ざっくり要約!
- 購入した金額(減価償却額を考慮後)よりも売却金額が大きく利益が出た、もしくは売却によって利益(譲渡所得)が出た場合、確定申告が必要
- e-taxは確定申告書の提出や納税をオンラインで行うためのシステム
確定申告を行うにはe-taxが便利です。特にマンションを売却した際の確定申告は入力内容も多く、手書きの確定申告書では漏れや計算間違いが発生する恐れがあります。
今回はそんなマンションを売却した際の確定申告を楽にしてくれるe-taxでの確定申告方法について説明します。
記事サマリー
マンション売却後にe-taxで確定申告するための基礎知識

マンションを売却した後、その状況によっては確定申告を行う必要があります。
特に購入した金額よりも売却金額が大きく利益が出た場合や、さまざまな不動産売却時の課税の特例の適用を受ける場合には、確定申告において適切に手続きを行うことが重要です。
こうしたマンション売却の確定申告を確実に、かつ効率的に行うには、e-taxの活用がおすすめです。ここでは、e-taxを利用するための基本的な知識を解説します。
確定申告が必要なケース・不要なケース
マンション売却後、確定申告が必要かどうかは状況によって異なります。
確定申告が必要な場合
購入した金額(減価償却額を考慮後)よりも売却金額が大きく利益が出た、もしくは売却によって利益(譲渡所得)が出た場合、所得税を納めなければならないため、確定申告を行う必要があります。
具体的には以下の数式で譲渡所得を計算します。
譲渡所得=譲渡価額−(取得費+譲渡費用)
取得費には購入金額のほか、主に以下の金額を含みます。
- 購入時の仲介手数料
- 購入時に支払った登録免許税や司法書士への登記費用
- 不動産取得税
- 購入後に行った修繕費(資産価値を高めるもののみ)
譲渡費用とは、売却時に支払った仲介手数料や契約書への印紙代、測量費用や建物解体費用などが含まれます。
また、不動産の売却時にはさまざまな特例が存在します。
例えば、住宅を売却したときの 3,000万円控除などです。ほかには相続した不動産を売却した際の特別控除などの特例が存在します。
こうした特例の適用を受けようとする場合、確定申告書を提出しなければなりません。
そのため、特例を受けた結果、譲渡所得がゼロになる場合でも、特例を適用するために確定申告が必要です。
確定申告が不要な場合
売却により損失が出た場合は、基本的に申告は不要です。
ただし、5年超所有していたマイホームを売却した場合に赤字が出て他の所得と相殺(損益通算)する場合や、赤字を翌年以降に繰り越す(繰越控除)場合には確定申告を行う必要があります。
確定申告の時期
譲渡所得に限らずですが、原則として確定申告は翌年2月16日から3月15日までの間に行います。ただし、これらの日付が土日祝であれば、翌月曜日が期日となります。
例えば2024年中にマンションを売却した場合、売却時期が1月でも12月でも、確定申告は2025年2月17日(月)〜3月17日(月)です。
確定申告には多くの書類が必要になります。特に不動産を売却した場合には、確定申告に使用する書類も多岐にわたります。
マンション売却して確定申告が必要な方については、準備できる書類から余裕を持ってまとめておきましょう。
e-taxとは
e-taxは、確定申告書の提出や納税をオンラインで行うためのシステムです。
インターネット環境があればどこでも確定申告ができるほか、スマートフォンでの申告も可能です。
パソコンやスマートフォンでインターネットにつなげる環境にあれば確定申告書が提出できるため、平日に税務署の窓口に並んだり、税務署に郵送したりする手間やコストを省くことができます。
e-tax を利用するには、e-taxソフトをインストールするか、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を利用して手続きできます。また、スマートフォンでe-taxを利用する場合は
専用のアプリ(マイナポータルアプリ)のインストールが必要です。
e-taxを利用する場合には、インターネット環境や専用のアプリ以外にも、マイナンバ-カードを読み取るためのカードリーダー(なければスマートフォンでの読み取りも可能)が必要となります。
こうした準備は紙での確定申告書に比べて面倒に感じますが、一度環境さえ整えてしまえば、紙で確定申告書を提出する場合に比べて控えが手元に残ったり、Pay-easy(ペイジー)などの電子納付ができたりと、メリットも多く存在します。
マンション売却後の確定申告で必要な不動産関連の書類

マンションを売却して確定申告を行う場合には必要書類を揃えておきましょう。
確定申告のシーズンになってから揃えるとなると、見当たらない書類があるなどして、焦ってしまうこともあるかもしれません。
マンションなど不動産の売却は他の所得とは別に独立して計算するため、年末まで書類が揃わないということもありません。
そのため、マンションの売却が完了したタイミングですぐに書類の準備を始めることをおすすめします。
マンション売却時に必要となる主な書類は以下の通りです。
・売買契約書の写し
不動産を売却した際の売買契約内容を証明する書類。売却金額、契約日、取引の相手方の情報が記載されています。
・登記事項証明書(登記簿謄本)
不動産の権利情報(所有者、抵当権など)を記載した書類です。不動産の所有者を証明する際に使用するほか、確定申告では土地の面積等を確認するためにも使用します。
・取得費や譲渡費用が分かる書類
不動産購入時の取得費用や売却時の譲渡費用を証明する領収書や明細書です。マンション購入時の売買契約書や購入時や売却時の仲介手数料の領収書などが該当します。
譲渡所得の計算時に所得から引くことができる費用を計算するために使用します。
マンション売却後にe-taxで確定申告する手順

e-taxで確定申告するには国税庁の「確定申告書作成コーナー」というサイトを利用する方法や、スマートフォンから行う方法があります。
ただし、マンション売却などの所得については入力項目が多く複雑なため、一般的には国税庁の「確定申告書作成コーナー」から、マイナンバーカードを活用して申告を進めます。
1.事前準備をおこなう
作成開始を選び、次に進む
まず、「確定申告書等作成コーナー」にアクセスします。
初めに表示される画面で「作成開始」ボタンをクリックしてください。その後、「次に進む」を選択します。
提出方法を選択
次に、申告書の提出方法を選びます。
選択肢として、「e-Tax(電子申告)」または「書面提出」があります。
e-Taxを選ぶ場合は、マイナンバーカードやICカードリーダー、またはID・パスワード方式を利用してログインする必要があります。
一方、書面提出を選ぶ場合は、最終的に印刷した申告書を税務署に郵送または持参します。
申告年度を選択し「所得税」を選ぶ
その次に、申告する年度を選択します。
例えば、2023年分の所得について申告する場合、「2023年分」を選びます。
続いて、「所得税」を選択します。
マイナポータル連携をするかどうかを選択し、次へ進む
マイナポータル連携を利用するかどうかを選択します。この連携を行うと、給与収入や控除証明書などのデータを自動的に取得でき、入力の手間を省ける利点があります。
利用する場合は、指示に従ってマイナンバーカードを用意し、必要な操作を行います。利用しない場合は「利用しない」を選択し、「次へ進む」をクリックします。
2.申告書を作成する
入力画面については細かく指示が出されますので、その指示に従って、収入金額など必要事項を順に入力していくことになります。
入力の際には上記で準備した各種書類から数字やその他の情報を確認しながら入力を進めます。
3.譲渡所得の内訳書などの作成を開始する
「土地建物等の譲渡所得(内訳書作成トップ)」画面
申告書作成の途中で表示される「土地建物等の譲渡所得(内訳書作成トップ)」画面では、該当する選択肢を選びます。
マンションを売却し、利益が発生した場合は、「マイホームを譲渡(売却)し、利益があった方」を選択します。その後、「次に進む」をクリックして、次の画面に移動します。
「土地建物等の譲渡所得」で質問に答える
次に進むと、必要書類に基づいていくつかの質問が表示されます。
ここでは、提示された質問に対して「はい」または「いいえ」で回答していきます。
特例が適用されるかどうかを確認
続いて、譲渡所得に関する特例が適用されるかどうかを確認します。
例えば、居住用財産を売却した場合の「3,000万円特別控除」や「軽減税率の特例」など、条件に該当する特例が適用される場合があります。
特例を利用することで、譲渡所得にかかる税負担を軽減することができます。
判断に迷う場合は、税理士に相談したり、税務署の確定申告相談会で相談したりして対応すればよいでしょう。
資料を確認しながら必要な項目を入力
最後に、あらかじめ準備した書類をもとに「譲渡価額」「譲渡費用」「取得費」などの項目を順番に入力していきます。
譲渡価額は不動産の売却金額、譲渡費用は仲介手数料や印紙税などが、取得費は購入時の費用や設備費用などが含まれます。
4.入力内容を確認して提出する
ひと通り入力が終わったら、かならず入力内容をダウンロードしたり印刷したりして、数字やその他の入力内容に誤りがないか最終確認しましょう。
内容に問題がなければe-taxの送信を行います。
マンション売却後の確定申告をe-taxでおこなうメリット

e-Taxを利用して確定申告を行うことには、いくつかのメリットがあります。
最大の利点は、インターネットにつながっていて、マイナンバーカードなど必要なものをそろえれば、自宅などからでも時間を選ばずに確定申告書が提出できることです。
さらに、確定申告書作成コーナーを利用すればガイドに従って入力を進めるだけで、自動的に計算が行われます。そのため、正確に数字やその他の情報を入力さえしておけば計算ミスを防ぎ、申告内容を正確に仕上げることが可能です。
特にマンションの譲渡などは特例の適用関係も複雑で、控除や所得計算に誤りが生じやすいため、確定申告書作成コーナーを利用するメリットがあります。
また、e-Taxを利用することで、所得税の還付がスピーディーになるという点も重要です。
税務署窓口で申告を行った場合や郵送で提出した場合と比較して、還付金の振り込みが約3週間早まるため、より迅速に還付を受け取ることができます。
マンション売却後の確定申告をe-taxで行う際の注意点

マンション売却に伴う確定申告を行うにはいくつかの注意点があります。確定申告時期になって慌てないように事前に確認しておきましょう。
マイナンバーカードが必要
e-taxを税務署に送信するには基本的にマイナンバーカードが必要となります。
マイナンバーカードがない場合は、税務署でIDとパスワードを発行してもらう「ID・パスワード方式」という方法もありますが、発行に手間がかかるため、e-taxで確定申告する場合は事前にマイナンバーカードを取得しておきましょう。
マイナンバーカードの取得には数か月かかるため、早めに取得しておくことが重要です。
スマホよりパソコンが適している
e-taxはスマートフォンでも操作可能ですが、マンションの売却に伴う譲渡所得の申告は入力項目が多く確定申告書作成コーナーを利用することになります。
ただし、令和7年1月以降、土地等譲渡所得については、スマートフォンでも入力しやすい画面に変更される予定です。
利用できない時間帯がある
確定申告期間中でも、システムメンテナンスにより利用できない時間帯があります。
毎年2月16日から3月15日の確定申告時期は24時間稼働していますが、それ以外の時期は8時30分以降しか稼働していなかったり、特定日にメンテナンス等で稼働していなかったりといったことがあります。事前に確認しておきましょう。
この記事のポイント
- マンション売却後の確定申告で必要な不動産関連の書類は?
マンション売却時に必要となる主な書類は、売買契約書の写し、登記事項証明書(登記簿謄本)、取得費や譲渡費用が分かる書類などです。
詳しくは「マンション売却後の確定申告で必要な不動産関連の書類」をご覧ください。
- マンション売却後の確定申告をe-taxでおこなうメリットは?
e-Taxを利用して確定申告を行うことの最大の利点は、インターネットにつながっていて、マイナンバーカードなど必要なものをそろえれば、自宅などからでも時間を選ばずに確定申告書が提出できることです。
さらに、確定申告書作成コーナーを利用すればガイドに従って入力を進めるだけで、自動的に計算が行われます。詳しくは「マンション売却後の確定申告をe-taxでおこなうメリット」をご覧ください。
ライターからのワンポイントアドバイス
確定申告は特に慣れていない人にとっては時間がかかります。特にマンションの売却は、多くの人にとっては一生に何度もあることではありません。マンションを売却した際の確定申告を自分で行おうと思っている方にとっては、早めの準備が重要です。この記事を読んで、e-Taxを使って確定申告する場合に用意が必要なものを確認して、スムーズに確定申告ができるように準備しておきましょう。

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