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住宅ローンの選び方はコレ!基礎知識・選ぶポイント・4つの手順

親世代は住宅ローンを60代には完済し、年金も安泰、老後の生活も悠々自適という方たちも少なくありませんが、これから住宅購入し、住宅ローンを組もうという方たちはどうでしょうか。「住宅ローン」との付き合い方は時代と共に変わります。人生100年時代、老後の生活が長い時代。「長生きのリスク」という言葉もあります。現代においては、老後の生活資金も視野に入れた住宅ローン選びがとても重要になります。この記事では、住宅ローンの基礎から、選び方のポイント・手順を解説します。
ぜひ、あなたに合った住宅ローンの選び方を身につけてください。

住宅ローンの選び方:基礎知識

まずは、住宅ローンを知る上で基礎となる「金利タイプ」「借入先」「返済方法」を順に解説します。

金利タイプ

住宅ローンの金利タイプは、大きく分けて「変動金利」と「全期間固定金利」の2種類ですが、その間に位置する「固定金利期間選択型」を含めると3種類になります。それぞれの特徴を解説します。

変動金利

変動金利とは、ローン返済を開始してから、6カ月ごとに金利が見直されるものをいいます。つまり、ローン契約をした後で、金利の見直しが繰り返されます。住宅ローンを変動金利で35年間借りた場合、返済開始してから最大69回も金利が変わる可能性があるということです。
 
変動金利のメリットとして、現状では固定金利と比較すると金利率が低いため、金利が変動しなかったり下がったりすれば返済総額をおさえることができます。

一方デメリットは、金利率が変動すれば返済額が変わるので、場合によっては毎月の返済額が増加し家計に影響を与える可能性があります。現状は金利が上がったとしても基本的に固定金利より低金利ですが、将来変動金利が固定金利よりも高金利になる可能性もゼロではありません。

全期間固定金利

全期間固定金利は、文字どおり返済中の金利がずっと固定されるタイプです。つまり、ローン契約時に毎月の返済額が決まり、返済が終了するまでの総支払額が事前に確定します。

全期間固定金利のメリットは、毎月の返済額が変わらないため、家計管理がしやすくライフプランも設計しやすくなります。
一方現状では、一般的に固定金利は変動金利や固定金利選択型に比べて、金利が高く設定されている点がデメリットです。

固定金利期間選択

名称に「固定金利」と書いてあるので、「固定金利」の住宅ローンと思われがちですが、「変動金利タイプ」の住宅ローンとお考えください。

例えば「3年固定金利」の住宅ローンを35年契約した場合、3年後に金利見直しが入ります。変動金利のように6カ月と短期間ではありませんが、金利の見直しが入ることに変わりありません。住宅ローン契約が開始してから一定期間、金利を固定できますが、金融機関によって「2年間」「3年間」「5年間」「7年間」「10年間」「15年間」などを用意しています。
 
変動金利のような金利上昇のリスクを減らしつつ、全期間固定金利の高い金利も避けたい場合などにメリットがあります。例えば、この先の10年間は教育費などで大きな支出が確定しているというような家庭事情などが考えられるでしょう。ただし、当初の固定期間が長くなればなるほど、全期間固定金利に近い契約となっていくことから、利率も全期間固定金利に近くなっていきます。

注意点としては、例えば35年ローンを「3年固定金利」で借りた場合、3年後に再度、残りの32年間を「変動金利」で借りるべきか、「固定金利」にすべきか、もしくは再度「一定期間の固定期間」とするのかを検討する必要があります。

借入先

住宅ローンを借りようと思ったとき、銀行以外にも選択肢があるのをご存知でしょうか。「民間ローン」「フラット35」「財形住宅融資」に分けて、それぞれ見てみましょう。

民間ローン

民間ローンには次のような金融機関があります。

  • 都市銀行(メガバンク)
  • ネット銀行
  • 地方銀行
  • 信用金庫
  • 信用組合

民間ローンの特徴としては、

  • 金利タイプの選択肢が多い
  • フラット35に比べて審査が厳しく、一方で金利が低い傾向にある
  • 団体信用生命保険の保証が充実している

などが挙げられます。

【社内融資制度】

住宅ローンを借りる先は、金融機関ばかりとは限りません。あなたが勤務する会社に福利厚生制度として、住宅購入時に融資が可能であれば、金融機関で借りるよりもお得に借りられるかも知れません。

しかし、「団体信用生命保険」が付いていないケースや、退職時に「退職金と清算」されるケースが見受けられます。そのような場合、ご遺族の生活や退職後のセカンドライフに支障をきたす可能性もありますので、ご注意ください。

【提携ローン】

提携ローンとは、金融機関と住宅ローン協定を締結している不動産会社の顧客が利用できる制度です。金融機関のHPに掲載していない金利が使えることもありますし、物件の審査をあらかじめ申請してくれたりすることから、審査の時間が早いことが特徴です。しかし、提携ローンの事務手数料が別途かかる場合もあります。提携ローンだけではなく、ご自身でもローンを探し、比較検討することが大事です。

フラット35

フラット35とは、「全期間固定金利型」の住宅ローンの商品名です。銀行や信用金庫などのほか、預金などを取り扱わないノンバンクと言われる金融機関が、住宅金融支援機構と提携して取り扱っています。

申込できる人次にあてはまる人が申込みできる。
1. 申込時の年齢が満70歳未満の人
2. 日本国籍、永住許可を受けているまたは特別永住者
また、総返済負担率(年収に占める年間合計返済額の割合)が次の基準を満たすこと
年収400万円未満……30%以下
年収400万円以上……35%以下
融資額民間の住宅ローンより融資の上限額が低い。
1. 100万円以上8,000万円以下
2. 土地取得費に対する借入れを希望する場合は、その費用を含む
3. 店舗、事務所などの非住宅部分に係る建設費または購入価額は借入対象外
金利全期間固定金利
返済期間最短15年、最長35年(申込人の年齢によって35年未満)
返済方式「元金均等返済方式」または「元利均等返済方式」のいずれかを選択
団体信用生命保険健康上の理由その他の事情で団体信用生命保険に加入されない場合も、融資申し込み可能
手数料融資手数料は取扱金融機関によって異なる
※上記以外にも所定の条件がありますので、詳しくは住宅金融支援機構が運営しているフラット35の情報サイトをご確認ください。

【フラット20】

フラット20とはフラット35のうち、15年以上20年以下の借入期間で申込む住宅ローンです。返済期間が短いことからフラット35よりも金利が低い特徴がありますが、返済期間が短いことからフラット35で同額を借りた場合に比べ、毎月の返済額が大きくなる可能性があります。契約後に21年以上に変更することはできません。

【ダブルフラット】

「フラット35」もしくは「フラット20」を2本組み合わせて、住宅ローンを借りる方法です。例えば、40歳の会社員が定年退職となる、60歳以降のローン返済額を抑えたい場合、次のような方法で申し込むことが可能となります。なお、借入先はダブルフラットを取り扱っている同一の金融機関になります。

「フラット35」のみの場合

融資額4000万円
借入期間35年
金利1.50%
返済月額122,473円
60歳以降の返済月額122,473円
総返済額51,438,985円

ダブルフラット:「フラット35」と「フラット20」の2本に分けた場合

融資額4000万円(2000万円+2000万円)
借入期間35年&20年
金利1.50%&1.35%
返済月額61,236円+95,135円=156,371円
60歳以降の返済月額61,236円+0円=61,236円
総返済額48,552,024円
※金利は仮定

財形住宅融資

財形住宅融資とは、住宅金融支援機構の融資制度で、企業に勤めて財形貯蓄制度を利用している人が選択できます。ただし、財形貯蓄制度を利用している人の中でも一定の条件があります。

財形住宅融資の特徴として「事務手数料、保証料がかからない」といったメリットと、「借入額は4000万円が上限」「1.25倍ルールの適用外」などのデメリットがあります。

申込できる人次のすべてにあてはまる人が申込みできる。
1. 一般財形貯蓄、財形年金貯蓄、財形住宅貯蓄のいずれかを1年以上継続しておこなっている人
2. 借入申込日前2年以内に財形貯蓄の預け入れをおこなっている人
3. 申込日における財形貯蓄残高が50万円以上ある人
融資額民間の住宅ローンよりは融資の上限額が低い。次のいずれか低い金額が融資限度額となる。
1. 借入申込日における「一般財形貯蓄」「財形年金貯蓄」「財形住宅貯蓄」の残高(合計)の10倍の額
2. 4000万円
3. 住宅の新築もしくは購入に必要な額および土地の取得(整備含む)に必要な金額の90%まで
金利返済中5年ごとに金利を見直す「5年固定金利制」
返済期間最短10年、最長35年(申込人の年齢やリフォームなどの一定条件下では35年未満となる)
返済方式「元金均等返済方式」または「元利均等返済方式」のいずれかを選択
団体信用生命保険健康上の理由その他の事情で団体信用生命保険に加入されない場合も、融資申し込み可能
手数料融資手数料は不要
※上記以外にも所定の条件がありますので、詳しくは住宅金融支援機構のサイトをご確認ください。

返済方法

住宅ローンの返済方法には、「元利均等返済方式」と「元金均等返済方式」の2つがあります。

元利均等返済

住宅ローンで借りた金額とローン返済までの利息総額を計算して、その総合計金額を返済期間(月数)で割った額を毎月均等に支払っていく方式です。
金利に変動がなければ、支払額が最初から最後まで毎月同額になります。

(例)35年ローンの場合(返済回数:420回)

([住宅ローン借入額]+[35年分の総利息額])÷420回 = 毎月の支出額

元金均等返済

住宅ローンで借りた金額を返済期間(月数)で割った元金の額を毎月支払うことを先に決めて、そこにローン残債に応じた利息額を月々の元金返済に上乗せして支払っていく方式です。
ローン残高が減れば減るほど、支払う利息額は減るため、住宅ローンの返済当初よりもローン完済に近づくほど、毎月の支出額が減っていきます。

(例)35年ローンの場合(返済回数420回)
[住宅ローン借入額]÷420回 + ローン残高×金利 = 毎月の支出額

住宅ローンの選び方│6つのポイント

では、住宅ローンを選ぶ際の6つのポイントを解説します。

ポイント1:金利

金利がわずか0.10%の差でも、以下例のように積み重なると大きな差になります。
少しでも低い金利の住宅ローンを借りられるように検討していきましょう。
 
・金利差による総支払額の違い

0.40%0.50%
返済月額102,076円103,834円
総返済予定額42,871,967円43,610,342円
0.10%の差+738,375円
※4000万円、35年、元利均等返済方式、ボーナス返済なし、金利変動なしで試算

ポイント2:借入金額

住宅ローンは金利が低いとはいうものの、多くの方にとっては人生最大の借金です。「借りられる額」よりも「無理なく毎月返済できる額」でローンを考えることがとても大事です。「人生の3大資金」を一緒に考えつつ、住宅ローンで借りる金額を算出してください。
 
【人生の3大資金】
1. 住宅資金
2. 教育資金
3. 老後資金

ポイント3:期間

人生100年時代において大切なことは、ローン返済中も「貯金(運用)」することです。住宅ローンは他の借金と比べても金利が低く、生命保険(団体信用生命保険)が付いているので、急いで返済する必要はありません。金利上昇などの際に、対応できるようにしっかり貯金をしておき、いざとなったら繰上げ返済できるような、柔軟性を持つべきです。

できるだけ長く借りて、毎月の返済額を下げておくことを「期限の利益」と言います。
「期限の利益」も視野に入れて、長く借りつつ、いつでも返せる準備をしていきましょう。

ポイント4:事務手数料・保証料

住宅ローンの諸費用には、事務手数料型と保証料型があります。事務手数料は、無料から融資額の数%に至るまで、借入先によって大きな違いがあります。手数料ではなく、保証料が必要な金融機関もあります。住宅ローン選びの際は、金利だけではなく、手数料を含めた「諸費用」にも着目してください。

ポイント5:団体信用生命保険

「フラット35」や「財形融資」のように、団体信用生命保険(以下、団信とする)の加入を任意としている住宅ローンもありますが、基本的に住宅ローンは団信の契約を融資の条件としています。
団信とは、契約者がお亡くなりになった場合、その時点のローン残高を保険で返済する「生命保険」です。この生命保険があることでお金を貸す側の金融機関も、お金を借りる側の個人も、安心して住宅ローンの契約に臨めます。
 
団信は通常、無料(正確には、住宅ローンの金利に保険料が含まれている)なのですが、金利を上乗せ支払いすることで特約をつけて保障内容を手厚くすることも可能です。代表的な特約には、がん・急性心筋梗塞・脳卒中に対して補償する3大疾病特約があります。
 
一般的に高齢になるほど、生命保険の保険料は高くなりますが、団信は団体で契約する生命保険なので年齢による保険料の差はありません。つまり、30歳でローンを組む人よりも50歳でローンを組む人のほうが、メリットが大きいとも言えます。

ポイント6:複数の金融機関への申込み

複数の金融機関に申込むメリットとしては、住宅ローンを比較できること、本審査に通過した後のキャンセルが可能なことなどがあります。
複数の金融機関へ申し込むことは問題ありませんが、複数の金融機関への申込みの事実は、審査の過程において審査担当者が知ることとなります。
複数の金融機関への申込み時期が数カ月も経っていたら、「先のローン審査に落ちた人」と思われる可能性があり、審査上の印象が良くありません。複数の金融機関にローン審査を申し込む場合は、できるだけ同時期に進めることがよいでしょう。そして、複数の金融機関にローン申込みをしている事実を、金融機関の担当者に伝えておくことをおすすめします。また、数は何社でも問題ありませんが、審査の準備に手間がかかったりするため2~4社程度が良いでしょう。

住宅ローンの選び方│絞り込む4つの手順

最後に、筆者が考える、住宅ローンの絞り込み方をお伝えします。次の手順で絞り込んでみてください。

1.金利タイプ・事務手数料/保証料・返済方法
あなたに合った金利プラン、事務手数料・保証料、返済方法を考慮して、総返済額を抑えられる住宅ローン商品を探してみましょう。インターネット上で条件に合わせたシミュレーションができるサイトも多数ありますので、活用してみてください。
たとえば、フラット35のサイトでシミュレーションをおこなうことができます。

2.団信
金融機関によって提供している団信の内容は異なります。そして、近年では金利負担無しでお得な団信が付けられる金融機関も増えています。お得な団信を探してみてください。

3.エリア
「金利が低い金融機関」と「お得な団信を提供している金融機関」をピックアップできたら、あなたが居住を考えているエリアが、あなたがピックアップした金融機関の営業エリアに入っているか否かを調べます。

4.諸費用
金融機関によって、住宅ローンを借りるために必要な費用(事務手数料や保証料など)の内容や金額が異なります。その費用も加味して、総返済額を比較してみてください。

この記事のポイント

住宅ローンはどのくらい借りてもいいの?

住宅ローンで借りる額を検討する際には、「借りられる額」よりも「無理なく毎月返済できる額」であることが重要です。

詳しくは「ポイント2:借入金額」をご確認ください。

住宅ローンを選ぶ際の手順は?

金利→団信→エリア→諸経費の順で絞り込んでいきましょう。

詳しくは「住宅ローンの選び方│絞り込む4つの手順」をご確認ください。

執筆者プロフィール

中村諭
ファイナンシャルプランナー/貸金業務取扱主任者

働くお母さんからの相談が多く、離婚時における住宅ローン相談等、住宅ローンの見直しから借り換え、融資まで実務支援をしているFP事務所(融資媒介業として金融庁登録のFP事務所)経営。ファイナンシャルプランナー(CFP®認定者)、貸金業務取扱主任者、情報サイトAll About住宅ローンガイド。住宅ローンソムリエ(2007年商標登録)。

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