住宅の外壁工法は大きく2種類に分けられ、湿式工法(タイル張り・モルタル塗り壁など)と乾式工法(サイディング類)があります。
この記事では、新築計画時に外壁をどうするのか、リフォームにおいては既存の外壁をどうするのかと悩まれている方に向け、乾式工法のサイディングについてご説明いたします。
記事サマリー
サイディングとは?
サイディングとは外壁に貼る仕上げ用の板材のことを指します。外壁の工法にはタイルやモルタルを使用する湿式工法とサイディングを使用する乾式工法にわけられ、乾式工法のほうが、工期が短いなどの特徴があります。
新築やリフォーム時に外壁に貼る壁材
まずは特徴についてそれぞれ見ていきましょう。
サイディングにはいくつか種類がありますが、共通していることは「工場生産された仕上がった製品」であるので、材質・板の大きさと厚み・表面のデザインや色が好きに選べ、地域を問わず安定して手に入ることです。できあがった製品を使用するため工期も短くなります。
一方で、湿式工法のモルタル壁は施工職人の技術力に左右され、仕上がりも変わってきます。
また、サイディングの施工法には「直張り構法」と「通気構法」があります。通気層の有無の違いで、通気構法は、屋内の湿気を屋外に放出する、浸入した雨水を屋外に排出する、通気層に因り遮熱するなどの効果が挙げられます。
建物の耐震性は柱・梁・筋交いが担い、防水性は透湿防水シートが担い、断熱性は断熱材が担っているので、サイディングは建物外周部の化粧材という捉え方が分かりやすいでしょう。
サイディングの種類
サイディングには主に窯業系・金属系・樹脂系・木質系の4種類があります。それぞれについて詳しく解説していきます。
窯業系サイディング
窯業(ようぎょう)系の材質はセメント質と繊維質を混ぜ成形された板で、1枚の大きさは以下の組み合わせの製品が主流です。
- 長さ 3,030ミリ 1,820ミリ
- 幅 450ミリ、910ミリなど
- 厚み 14ミリから26ミリ
デザインや色味が豊富で、建物の方角(面)や縦方向の階数によって違う種類を張り分けたり、玄関付近だけ違うデザイン・色にしたりすることもあり、戸建て住宅の外壁材として人気で7割以上を占めています。
大判のメリットは継ぎ目が少なくなり目立たない事ですが、施工(足場からの設置)に難儀します。
デザイン(タイル・レンガ風や吹き付け塗装風など)によって必要な深さが厚みに影響し、耐火の役目を担うために必要厚さも変わってきます。
防火・準防火地域に建てる建物の外壁材として適しています。
費用相場(材料)は約4,000~6,000円/平方メートルで耐用年数は20~30年位です。
出典:2022年3月版『住宅用建材使用状況調査』の概要|一般社団法人 日本サッシ協会
金属系サイディング
金属系サイディングは厚さ15ミリ以上の金属製外壁材になります。
- 長さ 3,030ミリ 3.788ミリなど長尺が主流
- 幅 400ミリ程度
- 厚み 15~16ミリが主流
かつて使用されたトタン(金属板を亜鉛でめっきしたもの)からガルバリウム鋼板(金属板をアルミニウム・亜鉛・シリコンでめっきしたもの)が主流になり、耐久年数が長く、金属でありながらサビにくい特性を持っています。
また、硬質プラスチックフォームなど断熱材が裏張りされた製品は外の気温に室内が影響を受けにくくなる利点があります。
モルタル外壁や窯業系サイディングに比べ、見た目がモダンなデザインになりますが、種類が少ないことが課題と言えます。
一方で屋根材もガルバリウム鋼板を使用する事で、壁と屋根をトータルでデザインするケースなどに適しています。
費用相場(材料)は約3,500~9,000円/平方メートルで耐用年数は20~30年位です。
樹脂系サイディング
あまり聞き慣れない種類ですが国内では流通も少なく、塩化ビニル樹脂(プラスチック系)を原料とした外壁材です。
凍害などに強いことから東北や北海道などの寒冷地に適しています。
費用相場(材料)は約8,000~10,000円/平方メートルと高めですが耐用年数が30年持つ商品が多いです。
木質系サイディング
木質系サイディングは合板・集成材などの無垢材をそのまま使うのではなく、表面加工することで木材の耐火性向上や風雨に因る劣化を抑えた外壁材で、木材の風合いを外壁に取り入れたい場合に適しています。
他種のサイディングに比べ、耐火性能が低いことや雨水に因る腐食なども起きる点や樹脂系同様に流通も少ないのが課題です。
費用相場(材料)は約6,000円~10,000円/平方メートルと高めで、メンテナンス次第で耐用年数が15年から40年とバラツキが出ます。
杉板外壁材の費用相場(材料)は約3,000~9,000円/平方メートル程度ですが、施工費含めるとサイディングより高めで13,000円程度になります。
サイディングの汚れや劣化への対策
サイディングは種類にもよりますが、一定期間ごとのメンテナンスをしなければ汚れや劣化が目立ってしまいます。
ここではメンテナンスする周期の目安や自分で対応できる部分について解説していきます。
数年に一度はプロのメンテナンスが必要
住宅の壁にサイディングを使用されている場合、汚れや劣化対策はどうなのでしょうか。
メンテナンス周期として1回目は5年から10年目の間に行うケースがほとんどですが、樹脂系の工法だけは他と違う材料特性やシーリングレスなのでメンテナンスフリーな資材とも言えます。
窯業系 約7~15年 塗装・割れた箇所の部分補修・シーリングなど
金属系 約10~15年 塗装・シーリングなど
樹脂系 約15~30年 ほぼノーメンテナンス
木質系 約5~10年 腐食防止の再塗装・シーリングなど
汚れや破損は自分で補修可能?
住まい手(施主)自身が行えるサイディングのチェック項目として以下が挙げられます。
1. シーリング目地が剥離していないか
サイディングのつなぎ目(シーリング)や窓枠周りのシーリングなどが切れてないか
2. サイディングの経年変化に因る反りやうねりがないか
横から見て膨らみや凹んでないか
3. サイディング自体にクラックなどひび割れや欠けがないか
4. 窯業サイディングの表面に粉(チョーキング)がふいてないか
塗装面の素地が出て触ると指が白くならないか
5. サイディング表面にカビやコケが付着してないか
窯業系サイディングの場合、部分的な欠けや色のタッチアップ程度なら自分で補修可能ですが、地震などでサイディングに大きなひび割れを見つけた際は欠落する場合もあるので自分では触らずに施工業者にご連絡ください。
外壁の汚れを高圧洗浄機で洗う風景をたまに見かけますが、塗装面を傷めたり、ジョイント部分のシーリング切れを起したりするので注意が必要です。
できればサイディング防汚・コーティング効果がある商品を建築施工前の段階で選ぶのが無難です。
新築時において外装リフォームの周期計画を立てておくと良いでしょう。
サイディングを消耗品として考え、ベーシックなグレードを選んで耐用年数が過ぎる時期に全面張り替えをする方法もあります。
サイディングが劣化した場合の工事方法
サイディングの劣化は方位によって内容が変わってきます。
- 南面は長時間の紫外線に因る劣化など
- 北面は湿気に因るカビ・コケなどの目立った汚れなど
方位の面だけ補修する場合と全面補修の場合がありますが、建物周囲に仮設足場を設置し屋根の補修も含め全面に手を加えるケースが多いです。
塗り替え
主な塗り替え塗装の種類として、クリア塗装・エナメル塗装・特殊塗装などがあり、塗料の種類としてフッ素樹脂系(3,500円/平方メートル~)・アクリルシリコン樹脂系(2,500円/平米~)・アクリルウレタン樹脂系(1,800円/平方メートル~)など種類があります。
一般的にサイディングに劣化が認められたタイミングで補修工事として塗り替えます。
塗り替えは素地の状況に合わせて上記の工法・薬剤を選ぶのでDIYは避けたほうが良いでしょう。
重ね貼り
カバー工法とも言いますが、古いサイディングを剥がし処分する費用がかからず見た目が新築のようにきれいになります。
地域・方角によっては古いサイディングと新しいサイディングの間が結露し、カビの繁殖が起きるケースがあります。
また、外壁から雨漏りが生じている場合は重ね張りをしても雨漏りの原因を解消してないので重ね張りはおすすめできません。
元々の建物の重量に重ね張りしたサイディング重量が加算され、本来の耐震設計の計算から外れてしまうので、地震対策がポイントとも言える工法です。
費用は概算で15,000円/平方メートル程度かかります。
張り替え
外壁を剥がすだけでなく、内部の透湿防水シートも張り替えたり、窓周りのコーキングも打ち替えたりすることになります。
サイディング寿命のタイミングだけでなく、屋根の補修などのタイミングに合わせて張り替えるケースも多いです。
今まで使用していたサイディング材を屋根材も含めて軽量の資材を選定することで、地震対策ができる場合もあります。
古い外壁を撤去、構造体である柱・梁などの腐食状況も分かるので、大規模リフォームになりますが家を長持ちさせるターニングポイントにもなるので、外壁・屋根・バルコニーなど外回りのメンテナンスをまとめた計画をされると良いでしょう。
各サイディングの新規張り替えの費用(先出)に、旧サイディングの撤去代(約20万円前後)かかります。
この記事のポイント
- サイディングってなに?
サイディングとは外壁に貼る仕上げ用の板材のことを指します。材質・板の大きさと厚み・表面のデザインや色が好きに選べ、地域を問わず安定して手に入るのが特徴です。できあがった製品を使用するため工期も短くなります。
また、サイディングの施工法には「直張り構法」と「通気構法」があります。通気層の有無の違いで、通気構法は、屋内の湿気を屋外に放出する、浸入した雨水を屋外に排出する、通気層に因り遮熱するなどの効果があります。
詳しくは「新築やリフォーム時に外壁に貼る壁材」をご覧ください。
- サイディングが劣化したらどうする?
サイディングは長時間の紫外線に因る劣化や、湿気に因るカビ・コケなどの目立った汚れなどが起こります。 劣化した面だけ補修する場合と全面補修の場合がありますが、建物周囲に仮設足場を設置し屋根の補修も含め全面に手を加えるケースが多いです。
詳しくは「サイディングが劣化した場合の工事方法」をご覧ください。
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