マンション相続税,かからない
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マンション相続税はかからないケースが多い!控除や計算方法を解説

執筆者プロフィール

竹内 英二
不動産鑑定士

不動産鑑定事務所および宅地建物取引業者である(株)グロープロフィットの代表取締役。不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、住宅ローンアドバイザー、中小企業診断士の資格を保有。

ざっくり要約!

  • マンションに限らず、相続が発生しても相続税はかからないケースが多い
  • 相続税は、被相続人(死亡した人)の財産が基礎控除額以下であれば発生しない

相続税は、一部の資産家のみにかかる税金です。
相続が発生しても全員に課税されるわけではないため、マンションを相続しても相続税がかからないことはよくあります。

また、相続税はマンション単体で計算されるものではありません。
被相続人(死亡した人)が残した全ての財産を元に計算されるため、マンション以外の他の財産や借金も考慮する必要があります。

この記事では「マンションの相続税はかからない」をテーマに解説していきます。

マンション相続税がかからないケース

マンション相続税がかからないケース

マンションに限らず、相続が発生しても相続税はかからないケースが多いです。

国税庁によると、2022年の死亡者数は1,569,050人であり、そのうち相続税の申告を行った人は150,858人となっています。

相続税の申告は死亡者全体のうち約9.6%の人しか行っておらず、国税庁の調査による申告漏れも7036件で死亡者全体のうち0.4%です。このことから日本の約9割の人は相続税の申告の必要のない人、つまり相続税がかからない人であるといえます。

相続税は1割弱の人しかかからない税金であるため、まずはなぜ相続税はほとんどの人にかからないのかという理由を理解する必要があります。

ここでは、マンション相続税がかからないケースについて解説します。

出典:令和4年分相続税の申告事績の概要|国税庁
令和4事務年度における相続税の調査等の状況|国税庁

基礎控除以下

相続税は、被相続人(死亡した人)の財産が基礎控除額以下であれば発生しません。

相続税の対象となる被相続人の財産とは、マンションだけでなく、土地や建物、株式・公社債等の有価証券、現金の他、金銭に見積もることができる全財産です。

また、借金や葬式費用、墓地や墓石等の非課税財産は財産の額から控除されます。

マンション等のプラスの財産から借金等のマイナスの財産を控除し、所定の手続きによって求めた被相続人の財産を正味遺産額と呼びます。

相続税は、正味遺産額から基礎控除額を差し引いた課税遺産総額を元に計算される税金です。

課税遺産総額 = 正味遺産額 ― 基礎控除額

基礎控除額は以下の計算式で求めます。

基礎控除額 = 3,000万円 + (600万円 × 法定相続人の数)

例えば、相続人が配偶者と子2人であれば、法定相続人の数は3人です。
法定相続人が3人の場合、基礎控除額は4,800万円(=3,000万円+(600万円×3))となります。

課税遺産総額が基礎控除額を超えていない場合には、相続税の申告は不要です。

統計上、約9割の人は課税遺産総額が基礎控除額を超えておらず、申告が不要で相続税もかからない状態となっています。

特例を適用して課税額以下

仮に課税遺産総額が基礎控除額を超えていたとしても、特例を適用することで相続税がなくなるケースもあります。
この章では、主な特例について解説します。

配偶者控除

配偶者控除とは、以下の金額のいずれか多い金額までは配偶者に相続税がかからないという制度です。

  • 1億6千万円
  • 配偶者の法定相続分相当額

配偶者の法定相続分は、下表の通りです。

相続人 法定相続分
子がいる場合 配偶者 1/2
1/2(人数分に分ける)
子がいない場合 配偶者 2/3
父母 1/3(人数分に分ける)
子も父母もいない場合1 配偶者 3/4
兄弟姉妹 1/4(人数分に分ける)

小規模宅地などの特例

小規模宅地等の特例とは、相続財産のうち、一定の要件を満たす土地について限度面積までの部分について80%または50%減額するという制度になります。

一定の要件を満たすマイホームの場合、土地の評価額の減額割合は80%です。

マンション相続税を計算する方法

マンション相続税を計算する方法

マンションの相続税はマンションだけで計算されるものではありませんが、課税遺産総額を計算するためにマンションの相続税評価額の求め方を知ることが必要です。

ここでは、マンションの相続税評価額の求め方と税率について解説します。

マンションの相続税評価額の調べ方

マンションの評価額は、土地と建物をそれぞれ分けて計算します。
ここでは、それぞれの計算方法について解説します。

土地

土地の相続税評価額の求め方には、評価方法は路線価方式と倍率方式の2種類があります。
路線価が定められている地域では路線価方式を採用し、路線価が定められていない地域では倍率方式を採用します。

マンションが建つような地域は路線価が定められていることが多いため、路線価方式が用いられることが一般的です。

路線価方式で土地の評価額を求めるには、全体敷地の評価額に敷地権割合を乗じて計算します。

敷地権割合とは、マンションの登記簿謄本に記載されている割合のことです。

路線価方式で土地の相続税評価額の概算額を求める計算式は、以下のようになります。

マンション全体の敷地の相続税評価額 = マンション敷地全体の土地面積 × 前面道路の相続税路線価

敷地権の相続税評価額の概算額 = マンション全体の敷地の相続税評価額 × 敷地権割合

上記の方法で求める評価額は、あくまでも概算額です。
実際に使用する相続税評価額は、土地の個性に応じて奥行価格補正や側方路線影響加算等の補正が行われ、概算額が修正されます。

なお、路線価が定められていない地域では倍率方式を用います。
倍率方式とは、土地の固定資産税評価額に倍率を乗じることで土地の相続税評価額を求める方法です。

倍率は、国税庁のホームページ内の「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」で確認できる倍率表に記載されている数値を用います。

宅地の倍率は、1.1や1.0であることが多いです。

倍率方式で土地の相続税評価額の概算額を求める計算式は、以下のようになります。

マンション全体の敷地の相続税評価額 = マンション敷地全体の土地の固定資産税評価額 × 倍率

敷地権の相続税評価額の概算額 = マンション全体の敷地の相続税評価額 × 敷地権割合

建物

建物の相続税評価額は、固定資産税評価額がそのまま相続税評価額です。
建物の固定資産税評価額は、マンションの固定資産税納税通知書に記載されています。

税率

相続税は、いったん各法定相続人が法定相続分で取得したものとして相続税総額を計算し、その後、実際に取得した財産の割合で案分して各人の税金を求めます。

法定相続人と法定相続分の関係は、下表の通りです。

法定相続人法定相続分
配偶者と子どもの場合配偶者1/2、子ども1/2
配偶者と直系尊属配偶者2/3、直系尊属1/3
配偶者と兄弟姉妹の場合配偶者3/4、兄弟姉妹1/4

法定相続分に応ずる取得金額と税率の関係は、下表の通りです。

法定相続分に応ずる取得金額税率控除額
1,000万円以下10%
3,000万円以下15%50万円
5,000万円以下20%200万円
1億円以下30%700万円
2億円以下40%1,700万円
3億円以下45%2,700万円
6億円以下50%4,200万円
6億円超55%7,200万円

例えば、法定相続人が配偶者と子2人、正味遺産額が1億円のケースを考えます。
法定相続人が3人の場合、基礎控除額は4,800万円ですので、課税遺産総額は以下の通りです。

課税遺産総額 = 正味遺産額 ― 基礎控除額
       = 1億円 - 4,800万円
       = 5,200万円

法定相続人が配偶者と子2の場合、法定相続分は配偶者が50%、子Aが25%、子Bが25%です。

そのため、相続税の基礎となる税額は下表のようになります。

相続人 取得金額 計算式 税額
配偶者(50%) 2,600万円 2,600万円×15%-50万円 340万円
子A(25%) 1,300万円 1,300万円×15%-50万円 145万円
子B(25%) 1,300万円 1,300万円×15%-50万円 145万円
   相続税の総額 630万円

上表では法定相続分に応ずる取得金額はいずれも3,000万円以下ですので、税率は15%、控除額は50万円と用いて計算されます。

最終的な各人の相続税は、最後に財産を取得した人の課税価格に相続税の総額を案分して税額を計算します。

マンション相続税が払えないときはどうする?

マンション相続税が払えないとき

相続税が高く、払うのが難しいケースもあります。
この章では、相続税が支払うことができない場合の対処法を紹介します。

専門家に相談する

相続税が発生する可能性のある人は、まずは専門家である税理士に相談することが適切です。

相続税の計算は複雑ですので、まずは税理士に税額をきちんと計算してもらう必要があります。

特に不動産の相続税評価額は求める際に奥行価格補正等の補正を行うため、一般の方が正確な税額を求めることは極めて困難です。

また、特例の中でも小規模宅地等の特例は要件が複雑であり、適用できるか否かは判断が難しい部分もあります。

自分が考えているよりも相続税が増える、もしくは減る可能性もありますので、一度専門家に見てもらうことをおすすめします。

売却する

相続税は現金納付が原則です。
相続税が払えない場合は、納期限までに不動産を売却して現金を作って納税することが基本的な対策となります。

相続税の納期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内です。

相続税の納税方法には次節で示す延納や物納もありますが、延納や物納は要件が厳しく選択しにくいことから、まずは不要な不動産を急いで売ることが現実的な対策となります。

延納する

延納とは、相続税を分割払いして納税していく方法のことです。

延納を行うには、以下の要件を満たす必要があります。

【延納ができる要件】

  • 相続税額が10万円を超えること。
  • 金銭で納付することを困難とする事由があり、かつ、その納付を困難とする金額の範囲内であること。
  • 延納税額および利子税の額に相当する担保を提供すること。
  • 延納申請に係る相続税の納期限または納付すべき日までに、延納申請書に担保提供関係書類を添付して税務署長に提出すること。

延納は、延納する相続税額に対して利子税がかかることが注意点です。

物納する

物納とは、金銭以外の財産で相続税を納税する方法のことです。

物納を行うには、以下の要件を満たす必要があります。

【物納ができる要件】

  • 延納によっても金銭で納付することを困難とする事由があり、かつ、その納付を困難とする金額を限度としていること。
  • 物納申請財産が定められた種類の財産で申請順位によっていること。
  • 申請書および物納手続関係書類を期限までに提出すること。
  • 物納申請財産が物納適格財産であること。

この記事のポイント

マンションの相続税がかからないケースは珍しくない?

マンションに限らず、相続が発生しても相続税はかからないケースが多いです。国税庁によると、2022年の死亡者数は1,569,050人であり、そのうち相続税の申告を行った人は150,858人となっています。
相続税の申告は死亡者全体のうち約9.6%の人しか行っておらず申告漏れも0.4%のため、日本の約9割の人は相続税の申告の必要のない人、つまり相続税がかからない人であるといえます。

詳しくは「マンション相続税がかからないケース」をご覧ください。

マンションの相続税が発生しそうな場合はどうしたらいい?

相続税が発生する可能性のある人は、まずは専門家である税理士に相談することが適切です。相続税の計算は複雑ですので、まずは税理士に税額をきちんと計算してもらう必要があります。
特に不動産の相続税評価額は求める際に奥行価格補正等の補正を行うため、一般の方が正確な税額を求めることは極めて困難です。

詳しくは「マンション相続税が払えないときはどうする?」をご覧ください。

ライターからのワンポイントアドバイス

相続税の課税対象者は全国的には10人に1人しかいませんが、土地価格の高い東京都では6~7人に1人の割合で存在します。そのため、東京都では元サラリーマンで多額の退職金を受け取っており、マンションを持っている場合は相続税が発生する可能性があります。
相続税が払えず、他に売れる不動産がない場合、マンションを売る必要性が生じます。相続税は、相続の開始を知った日の翌日から10ヶ月以内に納税することが必要です。マンションの売却には一定の時間がかかるため、相続が発生したらすぐに売却活動に取り組むことをおすすめします。

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