土地の購入方法には更地を購入する方法や、土地上に建っている古屋の解体を前提とした古屋付き土地を購入する方法などがありますが、建築条件付き土地を購入するといった方法もあります。建築条件付き土地にはメリットやデメリットだけでなく、いくつかの注意点もありますので、建築条件付き土地を検討する際のポイントを整理しておきましょう。
記事サマリー
建築条件付き土地とは?
建築条件付き土地とは、土地の売買契約締結後、一定期間内(概ね3カ月以内が一般的)に、売主または売主が指定する建設会社で一戸建て住宅を建築するための建築工事請負契約を締結できなかったときは、土地の売買契約自体がなかったことになる条件付きの契約のことです。
土地の売主が宅地建物取引業と建設業の免許の双方を有していて、土地の売買契約だけでなく、一戸建て住宅を建築するための建築工事の請負契約も同じ売主と締結することがほとんどですが、売主が指定する建設会社と建築工事の請負契約を締結する場合もあります。
購入時に条件がついている土地
建築条件付き土地の主な条件は以下の3つです。
- 土地だけの取引と異なり、土地の取引と建物の取引が一体化した取引になっているため、土地だけの購入を希望しても土地だけでは購入できない条件が付いている。
- 建物の建築工事は売主または売主が指定する建設会社でしか建築できない条件が付いている。
- 土地の売買契約を締結してから一定期間(概ね3カ月以内)に、建物の建築工事請負契約が締結できなかったとき、土地の売買契約がなかったことになる条件がついている。
※土地の売買契約がなかったことになるので、土地の売買契約時に支払った手付金は返還されます
建築条件付き土地(売建住宅)とその他の住宅の違い
建築の許可(建築確認申請)を得たうえで販売される未完成や完成済みの建売住宅とは異なり、注文住宅同様に建物の間取りや屋根材や外壁材、キッチンや浴室などの設備、壁や床のフローリングといった仕様など、すべてのことを自由に決めてから建築の許可を得るため売建住宅と呼ばれることもあります。
建売住宅との違い
建売住宅は間取りや面積、屋根や外壁の材料、設備等の仕様まですべて決まっていますが、建築条件付き土地は建物のすべてを自由に決められます。また、建売住宅はあらかじめ建物価格が決まっている一方、建築条件付き土地は間取りや面積、材料や仕様をすべて1つずつ決めていくため建物価格が高くなります。そのため、建築条件付き土地の場合は予算には気を遣わなければならないでしょう。
建築条件付き土地のメリット・デメリット
上述のとおり建築条件付き土地には主に3つの条件がありましたが、建築条件付き土地特有のメリットとデメリットもあります。
メリット
メリットは主に下記3点があげられます。
- 土地の購入と注文住宅同様の建物の購入を1つの窓口で対応してもらえる。
- 注文住宅同様、建物の間取りや仕様を自由に決められる
- 周辺の建築条件付き土地ではない土地より割安に購入できる場合がある
※売主は土地と建物の双方から利益を得られるため
土地と建物の窓口が一本化されることがほとんどのため、ワンストップで対応してもらいたい人や、複数の建設会社を検討したり比較したりするのが面倒な人、建設会社にこだわらない人に向いています。
デメリット
一方のデメリットは下記3点です。
- 建物を建てる建設会社が決まっているため、他の建設会社を検討したり比較したりすることができない。
- 注文住宅同様、建物の間取りや仕様を自由に決められるはずだが、いくつかの参考プランや仕様からしか選ばせてくれない売主や売主指定の建設会社がある。
- 土地の購入から引渡しまでの間や、建物の建築工事請負契約から完成までの間に、現金での支払いが必要なタイミングや、金融機関から融資を受けて支払わなければならないタイミングが複数あることから、その都度必要になる費用の管理が煩雑。
間取りの柔軟性や仕様の選択は建設会社の力量次第になることから、細かい要望に対応してもらえない場合や希望通りの間取りができなかったり仕様が自由に選べなかったりすることがあるため、建物にさまざまなこだわりがある人には向いていないときがあります。 また、土地代と建物代の支払が売買契約時と建物引渡時の2回で済む建売住宅と異なり、建築条件付き土地は何度も費用の支払が発生する特徴があることから、金融機関との交渉や手続きが苦手な人にはあまり向いていません。
建築条件付き土地の購入から住宅完成までの流れ
土地を購入してから建物が完成するまでには、さまざまなステップがあります。
また、土地の売買契約を締結するときにはある程度まとまった金額の手付金を用意したり、土地の引渡しを受けるときには土地の残代金を支払う必要があったりと、お金を支払うタイミングや金額もさまざまです。ここからは、土地の購入から建物の完成までの流れを、お金を支払うタイミングや支払金額の目安も含めて解説していきます。
基本的には5つのステップで完成する
土地の購入から建物が完成するまでは長期間にわたります。
まずは、土地の売買契約を締結します。
土地の売買契約を締結したら、建物の間取りを考えたりさまざまな材料の選定を行ったりします。そして、価格を含め建物の全体像を把握し、土地代と建物代の双方を合わせた全体費用に問題がなければ、建築工事の請負契約を締結します。
最初に契約した土地の引渡しを受けたり建物の建築許可を得たりしながら、着工を迎えます。着工したら、建物の基礎工事、木工事、屋根工事、外壁工事、設備工事、内装工事など、さまざまな工程を経て建物が完成します。
土地の売買契約を締結する
土地のエリアや周辺環境、大きさや形が希望に合ったら、まずは土地の売買契約を締結します。この際、土地代金の5~10%の手付金を売主に現金で支払うことが一般的です。
なお、土地代や建物代に住宅ローンを利用する際は、土地の売買契約を締結する前に、金融機関でどのくらいの金額の融資が受けられそうか相談しておく必要があります。
なぜなら、自己資金と住宅ローンの利用で総予算を掴んでおかないと、建築費用に幾らぐらい充当できそうか分からないからです。また、全体の総予算をつかめていないと、土地は気に入って購入できても、予算上から建物は希望通りの大きさや希望通りの材料が選べなくなってしまう可能性があるからです。
この段階では、概算建築費用を売主や売主の指定する建設会社に尋ねておき、自分たちの総予算で自分たちの希望どおりの住宅が建築できそうか把握しておくことが大切です。
売主や売主が指定した建設会社と間取りや仕様の打ち合わせを行う
土地の売買契約を締結したら、売主や売主が指定した建設会社と、間取りや仕様の打ち合わせをはじめます。
リビングは〇畳でキッチンは対面型、生活の中心は2階にして各部屋の収納は多めに、といった間取りの打ち合わせからはじめ、間取りが決まったら屋根や外壁といった外部まわりから、キッチンや浴室、洗面台等の設備グレードや壁紙や床フローリングの仕様など、建物に関わるすべての材料を決めていきながら、建築費の見積もりを出してもらいます。
見積もりで提示された金額と建物には含まれていない照明器具やカーテン、エアコン費用の他、すでに売買契約締結済みの土地代やその他の諸費用、引越費用等の総額が当初の総予算におさまっているかどうかしっかり確認します。
施工会社と建築工事請負契約を締結する
建物の間取りや仕様、金額が希望通りになったら、売主や売主の指定する建設会社と建築工事請負契約を締結します。この際、売主や売主の指定する建設会社にもよりますが、建物代金の5~10%の請負契約金を売主や売主の指定する建設会社に現金で支払うことになります。
そのため、土地の購入だけで自己資金をすべて使い果たしてしまうと、建築工事請負契約金が支払えなくなってしまう場合もあります。そのため、現金での支払いが必要になりそうなタイミングと金額を土地の売買契約時までに売主や売主の指定する建設会社に確認しておくことが大切です。
建築条件付き土地の条件の1つでもある、土地の売買契約を締結してから一定期間(概ね3カ月)に建物の工事請負契約が締結できなかったとき、土地の売買契約がなかったことになる、といった条件がここまでの期間のことになります。
つまり、この時点で土地の売買契約締結から一定期間(概ね3カ月)が過ぎようとしているときは、自動的に土地の契約がなかったことになったり、売主・買主が双方合意の上、土地の売買契約を解除することになったりします。一方で、売主・買主が合意の上、一定期間を更に延長する約束をして、打合せを継続する場合もあります。
土地決済後、工事に着手する
売主や売主の指定する建設会社と建築工事請負契約を締結したら、土地の引渡しに向けた準備と建築工事請負契約の内容に基づいた建築の許可申請(建築確認申請)を進めます。
土地代や建物代の支払に住宅ローンを利用するときは、金融機関に住宅ローンの本申込を行ったり金融機関との間で金銭消費貸借契約を締結したりして、土地の残代金の支払い準備を整えて土地を引渡してもらいます。
平行して進めていた建築の許可申請が得られたら、いよいよ建物の工事に着手します。
この際、売主や売主の指定する建設会社にもよりますが、建物代金の10~30%の着工金を支払わなければならない場合があります。
また、土地の購入では、土地の売買契約時に手付金、土地の引渡し時に残代金と2回の支払で済むことが一般的です。ただし、建物代金は請負契約時に5~10%の請負契約金、着工時に着工金、それ以外に上棟時や中間時、完成時といったタイミングで代金の一部を支払わなければならない場合もあります。
建物代金全額を現金で充当できる場合は問題ないですが、支払いが必要な都度、住宅ローンを充当したいときはあらかじめ金融機関に相談しておく必要があります。建築条件付き土地の購入で住宅ローンを利用するときは、住宅ローンによる支払タイミングと支払額を正確につかんでおくことがとても大切です。
なお、金融機関によりますが、土地の引渡し時に支払う残代金を住宅ローンで充当する場合、建物完成時に最終的な融資が実行されるまでの間の利息分のみを支払う「つなぎ融資」といった融資を利用することが一般的です。しかし、部分的な融資分の返済がはじまるというケースもあるため、自分たちが利用する住宅ローンがどのような融資体系になるのか、あらかじめ確認しておきましょう。
完成~引渡し
建物が完成間近になったら、建物代の残代金の支払い準備を進めます。
建物が設計図どおりに完成したかどうか、完成した建物にキズや汚れがないかどうかなどを確かめたら、いよいよ建物の引渡しです。
建物の引渡しでは、建物の残代金を売主や売主の指定する建設会社に支払うのと同時に鍵の引渡しを受けることで、建築条件付き土地のすべての工程が終了となります。
建築条件付き土地のよくあるトラブル
宅地建物取引業者の仲介により建築条件付き土地を購入するときは、あくまでも土地代に対してのみ仲介手数料を支払えば問題ありません。ただし、土地の売買契約と建物の建築工事請負契約締結後や、建物の建築の許可申請後に土地と建物を一本化した建売住宅の売買契約に契約を締結しなおして、土地代と建物代の総額に対して仲介手数料を要求されることがあるため注意しましょう。
【参考】
土地代2,500万円、建物代2,500万円(税抜き)の建築条件付き土地の場合の仲介手数料の上限額
土地代2,500万円×3%+60,000円×1.1(消費税)=891,000円
土地代2,500万円、建物代2,500万円(税抜き)の合計5,000万円(税抜き)の建売住宅の場合の仲介手数料の上限額
土地代+建物代(税抜き)合計5,000万円(税抜き)×3%+60,000円×1.1(消費税)=1,716,000円
建築条件付き土地には、土地の売買契約を締結してから一定期間(概ね3カ月以内)に建物の建築工事請負契約が締結できなかったときは土地の売買契約がなかったことになる条件がついています。売主や売主の指定する建設会社は、3カ月以内に建築工事請負契約を締結しないとそこまでの時間と労力がすべて水の泡となってしまうことから、なるべく早い段階で建築工事の請負契約を勧めてくる売主や売主の指定する建設会社が存在します。
建築工事の請負契約を最も早いタイミングで勧められるのは、土地の売買契約と同日のパターンです。土地の売買契約と建物の建築工事請負契約を同日に締結してしまいますと、土地の売買契約が有効に成立してしまうためカンタンには後戻りできなくなってしまいます。
建築条件付き土地の建物の建築工事請負契約は、土地の売買契約締結後、一定期間(概ね3カ月)に締結できないことよりも、土地の売買契約と同日に締結してしまうことのほうが実際のトラブルは多いため注意しましょう。
宅地建物取引業者が、いわゆる建築条件付土地売買契約を締結しようとする場合は、建物の工事請負契約の成否が土地の売買契約の成立又は解除条件である旨を説明するとともに、工事請負契約が締結された後に土地売買契約を解除する際は、買主は手付金を放棄することになる旨を説明することとする。なお、買主と建設業者等の間で予算、設計内容、期間等の協議が十分に行われていないまま、建築条件付土地売買契約の締結と工事請負契約の締結が同日又は短期間のうちに行われることは、買主の希望等特段の事由がある場合を除き、適当でない。 |
この記事のポイント
- 建築条件付き土地ってなに?
建築条件付き土地とは、土地の売買契約を締結したあと、一定期間内に売主(または売主が指定する建設会社)で一戸建て住宅を建築するための建築工事請負契約を締結できなかったときは、土地の売買契約自体がなかったことになるという条件がついた契約のことを指します。
詳しくは「建築条件付き土地とは?」をご確認ください。
- 建売住宅ってなに?
建売住宅は、間取りや面積、屋根や外壁の材料、設備等の仕様まですべて決まっている住宅です。また、建売住宅はあらかじめ建物価格が決まっている一方、建築条件付き土地は間取りや面積、材料や仕様をすべてひとつずつ決めていくため建物価格が高めです。
詳しくは「建売住宅との違い」をご確認ください。
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