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上がり框(あがりかまち)とは?快適にするポイントやリフォーム費用・工期の目安

執筆者プロフィール

大石 かおり
資格情報: 一級建築士

設計活動と並行し、りんごスタジオ主宰としてワークショップを各所で開催。避難所遊具KIDS HOUSEの開発など、子どもたちに建築の面白さを伝える活動をしている。

家に帰り靴を脱いで玄関の上がり框(あがりかまち)を一段上がりホッとするのは、日本人なら誰しも体験する場面ではないでしょうか。靴を脱ぐ文化の日本人にとって機能にとどまらず何気ない日常的な動作を演出してくれる、大切な意味を持つ上がり框についてご紹介します。

上がり框とは

上がり框とは、玄関の土間部分と床部分の切り替えになる段差に使う化粧材のことです。
日本の住宅は木造が多く、湿気から家を守るため床が高くつくられます。玄関で客人を迎え入れる際に最初に目につく「ハレ」の建材として、上がり框は床の間の框と同様にケヤキなどの高級な木材を使ってしつらえられていました。基礎をコンクリートのべた基礎でつくるようになった現代では、玄関土間をグランドレベルよりも高くつくることが一般的になったこともあり、上がり框の段差は小さくなっています。また、鉄筋コンクリート造や鉄骨造の住宅や集合住宅など床を高くする必要がない場合、数センチの段差だけでつくることも多くあります。

上がり框の種類

直線的に区切るのが一般的なので、まっすぐなストレート型が圧倒的に多いのですが、斜めにしたり、カーブさせて上がり框の幅を広くとったり、L字型やコの字型にする個性的な例もあります。床材の断面を隠すという役割だけでなく、それ自身が目立つ存在なので建材としても多数の商品が出回っているため、材料についても種類は豊富です。薄い材で跳ねだして下の部分を簡単な靴の収納場所にしたり、引き出しのように作ってしっかりと収納にしたり、作り方も工夫次第でさまざまです。

上がり框で意識するポイント

上がり框を計画するには、3点を意識して決めるのがポイントです。1つ目は靴を脱ぎ履きする動作をするのに十分な幅があるか、2つ目は昇り降りできる高さになっているか、3つ目は材質が丈夫で耐久性があり、玄関という目につく場所に使う素材として見た目もふさわしいかです。

高さ

一昔前の日本の住宅では30cm~40cmもの高さがあり、式台や靴脱ぎ石でその段差を解消していましたが、現在ではバリアフリー法で戸建て住宅については家の中での段差が18cm以下、集合住宅では11cm以下にするよう求められているので、玄関の上がり框の高さもそれ以下の高さにするのが一般的になっています。通常の階段の一段分の高さととらえると感覚的にわかりやすいでしょう。

材質

木材を使うことが多く、ケヤキやヒノキ、カバなど高級な無垢素材でつくることもありますが、集成材の表面に薄い化粧材を貼った建材が多く流通しています。そのため、色の濃淡や木目の柄は様々な種類から気に入ったものを選ぶことができます。木に飽き足らない場合や、床材に合わせてタイルや石材を使うことも可能です。框の厚みや蹴込み部分の素材もデザインの一部としてこだわり、玄関の雰囲気を盛り上げることもできるので、余裕があれば床や土間とのトータルコーディネートで色や質感にこだわって選びたいところです。

バリアフリーを意識した上がり框

成人の健康な状態であれば一段分の段差も難なく乗り越えられますが、小さなお子さんやハンディキャップのある方、お年寄りにとってこの段差は毎日の生活の中でつまずきや転倒の危険性のある個所になってしまうこともあります。さらにその段差で靴の脱ぎ履きをするとなれば、脱いだ靴が散乱していたり、物が置かれた状態で踏み外してバランスを崩したりといった思わぬハプニングも起きます。安全な暮らしをするためには、このわずかな段差と上手に付き合えるような工夫も必要になります。

上がり框をリフォームしたいとき

上がり框をリフォームしたくなるのは、その段差の昇降が大変だと感じるときではないでしょうか。高齢になり、靴の脱ぎ履きにサポートが必要、段差を小さくして上り下りを楽にしたいときには、手すりを取り付けたり、式台などで1段の段差を小さくしたりするなど、付帯するものを整えることで対応できることがあります。また、デザイン的に玄関を変えたい場合には表面に付け框を貼り、見た目を新しくすることもできます。

リフォームする目安

玄関の床がきしむ箇所や、ふかふかするような箇所がある場合にはシロアリの被害にあっている可能性があります。上がり框を含め、土台から床の組み方を作り直すことになるので、かなりの時間と費用がかかります。そのような時は一から玄関のあり方を見直すチャンスでもあります。昇り降りしやすい上がり框をつくる、場合によっては一部をスロープにしておくと車椅子での出入りも可能になります。

リフォーム費用の目安

上がり框を取り付ける土台から直す場合には数10万円からかかることもあります。材料費だけでなく、大工さんに床を作り直してもらうことになるので手間代もかかります。
手すりや式台を置くだけであれば、市販のものを購入して自分で取付けて設置することも可能ですが、注意すべきなのは、手すりには想像以上に荷重がかかるため、しっかりと下地を用意しておかないと、ネジが緩み手すりごとはずれてケガをすることもあるということです。たかが手すりと軽く見ず、大工さんや内装業者にお願いするほうが安心です。数万円で取り付けてくれます。スロープをつくる場合には5万円以上の費用を見ておく必要があります。

リフォーム工期の目安

床を作り直す大掛かりなリフォームの場合には2週間から1カ月ほど工期を見ておく必要がありますが、付属品をつける、付け框を取り付けるのみなら数週間で工事はおわります。まずは数社に見積もりをとることや、どのようなリフォームをするかを考えておけば、スムーズに工事に取り掛かることができ、工期短縮につながります。

上がり框をつくらない玄関

上がり框をつくらないケースも増えてきています。ホテルやグループホームでは上がり框をつくらない、バリアフリーな玄関が一般的になっています。海外で靴を履いたまま生活する文化圏の場合は上がり框をつくらない住宅もあります。最近では狭いマンションの土間のスペースを有効に活用し自転車置き場をつくるものや、上がり框の存在を消すような玄関リフォームのアイデアも多く事例があります。数センチのわずかな段差にして気付かないほどのわずかなスロープでつないでしまえば、ほぼバリアフリーの玄関にすることも可能です。

上がり框がないメリット

バリアフリーで上り下りが楽になると、車椅子でも外からそのまま家に上がることができ、介助する人にとっても負担が減ります。お子さんが小さなうちは遊んでいるうちに段差を踏み外しケガをするという心配もありません。段差が無くなるのは、つまり家の中での安全性が高くなると考えても間違いではありません。

上がり框がないデメリット

土足部分との区別がつきにくくなるため、外部の汚れが家の中に広がりやすくなってしまいます。上がり框が無くても靴を脱ぎ履きするエリアは明確にしておいたほうがきれいに保つには良いかもしれません。また上がり框に座りながら靴を履くことも多いので、座れる椅子を用意しておくと便利に使えます。

この記事のポイント

上がり框ってなに?

上がり框とは玄関の土間部分と床部分の切り替えになる段差に使う化粧材のことです。 玄関で客人を迎え入れる際に最初に目につく「ハレ」の建材として、上がり框は床の間の框と同様にケヤキなどの高級な木材を使ってしつらえられていました。

詳しくは「上がり框とは」をご確認ください。

上がり框をリフォームする目安は?

玄関の床がきしむ箇所や、ふかふかするような箇所がある場合にはシロアリの被害にあっている可能性があります。上がり框を含め、土台から床の組み方を作り直すことになりますが、一から玄関のあり方を見直すチャンスでもあります。

詳しくは「リフォームする目安は?」をご確認ください。

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