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地域型住宅グリーン化事業とは?補助金を受けられる条件や申請の流れを解説

執筆者プロフィール

海老原政子
ファイナンシャル・プランナー/住宅ローンアドバイザー

国内の生命保険会社にて生命保険募集人業務に携わるなかでライフプランの重要性に目覚め、生活者視点を活かしたFP業務を開始。千葉で、家計相談や執筆業務、個人・企業向けマネープランセミナーをおこなう。生命保険見直しや住宅ローンの借り換え、貯蓄ができない家計の体質改善アドバイスなど、わかりやすい情報提供が好評。

「終の棲家(すみか)となる、高品質な住まいを建てたい!」と思うものの、住宅性能を上げれば費用も上がるため、予算オーバーが心配に……。そこで今回、これから木造住宅を新築予定の人に向けて「地域型住宅グリーン化事業」を紹介します。

住宅タイプ別に交付される補助金は、最大で150万円(ゼロ・エネルギー住宅/2022年度)。省エネ&サスティナブルな住宅が欲しい人はぜひ一読ください。

地域型住宅グリーン化事業とは?

「地域型住宅グリーン化事業」とは、木材事業者や流通業者、建築士事務所、中小の工務店などその地域の住宅にかかわる事業者グループを通じ、環境にやさしく省エネ性・耐久性に優れた木造住宅の整備を後押しするために設けられた国の支援事業です。

施主である生活者に補助金が直接交付されるわけではなく、地域型住宅グリーン化事業登録グループに新築工事を発注することで、事業者に補助金が交付され、施主は間接的にその恩恵を受ける仕組みです。建築費用を抑え、かつ、高品質な住宅が手に入れられるメリットがあります。

2022年度の地域型住宅グリーン化事業の共通要件

「地域型住宅グリーン化事業」は実施される年度により内容が異なります。とくに2022年度は、住宅改修が対象外となり新築のみとなったことに注意が必要です。

施工業者にも制限があります。地域型住宅グリーン化事業の補助金交付を受けるためには、新築工事の発注先が国土交通省の採択を受けたグループの事業者である必要があるのです。

補助金を検討する人はまず、地域型住宅グリーン化事業採択グループ検索サイトより、建設予定地付近で該当する施工業者を探してから工事の見積もりを取ることをおすすめします。

補助対象となる住宅の共通要件

「地域型住宅グリーン化事業」の補助対象となる住宅は、以下の8つの要件をすべて満たす必要があります。

  1. 主要構造部が木造である
  2. 採択グループの地域型住宅の共通ルールにのっとり、グループ所属の施工業者により建てられた新築住宅である
  3. 長寿命型/ゼロ・エネルギー住宅型/高度省エネ型それぞれの個別要件をすべて満たしている
  4. 設計者、施工管理者または大工技能者のいずれか一人が、所定講習会の修了者(受講者)である
  5. 長寿命型/ゼロ・エネルギー住宅型/高度省エネ型住宅は、採択通知の日付以降の着工である
  6. 主要構造部に用いる木材は、グループが定める地域材を積極的に使用している
  7. 住宅が「土砂災害特別警戒区域」にかかっている場合、補助の対象外とする
  8. (1)施工事業者は対象となる住宅工事の元請けであり、「工事施工者」として工事に直接責任を負っている
    (2)外皮計算、一次エネルギー消費量計算に寄与する工事は、原則として、元請けである施工事業者がおこなう(ゼロ・エネルギー住宅型/高度省エネ型)

さらにZEH(※)またはZEH水準の住宅に求める共通要件として、以下のいずれかを満たさなければなりません。

※「ぜっち」と読みます。Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の略語で、壁や床、外壁や窓が高気密であるなど一定の基準を満たした住宅を指します。

(A)断熱材、太陽光パネルなどの荷重を見込んだ構造計算を実施したもの
(B)壁量計算などにより構造安全性を確認したもの

※当記事では簡潔に要件をまとめているため、詳細が気になる人は「令和4年度地域型住宅グリーン化事業 募集要項」を確認してみてください。

続いて、住宅タイプ別に要件や補助金額をみていきましょう。

住宅タイプ別の要件と補助金額

「地域型住宅グリーン化事業」補助対象となる住宅タイプは、長寿命型/ゼロ・エネルギー住宅型/高度省エネ型の3つがあります。タイプ別に要件や補助金額をみていきましょう。

長寿命型の要件

長寿命型住宅の要件は、認定長期優良住宅であり、かつ、外皮性能および一次エネルギー消費量がZEH水準であること。これらの事実を確認できる認定書がある、またはBELS評価書や住宅性能評価書を取得している必要があります。

補助金額は最大140万円+加算あり

認定長期優良住宅(ZEH水準)の補助金額は、建築費用(※)の1/10以内の額、かつ、140万円/1戸当たりが上限です。ただし、補助を受ける事業者が地域型住宅グリーン化事業において長期優良住宅の補助金を活用した実績(2015年~2021年の7年間における)が計4戸以上ある場合は上限が切り下げられ、125万円/1戸当たりとなります。
施工業者を決める際、どちらの上限となるか確認しておくと安心です。

※建築設備として建築物に組み込まれる形で設置されるものは補助対象となりますが、カーテンやブランドのように建築主が後から購入・施工するものは補助対象外となります。また、太陽光発電工事費(付属するモニター装置を含む)、屋外附帯設備工事費、昇降機設置工事費、外構工事費(屋上緑化を含む)、解体工事費、設計監理費、調査費、申請手数料は補助対象外です。

ゼロ・エネルギー住宅型の要件

外皮の断熱性能などが大幅に向上している住宅で、高効率な設備システムや再生可能エネルギー(太陽光発電)などの導入により、年間の一次エネルギー消費量の収支がおおむねゼロになる住宅であることが要件です。

補助金額は最大150万円+加算あり

ゼロ・エネルギー住宅型の補助金額は、建築費用の1/10以内の額、かつ、140万円/1戸当たりが上限です。ただし長寿命型と同じく、補助を受ける事業者が地域型住宅グリーン化事業において長期優良住宅の補助金を活用した実績(2015年~2021年の7年間における)が計4戸以上ある場合は上限が切り下げられ、125万円/1戸当たりとなります。

さらに、ゼロ・エネルギー住宅において、認定長期優良住宅の認定を受けている住宅の場合は上限額が10万円アップして150万円/1戸当たりとなります。

高度省エネ型の要件

認定低炭素住宅であり、かつ、外皮性能および一次エネルギー消費量がZEH水準であること。これらの事実を確認できる認定書がある、または、BELS評価書や住宅性能評価書を取得している必要があります。

補助金額は最大90万円+加算あり

認定低炭素住宅(ZEH水準)の補助金額は、建築費用の1/10以内の額、かつ、90万円/1戸当たりが上限です。ただし長寿命型、ゼロ・エネルギー住宅型と同じく、補助を受ける事業者が地域型住宅グリーン化事業において長期優良住宅の補助金を活用した実績(2015年~2021年の7年間における)が計4戸以上ある場合は上限が切り下げられ、70万円/1戸当たりとなります。

各種加算について

一部条件を満たす場合は、補助額が加算されます。併用可能なものもあるので、参考までに紹介しましょう。

・地域材加算
柱・梁・桁・土台に一定分量以上の地域材を使用した場合、20万円を上限に加算
・三世代同居加算
三世代同居住宅の要件を満たした場合、30万円を上限に加算
・若者・子育て世帯加算
対象住宅の建築主が年度当初(4月1日)時点で40歳未満の場合、または年度当初時点もしくは交付申請日時点で建築主が18歳未満の子と同居している場合、30万円を上限に加算
・地域住文化加算
地域の伝統的な建築技術の継承に資する住宅の場合、20万円を上限に加算
・バリアフリー加算
住宅性能表示制度の高齢者等配慮対策等級3以上と評価された住宅の場合、30万円を上限に加算

<併用可の組み合わせ例>
地域材加算+地域住文化加算
三世代同居加算+バリアフリー加算 など
※併用した場合、加算上限は40万円に変わります。

地域型住宅グリーン化事業の申請方法

補助申請手続きは施主ではなく、新築工事を請け負った施工業者がおこないます。

  1. 補助金交付申請(施工業者)
  2. 適合確認・一括申請(施工業者の所属する採択グループの事務局)
  3. 交付決定審査・決定通知(実施支援室)
  4. 完了実績報告(施工業者)
  5. 交付

おおむねこのような流れで進みます。

気をつけるべきポイント

前半で伝えたとおり、2022年度は、住宅改修が対象外となり新築のみとなりました。2021度は住宅改修も補助の対象だったため、その話を鵜吞みにしてリフォーム工事を検討することのないよう気をつけてください。

国の支援事業をフル活用して家を建てよう


認定長期優良住宅やZEH住宅、認定低炭素住宅といった環境負荷が少ない住宅は、施工金額や期間面でマイナスポイントがある一方、住み替え後に光熱費が抑えられたり、節税できたりするケースもあります。

今回、紹介した「地域型住宅グリーン化事業」は費用面での大きな助けとなることは間違いありません。ただし、こうした制度は年度ごとに補助対象や金額が変わりやすく、今年度が最後のチャンスということもありえます。積極的に情報を収集し、施工業者選びのポイントのひとつに加えてみてはいかがでしょうか。

この記事のポイント

「地域型住宅グリーン化事業」によるメリットは?

認定長期優良住宅やZEH住宅、認定低炭素住宅などの新築を予定している場合、要項を満たせば、住宅タイプ別に70〜150万円の補助金が事業者に交付され、施主も間接的に恩恵を受けることができます。

さらに、同居家族や住宅性能、使用木材などで一部条件を満たせば、さらに加算されるケースもあります。

詳しくは「住宅タイプ別の要件と補助金額」をご覧ください。

補助金が申請できる対象の住宅とは?

「地域型住宅グリーン化事業」は実施年度により内容が異なります。2022年度は、新築住宅のみが申請可能です。

さらに、補助の対象となるためには、木造であること、特的の地域材を使用していることなど、細かく定められた要項を満たす必要があります。

詳しくは「補助対象となる住宅の共通要件」をご覧ください。

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