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不動産の登記費用の相場は?【計算シミュレーション付き】

執筆者プロフィール

大崎麻美
司法書士、FP技能士2級、宅地建物取引主任者、シニアライフマネージャー

日系エアラインのCAを経て30代で司法書士資格を取得。2012年あさみ司法書士事務所を設立。実需・収益不動産・商業に関する登記実務、終活のサポート業務を行う。2022年末より海外に移住。移住後は、実家じまいの情報発信サイト「実家じまい完全攻略ブログ」を運営。法律・不動産専門のライターとして活動。

ざっくり要約!

  • 不動産や土地の登記費用の相場は数十万程度だが、場合によっては100万円近くなることもある
  • 不動産の登記費用は登録免許税の影響が大きく、つまり購入する不動産の固定資産税評価額や建物の築年数によって大きく異なる

マイホーム購入を検討する中で、初めて不動産登記という言葉を聞いたという人は多いのではないでしょうか。なんのための制度なのか、費用はどの程度かかるのか、自分でも不動産登記はできるのかなど気になる場合もあるでしょう。今回の記事では、不動産の登記費用について、現場の実情も踏まえ解説します。

不動産や土地の登記費用の相場は?

マイホームを購入した場合には、不動産名義を売主から買主に変更する登記申請をします。また、不動産の所有者が亡くなられた場合には、亡くなられた方から相続人に名義を変更するため、相続の登記申請をしなければなりません。

このような登記申請をする際に必要になるのが登記費用ですが、相場を知りたいと思う人は少なくないでしょう。ここからは、例としてマイホーム購入時の登記費用の相場について解説します。

数十万円になることが多い

マイホーム購入の手続きを進める過程で、不動産会社より登記費用の見積もりを案内されますが、この登記費用は数十万単位になることが一般的です。

ただし、購入する不動産によっては、100万円近い登記費用が必要になることもあります。

このように、マイホーム購入時の登記費用には相場というものが存在しません。マイホームを購入したという前提条件が同じでも、Aさんの登記費用は35万円、Bさんの登記費用は60万円ということが起こります。この理由は、以下で紹介する登記費用の内訳を知れば納得されるでしょう。

登記費用の内訳は「実費+司法書士への報酬」

登記費用の内訳は次のように大きく2つの費用に分かれます。

登記費用
実費
(登録免許税・登記事項証明書や固定資産税評価証明書の取得費・郵送費・交通費など)
司法書士報酬

・実費

実費の大部分を占める「登録免許税」は、不動産登記申請の際に法務局で納付する国税です。登録免許税は、登記の種類や、不動産の固定資産税評価額を元に計算されるため、バラツキが大きくなります。

そのほかの実費部分は、司法書士に依頼しても自分で行っても必要になる費用です。もちろん、どの司法書士事務所に依頼をしても同額程度になるでしょう。

・司法書士報酬

司法書士への報酬は、依頼先の司法書士事務所により数千円~数万円の幅がでることがあります。司法書士報酬は、以前は同額で統一されていましたが、現在では各事務所が自由に設定できるようになったためです。

固定資産税評価額とは?

実費の1つとして固定資産税評価証明書の取得費・郵送費・交通費などがありますが、この固定資産税評価額は、自治体が固定資産税や都市計画税、不動産取得税を課税する際に基準とする価格です。土地は時価の約7割、中古建物は再建築価格の5~7割、新築建物は請負金額の5~6割に当たるといわれます。

不動産の登記費用の求め方【シミュレーション付き】

不動産の登記費用は登録免許税の影響が大きく、つまり購入する不動産の固定資産税評価額や建物の築年数によって大きく異なります。

ここからはマイホーム購入時の具体的な登記費用の求め方について、シミュレーションを通して解説します。シミュレーションの前提は次のとおりです。

【シミュレーション前提】

  • 購入不動産:築15年、購入金額4,000万円、床面積80㎡の戸建
  • 不動産固定資産税評価額の価格:土地2,300万円・建物500万円
  • 住宅ローンは3,000万円の借り入れ
  • 自己居住用として購入する

なお、登記費用の実費のうち、登録免許税を除く実費は1~2万円の間におさまることが一般的です。

登録免許税の計算方法

今回のシミュレーションでは次の登記申請をします。

  • 不動産の売買による土地と建物の所有権移転登記
  • 住宅ローンの担保に購入した不動産をいれる抵当権設定登記

登録免許税の計算式は次のようになります。

所有権移転登記の登録免許税=税率×不動産の固定資産税評価額
抵当権設定登記の登録免許税=税率×住宅ローン債権額(借入額)

登録免許税は申請する登記の種類ごとに表のとおりの税率が定められています。

登記の種類税率軽減税率軽減税率の適用期限
所有権移転(土地)2.0%1.5%令和8年3月31日
所有権保存(新築建物)0.4%0.15%令和6年3月31日
所有権移転(中古建物)2.0%0.3%
抵当権設定0.4%0.1%

売買による土地の移転登記の軽減税率

売買による土地の移転登記に関しては、「土地の固定資産税評価額×1.5%」の軽減税率が適用されます。令和8年3月31日までの時限措置で、売買契約書があれば軽減税率が適用されます。

【軽減税率適用の要件】
建物に関する登記に関しては、次のすべての要件を満たすことで軽減税率が適用されます。

  1. 自己居住用の住宅であること
  2. 新築建物の場合は登記簿の床面積が50㎡以上であること
  3. 中古建物は床面積50㎡以上で昭和57年1月1日以後に建築されたことが登記簿で確認できること。昭和56年12月31日以前に建築された建物に関しては次のいずれか取得することが必要です。
     (ア) 耐震基準適合証明書
     (イ) 既存住宅売買瑕疵保険の保険付保証明書
  4. 新築建物は新築後1年以内に、中古住宅は取得後1年以内に登記申請をすること

上記の要件を満たすと、役所で住宅用家屋証明書を取得することができ、この住宅用家屋証明書を法務局に提出することで、軽減税率が適用されます。

具体的には、建物に関する登記(建物の移転登記、所有権保存登記)、抵当権設定に関する登記に適用されます。

出典:国税庁|登録免許税の税率の軽減措置に関するお知らせ

シミュレーションの土地と建物の所有権移転登記の登録免許税を計算してみましょう。

土地固定資産税評価額2,300万円
建物500万円

土地:2,300万円×1.5%(売買による移転登記のため軽減税率適用)=345,000円
建物:500万円×0.3%(要件を満たすため軽減税率適用)=15,000円
所有権移転登記(土地・建物)の登録免許税=345,000円+15,000円=360,000円(軽減税率適用)

仮にシミュレーションの建物が昭和50年築であったり、セカンドハウスであったりすれば軽減税率が適用されません。適用がない場合、建物の登録免許税は次のように算出されます。

建物500万円×2.0%=100,000円(軽減税率適用なし)
所有権移転登記(土地・建物)の登録免許税=土地345,000円+建物100,000円=445,000円

抵当権設定金額の計算方法

住宅ローンを利用しマイホームを購入する場合には、抵当権設定登記を申請し、不動産をローンの担保に入れます。抵当権設定の登録免許税は次の計算で算出できます。

抵当権設定の登録免許税=住宅ローン債権額(借入額)×0.4%

購入した建物が軽減税率適用の要件を満たす場合
抵当権設定登記の登録免許税=住宅ローン債権額(借入額)×0.1%

シミュレーションでは建物は築15年のため、軽減税率が適用になります。

抵当権設定登記の登録免許税3,000万円×0.1%=30,000円(軽減税率適用)

仮に軽減税率が適用されない場合の抵当権設定登記の登録免許税は、次のように計算されます。

3,000万円×0.4%=120,000円(軽減税率適用なし)

移転登記の登録免許税と、抵当権設定登記の登録免許税を合計し、シミュレーションの不動産の登録免許税を計算します。

軽減税率適用360,000円(移転登記)+30,000円(抵当権設定)=390,000円
軽減税率適用なし445,000円(移転登記)+120,000円(抵当権設定)=565,000円

以上が登録免許税のシミュレーションでしたが、同じ価格の不動産であっても、築年数や使用用途の違いにより17万5千円の差がでました。

司法書士報酬の目安

司法書士報酬に関しては司法書士事務所により、バラツキがあることは先述しました。今までの筆者の経験から考える司法書士報酬の相場は、不動産の名義変更を行う「所有権移転登記」で5~10万円、新しく家を建てた際に行う「所有権保存登記」では2~5万円、住宅ローンを利用する際に行う「抵当権設定登記」で4~7万円程度が一般的です。

また、私道などの持分を持っている場合には「持分移転」の登記を行うため、司法書士報酬1~4万円程度が加算されます。さらに立会費用などが加算されます。

まとめると、住宅ローンを利用して土地・建物の不動産登記を行う場合の司法書士報酬総額は10~18万程度と考えておけばよいでしょう。この司法書士報酬に先程シミュレーションした登録免許税額をプラスすれば、登記費用のおおよその金額を想定することができます。

不動産登記を安くする方法は?

不動産登記費用をできるだけ安くするにはどうしたらよいのでしょうか。考えられる方法としては以下の3つです。

自分で登記申請をおこなう

司法書士に登記を依頼せず自分で登記申請をすることは可能です。しかし現実的に売買に関する登記は自分でおこなうことは難しいといえるでしょう。それは登記申請自体が難しいという意味ではありません。マイホームの購入には住宅ローンを使うことが多いですが、この場合、金融機関からの承諾を得られないためです。

金融機関としては不動産を担保にすることで数千万の融資をしています。この不動産を担保にとるため抵当権設定の登記を確実にしなくてはなりません。

それでは抵当権設定以外の登記を自分で行うというのはどうでしょう。こちらも承諾を得られないことがほとんどです。なぜなら抵当権設定登記のみを司法書士に依頼したとしても、その前段階の登記にミスがあれば抵当権設定登記ができなくなる恐れがあるためです。

ただし、住宅ローンを使わない売買であれば、場合によっては自分でおこなうことも可能です。相続による所有権移転登記や、住宅ローンを完済したときにおこなう抵当権抹消登記に関しては自身で申請する人も珍しくありません。

司法書士と交渉する

自分で登記申請は難しいものの、少しでも登記費用を抑えたい場合は、見積もりを発行した司法書士事務所に交渉することで多少の値引きを受けられる可能性もあります。不動産会社の営業担当者をとおして交渉してみてもよいでしょう。

複数の司法書士に見積もりを依頼する

相場と比べても登記費用が高いと感じた際は、複数の司法書士に登記費用の見積もりを依頼することで費用を抑えられる場合があります。
見積もりは早いタイミングで依頼しましょう。司法書士は引渡日までに売主側と調整し、役所や金融機関から書類を集めて準備を進める必要があります。タイミングが遅くなった場合は、物理的にほかの司法書士に変更できなくなる事態もあり得ます。また売買契約書で司法書士が指定されていることもありますので確認が必要です。
余談ですが、インターネットで「所有権移転登記〇〇円」と宣伝していたはずが、あとから追加費用が上乗せされるパターンもあります。そのような追加費用が発生しないことを確認してから依頼しましょう。

この記事のポイント

不動産や土地の登記費用の相場はどのくらい?

登記費用は数十万単位になることが一般的です。

ただし、購入する不動産によっては、100万円近い登記費用が必要になることもあります。

詳しくは、「不動産や土地の登記費用の相場は?」をご覧ください。

不動産登記を安くする方法は?

住宅ローンを使わない売買であれば自分で申請する、司法書士と交渉する、複数の司法書士に見積もりを依頼するといった方法があります。

詳しくは、「不動産登記を安くする方法は?」をご覧ください。

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