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老人ホームの入居条件は5つ!施設の種類、選ぶ際のポイントとともに解説

執筆者プロフィール

中谷実歩
フリーライター

福祉系短大を卒業後、介護職員・相談員・ケアマネジャーとして介護現場で20年活躍。現在はフリーライターとして、介護業界での経験を生かし、介護に関わる記事を多く執筆する。
介護福祉士・ケアマネジャー・社会福祉士・保育士・福祉住環境コーディネーター3級

老人ホームへの入居を検討する中で、どのような入居条件が設定されているのか気になる人も多いでしょう。老人ホームの入居条件は、希望に合った施設選びをするうえで重要なポイントになります。そこで、本記事では、老人ホームの種類や5つの入居条件をはじめとして、施設を選ぶ際に確認すべきポイントについて解説します。

老人ホームの種類

老人ホームと一口に言ってもさまざまな種類があります。ここでは、老人ホームを「公的施設」と「民間施設」の2種類に分けて、どのような施設があるのかご紹介します。

公的施設

公的施設は、国や地方公共団体、社会福祉法人などが運営する老人ホームです。
公的施設の種類は、次の5つがあります。

  • 特別養護老人ホーム
  • 介護老人保健施設
  • 介護医療院
  • 養護老人ホーム
  • 軽費老人ホーム(ケアハウス)

これらの施設は、公費で運営されているため入居費用が安く抑えられています。また、低所得者に対する優遇があることも特徴のひとつです。しかし、公的施設である安心感や費用の安さから人気が高く、入居できるまで数年待ちという施設も少なくありません。

民間施設

民間施設は、民間の企業などが運営する老人ホームのことです。施設の種類には、次の4つがあります。

  • 有料老人ホーム(介護型・住宅型・健康型)
  • グループホーム
  • サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
  • シニア向け分譲マンション

民間施設の入居にかかる費用は、公的施設と比べると高めに設定されていることが一般的です。高い費用はかかりますが、その分利用者の個別のニーズに合わせたサービスが提供されるため入居者の満足度は高くなっています。

老人ホームの5つの入居条件

老人ホームには希望すれば誰でも入居できるわけではありません。施設の種類ごとに対象者が異なり、それによって職員の配置人数や環境設備などの基準が定められているからです。そのため、老人ホームでは入居条件が設定されており、これらをクリアすることで入居が認められます。
老人ホームのおもな入居条件は以下の5つです。

●年齢
●要介護度
●必要な医療行為
●保証人・身元引受人
●収入・資産

それぞれの項目の内容について詳しく見ていきましょう。

年齢

老人ホームでは、入居できる年齢を60歳または65歳以上と定めている施設が一般的です。
例えば、特別養護老人ホームなどの介護保険施設では65歳以上、もしくは特定疾病の40歳以上65歳未満の方と決められています。これは、介護保険が適用される年齢と合わせているからです。

また、介護型の有料老人ホームやグループホームなどの施設も、介護保険サービスを提供するため、65歳以上を入居条件としています。

一方で、介護保険サービスを利用しない人も入居できる施設では60歳以上であれば入居できます。健康型の有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅などが該当します。

要介護度

老人ホームでは、入居条件に要介護度が定められています。これは施設側が要介護度に合わせた適切なサービスを提供するためです。例えば、要介護度が高い人を受け入れる施設では、ケアに携わるスタッフを手厚く配置し、重度介護に必要な設備も完備しています。

施設ごとの要介護度の条件は、介護老人保健施設と介護医療院では「要介護1以上」と決められています。また特別養護老人ホームの場合は、「要介護3以上」の認定が必要です。ただし、要介護1・2の方で特別な事情のある場合には入居できます。

グループホームは、認知症と診断された「要支援2または、要介護1以上」の方が入居可能です。有料老人ホームの場合では「介護型」は要介護1以上ですが、「健康型」では要介護認定を受けていない自立の方でも入居可能です。

老人ホームの種類入居できる要介護度
特別養護老人ホーム原則として、要介護3以上
(特別な事情のある場合のみ要介護1・2も入居可能)
介護老人保健施設要介護1以上
介護医療院要介護1以上
有料老人ホーム自立(健康型)
要介護1以上(介護型)
グループホーム要支援2、または要介護1以上

必要な医療行為

入居してから必要となる医療行為の程度も入居条件で問われます。

一般的に老人ホームは、高齢者の生活の場であることから、医療機関のような充分な医療体制は整えられていません。そのため、施設でおこなう医療行為の内容や範囲には限度があり、場合によっては入居を断られることがあります。つまり、施設によって医療行為の対応には違いがあるのです。

例えば、グループホームやサービス付き高齢者向け住宅では看護師の配置が義務付けられていないため、施設によっては医療ケアが必要な人は入居できない場合があります。

また、特別養護老人ホームや介護付き有料老人ホームなどの介護施設では、看護師の配置が義務付けられていますが、医療依存度が高い方の入居は難しい場合があります。

一方で、「介護老人保健施設」と「介護医療院」では、医師と看護師が常勤で配置されているため、日常的に医療行為が必要な方の入居を受け入れています。ただし、高度な医療行為が必要な場合や、病状が安定していない場合は入居を断られます。

保証人・身元引受人

老人ホームに入居するにはほとんどの場合、保証人と身元引受人が必要です。その理由は、施設側で責任を負えない問題が起こった場合に対するリスクを回避するためです。

具体的には、入居費用の滞納や、入院時の手続き、亡くなった際の引き取りなどがあげられます。

なお、入居を希望する人が保証人や身元引受人をたてられない場合には、「保証会社」を利用する方法があります。保証会社とは、保証人の役割を有料で代行するサービスです。また、施設によっては、成年後見制度で法定代理人を定めることで入居を受け入れる場合もあります。

保証人や身元引受人がいない場合には、施設へ相談したうえで保証会社や成年後見制度を活用すると良いでしょう。

収入・資産

入居前に収入と資産を確認する施設もあります。これは、施設側が入居希望者に支払い能力があるかどうかを見極めたいと考えるからです。

支払い能力は、入居希望者だけでなく、保証人の資産と収入も確認されます。万が一支払いが滞ったときに保証人に代わりに払ってもらうことになるからです。なお、収入と資産の確認は本人や保証人の通帳を提示することが一般的です。

【ケース別】老人ホームに入居できるか?

次に、ケース別の入居条件をみていきましょう。

認知症の場合

入居希望者に認知症がある場合、ほとんどの老人ホームでは受け入れに条件があります。

最近では、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅などでも、認知症の対応ができる施設が増えてきています。しかし、受け入れられるのは多くの場合、軽〜中度の認知症の方のみとしています。また、入居時は軽度認知症だった人が、認知症の進行により重度化すると対応が難しくなるため退去を求められることがあります。

なお、グループホームは認知症の診断を受けている方のみが入居できる施設です。また、特別養護老人ホームや介護医療院では重度認知症の方の入居を受け入れています。

看取りを希望する場合

看取りができる老人ホームは、介護保険法で定められている条件を満たしている施設に限られます。

看取りに対応しているおもな老人ホームは、特別養護老人ホーム、介護医療院、有料老人ホームです。施設によっては、介護老人保健施設やグループホームでも対応している場合があります。

なお、看取りケアには、医療行為が必要となるため多くの場合、看護師の配置のない施設では対応していません。看取りを希望する場合には、入居前に看取りケアを実施しているかどうかを施設側に確認する必要があります。

生活保護を受けている場合

生活保護を受けている場合でも老人ホームへの入居は可能です。入居費用は、生活保護の住宅扶助や介護扶助で対応するため、多くの場合入居者の費用負担はありません。

ただし、家賃の高い老人ホームでは、住宅扶助の上限を超すため、入居できない場合があります。また、生活保護を受け入れる施設の種類は限られており、施設によっては受け入れ定員が決まっている場合もあります。

老人ホームを選ぶ際のポイント

次に、老人ホームを選ぶ際のポイントについてご紹介しましょう。押さえておきたいチェックポイントは次の3つです。

  • 費用
  • 医療体制
  • 退去条件


それぞれのポイントについて解説します。

費用 

まずは、予算に合う老人ホームを選ぶことが大切です。老人ホームに入居して生活を送っていくには、入居一時金などの初期費用や毎月の家賃、食費、介護サービス費など、さまざまな費用がかかります。

入居が決まった後に支払いに困ることがないように、入居一時金や毎月の費用はどのくらいかかるのか、また支払い続けることができるのかを資産や収入を考慮して、試算しておく必要があります。

医療体制

老人ホームの医療体制は施設ごとに異なっています。そのためとくに体調に不安がある人や日常的に医療ケアが必要な人の場合は「施設の医療体制」や「必要な医療ケアを受けられるか」をポイントに選ぶ必要があります。

看護師が配置されている施設であっても、夜間は介護職員のみという場合も多いです。そのため、昼夜問わず医療ケアが必要な方は24時間体制で看護師が配置されている施設を選ぶようにしましょう。
緊急時の医療体制や医療機関との連携体制なども確認しておきましょう。

退去条件

契約書に明記されている「退去条件」を理解したうえで老人ホームを選ぶことも重要です。施設の退去条件に該当した場合、施設からの退去を求められることがあります。入居してから「知らなかった」ということがないように事前の確認が必要です。

各老人ホームによって違いがありますが、おもな退去条件には、次のようなものがあります。

  • 他の入居者への迷惑行為
  • 長期入院
  • 身体状態の変化
  • 支払いの滞納

暴言や暴力などの迷惑行為は、他の入居者やスタッフへ危害を及ぼす、あるいは及ぼす恐れがあるため退去条件として定められています。
また、長期間(一般的には3カ月以上)の入院によって居室を空けると「病状が回復せず老人ホームに戻れない」と判断されるため退去を求められます。
入居後に認知症が進行した、あるいは医療依存度が高くなり、施設で対応できない身体状況になった場合は対応可能な別の施設への転居を求められます。
支払いを滞納した場合は、決められた支払い期限までに支払わなければ退去を求められる可能性があります。

この記事のポイント

老人ホームの入居条件は?

「年齢」「要介護度」「必要な医療行為」「保証人・身元引受人」「収入・資産」の5つがあります。

詳しくは、「老人ホームの5つの入居条件」をご覧ください。

老人ホームを選ぶ際のポイントは?

老人ホームを選ぶ際には、「費用」「医療体制」「退去条件」についてよくチェックするようにしましょう。

詳しくは、「老人ホームを選ぶ際のポイント」をご覧ください。

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