=売却予想価格」であり、査定額をもとに売り出し価格を決めるのは、売主である自分です。マンション売却の実績が豊富で、信頼できると感じた不動産会社へ依頼しましょう。

買取による売却の場合、不動産会社が提示するのは「買取価格」です。複数社に相談し、1番高いところへ買取を依頼しましょう。

6.不動産会社と契約を締結する

不動産会社へ仲介を依頼する場合は、媒介契約を締結します。

媒介契約は3種類あり、複数の不動産会社へ依頼する場合は「一般媒介契約」、不動産会社を1社に絞る場合は「専任媒介契約」もしくは「専属専任媒介契約」になります。

友人や親戚が購入する可能性があれば、自己発見取引ができる「専任媒介契約」を選んでおきましょう。

買取によって売却する場合は、不動産会社と直接取引するため媒介契約は不要です。売却価格や引き渡し条件に納得できれば、売買契約を締結し、残代金決済後にマンションを引き渡します。

7.仲介の場合は買い手が見つかったら売買契約締結・物件引き渡し

仲介の場合は、媒介契約締結後に不動産会社は売却活動をおこないます。マンションの引渡し時までに残置物を片付ける必要があるため、不要物はなるべく早めに処分しておきましょう。

買い手が見つかり、価格や引き渡し条件に折り合いがついたら、不動産会社のサポートのもとで売買契約を締結し、一定後に残代金決済・引き渡しをおこないます。

8.換価分割は利益を相続人で分割

換価分割の場合は、マンションの代金から売却にかかった税金や手数料(報酬)などを差し引いてから、遺産分割協議で決めた相続分の割合で分割します。

マンションの売却については代表者を決めておき、不動産会社とのやり取りは代表者がおこなうようにするとスムーズです。

ただし譲渡所得税が発生する場合は、相続人がそれぞれ確定申告をする必要があります。各自が忘れないように注意しましょう。

マンション相続から売却までの流れで発生する税金や費用

マンション相続から売却までの流れで発生する税金や費用

マンションを相続し、売却するまでに税金や費用が発生します。相続財産を売却する場合は、どの程度かかるのか試算しておきましょう。

登録免許税

相続登記時にかかる税金です。

・登録免許税=不動産の固定資産税評価額×0.4%

印紙税

不動産売買契約書に貼る印紙代です。売買価格に応じて税額が異なります。

譲渡所得税

不動産を売却して、利益が発生したときにかかる税金です。

・譲渡所得税={売却価格-(取得費+譲渡費用)-特別控除}×税率

所有期間(長期または短期)に応じて税率が異なります。

・長期譲渡所得(被相続人の所有期間5年超):39.63%(所得税・住民税)
・短期譲渡所得(被相続人の所有期間5年以下):20.315%(所得税・住民税)

仲介手数料(不動産会社へ売却を依頼する場合)

成功報酬として不動産会社へ支払う手数料です。
売却価格が400万円超の場合は「売却価格×3%+6万円+消費税」が上限額となります。

司法書士への報酬(相続登記を依頼する場合)

司法書士へ相続登記を依頼する場合の報酬で、10万円前後が目安です。

戸籍等の取得費

相続登記には戸籍や住民票、印鑑証明書などが必要になり、実費としてかかります。
数千円程度かかることを想定しておきましょう。

参照:不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置|国税庁
譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)|国税庁
長期譲渡所得の税額の計算|国税庁
短期譲渡所得の税額の計算|国税庁

相続したマンションの売却で活用可能な特例

相続したマンションの売却で活用可能な特例

相続したマンションの売却で、活用できる代表的な3つの特例を紹介します。
なお特例を適用するためには、一定の書類を添えて確定申告する必要があります。

相続財産の取得費加算の特例

相続税の申告期限の翌日から3年以内に売却することで、課税譲渡所得額を計算する際に、相続税の一定額を取得費として加算できます。

相続空き家の3,000万円特別控除の特例

被相続人の居住用財産を2027年12月31日までに売却し、一定の条件を満たす場合は、課税譲渡所得から3,000万円まで控除できます。

小規模宅地等の特例

被相続人の居住用財産(もしくは事業用)について、土地の評価を一定割合まで減額して相続税を算出できる特例です。たとえば居住用のマンションであれば、330㎡までを80%に減額できます。

出典:相続財産を譲渡した場合の取得費の特例|国税庁
相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)|国税庁
被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例|国税庁

相続したマンションを売却するにあたっての注意点

相続したマンションを売却するにあたっての注意点

相続したマンションを売却する際は、いくつか注意点があります。ここでは、特に注意すべきポイントを紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

空き家のまま放置しない

マンションを相続したら、空き家のまま放置しないようにしましょう。住んでいなくても、固定資産税や管理費、修繕積立金がかかります。

売却するのであれば、なるべく早く行動に移しましょう。

不動産会社は複数に頼み信頼できるところを選ぶ

マンションの査定は複数社に依頼するようにし、査定額の高さだけでなく、信頼できると感じたところへ売却を依頼しましょう。

マンションを高く、かつスムーズに売却できるかどうかは、担当者のスキルや経験によって大きな差が出ることがあるため、担当者を見極めることが大切です。

とくに相続の場合は、自分自身がマンションの長所や相場を把握していない可能性もあるため、不動産会社は慎重に選ぶようにしてください。

・「実家のマンションを売却するタイミング」に関する記事はこちら
実家を売却するタイミングは相続後?相続前? 税金や売却の流れを解説

この記事のポイント

マンション相続から売却までの流れで発生する税金や費用は?

マンションを相続して売却するまでには、下記をはじめとしたさまざまな税金や費用が発生するケースがあります。

  • 登録免許税(相続登記時にかかる税金)
  • 印紙税(不動産売買契約書に貼る印紙代で売買価格に応じて税額が異なる)
  • 譲渡所得税(不動産を売却して、利益が発生したときにかかる税金)

詳しくは「マンション相続から売却までの流れで発生する税金や費用」をご覧ください。

相続したマンションを売却する際の注意点は?

マンションを相続したら、空き家のまま放置しないようにしましょう。住んでいなくても、固定資産税や管理費、修繕積立金がかかります。
またマンションは時間が経てば、その分資産価値が下がります。売却するのであれば、なるべく早く行動に移しましょう。
なお、マンションの査定は複数社に依頼するようにし、査定額の高さだけでなく、信頼できると感じたところへ売却を依頼してください。

詳しくは「相続したマンションを売却するにあたっての注意点」をご覧ください。

ライターからのワンポイントアドバイス

相続が発生したら、10カ月以内に相続税について申告する必要があり、3年以内には相続登記をしなければなりません。なるべく早く遺産分割協議をし、売却するのであれば、資産価値が高いうちに売却しましょう。マンションを売却する前に相続登記は必要ですが、相続登記が終わっていなくても、不動産会社に査定依頼や相談することは可能です。
不動産会社によっては、相続が発生する前から相談できることがあります。相続について不安や不明なことがあれば、相続についてサポート体制が整った不動産会社に相談してみましょう。
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