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布基礎(ぬのきそ)とは?特徴やメリット・デメリット

この記事の監修

齋藤進一
建築士

やすらぎ介護福祉設計 代表
2004年から「ワンストップ型」介護福祉設計をめざし、各個人の障がいの症状に合わせた住宅設計・施工監理をはじめ、子育て世帯が安心して暮らせるユニバーサルな視点でのバリアフリーで、多くの人に安心とやすらぎを提供している。

住宅を建築する際、我が家の基礎は安全なのかといった不安を施主が持つのは当然でしょう。設計する建築士や施工する工務店から基礎の選定説明を受けた場合、基礎知識があると安心に繋がりますので、身に付けることは大切です。

この記事では布基礎(ぬのきそ)について、また築年数が経過した住宅にお住いの方向けに「耐震改修工事」についても解説いたします。

布基礎とは

布基礎(ぬのきそ)とは、凸型の鉄筋コンクリートを線状に打ち込んで「基礎」にする構法です。連続基礎とも呼ばれ、「布」は連続して水平である意味合いがあります。
基礎にはいくつかの種類がありますが、一般的な直接基礎には「布基礎」と「ベタ基礎」に分けられます。

画像引用:取り組み例(構造体の強化)1|鹿児島

ここでは主に「布基礎」について解説いたします。

布基礎の特徴

ベタ基礎が床面で建物の重量を地盤から支持しているのに比べ、布基礎は凸下部の点で地盤から支持する構造です。

基礎が地中に埋まる「根入れ深さ」は240ミリメートル以上(寒冷地では凍結深度以上)、底盤厚みは150ミリメートル以上が基準値です。
立ち上がり部分の厚みは120ミリメートル以上ですが、最近は150ミリメートルが主流です。

出典:建築物の基礎の構造方法及び構造計算の基準を定める件|国土交通省

布基礎の高さについては、建築基準法施行令第22条 「居室の床の高さ及び防湿方法」で
「1項 床の高さは直下の地面からその床の上面まで45cm以上とすること。」
とあり、床下に人が潜ってメンテナンスできる高さに設定するケースが多く、ベタ基礎の場合は規定がないのでバリアフリー住宅などに向いています。

(布基礎の例)

画像引用:|鹿児島県庁

ベタ基礎との違い

ベタ基礎のメリットとして、下記3点があげられます。

  1. 耐震性に優れる
  2. シロアリ被害に遭いにくい
  3. 地盤の湿気の影響を受けない

また、マンションのスラブ上に施工する転がし給水配管同様にできることで維持管理が容易になることや、ホームエレベーターの基礎ピットと絡めた施工ができるのが最近のメリットと言えます。

一方、ベタ基礎の最大のデメリットは布基礎に比べコストが上がることです。
比較については後ほど解説します。

布基礎のメリット

施工コストがベタ基礎より低く抑えられるのは当然ですが、一番のポイントは寒冷地において凍結深度より深く根入れすることが容易であることです。また、がけ地など斜面に基礎を施工する際も、それぞれの地盤に合わせた基礎高さにできるのが魅力です。

※凍結深度とは
地面が凍結し得る深さのことで、基礎底部がこれより浅いと凍結時に土が隆起し建物が傾いてしまう恐れがあります。

コストを抑えられる

布基礎とベタ基礎のコストの差を知るには、施工内容の差を知るのが一番です。

ベタ基礎の施工内容

(第一段階)スラブコンクリート施工 

  • スラブ配筋
  • コンクリート打設(ポンプ車など)
  • 天端(表面)コンクリートならし(土間工など)

(第二段階)立ち上がりコンクリート施工

布基礎の施工内容

(第一段階)立ち上がりコンクリート施工のみ

つまり布基礎は、ベタ基礎における第一段階の材料・手間代・ポンプ車などの費用を省けることになります。

強度が高くなるケースがある

ベタ基礎より布基礎の方が基礎自体の重量が軽くなるので、地盤への負荷が少なくなり構造計算上有利に働く(上下方向で強度が高くなる)ケースがあります。

一方で、水平面でみると縦横方向には強くても斜め方向には弱いのが布基礎の特徴です。
例えば、「ベタ基礎」が通常のダンボール箱だとすると「布基礎」は底のないダンボール箱だとイメージしてください。
斜め方向のねじれ荷重に関しては、布基礎においては土台(木材)の火打ちや、1階床の構造用合板が面材として機能します。
ベタ基礎は上記に併せ、スラブ基礎が面材として機能します。

新築住宅では建築士が地盤調査などのデータや建物形状などを加味して基礎の選定を行ったりしますが、軟弱な地盤と判定された場合、フラット35などではベタ基礎への指定があります。

出典:【フラット35】 技術基準・検査ガイドブック|フラット36

布基礎のデメリット

布基礎におけるデメリットはどのようなものがあるのか、大きく2つが挙げられます。

湿気・シロアリ被害を受けやすい

布基礎では土部分が剥き出しになっている場合、湿気が1階床下に籠りやすく、床材を腐らせる原因になります。
また、土台(木材)や柱下部がシロアリからの被害を受けた場合、構造的に危険な状態になります。

新築工事における布基礎施工時は、土部分に防湿コンクリート(無筋)を打設することで、構造的機能はありませんがベタ基礎のような効果を持たせる対策や、土台(木材)から柱下部に防蟻処理薬を塗る対策をします。

耐震性が低い

強度については先ほど既述したように布基礎はベタ基礎に比べて耐震性が劣ります。

住宅設計時に検討される「耐震等級1~3」についても知っておくと安心です。

  • 耐震等級1:きわめてまれに発生する大地震によるチカラに対して倒壊・崩壊しない
  • 耐震等級2:耐震等級1の1.25倍の耐震性能
  • 耐震等級3:耐震等級1の1.25倍の耐震性能

等級が上がるほど耐力壁の多さ・配置、床や接合部の強度、基礎の強度が求められるので、ベタ基礎のニーズが高くなります。

既存住宅(旧耐震)では市区町村で行っている「耐震診断」を受診してみるのも1つです。

旧耐震は1981(昭和56)年6月1日以前に建てられた建物で、大半の布基礎の中に「無筋コンクリート」の可能性がある物件も多く、耐震改修工事の必要性があります。

以下は旧耐震の木造2階建てを筆者が「耐震診断」し、倒壊の恐れがある判定が出たので布基礎を補強し全体をベタ基礎にした例です。(その他、柱・筋交いなどの補強も実施)

布基礎においてはデジタル探知機で「無筋」であることが判明しました。

1.床下は土が剥き出しになった元の状態(湿気の原因にも)

画像:筆者撮影

2.防湿フィルムを敷き、スラブ配筋

画像:筆者撮影

3.白く見えるのは、防湿フィルム下の土から湿気が上がった水蒸気

画像:筆者撮影

4.スラブコンクリート打設後、布基礎補強(型枠工事)

画像:筆者撮影

5.ベタ基礎補強完成、耐震改修工事(柱・筋交いの補強)および傷んだ断熱材の入れ替え

画像:筆者撮影

6.床下用換気口は活かした状態

画像:筆者撮影

この記事のポイント

布基礎はどんな工法?

布基礎(ぬのきそ)とは、凸型の鉄筋コンクリートを線状に打ち込んで「基礎」にする構法です。連続基礎とも呼ばれ、「布」は連続して水平である意味合いがあります。

また、ベタ基礎が床面で建物の重量を地盤から支持しているのに比べ、布基礎は凸下部の点で地盤から支持する構造です。

布基礎は高さの規定があり、床下に人が潜ってメンテナンスできる高さに設定するケースが多い一方、ベタ基礎の場合は規定がないのでバリアフリー住宅などに向いています。

詳しくは「布基礎とは」をご確認ください。

布基礎のメリットは?

布基礎は、ベタ基礎の施工における第一段階の材料・手間代・ポンプ車などの費用を省けるため、ベタ基礎と比較してコストが安くなります。

また、ベタ基礎より布基礎の方が基礎自体の重量が軽くなるので、地盤への負荷が少なくなり構造計算上有利に働く(上下方向で強度が高くなる)ケースがあります。

詳しくは「布基礎のメリット」をご確認ください。

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